- 作成日 : 2024年11月26日
不動産の契約書作成代行とは?依頼先や費用相場、違法ケースを解説(ひな形付き)
不動産の契約書作成代行とは、不動産の取引に関わる書類の作成を専門業者が代行することです。不動産の売買契約書や重要事項説明書の作成には専門的な知識が求められ、手間や時間もかかります。
本記事では、業務を効率化したい不動産仲介会社や個人間で売買取引する方に向けて、不動産の契約書作成代行の依頼先や費用について詳しく解説します。
目次
不動産の契約書作成代行とは?
不動産の契約書作成代行とは、不動産売買契約書や重要事項説明書を、外部の専門家や業者が代行して作成するサービスです。
不動産売買契約書や重要事項説明書は、不動産を売買取引する際に、取引を仲介する不動産会社が作成しなければならない書類です。不動産会社をとおさずに個人間で不動産を売買する際も、売買契約書を用意しておくほうがのちのトラブルを防げます。
これらの書類を不備なく作成するには、専門的な知識や労力が必要です。自社に契約書作成のノウハウやリソースが不足している場合は、契約書の作成代行が有効な選択肢の1つといえるでしょう。
不動産の契約書作成代行には資格は必要か
不動産取引の契約書作成を代行できるのは、法的な資格をもつ専門家に限られます。契約書の作成代行が法的に認められているのは、行政書士または弁護士のみです。資格をもたない人物が契約書作成を代行するのは、違法行為とみなされます。
一方、重要事項説明書の作成代行であれば、とくに資格や認可は必要ありません。ただし、高額な取引となる不動産売買において重要事項説明書に間違いや記載漏れがあると、大きなトラブルに発展しかねません。宅地建物取引士の資格取得者や実績豊富な業者に依頼したほうが、確かな品質のものを作成してもらえるでしょう。
不動産の契約書作成代行の主な依頼先
不動産の契約書作成を代行してもらうには、行政書士か弁護士への依頼が必要です。具体的には、不動産業務に詳しい行政書士事務所や法律事務所が、不動産契約書の作成代行サービスを提供しています。
不動産契約書の作成代行において、行政書士事務所と法律事務所の特徴を解説します。
行政書士事務所
不動産売買契約の作成代行サービスは、不動産業務に強い行政書士事務所が提供しているケースが多くみられます。
行政書士は、官公庁に提出する契約書の作成や手続きを行う専門家であるため、法的に不備のない書類を作成してもらえます。不動産の登記代行や法律相談などは依頼できませんが、契約書の作成のみであれば弁護士よりも費用はリーズナブルです。
不動産業務に特化した事務所であれば、不動産調査や重要事項説明書作成にも対応しているところも多いです。
法律事務所
複雑な不動産取引であったり、トラブルが内在していたりする場合は、法律事務所に売買契約書の作成代行を依頼するのがおすすめです。
法律全般の専門家である弁護士に売買取引をサポートしてもらえるため、トラブルを未然に防ぎ、法律上問題のない内容で売買契約を締結できます。土地や建物、価格・条件面などで不利益を被るような問題点が隠れていないか確認してもらうことも可能です。
ただし、すべての法律事務所で不動産の契約書作成代行を承っているわけではなく、費用も高額になる傾向があります。
不動産の契約書作成で代行する主な内容
一口に不動産の契約書作成代行といっても、代行できる範囲や内容は提供元によって異なります。おもな代行メニューとしては、以下の3つが代表的です。
- 不動産売買契約書の作成
- 重要事項説明書の作成
- 物件調査
それぞれのサービス内容を詳しく説明します。
不動産売買契約書の作成
不動産の取引が成立したときには、のちのトラブルを避けるために、契約内容や条件を明記した売買契約書を交わすのが一般的です。
トラブルやリスクを防ぐには、取引内容や個々の状況に応じた適切な不動産売買契約書は作成しなければなりません。不動産や法律の知識がなければ、リスク軽減につながる契約書を作成できないため、専門家に依頼するケースが多いです。
重要事項説明書の作成
不動産契約書の作成代行を提供する専門家のなかには、重要事項説明書の作成も請け負うケースも多いです。
重要事項説明書の作成は、不動産取引を仲介する不動産会社に義務付けられており、物件や取引内容に合わせてその都度作成しなければなりません。不備があれば宅地建物取引業法違反として罰則等を受ける可能性もあるため、不動産会社にとっては負担が大きいものといえるでしょう。
個人間での取引の場合、重要事項説明書は法的に必須ではありません。しかしローンを組んで物件を購入する場合は、融資審査の際に重要事項説明書の提出が求められます。
重要事項説明書の作成には知識や労力が求められるため、専門家に依頼することでよりスピーディーに品質の確かなものが手に入れられます。
物件調査
重要事項説明書の作成代行と併せて、物件調査まで依頼できる専門家も多く見られます。
