• 作成日 : 2025年3月3日

症例報告(論文)の同意書とは?効力や書き方をひな形つきで解説

症例報告とは、症例を学会での報告や論文への掲載の際に、医師や研究者と患者が交わす同意書のことです。

この記事では、症例を論文発表などに利用する場合を想定した症例報告同意書の書き方や注意点について、テンプレートを交えながら解説し、同意書の締結が必要となるケースやその必要性についても触れていきます。

▼症例報告の同意書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードいただけます。

症例報告(論文)の同意書とは?

症例報告同意書は、患者の症例を学会発表や論文に利用する際、患者と医師(または研究者)が交わす文書です。患者が症例の使用に同意する旨と、症例報告に当たって双方で確認しておくべき取り決めが記載されます。

症例報告の同意書は必ず必要?

通院歴や病歴は、個人情報の中でも特に取り扱いに注意が必要な要配慮個人情報に該当します。個人情報保護法第20条では、これらの情報を取得する際、必ず本人の同意を得る必要があると定められています。

第二十条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。

2 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。

引用:個人情報保護法|e-GOV法令検索

特に、病歴や通院歴は患者にとって非常にデリケートな情報です。症例報告によってこれらが広く知られることを懸念する患者も少なくありません。また、前例の少ない症例の場合、患者が特定される恐れがあります。

こうしたリスクを回避するため、同意書に個人情報の取り扱い方法を明記し、患者が安心して協力できる環境を整えることが重要です。

症例報告の同意書を交わすケース

症例報告同意書は、症例を論文執筆や学会発表に利用する際に締結します。
まず、症例報告の内容や目的について説明し、患者に協力を依頼しましょう。
そのうえで、患者が同意書に署名・押印した時点で同意が成立したと見なされます。

なお、患者本人が同意できない場合は、家族が代理で同意することも可能です。

症例報告の同意書のひな形・例文

初めて症例報告同意書を作成する場合、全てを一から作成する必要があります。当サイトでは、最低限記載すべき内容を盛り込んだ症例報告同意書のひな形を用意していますので、こちらを参考に作成しましょう。

症例報告の同意書に記載すべき内容や書き方

ここからは症例報告同意書に記載すべき項目や内容について見ていきましょう。ひな形を見ながら読み進めていただくと理解が深まります。

表題

まずは「症例報告同意書」といった表題を、ページ上部に目立つ形で大きめのフォントで記載しましょう。

宛先

「〇〇医科大学 教授 〇〇 〇〇 様」のように、同意書の提出先である症例報告を行う医師や研究者の所属機関、役職、氏名を明記します。

前文

患者が症例報告に関する説明を受け、症例報告に協力する旨に同意したことを記載しましょう。

説明事項

症例報告の目的、利用方法、同意の取消しが可能な条件および取消しが認められない条件、並びに個人情報の取り扱い方法など、取り決めや注意事項を箇条書きなどで分かりやすく記載しましょう。

同意形成日

患者が症例報告に同意し、同意書に署名・押印した日付を記入する欄を設けましょう。

署名・押印欄

末尾に、患者の住所および氏名の記入欄と押印欄を設け、ここに署名・押印された時点で患者が症例報告に同意したと見なされます。

症例報告の同意書を作成する際の注意点

ここからは症例報告同意書を作成する際、あるいは締結する際に注意すべきポイントについて見ていきましょう。

極力同意書によって合意を形成する

前述の通り、症例のような要配慮個人情報を取得する際は、相手方の明確な同意が必要です。口頭での同意も成立しますが、証拠が残らず後々トラブルに発展する可能性があるため、必ず同意書を用いて患者から同意を得るようにしましょう。

本人から同意が得られない場合はご家族からの同意も可能

症例報告においては、患者本人から同意が得られないケースもあります。本人が同意できない状態の場合、ご家族からの同意があれば症例報告は可能です。また、すでに本人が亡くなっている場合は、ご遺族からの同意を取得しましょう。

所属する研究機関、医療機関、学会などのガイドラインに従う

症例報告同意書を作成する前、または患者やご家族から同意を得る前に、所属している研究機関、医療機関、学会などの規則やガイドラインを必ず確認しましょう。記載すべき内容や取得のルールに沿って同意書を作成することが求められます。

症例報告の同意書の保管期間、保管方法

臨床研究に関する記録は、臨床研究法第12条により厚生労働省が定める期間保管しなければならないとされており、厚生労働省ではその期間を研究終了後5年としています。

ただし、所属機関や学会で別途保管期間が定められている場合もありますので、各ルールに従い保管しましょう。

また、他の書類と同様に後から参照できるようファイリングするとともに、症例報告同意書はデリケートな情報が含まれるため、厳重に管理することが望まれます。

参考:臨床研究法|e-GOV法令検索
参考:臨床研究に関する記録(第12条関係)|厚生労働省

症例報告の同意書の電子化は可能?

症例報告同意書は電子化することも可能です。WordやExcelでファイルを作成し、患者に署名してもらう方法や、電子契約システムを用いて同意を取得する方法があります。

特に、タイムスタンプが付与できる電子契約システムを活用すれば、本人性や非改ざん性が高く確保され、業務効率化にもつながります。

ただし、患者の方がしっかりと内容を確認してから同意できるよう、使い方などをサポートする必要があるかもしれません。

デリケートな情報が含まれる症例報告同意書は取り扱い要注意

患者にとって、病歴や通院歴は非常にデリケートな情報です。症例報告を行う際は、必ず同意書を用いて本人またはその家族との合意形成を行い、協力を得るようにしましょう。また、症例報告の際は、患者が特定されないよう十分に配慮をすることが求められます。


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