- 作成日 : 2025年1月30日
施術同意書とは?効力や書き方・例文をひな形つきで解説
「施術同意書」は、施術に関して知ってもらいたい事項を顧客に確認してもらい、同意があったことを形に残すために作成する文書です。当記事では、この施術同意書の書き方やポイントを具体例とともに説明しています。美容サロンや整体院などの運営を検討している方は、トラブル予防のためにもぜひご一読ください。
目次
施術同意書とは?
施術同意書とは、サービス提供者が顧客に対して施術を行う際、その内容やリスクについて説明し、顧客からの同意を得るために使われる文書です。
この文書には施術の内容や期待される効果、副作用や潜在的なリスク、施術後のケアに関することなど、さまざまな事柄が記されます。
料金やキャンセルポリシーなどが記載されることもあり、顧客はこれらの情報を確認したうえで同意の署名を行います。
なお、施術同意書にサインしてもらったからといって、事業者側の免責が保証されるわけではありません。特に、サービス提供に附随して違法行為や重大な過失があった場合は、同意書があっても責任を免れることはできないでしょう。
とはいえ、そのほかの場面においては、施術同意書が法的な証拠として有益であることに変わりはありません。
施術同意書はなぜ必要か
施術同意書の必要性については、いくつかの理由から説明することができます。
- 事業者側による説明義務の履行を証明するため
- 施術効果には個人差があるなど、完璧な結果を保証するものではないことを認識してもらうため
- 施術に伴う副作用などを顧客に理解してもらい、施術によるリスクを低減するため
- 施術後のクレームやトラブルを防止するため
このように、施術同意書は顧客とサービス提供者の双方にとって重要な役割を果たす文書です。顧客にとっては施術の内容やリスクを事前に理解することで不安を軽減できますし、サービス提供者にとっては説明義務を果たしたことの証明となり、潜在的な法的リスクを軽減することにつながります。
施術同意書を締結するケース
施術同意書はあらゆるビジネスで用いられるわけではなく、特定の業態、とりわけ「美容サロンにおいて施術を行うとき」「整体院において施術を行うとき」「医療行為をするとき」などで作成されることがほとんどです。
以下、これら具体的なケースについて詳しく見ていきます。
美容サロンにおいて施術を行うとき
美容サロンでは、以下のような施術を行う際に同意書の作成が推奨されます。
- 永久脱毛やフェイシャル、ケミカルピーリングなど、肌に直接的な影響を与える施術を行うケース
個人の肌質や体質によって反応が異なる可能性があり、まれにアレルギー反応や炎症などのトラブルが発生することがあるため - まつ毛エクステンションやネイル施術など、接着剤や化学物質を使用する施術を行うケース
使用する材料に対するアレルギー反応が起こる可能性があることや、施術後の注意事項が多岐にわたることから、事前説明と同意が重要となるため - 新しい施術方法や最新の美容機器を使用するケース
施術の効果や潜在的なリスクについて十分な説明をして、理解を得る必要があるため
このように、美容サロンにおいては主にアレルギー反応や炎症などのリスクを認識してもらうため、施術同意書が作成されます。
整体院において施術を行うとき
整体院では直接身体に触れて行う施術が中心となることから、以下のような場合に施術同意書が作成されます。
- 骨格矯正や関節の調整など、身体に物理的な力を加える施術を行うケース
特に既往症のある方や高齢者、妊婦の方に対する施術では、より慎重な対応が求められるため - ストレッチや運動療法など、顧客が能動的に参加する施術プログラムを提供するケース
適切な運動強度や注意点について明確な合意を形成するため - 長期的な施術計画を立てるケース
目標や予想される経過、費用などについて明確な合意を得ておき、後々のトラブルを防ぐため
医療行為をするとき
医療機関における施術同意書は、以下のような場合に必要となります。
- 手術や侵襲的な処置を行うケース
詳細な説明と同意書の取得が必要となる
施術の目的や方法、予想されるリスク、代替治療の可能性などを含めて記載する - 新しい治療法や臨床試験的な治療を行うケース
