- 更新日 : 2024年7月12日
中計とは?策定するメリット、作成手順をわかりやすく解説
「中計」とは、「中期経営計画」のことであり、企業が将来目指している姿に近づくために必要な計画のことを指します。中期経営計画を策定することで、会社の方向性・ビジョンが明確になり、自社が置かれている現状や取り組まなければいけないことについて把握できるようになるでしょう。本記事では、中計を策定するメリットや、作成手順について解説します。
目次
中計とは
中計(中期経営計画)とは、企業が3年後・5年後にあるべき姿・目標を設定し、具体的に何を行うべきかの計画を示したものです。
中計を立案する際には、現状と目標のギャップを明確にし、そのギャップを埋めるために必要な売上目標や利益目標などを定量的な数値で示していきます。
また、事業の黒字化や利益率の大幅な向上など、1年で達成することは難しいが数年がかりで達成できそうな目標を設定するケースも多く見られます。中計は企業が継続的な運営をしていくために必要であると同時に、企業の方向性を明確に決めておくことで、周囲の企業や求職者などからの信頼を得やすくなるというメリットもあります。
中計以外の経営計画
経営計画は、中計以外にも毎年作成する「短期経営計画」や、10年後に目指す姿などをまとめた「長期経営画」などが存在します。
経営計画を立てる際に重要なのは、それぞれの計画がリンクしていることです。
例えば、中計で立てた3年後・5年後の目標を達成するために、短期経営計画を1年ごとに設定する形にすれば、1年の内にどの程度の売上を達成しておくべきかを把握しやすくなります。逆に1年ごとの短期的な目標だけを立てる場合、直近の売上にこだわるようになってしまい、企業が進むべき方向性を見失うリスクがあります。
中期経営計画を策定し、立てた計画に基づいて日々行動することによって、企業の資源を有効に活用できるようになります。計画の達成度・進捗を定期的に確認することで、市場の変化にも柔軟に対応できるのです。
中計を策定するメリット
中計を策定することで、企業はさまざまなメリットを得られます。この章では、中計を策定するメリットについて解説します。
自社の現状・取り組むべき仕事を把握しやすくなる
中計で目標を立てることで自社が抱える課題が明確になり、自社の強み・弱みを把握できるようになります。事業を行っていると、目の前の問題の対処に追われている状態が続いてしまい、企業の重要な課題についてどのように取り組むべきかを考えるのが後回しになりがちです。
中計の策定は、企業の課題や経営について考えるきっかけにもなり、組織内部の状況や市場の現状、競合他社の取り組みについて把握する機会にもなります。
自社が取り組まなければいけない課題を明確にするためには、市場の中での自社・競合他社のシェア率などを数字で把握することが重要です。
課題が明確になることで、目標達成に向けて、従業員はどれくらい増やすべきか、確保すべき予算はいくらかなどの目安をつかみやすくなります。目標と現状のギャップを認識することで、優先して取り組むべき仕事が明確になるでしょう。
社外からの信頼度が高まる
企業が立てている目標や、目標に対する行動が明確であると、社外からの信頼度が高まります。
例えば、融資を受ける際に中期経営計画を判断材料にして審査されるケースがあります。優れたビジネスモデルを持っていたとしても、計画性がない経営を行っているとしたら、周りからの信頼や評価は下がるでしょう。事業を長く続けていくためには、顧客や金融機関などからの信頼が不可欠です。
また、中計を公表することで、取引先企業や求職者にも企業の目標や方向性、どのようなことに取り組んでいるのかをアピールすることができます。求職者にとってのメリットも大きく、中計に企業が求める人材が示されていれば、入社後のミスマッチを減らすことにもつながります。
社員のモチベーションアップにもつながる
中計を策定することで、企業としての明確な目標ができ、社員のモチベーションアップにつながるというメリットもあります。目標を達成するために社員が主体的に創意工夫して仕事を行うため、企業全体の生産性アップにも寄与するでしょう。また、企業が目指している姿に相応しい人材になるために、新しい知識・スキルを身に付けるなど、社員の技能向上が期待できる点もメリットです。
中計を策定する手順
この章では、中計を策定する手順について詳しく解説します。
①経営理念を明確にする
中計を策定するうえで、特に重要なのは経営理念を明確にすることです。
経営理念とは、企業の存在意義や目的、大切にする価値観などを表現するものです。まずは、企業の経営理念を明確に決めましょう。中計を策定する際の土台となる部分ですので、既に経営理念がある企業においても改めて内容を見直してみるのもよいでしょう。
