• 更新日 : 2025年8月4日

パーソナルジム経営は儲からない?年収や初期費用、独立開業に失敗しないためのポイントを解説

ダイエットブームや健康志向の高まりで、トレーナーがマンツーマンで指導してくれるパーソナルジムの需要も増えています。それに伴って、個人でパーソナルジムを開業する方も増えてきていますが、事業として儲かるのでしょうか?

今回はパーソナルジムを経営するポイントについてご紹介します。

パーソナルジム経営は儲からない?

まず気になるのは果たしてパーソナルジム経営は儲かるのか、儲からないかということだと思います。パーソナルジム経営者の平均年収や利益率について見ていきましょう。

パーソナルジム経営の市場規模

経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、2024年12月現在、日本国内にはフィットネスクラブが1,700軒あり、約3万7千人のトレーナーが活躍。売上高は247億18百万円となっています。2023年12月は売上高が237億63百万円だったので、市場規模はおおよそ3.9%程度拡大しています。

今は特にしっかりと指導をしてくれて高いダイエット効果が期待できるパーソナルジムの需要が高まっているため、今後も市場が伸びていく余地は十分にあると考えられます。

参考:特定サービス産業動態統計調査|経済産業省

パーソナルジム経営者の平均年収

パーソナルジム経営の平均年収に関するデータはありませんが、おおむね年収500万円程度の方が多いようで、成功している方では1,000万円以上を稼いでいるようです。

料金が月額10万円、会員が10人いると仮定すると、月の売り上げは100万円となります。パーソナルジムは客単価が高く、毎月コンスタントに収入が入ってくるビジネスです。もちろん、売り上げから家賃や人件費などの経費を差し引いたものが年収となるため、売り上げ=年収となるわけではないのですが、会員を獲得できれば安定的な収入が得られる可能性は十分にあるといえます。

パーソナルジム経営の利益率

パーソナルジムの経営にかかる経費としては家賃、水道代、光熱費、通信費、広告費、人件費(トレーナーやスタッフを雇う場合)が挙げられます。例えば、家賃15万円の賃貸マンションの一室を使って1人で開業した場合、毎月25万円ほどが経費としてかかります。仮に月間の売り上げが100万円とすると、利益率は75%です。

年収は約900万円です。もちろん一概にはいえませんが、パーソナルジムは大規模な物件や設備が不要。仕入れも必要ないので利益率が高く、比較的儲かりやすいビジネスモデルといえます。

パーソナルジム経営で失敗しやすいポイント

パーソナルジム経営で成功するか失敗するかは、集客ができるかどうかにかかっています。継続した集客ができないパーソナルジムは、経営に失敗する傾向にあります。例えば、ジムのコンセプトが固まっていなければ、ターゲット層と提供するサービス内容などがマッチしておらず、継続的な集客ができません。また、未経験でいきなり独立開業しても、パーソナルジムについての深い知識や経験がないので、失敗してしまいます。

パーソナルジム経営で失敗しないためには、事前にしっかりとしたコンセプト設計をすることや、パーソナルジムについての深い知識や経験を得ることなど、継続した集客ができる体制を整えておくことが重要です。

パーソナルジムを開業するまでのロードマップ

パーソナルジムを開業するまでのロードマップは、以下のようになります。

1. コンセプト設計

パーソナルジムを開業・経営するためには、最初にコンセプトの設計を行います。

コンセプトとは簡単にいうと、どのようなパーソナルジムを運営するのかという指針です。コンセプトが決まれば、それに合わせたターゲット層や提供するサービスが決まるため、パーソナルジムが何を顧客にアピールするのか決定できます。

例えば、ターゲット層がOLなのか会社帰りのサラリーマンなのか、また若年層なのか高齢者層なのかによって、パーソナルジムの営業時間や提供サービス、設備などが異なります。そのため、最初にしっかりとした経営コンセプトの決定が重要となります。