不動産の売買には、適正な価格や物件の詳細を明確にするための不動産物件調査が欠かせません。十分な調査スキルがなければ調査に誤りや漏れが生じ、契約後に物件の不具合が発覚したり、当事者が不利益を被ったりする恐れがあります。
物件調査をプロに代行してもらうと、不動産会社の負担は軽減され、トラブルの回避にもつながるでしょう。
不動産の契約書作成で代行が認められていない内容
不動産業務に必要な契約書や重要事項説明などの書類を作成代行してもらう場合、なかには代行が認められていない行為もあります。
- 重要事項説明の代行
- 契約書の署名・捺印
これらの行為は、仲介する不動産会社や契約の当事者自身が行わなければ違法とみなされるため注意が必要です。
重要事項説明の代行
不動産売買を仲介する不動産会社には、買主に対する口頭での重要事項説明が義務付けられていますが、説明を業者に代行してもらうことは認められていません。
買主に対して重要事項説明を実施する人物は、仲介する宅地建物取引業者に所属している宅地建物取引士でなければならないと宅地建物取引業法に定められています。
重要事項説明書の作成自体は第三者への委託が可能ですが、重要事項説明を自社に所属していない宅建士に代行してもらうことはできません。
契約書の署名・捺印
契約書への署名や捺印は、契約者本人の意思を示す重要な行為であるため、代行を依頼できません。代行された署名では、契約書の法的な有効性が損なわれたり、責任の所在が不明確になったりするリスクがあります。
ただし、やむを得ない事情により契約手続きに契約者本人が立ち会えない場合は、代理人の選任が認められています。契約手続きを代理人に委任するには、付与する権限を明白に記した委任状や、本人や代理人の本人確認書類などの確認が必要です。
不動産の契約書作成代行を依頼するメリット
不動産の契約書作成代行を行政書士や弁護士に依頼すると、以下のようなメリットを得られます。
- トラブルを回避できる
- 生産性が向上する
- 個別のニーズに対応できる
それぞれを詳しく見ていきましょう。
トラブルを回避できる
不動産の売買契約書や重要事項説明書の作成を専門家に代行してもらうと、不動産取引におけるトラブルを最小限に抑えられるメリットがあります。
専門知識やノウハウを活用して作成された正確な書類で契約を締結できるため、当事者間での解釈の食い違いを防げます。
法的に問題のない契約書や重要事項説明書を用意したいのであれば、不動産取引における実績が豊富な専門家に代行を依頼しましょう。
生産性が向上する
不動産仲介会社が契約書作成を専門家に外注すると、生産性の向上に期待できます。
契約書や重要事項説明書の作成に使っていた従業員のリソースを、営業活動に注力させられるため、会社全体としてよりよい成果が狙えるでしょう。
不動産業界は、お客様の都合に合わせた営業活動が求められるうえに、契約や物件に関わる書類作成にも多くの時間を取られます。書類作成の外注化によって業務効率化が進み、利益に直結する営業活動にリソースを割くことが可能です。
個別のニーズに対応できる
案件ごとの個別ニーズに対応した書類を作成できる点も、契約書作成代行のメリットです。
専門知識をもったプロが、当事者の要望や物件状態などを踏まえて法的に適切な文言を組み入れてくれるため、取引内容を反映した契約書が手に入ります。とくに複雑な案件では、抜け漏れやあいまいな表現などがあると、当事者間の誤解を招き契約書の効力が発揮されない恐れも出てくるでしょう。
汎用的な契約書を自作するよりも、個別の取引内容にマッチした契約書のほうが、より一層リスクの少ない取引につながります。
不動産の契約書作成代行を依頼するデメリット
契約書作成代行を依頼するデメリットとしては、費用がかかる点があげられます。
契約書作成代行を利用すると、専門家による質の高い契約書を提供してもらえる一方で、1件ごとに対価を支払わなければなりません。自社で作成する場合にくらべ、書類作成にかかるコストは高くなってしまいます。
また専門家によって、代行できる範囲やサービス内容は異なります。自分に合った依頼先を選定する手間がかかる点もデメリットといえるでしょう。
不動産の契約書作成代行の費用相場
不動産の契約書作成や物件調査の代行を依頼したときの費用相場を見ていきましょう。
依頼内容 | 費用の相場 |
---|---|
不動産売買契約書の作成 | 1万5,000~10万円 |
物件調査+重要事項説明書の作成 | 10万~20万円 |
物件調査のみ | 5万~10万円 |
不動産の契約書作成にかかる費用は、依頼先や依頼内容によって大きく変動します。契約書作成だけでなく、物件調査と重要事項説明書の作成代行をセットにすると割安になるメニューを提供するケースもあります。
不動産の契約書の作成代行を依頼する流れ
不動産の契約書作成代行を依頼するときの一般的な流れをみていきましょう。