患者の権利保護と医療機関の法的保護の両面で重要な役割を果たす - 美容医療の施術を行うケース
ボトックス注入やヒアルロン酸注入などの美容処置では、効果の持続期間や起こりうる副作用についての説明と同意が重要となる
ここまで施術同意書を締結するケースの具体例を挙げましたが、常に同意書が必須というわけではありません。法律上の義務として作成するのではなく、多くの場合は当事者双方のリスクを低減するために作成されます。
施術同意書のひな形・例文
施術同意書を作成するときは、ひな形を活用すると効率的です。こちらのページからダウンロードができますので、一度チェックしてみてください。
細かな項目については、各社が提供する施術内容に合わせて調整する必要がありますが、全体の構成は流用できるでしょう。
施術同意書に記載すべき内容や書き方
施術同意書を作成するときは、以下の点に言及できているかを確認してください。
- 施術内容
- リスクや副作用について
- アレルギーや既往歴などの確認
- 施術後の注意事項
- 免責事項
- 同意の確認
そして当然のことながら、同意書の内容がひな形のままではなく、自社が提供する施術内容に即したものであること、その施術に伴うリスクなどが反映できているかをチェックしなくてはなりません。
施術内容
施術内容に関する記載は、施術同意書の根幹となる重要な部分です。
例えば、ひな形では「表明事項」として、次のように施術が医療行為ではないことを明確にしています。
施術は、治療や診断を目的とした医療行為とは異なり、いかなる症状についても医療行為を代替するものではないことを理解し、治療や診断を目的として貴院の施術を受けないことを表明します。
施術が医療行為ではないことを明記する理由は、利用者に誤解を与えないためです。特に整体やリラクゼーションの施術では、治療効果を期待して来店される方も多いため、施術の目的や限界を明確にします。
また、これに加えて以下の点にも言及しておくとよいでしょう。
- 具体的な施術の内容や手順
- 使用する機器や製品の説明
- 施術にかかる時間
- 料金に関する記載
リスクや副作用について
リスクと副作用に関する説明は、トラブル防止の観点から特に重要です。
具体的には、次のように記載する例が挙げられます。
- 貴院施術中に体調が悪くなった場合には、直ちに施術を中止してもらうようスタッフに申告します。
- 施術後の効用、効果は必ずしも絶対的ではなく、個人ごとに違いがあることや、副作用が発生することもあることを理解し、施術後のすべての事象に対して貴院が責任を負うことはできないことに同意します。
この例では、施術中の体調変化への対応(1)と、効果の個人差や副作用の可能性(2)について言及しています。
さらに、施術内容に合わせて、以下の点も記載しておくとよりよいでしょう。
- 副作用が出る可能性が高い体質や条件
- 重篤な副作用が出る可能性
- 副作用が出たときの対応方法
アレルギーや既往歴などの確認
施術同意書におけるアレルギーや既往歴の確認は、安全に施術を行ううえで大きな役割を果たします。
例えば、次のように健康状態に問題がある場合や、アレルギーなどの症状が出ている場合には、施術中止とする可能性があると言及しておくのがよいでしょう。
- 貴院の施術を受けるにあたり、健康状態に何ら問題がないことを表明し、万が一健康状態に問題がある場合には、主治医の承諾を得ていることを表明します。
- アレルギー、痛み、かゆみその他施術を中止すべき症状や事情があると貴院が判断した場合、施術を提供できないことがあることに同意します。
なお、“健康状態に何ら問題がない”という表現については、施術内容に合わせて調整することをおすすめします。施術に影響を与え得る可能性がある、具体的な病状を例示するなど、より具体化していくと効果的です。
施術後の注意事項
より安全を期すため、施術後に配慮すべき項目を具体的に記載しておきましょう。
例えば、次のように悪影響が考えられる行為などを列挙します。
- 施術後の制限について
- 激しい運動の制限
- 入浴や飲酒に関する制限
