- 更新日 : 2024年7月12日
プライシングとは?目的や基本的な考え方、種類、ポイントを解説
プライシングとは、自社の製品やサービスの価格を決めることです。プライシングは企業のマーケティングにおいて重要な要素のひとつであり、適切なプライシングによって売上・利益の拡大や価格の安定化などを実現できます。
本記事では、プライシングの概要や目的、基本的な考え方、種類、ポイントについて解説します。
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プライシングとは
プライシングとは、「Pricing」という言葉の意味のとおり、製品やサービスの価格を決めることです。自社にとって最適な価格を戦略的に決定していくことから、価格戦略と呼ばれることもあります。
プライシングは、製品の機能やプロモーション方法、販売方法などと同様に、企業のマーケティングにおいて重要な位置づけとなります。
プライシングの目的
プライシングを行う目的としては、主に以下の点が挙げられます。
- 売上や利益を高めるため
- 製品やサービスの価格を安定させるため
- 市場シェアを維持・拡大するため
売上や利益を高めるため
プライシングの主な目的のひとつとして、売上や利益の向上が挙げられます。
売上は基本的に販売価格×販売数となり、プライシングは販売価格に直接的に関わる要素です。
また、販売数を最大化する上でも、顧客にとって最適なプライシングを行うことが求められます。
製品やサービスの価格を安定させるため
プライシングの目的には、製品やサービスの価格を安定させることも含まれます。
例えば、製品やサービスの価格が毎月大きく変動していると、顧客は購入するタイミングがわかりづらくなってしまうでしょう。
また、製品・サービスに対する不信感にもつながるため、適切なプライシングを行って価格を安定させることが大切です。
市場シェアを維持・拡大するため
プライシングの目的として、市場シェアの維持・拡大も挙げられます。
市場シェアの維持・拡大ができれば、商品の大量生産によるコスト削減効果などが見込めるでしょう。
また、市場シェアを維持・拡大するためには、競合他社の価格動向もしっかり把握しておくことが重要です。
プライシングの基本的な考え方
ここでは、プライシングの基本的な考え方として、以下のパターンを解説していきます。
- コストを基に考える
- 需要を基に考える
- 競合他社を基に考える
コストを基に考える
プライシングの考え方のひとつは、コストを基に考える方法です。
例えば製造業なら、製造原価に一定の利益率を足して価格を算出するコストプラス法、小売業であれば仕入れ原価に一定の利益率を足して価格を算出するマークアップ法などが挙げられます。
売れれば一定の利益率が確実に見込めるのが利点である一方、顧客にとっては必ずしも最適な価格ではない可能性があります。
需要を基に考える
コストベースではなく、需要を基に考える方法もあります。
この方法では、市場調査や顧客アンケートなどを基に、製品・サービスの適切な価格を決定していきます。
その上で、企業利益を確保できるように原材料の調達先などを選定します。顧客にとって適切な価格になるのが利点であるものの、調達コストなどによっては十分な利益が見込めない場合もあるでしょう。
競合他社を基に考える
同じ業界の競合他社の価格をベースにプライシングを行うという考え方もあります。
機能性やスペックが同程度の製品を販売する場合は、競合他社の価格と同じか少し安く販売することで、売上や市場シェアの拡大が期待できます。
市場に合わせた価格設定ができるのが利点である一方で、競合他社の基準に合わせることで自社の利益が十分に出ないおそれがある点には注意しましょう。
プライシング戦略の主な種類
プライシングを行う際の戦略としては、主に以下の種類があります。
- スキミングプライシング戦略
- ペネトレーションプライシング戦略
- ダイナミックプライシング戦略
スキミングプライシング戦略
スキミングプライシング戦略は、「上澄み価格戦略」とも呼ばれ、製品・サービスの販売開始直後の価格を高めに設定する戦略です。
主なターゲットは新製品・新サービスへの興味・関心の強い顧客層となります。
例えば最新のスマートフォンやパソコン、家電などに用いられることの多い戦略であるといえるでしょう。
スキミングプライシング戦略を採用することで、早期に開発投資費用を回収することが期待できます。
ペネトレーションプライシング戦略
ペネトレーションプライシング戦略は、「市場浸透価格戦略」とも呼ばれ、なるべく安い価格で市場に製品・サービスを投下する戦略です。
スキミングプライシング戦略とは対照的な戦略であり、早期に市場シェアを拡大することを目的としています。
例えば、顧客数の獲得が重要なコミュニケーションツールなどで用いられている戦略となります。また、開発費用があまりかからない製品などの場合にも採用しやすいでしょう。
ダイナミックプライシング戦略
ダイナミックプライシング戦略は、市場の状況に合わせて製品・サービスの価格を変動させる戦略です。
例えば、飛行機のチケットやホテルの価格を時期によって変動させるケースが代表的な例です。
また、為替レートなどの状況を踏まえて、スーパーマーケットの食材価格をこまめに変更する事例も挙げられます。
プライシングにおいて大事なポイント
プライシングを行う際は、以下のポイントを押さえながら取り組むことが重要です。
- 顧客心理や企業利益、競合他社の動向を総合的に考える
- データを有効活用する
顧客心理や企業利益、競合他社の動向を総合的に考える
プライシングにおいて大事なポイントのひとつは、顧客心理や企業利益、競合他社の動向を総合的に考えることです。
最適なプライシングを行うためには、顧客や市場、競合、自社の状況をバランスよく考えることが求められます。
例えば、自社の利益を最大化させるために利益率を多めに設定した場合、顧客心理や競合他社の価格から乖離して売れ行きが悪化するおそれがあります。
自社の利益を確保しつつも、顧客が納得できる範囲内で価格設定を行うことが重要です。
データを有効活用する
プライシングにはさまざまな要因が影響するため、適切な価格設定を行うことは容易ではありません。価格設定の精度を高めるためには、定量的なデータや根拠に基づく価格設定を行うことが大事なポイントとなります。
例えば、製品ごとの原価を正確に把握できれば、各製品において必要となる利益の基準を明確にすることが可能です。
原価情報を含めた社内の各種データを有効活用するには、ERPの活用が効果的な手段となるでしょう。
ERPで原価管理を行うメリットなどについては、以下の関連記事も併せてご確認ください。
まとめ
プライシングとは、自社の製品やサービスの価格を決めることです。プライシングは企業のマーケティングにおいて重要な要素であり、売上や利益・市場シェアの拡大や製品・サービスの価格の安定化などが期待できます。
プライシングでは、コストや需要、競合他社などの基準を用いて価格を設定していくことが基本的な考え方となります。また、具体的なプライシング戦略として、販売初期に価格を上げるスキミングプライシング戦略などが挙げられます。
プライシングでは、顧客心理や企業利益、競合他社の動向を総合的に考えることが大事なポイントです。加えて、原価情報などの社内データを有効活用しながら判断していくことも重要となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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