- 更新日 : 2026年1月14日
社会福祉法人とは?特徴やNPO法人との違い、メリット、設立手順などを簡単に解説
社会福祉法人とは、高齢者や障害者、児童などの支援を目的とした公益性の高い非営利法人です。簡単に言えば、利益を追求せずに地域社会の福祉を支える組織であり、株式会社やNPO法人とは設立のハードルや税制面で大きな違いがあります。
また、特別養護老人ホームや保育園の運営母体として知られる一方、ネット上では「やばい」「やめとけ」といった噂も散見されます。
本記事では、社会福祉法人の定義から、他の法人との違い、設立のメリット・デメリット、そして現場の実態まで解説します。
目次
社会福祉法人とは?
社会福祉法人とは、社会福祉法第22条で定義された、社会福祉事業を行うことを目的として設立される公益性の高い非営利法人のことです。
最大の特徴は、徹底した非営利性と公益性にあります。
- 利益分配の禁止:株式会社のように株主(出資者)へ配当を出すことは認められません。
- 収益の再投資:得られた収益はすべて、施設の設備投資、サービスの向上、地域福祉の発展など、本来の事業に再投資する必要があります。
運営には強い公的規制が伴い、所轄庁から定期的な指導監督を受けます。一方で、法人税等の非課税措置や補助金など、経営基盤を安定させるための優遇措置が与えられています。
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社会福祉法人が運営できる事業区分は?
社会福祉法人が行う事業は、あくまで「社会福祉事業」が主体ですが、法人の安定運営のために一部の収益事業なども認められています。大きく以下の3つに分類されます。

1. 社会福祉事業(主たる事業)
法人の存在意義となる中心的な事業です。
- 第一種社会福祉事業:特別養護老人ホーム、児童養護施設、障害者支援施設など(社会的に緊急性・必要性の高い事業)。
- 第二種社会福祉事業:保育所、障害福祉サービス事業、デイサービスなど(第一種と比べて利用者の影響が小さいもの)。
2. 公益事業(従たる事業)
社会福祉事業以外で、公益に資する事業です。
例:有料老人ホーム、訪問介護、地域包括支援センターなど
※社会福祉法人で行う公益事業は社会福祉に関係のある事業でなければなりません。
3. 収益事業
法人の財務基盤を安定させる目的で行う事業です。
例:貸ビル業、駐車場の運営、敷地内での店舗経営など。
※ここでの収益は、すべて社会福祉事業や公益事業の運営に充てる必要があります。
※本業に支障が出るような過度な収益事業は制限されます。
社会福祉法人・NPO法人・株式会社の違いは?
社会福祉法人と他の法人格(NPO法人、株式会社)との最大の違いは、設立ハードルの高さ、税制優遇の範囲、利益処分の自由度の3点です。
| 比較項目 | 社会福祉法人 | NPO法人 | 株式会社 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 社会福祉事業の実施 | 特定の非営利活動 | 営利の追求 (事業活動) |
| 設立難易度 | 非常に高い (認可制) | 中程度 (認証制) | 低い (準則主義) |
| 所轄庁 | 都道府県・市 | 原則都道府県知事 | なし (法務局で登記) |
| 資産要件 | 基本財産が必要 | 0円から設立可能 | 1円から設立可能 |
| 税制優遇 | 原則非課税 (収益事業などの場合は課税) | 法人住民税均等割が免除 入会金や会費は課税されない | 原則課税 |
| 利益分配 | 禁止 | 禁止 | 可能 |
| 社会的信用 | 高い | 比較的高い | 一般的 |
社会福祉法人は設立要件が最も厳格ですが、その分、税制面でのメリットが最大化されています。一方で、株式会社のように利益を自由に処分することはできません。
参考:公益法人制度とNPO法人制度の比較について|公益法人と特定非営利活動法人(NPO法人) – 内閣府
社会福祉法人を設立するメリットは?
社会福祉法人の最大のメリットは、税金や補助金などのお金に関する優遇制度がある点です。
1. 税制面の優遇(原則非課税)
通常の企業であれば利益の約30%が税金として引かれますが、社会福祉法人は原則として税金がかかりません。
- 法人税が非課税:本来の業務である「社会福祉事業(特養や保育所など)」から生じた所得には、法人税が非課税となります。手元に残る資金が多くなるため、次の投資や設備の修復に回しやすくなります
- 固定資産税等の非課税:社会福祉事業の用に供する不動産(建物や土地)については、固定資産税や不動産取得税が非課税となります。大規模な施設を持つ場合、このコスト削減効果は大きいです。
- 寄附金控除の対象:個人や企業が社会福祉法人に寄附をした場合、寄附者は税制上の優遇(寄附金控除)を受けられます。これにより、資金集めのハードルが下がります。
2. 公的資金によるバックアップ
- 施設整備補助金:老人ホームや保育園などを整備する際、国や自治体から建設費の一部の補助を受けられる制度が充実しています。
- 運営費の安定:介護報酬や保育委託費など、主な収入源が公定価格により定められているため、景気に左右されにくく、回収不能リスクもほぼありません(ただし急な物価高に弱い側面もあります)。
3. 社会的信用
社会福祉法人の社会的信用度は高いため、利用者やその家族からの信頼獲得が容易です。
社会福祉法人を設立するデメリットは?