2. 事業計画書の作成

コンセプトの設計が終わったら、次はコンセプトを基に事業計画書を作成しましょう。事業計画書には、これから、どのように事業を進めていくのかを記載します。

事業計画書は社内だけではなく、融資や補助金の申し込みの際に、第三者にも見せるものです。売り上げなどの収支計画や資金繰りなどの計画をしっかり立てましょう。

マネーフォワード クラウドでは、パーソナルジムの事業計画書・創業計画書のテンプレートを提供しています。以下のURLよりダウンロードして、ぜひご活用ください。

パーソナルジムの事業計画書・創業計画書テンプレート・作成例

3. 資金調達

パーソナルジムの経営を行うにあたり、資金調達についても考えなければなりません。詳細は後述しますが、パーソナルジムを開業するには、初期費用として多くの資金が必要です。

自己資金では賄えないため金融機関などから資金を調達します。融資を受ける際には、事業計画書を作成して提出する必要があります。

4. 物件契約

資金調達の目処が立ったら、同時に物件を選定し契約します。パーソナルジムの開業で重要なのは、コンセプトに合った立地と物件選びです。コンセプトに基づいた見込み客が多い地域で、物件を選ぶ必要があります。

5. 内装・設備導入

物件が見つかり、賃貸借契約などを締結したら、次は内装工事や外装工事、設備の導入を行います。

パーソナルジムを成功させるには、ターゲット層に合った空間づくり(内装)や設備の導入、サービスメニューの提供が必要不可欠です。ターゲット層に合った内装・設備を導入しましょう。同時にスタッフを雇うのであれば、採用活動や研修も行います。

6. 集客の準備

内装工事や外装工事、設備の導入と同時に、集客の準備も進めていきます。

集客のために重要なのが広告です。現在、集客の方法で主流となっているのが、SNSを用いたものです。SNSやインターネットを用いて広告をすることで、幅広い人にパーソナルジムの情報を届けることができます。

また、主婦層や高齢者層に向けて、新聞のチラシやポスティングの広告も有効です。

7. 開業届の提出

パーソナルジムを開業したら、税務署に「開業届」、都道府県税事務所に「個人事業開業申告書」をそれぞれ提出します。開業届の提出期限は、事業開始から1カ月以内です。

青色申告をする場合は、所得税の青色申告承認申請書の提出も必要なので注意しましょう。

パーソナルジム開業の初期費用はどれくらい?

パーソナルジムを開業するためには主に「物件取得費」「内装費」「設備費」という3つの初期費用が必要で、トータルで300万円程度は想定しておくことをおすすめします。それぞれ詳しく見ていきましょう。

物件取得費

まず挙げられるのが物件を取得するための費用です。前述のとおり、パーソナルジムは賃貸マンションの一室を使って開業することができます。物件取得費の主な内訳は敷金・礼金で、家賃の半年分が目安です。例えば、家賃15万円の物件の場合は90万円程度がかかります。

物件取得費用を抑えられれば開業費用も安くはなりますが、立地が悪いと会員が集まりにくくなってしまうので、予算面と集客面の両方を考慮して選ぶことが大切です。

内装費

物件を取得したら内装工事を行います。具体的には壁紙や床材の張り替え、電気や空調、換気、水まわりの設備費用などです。内装費は幅があり、壁紙や床材の張り替えなど軽微なものであれば20~30万円、トイレのリフォームは10~30万、浴室のリフォームは50~150万円ほどです。マンションの一室の内装をまるごと変更するとなると400~1,000万円ほどかかります。

賃貸マンションの場合は内装がそのまま使えるケースも多いでしょう。本当に変えなければならない部分や老朽化が目立つ設備だけ交換することで、内装費を抑えることができます。

設備費

パーソナルジムの場合は本格的なトレーニングマシーンを何台も置く必要はありません。特に個人経営レベルであれば15~50万円程度の家庭用のトレーニングマシーンを数台置いておけば事足ります。リースやレンタルを使えば初期費用を抑えることも可能です。