- 経過観察のポイントについて
- 通常起こりうる反応の説明
- 警戒すべき症状の具体例
- 異常を感じた場合の連絡方法
免責事項
免責事項は、事業者側を法的なリスクから守るために設けておきたい条項です。
例えば、次のように記載する書き方が考えられます。
貴院施術中に負傷や疾病などが発生した場合、貴院およびスタッフその他の関係者は一切の責任を負わないことに同意します。
貴院施術中に発生した盗難や紛失について、貴院およびスタッフその他の関係者は一切の責任を負わないことに同意します。
施術後の怪我、痛み、体調不良に関して、損害賠償や返金等は、いかなる理由であってもできないことに同意します。
ただし、免責事項が役立つのはトラブルが発生した場面ですので、より慎重に内容を考える必要があります。単に「一切の責任を負わない」とするのではなく、免責範囲をより具体化し、合理的な部分に絞るなどの工夫もするとよいでしょう。
同意の確認
表題にはわかりやすく「施術同意書」と記載したり、前文で次のように記載したりして、何のための文書であるのかを簡潔に示します。
私は、以下の内容を十分に理解し、疑問点については質問し、説明を受け納得した上で、貴院の施術を受けることに同意します。
そのほか、同意を示す顧客の住所・氏名、同意書の作成年月日などの記載欄を設け、必要に応じて「個人情報の取り扱い」や「解約」「返金」に関することなども記載しておきましょう。
施術同意書を作成する際の注意点
施術同意書を作成するときは、専門用語の多用は避け、平易な表現を用いて顧客が理解しやすいようにしてください。
また、施術同意書のほかに、問診票や医師の診断書が必要となるケースもあります。「同意を得たから何をしてもいい」とはならないため注意してください。
なお、法的なトラブルを回避するため、施術同意書においても、顧客に署名または記名押印をしてもらうことが望ましいです。
これらがないからといって文書が無効となることはありませんが、「この施術同意書は勝手に作られたものだ。」などと主張されるおそれがあります。
大きなリスクが想定されるときは、一度弁護士にチェックしてもらい、相談しながら施術同意書の内容を考えていくのがおすすめです。
施術同意書の保管年数や保管方法
施術同意書の保管年数は、一般的には「施術完了から5年間」です。これは、カルテの保存期間が法令により5年間と定められていることに由来しています。そのため、少なくとも5年間は残しておくことが望ましいですし、身体への影響が比較的長く続く施術であれば、より長い期間保管しておくことも考えるべきです。
保管方法については、個人情報保護の観点から、施錠可能なキャビネットでの保管が基本といえます。災害時のバックアップとして、スキャンデータも保存しておくとよいでしょう。
施術同意書の電子化は可能?
施術同意書の電子化は法的に可能であり、近年は業務効率化のために導入する事業者も増えています。
電子化のメリットとして挙げられるのは、保管スペースの削減や検索性の向上、複数店舗での情報共有が容易になるなどの点です。
ただし、書面における署名または記名押印と同等の効果を得るには、電子署名法に準拠した運用が必要となります。具体的には、なりすまし防止のための本人確認、データの改ざん防止措置、タイムスタンプの付与などです。
各事業者が独自にシステムを構築するのはハードルが高いですが、電子契約システムなどを利用すれば、すぐにでも電子化を実現できます。
施術同意書の作成がリスク管理につながる
施術同意書の作成を、単なる形式的な行為と捉えてはいけません。顧客の安全を守り、自社のリスクを軽減するうえで、施術同意書は重要な役割を担う文書です。
作成にあたっては、ひな形を使いつつもそのまま流用するのはなく、提供する施術内容に合わせたものへと調整していきましょう。
また、より安全で信頼される施術が提供できるよう、定期的に内容を見直すなどして改善を重ねていくことが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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