社会福祉法人を設立するデメリットを一言で言えば、「自分の会社であって、自分の会社ではない」という点に尽きます。設立者がオーナーとして振る舞うことはできません。
1. 財産権の喪失
注意すべき点は、設立時に出したお金や土地、積み上げた利益は、個人の手元には戻らないということです。
- 残余財産の帰属制限:万が一法人を解散した場合、残った財産は国庫や他の社会福祉法人や公益財団法人などに引き渡さなければなりません。設立者や親族に分配することは法的に不可能です。
- 利益分配の禁止:株式会社のような「配当」は一切禁止されています。利益はすべて事業や設備、社会福祉法人の運営などのために再投資する義務があります。
2. 厳格な監視と事務負担
公的な優遇を受ける対価として、行政や社会からの厳しい監視下に置かれます。
- 定期的な指導監査:所轄庁から定期的に監査が入り、運営や会計について細かい指導を受けます。
- 情報公開義務:計算書類や現況報告書をインターネット上で誰でも見られるように公表しなければなりません。
- 煩雑な手続き:定款の変更や基本財産の処分など、重要な決定を行う際には所轄庁の認可が必要になるケースが多く、経営のスピード感はどうしても遅くなります。
3. ガバナンス(組織統治)の規制
- 同族経営の制限:理事や監事、評議員に親族が含まれる割合に制限(親族等の特殊関係者の制限)が設けられています。
- 事業範囲の制限:本業である福祉事業に支障が出るような、過度な収益事業は行えません。
社会福祉法人の設立に必要な要件は?
社会福祉法人の設立には、「資産」「人」「計画」の3要素について、事業を持続的に運営できる能力があるか審査されます。単に書類を揃えるだけでは認可されません。
1. 資産要件(基本財産)
社会福祉法人は、事業を安定して行うために必要な財産(基本財産)を持たなければなりません。原則として、施設のための土地や建物、あるいは運転資金としての現預金などが必要です。特に施設を運営する場合、その不動産を所有しているか、国もしくは地方公共団体から貸与もしくは使用許可を受けている必要があります。
2. 人的要件(機関設計)
適正な運営と牽制機能を働かせるため、以下の役員等を選任する必要があります。
- 理事:6名以上(業務執行の決定、理事長などの職務の監視を担う)
- 監事:2名以上(理事の職務執行を監査する)
- 評議員:7名以上(重要事項の議決機関)
3. 事業計画等の準備
設立認可を受けるためには、単なる構想ではなく、具体的な裏付けのある計画が必要です。必要資金、利益、サービス内容などが整っており、認可後すぐに事業を開始できる状態であることが求められます。
社会福祉法人の事業計画書のテンプレートは、以下のリンクよりダウンロード可能です。
社会福祉法人設立までの流れ・手順
設立手続きは非常に長期にわたり、準備開始から認可・登記まで1年以上かかるケースも珍しくありません。
1. 事前準備と協議
- 事業計画の策定:どのような福祉サービスを、どこで、誰に対して行うかを決定します。
- 所轄庁への事前相談:所轄庁が相談を受け付けています。認可申請にあたっては多くの調整事項があるため、必ず事前相談に行きましょう。
2. 定款作成と組織の決定
- 定款の作成:法人の憲法となる定款案を作成します。
- 役員・評議員の内定:理事、監事、評議員の候補者を選定し、承諾を得ます。
3. 設立認可申請と審査
- 申請書の提出:所轄庁へ申請書を提出します。所轄庁とは、基本的に設立を予定している地域の都道府県知事や指定都市市長を指します。
- 許認可を受ける:許認可を受けるための提出書類や手続方法は自治体によって異なるため、事前に要件を確認しましょう。
- 認可書の交付:審査に合格すると、所轄庁から認可書が交付されます。
参考:社会福祉法人の認可について(平成28年11月11日 局長通知 一部抜粋)|厚生労働省
4. 設立登記と事業開始
- 設立登記:認可証が交付されてから2週間以内に法人の所在地を管轄する登記所で登記申請を行います。登記完了をもって法人が成立します。
- 財産の移転:寄附された財産の名義を個人から法人へ変更します。
- 事業開始届:事業の開始を所轄庁へ届け出ます。
社会福祉法人はやばい・やめとけと言われる理由は?
インターネット上で「社会福祉法人はやばい」「やめとけ」という言葉が見られることがありますが、これは過去のイメージや一部の事例によるものです。現在は法改正により環境は大きく改善されています。
やばいと言われる背景
- 過去の同族経営リスク:以前は親族のみで役員を固め、私物化する法人が一部存在しましたが、現在は評議員制度の厳格化により牽制機能が働いています。
- 業務の過酷さ:介護・保育現場の人手不足による負担は業界全体の課題ですが、処遇改善加算などにより徐々に給与面の見直しが進んでいます。
2016年(平成28年)の制度改革による透明化
2017年の社会福祉法改正により、以下の点が義務化され、ホワイト化が進んでいます。
- 会計監査人の導入:一定規模以上の法人には外部監査が入ります。
- 利益供与の禁止:役員等関係者への特別の利益供与が禁止されました。
この他にも、物価高や人件費高騰に対応するための施策が始まっています。
社会福祉法人の制度や規制について理解しよう
高齢化が進む日本において、福祉サービスを基幹事業とする社会福祉法人はなくてはならない存在です。
税制優遇や社会的信用の高さは魅力ですが、設立には資産要件や人的要件など高いハードルがあり、運営後も厳しい規制と事務負担が伴います。しかし、近年の制度改革により透明性は向上しています。
社会福祉法人の設立や就職を検討する際は、これらの制度や規制、そして改革による変化を正しく理解しておくことが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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