②自社の経営現状を分析する
次に、自社の経営に関わる現状分析を実施しましょう。分析する際には、ERPの経営ダッシュボードや各種会計レポートなどを利用し、自社のボトルネックや伸ばすべき長所などを客観的に分析するのがおすすめです。
ERPの基本機能については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
③外部環境を把握する
次に、外部環境を把握しましょう。中計の策定は自社だけではなく、外部環境についても把握する必要があります。
外部環境を把握するためには「PEST分析」というフレームワークが有効です。PEST分析とは、政治・ 経済・社会・技術の4つの観点から分析を行う方法です。これら4つを常にチェックするようにして、自社の経営戦略に活かしていきましょう。
例えば、市場の現状や顧客の属性などを把握すれば、どの部門に資金と労力を投資するべきかを判断しやすくなります。
④行動計画を立てる
最後に、具体的な行動計画を立てていきましょう。②、③で得たデータをもとにし、今後3~5年でどの分野に、どの程度の資金と労力を費やすのかを決めていきます。
さらに、売上高や会員獲得数などの数値的な目標も立てましょう。数値的な目標を立てる際には、合理的で実現性がある数値を設定することがポイントです。社内・社外からの納得感が得られる現実的な数値を設定しましょう。
また、中計で立てた目標を達成したり、達成に貢献したりしている部門に高い評価を与えるなど、中計と業績評価を紐づけるのも、目標達成へのモチベーションを高めることにつながります。
中計の策定後は、進捗をモニタリングする必要があります。設定した目標通りに進んでいるかをチェックし、目標が達成されていなかったら改善・修正することも大切です。モニタリングを継続して行うためには、月1回のペースで中計の進捗について企業全体で確認し合う場を設けるのがよいでしょう。
まとめ
中計を策定することで、自社の強み・弱みを把握でき、いま優先して取り組むべき仕事が明確になります。さらに、社員のモチベーションアップや、社外からの信頼度向上など多くのメリットを得ることができます。
中計を策定する手順は以下の通りです。
①経営理念を明確にする
②自社の経営現状を分析する
③外部環境を把握する
④行動計画を立てる
本記事で紹介した手順を参考にして、効果的な中計を策定しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
需要予測とは?概要や具体的な手法、成功事例などを解説
需要予測は、自社製品やサービスの売上など、将来の「需要」をさまざまな観点から「予測」することを指します。企業がコストを削減し利益を最大化するためには、需要予測が重要です。 本記事では、需要予測の概要から、種類や手法、事例、課題と対策について…
詳しくみる業績管理の重要性!管理すべき内容や具体的な進め方、ツールを解説
競争が激化する昨今、ビジネス環境で成功するためには「業績管理」が不可欠です。正確かつ効果的な業績管理が実現できれば、市場での競争力向上やリソースの最適化、コスト削減、生産性の向上、決算の迅速化など、企業は多くの利点を享受できるでしょう。 本…
詳しくみるカーブアウトとは?メリットやデメリット、実施プロセスを解説
カーブアウトとは、企業の一部事業を切り離して新会社を設立することです。 株式分割や事業譲渡といった手法を用いるケースが多く、外部からの資金調達や意思決定スピードの高速化を主な目的として実施されます。 本記事ではカーブアウトの概要や目的、メリ…
詳しくみる特例事業承継税制とは?一般措置との違いや申請の流れを解説
特例事業承継税制は、2009年度に定められた事業承継税制の中でも10年間限定の措置として利用可能な制度です。事業承継を検討している中小企業にとっては、より納税の猶予や免除が受けやすい制度となっています。 本記事では、特例事業承継税制の概要に…
詳しくみるQBRとは?効果的な実施手順や達成すべき指標などをを解説
QBRは「四半期ビジネスレビュー」という言葉に和訳され、四半期(3ヶ月)ごとに目標や計画について議論する会議を指します。QBRの効果を最大化するためには、適切な実施手順やトピックを把握した上で開催することが重要です。 本記事では、QBRの効…
詳しくみるアメーバ経営とは?概要やメリット・デメリット、導入プロセス、成功のポイントを解説
アメーバ経営とは、組織を独立採算制の小集団に分割し、各従業員が経営者視点を持って事業を運営する経営管理手法です。従業員のモチベーション向上や迅速な意思決定の促進といったメリットが期待できる一方で、部門間の対立が生じやすいというデメリットもあ…
詳しくみる