中古品を購入することでも費用を抑えることはできますが、あまりにも古いものであると安全性が低かったり、故障してセッションが提供できなくなってしまったり、不衛生な印象を与えてしまったりといったデメリットもありますので、可能な限り新品のものを選ぶことをおすすめします。

広告宣伝費

パーソナルジムにかかる広告宣伝費は、広告の種類によって大きく異なります。例えば、SNSで情報発信をする場合、自分でSNSの運営を行えば広告宣伝費はかかりません。

一方、インターネットを使ったリスティング広告やディスプレイ広告では、月に20万から50万円、ケースによってはそれ以上の広告宣伝費が必要です。

リスティング広告は検索エンジンの検索結果画面にテキストで表示される広告、ディスプレイ広告はWebサイトやアプリに画像や動画で表示される広告のことです。

ポスティング広告は、一般的にリスティング広告やディスプレイ広告よりも費用はかかりません。ポスティングする地域や部数によっても異なりますが、1部3~6円程度のことが多いです。

費用や効果に応じて利用する広告を選びましょう。

パーソナルジム経営者に求められる資格とスキル

パーソナルジムの経営に必要な資格はありません。しかし、持っていた方が経営に有利な資格があります。

パーソナルジム経営者に求められる資格には、パーソナルトレーナーの資格とマネジメントの資格の2つがあります。

  • パーソナルトレーナーの資格
    パーソナルトレーナーの資格で代表的なものが、「NESTA-PFT」「NSCA-CPT」「JATI-ATI」です。その他、理学療法士や柔道整復師、管理栄養士などの資格を取る人もいます。
  • マネジメントの資格
  • 意外と知られていないのがマネジメントの資格です。パーソナルジム経営者の場合は、マネジメント資格の方が重要となることも多いです。マネジメントの資格で代表的なものが「FCM(フィットネスクラブ・マネジメント)技能検定」です。

    FCM技能検定に合格すれば、国家資格である「フィットネスクラブ・マネジメント技能士」の資格を得ることができます。フィットネスクラブ・マネジメント技能士には、1級から3級までありますが、1級になると、経営者に必要な店舗運営や人材戦略、リスクマネジメントの能力が養われます。

パーソナルジム経営で成功するための戦略

市場規模が拡大しているパーソナルジムの経営は儲かる可能性が十分にありますが、それだけにライバルも数多く進出しています。なんとなく開業しただけではなかなか成功するのは難しいでしょう。ここからはパーソナルジム経営に成功するための具体的な戦略をご紹介します。

大手企業や競合他社との差別化を図る

パーソナルジムは大手企業もフランチャイズ展開をしている市場です。個人事業主や個人企業では、知名度の面でも資本力の面でも、大手にはかなわないでしょう。

例えば、競合が取り入れていない独自のメソッドを開発して訴求する、大手が進出していない地域で開業する、あるいは料金設定を低くするなどが挙げられます。まずは大手企業も含めてライバルを徹底的に調査し、独自の強みを作り出しましょう。

補助金・助成金が使えるかを確認する

個人が起業をする際には国や地方自治体の補助金を使うことができますので、積極的に活用しましょう。

例えば、中小企業庁では「地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)」という制度を用意しています。中小機構や都道府県、金融機関などが資金を出し合って基金を造成し、その運用益によって中小企業を支援する制度です。また、商工会議所の「小規模事業者持続化補助金」では、小規模事業者が販路開拓を行う場合、最大200万円の補助を受けることができます。

他にも東京都であれば「創業助成事業」「商店街起業・承継支援事業」など、大阪府であれば「大阪起業家グローイングアップ補助金」、愛知県であれば「あいちスタートアップ創業支援事業費補助金(起業支援金)」など、都道府県によって助成金・補助金制度があり、さらには東京都江東区の「創業支援事務所等賃料補助金」、愛知県名古屋市の「名古屋市スタートアップ企業支援補助金」というように、市区町村にも独自の補助・助成制度があります。

