- 更新日 : 2024年7月12日
サイロ化とは?原因や問題点、解消するためのポイントなどを解説
サイロ化とは、組織やシステム、データなどがそれぞれの部門や拠点で別々に管理され、部門間・拠点間での連携が取れていない状態を表します。サイロ化は、業務効率の低下や経営上の意思決定の遅れなどを引き起こすため、組織全体で解消を図ることが重要です。本記事では、サイロ化の問題点や原因、解決するメリット、解消する上でのポイントについて解説します。
目次
サイロ化とは
はじめに、サイロ化の概要や語源について解説します。
サイロ化の概要
サイロ化とは、システムや組織などが独立して存在し、互いに分断されている状態を表す用語です。英単語の「silo」に由来し、日本語では農産物などの物資を保管する「貯蔵庫」や「格納庫」といった意味を持ちます。
それぞれのサイロ(貯蔵庫・格納庫)は互いに独立していて物資が混ざることがないため、そこから転じて独立・分断の状態を表す用語としてサイロ化という言葉が使われるようになりました。
サイロ化は、大きく分けて企業組織、システム、データに対して使われるケースが多くなっています。
企業組織のサイロ化
企業組織のサイロ化は、企業内の各部門や各拠点が縦割り構造によって存在し、部門間・拠点間のスムーズな連携や協力ができない状態を指します。
システムのサイロ化
システムのサイロ化は、企業内の各部門や各拠点が別々にシステムを構築・運用し、システム間の連携がうまくできていない状態を表します。
データのサイロ化
データのサイロ化は、企業活動において扱うさまざまなデータを、各部門や各拠点で共有・連携できていない状態を指します。
サイロ化によって発生する問題
ここでは、サイロ化によって発生する問題として、以下の事項を解説します。
- 業務効率が低下する
- ビッグデータを活用できない
- 意思決定の遅れが生じる
業務効率が低下する
サイロ化によって発生する問題点のひとつは、業務効率が低下することです。例えばデータのサイロ化が生じている場合、各拠点で同じデータをシステムに入力する手間が発生する場合もあり、本来は不要な作業が生まれます。
ビッグデータを活用できない
企業内にある膨大なビッグデータを活用できないことも問題点に挙げられます。各部門や各拠点に有益なデータがあったとしても、企業全体で共有できていない場合、ビッグデータを活用した経営戦略の策定や実行は難しくなります。
それにより、新たな事業機会やマーケティング機会の損失などにつながります。
意思決定の遅れが生じる
サイロ化は、経営上の意思決定の遅れも引き起こします。組織やデータが分断されている場合、経営判断に必要な各種データを集約するために多くの時間や手間がかかるためです。
その結果、データを俯瞰した経営上の意思決定も遅くなり、市場トレンドの変化に対応できなくなるおそれがあります。
サイロ化が生じてしまう原因
本章では、サイロ化が生じてしまう原因として、以下の点を解説します。
- 縦割りの組織文化が根付いている
- 個別にシステムを設計・導入している
- 独立採算制を導入している
縦割りの組織文化が根付いている
サイロ化が生じてしまう原因のひとつとして、縦割りの組織文化が根付いていることが挙げられます。各部門や各拠点の単位で業績向上や生産性向上を追い求めた結果、組織の縦割り構造が生まれ、企業全体として協力関係を築きにくくなる可能性があるのです。
その結果、例えば営業部門と生産部門の間で受注計画と生産計画にズレが生じ、顧客に対する納品遅れなどを引き起こしてしまうおそれがあるでしょう。
個別にシステムを設計・導入している
各部門や各拠点で個別にシステムを設計・導入していることもサイロ化が生じる原因となります。それぞれの部門・拠点で個別最適なシステムを設計・導入した結果、システム同士のデータ連携がうまくできなくなるケースも少なくありません。
個別のシステムが増えれば増えるほど、システムのサイロ化は重大となり、システムを刷新する手間や難易度が高くなるといえるでしょう。
独立採算制を導入している
サイロ化が生じてしまう原因としては、独立採算制の導入も挙げられます。独立採算制とは、各部門・各拠点に収支管理や事業上の判断を委任する制度であり、スピーディーな事業運営ができるメリットがあります。
一方で、他部門・他拠点と協力しながら企業全体最適の視点で仕事を進めにくくなるというデメリットもあり、サイロ化を引き起こす要因となるのです。
サイロ化を解決するメリット
サイロ化の解決によって、以下に挙げるようなメリットを享受できるでしょう。
- 業務効率化を実現できる
- 意思決定スピードが向上する
- 企業のデータの価値が高まる
業務効率化を実現できる
サイロ化の解決によって、業務の効率化を図ることができます。サイロ化の解決にあたって、まず現状の業務フローや業務プロセスを分析するため、現行業務のムダや非効率的な部分を洗い出すことが可能です。
そして、より効率的な業務プロセスに改善していくことで、これまで以上に生産性の高い業務推進ができるようになるでしょう。
意思決定スピードが向上する
サイロ化の解消により、企業内の多種多様なデータをリアルタイムに収集・活用できるようになるため、意思決定スピードの向上にもつながります。
それにより、市場トレンドの変化にも柔軟に対応し、市場拡大や売上向上の機会を多く掴めるようになるでしょう。
企業のデータの価値が高まる
サイロ化を解決すると、企業のデータの価値が高まるというメリットもあります。顧客データや販売データなどのさまざまなデータを統合的に利活用することで、顧客ニーズの深い理解や顧客満足度向上のための施策につなげられるでしょう。
サイロ化を解消する上でのポイント
ここでは、サイロ化を解消する上でのポイントとして、以下の点を解説します。
- 部門や職種の垣根を越えた交流・異動を行う
- データを統合的に把握・管理できる仕組みを構築する
部門や職種の垣根を越えた交流・異動を行う
サイロ化を解消する上では、部門や職種の垣根を越えた交流・異動を行うことが重要です。複数の部門・拠点の業務内容や業務プロセスを理解することで、企業全体での各部門の立ち位置や役割、特徴を理解できるようになります。
その結果、部門間のコミュニケーションの活性化や協力関係の構築、人材交流の活性化などにつながり、横断的な組織運営の実現が期待できるでしょう。
データを統合的に把握・管理できる仕組みを構築する
サイロ化を解消する上では、企業全体でデータを共有するための仕組みの構築も大事なポイントとなります。例えば、ERPを導入することで、販売や生産、会計、人事といった、さまざまな部門間のデータを一元的に保管・活用できるようになります。
また、ERPには他システムとのデータ連携機能もあるため、既存システムとのデータ連携も実現可能です。ERPの連携機能については、以下の関連記事も併せてご確認ください。
まとめ
サイロ化とは、組織やシステム、データなどが独立して存在し、互いに分断されている状態を表す用語です。サイロ化は、企業内の縦割りの組織文化や個別最適なシステム導入によって生じ、業務効率の低下やデータ活用のしづらさ、意思決定の遅れといった問題を引き起こします。
サイロ化の解消によって、意思決定スピードの迅速化や業務の効率化、企業のデータ価値の向上などが期待できます。
サイロ化を解消する上では、部門や職種の垣根を越えた交流・異動を行うことや、データを統合的に把握・管理できる仕組みを構築することが大事なポイントとなるでしょう。
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