- 作成日 : 2024年12月27日
ガバメントクラウド運用管理補助委託契約とは?契約書のひな形や注意点も
ガバメントクラウドはデジタル庁が普及を推進している自治体向けの基幹業務システム環境サービスのことです。一般的には民間のガバメントクラウド運用管理補助者と契約を結んで運用します。今回はガバメントクラウド運用管理補助委託契約の概要や締結時の注意点、ひな形についてご紹介します。
目次
デジタル庁によるガバメントクラウドとは
デジタル庁によるガバメントクラウドとは、国が整備した政府共通の全国的なクラウドサービスを用いた自治体や公共団体向けの基幹業務システム環境のことです。「政府クラウド」「Gov-Cloud」と呼ばれることもあります。
これまでは自治体や団体ごとに異なるサービスが利用されていたのですが、改正や改修時に個別対応が必要となり人的・コスト的負担が増大していました。またシステムごとの差異の調整をしなくてはならずクラウド利用が進んでいなく、住民サービスを向上するための取り組みが全国的に普及しにくいといった課題を抱えていました。
ガバメントクラウドサービスを提供しシステムが統一・標準化することで、コストが削減できる、同一システムによってアクセスがしやすくなる、セキュリティが向上する、運用の透明性が担保しやすくなるなどのメリットがあります。
ガバメントクラウドとして利用可能なクラウドサービスは、AWS(Amazon Web Services)、Google Cloud、Microsoft Azure、Oracle Cloud Infrastructure、さくらのクラウドなどがあります。
地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準
画像引用元: 地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準【第2.1版】
デジタル庁ではガイドラインとして『地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準』を公開しており、以下のようなガバメントクラウドを利用するための要件がまとめられています。
- 提供方式
- 機能
- ガバメントクラウドの利用権限
- クラウド利用料
- 地方公共団体が契約締結すべき相手
- ガバメントクラウドに保存するデータの管理責任
- ガバメントクラウドに構築できるシステム
2024年12月の時点では、7月5日に改定された【第2.1版】が最新となっています。ガバメントクラウドの利用に関する基準はまだ確定していない内容も多く、定期的に更新されます。導入をお考えの際は事前に最新の利用基準をご確認ください。
ガバメントクラウド運用管理補助者とは
画像引用元: 地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準【第2.1版】
地方公共団体とガバメントクラウド運用管理補助者は、ガバメントクラウド個別領域のサービス運用管理を行います。
運用管理補助者の役割としては、以下のような業務が挙げられます。
- ネットワーク設計、構築
- 運用やトラブルシューティングの監視、記録
- 運用やトラブルの報告
- 運用手順のマニュアル化、改訂
- セキュリティ対策
こういった業務を行うことで、運営方法やシステムの改善点が見つかり、システムのメンテナンスや改良を円滑に進めることができます。
ガバメントクラウド運用管理補助者の利用方式
ガバメントクラウドのシステム管理や運用を担当する運用管理補助者の利用方式には「ガバメントクラウド単独利用方式」と「ガバメントクラウド共同利用方式」の2種類があります。以下でこれらの違いを詳しくご説明します。
ガバメントクラウド単独利用方式
ガバメントクラウド単独利用方式は、自治体が一つのアカウントを持ち複数のシステムを構築・運営する方法です。
事業者と単独利用方式で委託契約を結ぶ場合、自治体のさまざまな住民サービスをまとめて依頼できる、自治体主導で事業者の操作権限を設定できる、自治体で取り決めたルールを採用しやすいといったメリットがあります。
ただし、システムを自治体主導で管理するとなると、ルール策定までの手間も時間もかかってしまいます。また利用するクラウドサービスによっては単独利用ができない、統一規格としてほかの自治体と連携しにくい可能性があるといったデメリットも存在します。
ガバメントクラウド共同利用方式
ガバメントクラウド共同利用方式はパッケージを提供する事業者のアカウントでシステムを構築して該当する環境を利用する方式です。事業者は複数の自治体のシステム環境を担当するのが一般的で、自治体はSaaS(Software as a Service)のように利用できてアカウント管理の手間もかかりません。
デジタル庁が推奨しているのはこの共同利用方式ですが、ガバナンス面で自治体の権限が弱まることを懸念する声もあります。
ガバメントクラウド運用管理補助委託契約とは
ガバメントクラウド運用管理補助委託契約は地方公共団体がデジタル庁の定めた基準に基づき、ガバメントクラウドの運用や管理に関する業務を外部事業者に委託する際に締結する契約です。
これは地方自治体が効率的かつ安全にクラウドサービスを活用するためのもので、標準準拠システムだけでなくガバメントクラウドの操作に関係する業務を委託する場合は、ガバメントクラウド運用管理補助委託契約を結ぶ必要があります。
ガバメントクラウド運用管理補助委託契約の対象となる業務には、以下のようなものが挙げられます。
- 標準準拠システムを運用するための環境提供
- 標準準拠システム環境との接続
- 運用最適化のためのコンサルティング業務
- その他ガバメントクラウドの管理コンソールを通して管理・確認・運用をする業務
ガバメントクラウド運用管理補助委託契約ひな形
ガバメントクラウド運用管理補助受託契約のひな形は、今後デジタル庁から提供される予定です。提供が開始されましたら、こちらの記事でもご案内いたします。
ガバメントクラウド運用管理補助委託契約を締結するときの注意点
ここからはガバメントクラウド運用管理補助委託契約を締結する際に注意したいポイントについて見ていきましょう。
責任分界点を把握しておく
画像引用元:ガバメントクラウド概要解説_3 概要 デジタル庁
ガバメントクラウドにはクラウドサービス事業者(ベンダー)、システム開発・運用事業者、デジタル庁という3つの責任分界点があります。
例えばインフラ層はデジタル庁、プロダクト管理はシステム開発・運用事業者というように、どの領域で誰の責任となるかが異なりますので、しっかりと把握しておきましょう。
セキュリティ機能の確認
ガバメントクラウドで提供されるセキュリティ機能は、CDN (Content Delivery Network) 、WAF (Web Application Firewall)の2種類です。これら以外のセキュリティ機能を利用したい場合は、自治体が独自に用意しなければなりません。
ガバメントクラウドの利用方式や注意点を知り契約・管理・運用に役立てよう
今回はガバメントクラウドの基本情報や利用基準、利用方式、契約について解説しました。政府としては自治体同士で連携しやすい共同利用方式を推奨していますが、セキュリティやガバナンス面から単独利用方式を選ぶケースも少なくありません。
いずれにしても事業者への委託を考えている場合、必要な項目が記載された契約書を用いて契約を締結しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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