- 更新日 : 2024年8月30日
退職勧奨同意書とは?作成するケースや書き方、注意点を解説
退職勧奨同意書とは、従業員と会社間で退職を合意する際に、退職の条件などを記した書面です。退職勧奨は従業員に自主退職を促す行為ですが、同意書を取り交わすことで円満な退職が実現できます。
この記事では、退職勧奨同意書の目的や、発行が必要となるケースについて解説します。記載に関わる注意点も解説しますので、ぜひ参考ください。
目次
退職勧奨同意書とは
退職勧奨同意書とは、企業が従業員に対して自主的な退職を促し、双方で合意した内容を記した書面です。そもそも、退職勧奨は自主的に退職することを勧める行為を指し、従業員が退職勧奨に応じた場合に初めて労働契約が終了します。
同意書を取り交わす目的は、労使トラブルを回避するためです。例えば、どの時点でどのような理由で退職するかを記すことで、事実に反する不当解雇やハラスメントの主張を抑止できます。また、債権債務に関わる精算条項を加えておけば、後になって未払賃金や未払残業代などを請求されるリスクの回避も可能です。
さらに、もう1つのメリットとしては、企業のノウハウや財務情報、顧客情報などを守る効果もあります。従業員は退職すると就業規則に縛られないため、故意でなくとも企業の機密情報を漏らす危険性があります。場合によっては、転職先で結果を出すため、技術情報を流用される恐れもあるでしょう。
しかし、同意書の内容に守秘義務条項や口外禁止条項を設けていれば、万が一訴訟に至った場合でも有力な根拠として利用できます。
退職勧奨と解雇との違いは?
退職勧奨は従業員の意思を尊重して退職を促す方法であるのに対し、解雇は企業側が一方的に労働契約を終了させる方法です。解雇の場合は従業員に承諾の意思表示をする余地はなく、強制力をもって退職させられます。
ただし、解雇には厳しい法律規制が設けられており、退職させるには「客観的合理性」と「社会通念上の相当性」(労働契約法16条)という要件が必要です。
また、少なくとも30日前には解雇予告をしなければならないため、通知後、すぐに解雇はできません。退職勧奨は従業員と企業間の合意で行われる行為のため、これらの法的リスクを回避できるメリットがあります。
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退職勧奨同意書を発行するケース
退職勧奨同意書を発行するケースとしては、以下のようなものがあります。
経営不振や事業再編による人員削減
業績悪化や事業再編に陥った際、人件費を削減して難局を乗り切るケースです。ただし社会全体の景気が後退している状況の場合、従業員から退職の同意が得にくい側面があります。
部門・事業の廃止
採算がとれない部門や事業を対象に、配属中の従業員に対して退職を勧めるケースです。企業全体の増益につながり、抜本的な構造改革が期待できます。
労働者の適性・能力不足
ミスの繰り返しや営業成績が上がらないなど、達成度が著しく低い従業員に対して退職を促すケースです。労使トラブルに発展しやすいため、事前に指導や配置転換などで改善の機会を与える必要があります。
世代交代・体質改善
組織の若返りや体質改善を進めるためのケースです。経営状態に問題ない企業でも、新たな人材を迎え入れて組織再編を図る目的で行われます。
社内トラブルやハラスメント
顧客とのトラブルやセクハラ、パワハラなど、問題を起こした従業員に対して退職を促すケースです。退職者から被害を受けた従業員による訴訟を回避できます。
DX推進による人材のスリム化
DXの導入を進める上で、余剰人員に対して退職を促すケースです。知識が不要なルーティン業務を自動化し、経費削減・業務効率化を図れます。
退職勧奨同意書のひな形
以下のページより、退職勧奨同意書のひな形をダウンロードできます。退職勧奨同意書を作成する際にご活用ください。
退職勧奨同意書に記載すべき内容
退職勧奨同意書は、従業員が自らの意思で退職に応じた際に作成する書類です。前提として、退職勧奨同意書は、従業員が会社側からの「退職勧奨」に「同意」する書面です。そのため、従業員の視点で作成する必要があります。
退職勧奨について双方が同意した内容を明らかにするため、最低でも以下の6つを記載しましょう。
同意書を作成した日付
従業員からどの時点で同意が得られたのかを明らかにするため、作成日を記載します。日付があることで法的に有効な書類として証明できます。
企業名・代表者名
退職勧奨同意書の宛名を記載します。宛名は企業名だけでなく、責任者である代表取締役の氏名と肩書も必要です。
退職勧奨同意書を会社側が用意する場合、従業員の視点で「○○株式会社 代表取締役 ○○ 殿」と記載するよう注意しましょう。
合意退職の確認
企業と従業員が合意した上で雇用契約を解除する旨を記載します。退職が従業員の意思によって決定されたこと、および会社の一方的な解雇ではないことが証明されます。
こちらの文面も、従業員の視点で書かれる必要があるため、「私」や「貴社」といった表現になることに注意しましょう。
清算条項(未払賃金、退職金等)
退職時点における未払賃金や残業代、退職金について記載します。トラブルを回避するために解決金を支払う場合は、その内容も記載しましょう。同意書があれば他に一切の債権債務がないことが証明され、退職後に損害賠償が請求されるリスクを減らせます。
守秘義務、口外・誹謗中傷の禁止
守秘義務、口外・誹謗中傷の禁止は、企業が不利益を受けないための重要な項目です。例えば、退職者によって顧客情報や社外秘などが流出してしまうと、社会的信用が失われる恐れがあります。
特に、秘密情報に触れる機会が多い役員や管理職については、必ずこれらの記載に合意を得る必要があります。
従業員の署名・捺印
退職勧奨合意書は法的に義務付けられた書類ではありませんが、従業員の署名捺印があれば、訴訟に発展した際の根拠として利用可能です。
退職勧奨同意書を作成する際の注意点
退職勧奨同意書を作成する際は、いかに円満に雇用契約を終了できるかが重要です。トラブルを回避するためにも、以下の4つに注意しましょう。
- 署名の強要、脅迫的な行為をしないこと
- 複数人による退職勧奨や長時間に及ぶ面談は行わない
- 退職を目的とした配置転換や業務内容の変更を行わない
- すぐに回答を求めない
退職勧奨合意書は従業員が退職条件に納得をした上で作成する書類です。合意に至るまでの過程で強要したり解雇を盾に脅迫したりすると、合意自体が無効になったり、実質的な解雇とみなされる可能性があります。
脅迫のような明らかな違法行為はもちろんのこと、退職を促すような配置転換や業務内容の変更、即座に回答を求めるといった心理的な圧力を従業員に加えることがないよう注意しましょう。
強引な退職勧奨をせず、円満な雇用契約の終了を
退職勧奨を考える企業にとって、最も避けたいのが退職者との労使トラブルです。記載すべき内容にミスや漏れがあると、後になって退職者から損害賠償を請求されたり経営にダメージを受けたりするなどのリスクを伴います。
今回ご紹介したテンプレートや注意事項を確認し、従業員が納得して退職に応じられる同意書を準備しましょう。退職勧奨同意書は法的に義務付けられていませんが、作成することで円満な雇用契約の終了を実現できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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