※上記の補助金・助成金制度は2025年7月現在のものです。

集客方法を綿密に練る

パーソナルジムの収益源は会員からの会費であるため、会員が集まらないことには収入が得られません。特に開業間もない場合は知名度が低いため、まずは宣伝をしてジムの存在を知ってもらう必要があります。

チラシを作成して配布やポスティングをする、飲食店などに置いてもらう、新聞の折り込み広告を活用する、ポスターを掲示する、雑誌広告を掲載する、看板を設置するなどさまざまな方法があります。また、今はネットで情報収集をする時代です。ホームページを開設する、SNSで情報発信をする、動画サイトに投稿するなどのインターネットを活用した集客も有効です。

地域やターゲットによって集客方法も工夫しましょう。スマホやパソコンを当たり前に使える若い世代をターゲットにするのであれば、ホームページは必須といえます。逆に比較的年代が高い人が多い地域であれば、チラシや新聞の折り込み広告の方が効果を得られるかもしれません。

集客は戦略を立てるのが難しいといえます。チラシを作るにせよ、ホームページを開設するにせよ、デザインや原稿を工夫しなければなりません。場合によっては広告代理店やWEB制作会社などの専門家の力を借りるのも手です。

出店予定エリアの商圏分析をしっかりと行う

パーソナルジムのような店舗ビジネスは出店場所が肝となります。見込み客がいない地域、会員が通いにくい地域に開業しても、なかなか集客は見込めません。物件を選ぶ際には商圏分析をしっかりと行いましょう。

例えば、オフィス街の近くであれば、経営者や会社員が仕事帰りに通ってくれる可能性があるため、駅の近くや通勤経路上にパーソナルジムを構えて夜間の営業をメインにすることで、通いやすくなります。主婦・主夫の方がターゲットであれば、買い物や子どもの送り迎えの際に寄れるよう、スーパーや幼稚園・保育園、学校の近くで開業するのがよいかもしれません。地域に高齢者が多いのであれば、高齢者向けの訴求をしてバリアフリー型の内装にすることで、安心感を与えられます。

その地域にどんな人がいて、その人たちがどのようなライフスタイルで暮らしているかをチェックしてみましょう。

スモールスタートで始める

儲けるなら大きい立派なジムを作って、トレーナーやスタッフも雇った方がよいと思われるかもしれません。しかし、最初からお金をかけて大規模なパーソナルジムを開業したとしても、会員が集まるとは限りません。売り上げが立たない場合、赤字になってすぐに廃業してしまう事態もあり得ます。

まずは小規模でスタートしましょう。マンションの一室や自宅の一部を使って開業し、ご自分がトレーナーとしてセッションを行えば、経費も少なくて済みます。会員数が増えてきたら人を雇う、広い物件を借り直すなど、徐々に規模を拡大させていくことが、パーソナルジム経営を長続きさせるコツです。

パーソナルジムを多店舗展開するならフランチャイズも選択肢に

会員が増えて売り上げがしっかり立つようになってきたり、ジムが手狭になってきたりした場合は、多店舗展開も視野に入ってきます。しかし、すべてのジムを直営店として運営し、経営者が1人で面倒を見るのは大変です。

そこで、多店舗展開する場合はフランチャイズも検討してみましょう。フランチャイズとは商標や商材、経営ノウハウなどをフランチャイジー(加盟店)が利用できる代わりに、ロイヤリティーをフランチャイザー(本部)に支払う契約のことを指します。

フランチャイズ契約を締結することでフランチャイジーに店舗運営を任せることができ、ロイヤリティー収入が得られるようになります。

パーソナルジムを開業する際には綿密な準備を

パーソナルジムは客単価が高く利益率も良いため、儲かりやすいビジネスといえます。人々の健康意識も高まっているため、今後も需要は伸びていくでしょう。

しかし、それだけに大手、中小、個人問わず競合がひしめく業界でもあり、失敗するリスクもあります。ぜひ今回ご紹介したポイントを意識して、綿密に開業準備を進めましょう。


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