- 依頼先の選定
- 打ち合わせ・見積もり
- 作業開始
- 内容確認・修正
- 納品
まずは自社が代行を依頼したい内容を明確にし、依頼先の選定を行います。対象不動産があるエリアに対応可能な専門家を探しましょう。
依頼したい専門家に問い合わせをすると、依頼内容をヒアリングされ、費用の見積もりを提示してもらえます。正式に発注すると作業が開始され、必要に応じて内容を修正してもらうことも可能です。
不動産の契約書作成代行を依頼する際の選び方
不動産の契約書作成代行を依頼するときは、以下のポイントに着目して依頼先を選びましょう。
- 対応業務
- 不動産代行サービスの実績
- 納期や対応力
それぞれを詳しく説明します。
対応業務
不動産の契約書作成代行は、提供元によって対応業務の内容はさまざまです。たとえば、「不動産の物件調査も請け負える」「複雑な取引やトラブルにも対応できる」といったように、行政書士や弁護士事務所によって対応可能な業務に違いがあります。
そのため依頼先を選定するときは、「自社のどの工程が業務効率を落としているのか」「どのようなスキルが不足しているのか」を考え、求めるサービスを明確にしていきましょう。
契約書作成代行サービスの提供を、宅建業者のみ、もしくは個人のみに限定している場合もあるため注意が必要です。
たとえば、代行業者によってサービス内容には以下のような違いがあります。
- 売買契約書作成のみ代行する
- 契約書作成・物件調査+重要事項説明書作成までがセットになっている
- 不動産業務の事務作業全般に対応できる
不動産代行サービスの実績
不動産の契約書作成を代行してもらうのであれば、不動産における代行サービスの実績が豊富な専門家を選びましょう。
不動産業務における書類作成や物件調査には、専門知識やスキルが必要です。実績が豊富な専門家のほうが、正確性が求められる契約書や重要事項説明書の作成を安心して任せられます。
一口に行政書士や弁護士といっても、それぞれ得意分野が異なるため、不動産業務に強みをもつ事務所を選択するようにしましょう。
納期や対応力
急ぎで作成したい契約書がある場合、希望する納期に対応できるかが重要です。なかには、「発注の翌日に最初のドラフト(下書き)を送付」というスピーディーさがウリのケースもあり、依頼先によって納期はさまざまです。
また修正対応が可能な期間も、「1週間」や「3か月」など差があります。追加の相談やトラブルが発生したときに、どのような対応をしてもらえるのかも事前に確認しておきましょう。
不動産業界の契約書の例、ひな形
マネーフォワード クラウド契約では、不動産業務に役立つさまざまな契約書のひな形がダウンロード可能です。
賃借権付きの土地や通常の土地における売買契約書や、家具や什器などが対象となる動産売買契約書、建物や動産の貸し借りをする際の賃貸借契約も用意しています。
個別の事例に対応するにはカスタマイズが必要ですが、契約書に記載すべき項目がわかるためぜひ参考にしてください。
不動産の契約書作成代行で取引のトラブルを回避しよう
不動産の契約書作成代行は、不動産取引に関わる契約書などの重要書類を、専門家に作成してもらうサービスです。契約書作成代行を依頼することで、不動産会社の業務効率や、取引の安全性が向上するメリットがあります。
契約書の作成には専門知識やスキルが求められます。不動産に強い行政書士や弁護士に依頼すると、取引上のトラブルをより防ぎやすくなるでしょう。
対応業務の内容はそれぞれの代行業者によって異なります。費用だけでなく、実績や納期などにも着目して依頼先を選びましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
委任とは?委託・代理との違い、委任者の義務、委任状などを簡単に解説
委任とは、一定の法律行為を他人に依頼し代わりに行ってもらうことです。日常的な手続でもよく耳にする言葉ですが、企業間でも委任契約は結ばれることがあり、委任には一定のルールがあります。 この記事では、委任と委託や代理の違い、委任者の義務、委任状…
詳しくみる定款を変更する際の書き方のポイントや手順を解説
創業当初定めた定款の内容に変更が生じることもあるでしょう。事業範囲が広がったり社名が変わったり、様々なケースが考えられます。株主総会での承認を経て変更ができるところ、実務上は株主総会議事録の作成も行わなければなりません。 定款変更があったと…
詳しくみる二重価格表示とは?8週間ルールや不当表示の事例を解説
二重価格表示とは、販売価格のほかに通常価格を記載する表示方法です。二重価格表示自体は問題ありませんが、表示方法によっては消費者に誤認を与え、景品表示法に違反する不当表示にあたる場合もあります。 本記事では、二重価格表示の概要や景品表示法によ…
詳しくみる契約審査は属人化しやすい?リスクや防止策を解説
企業で法務を担当される方の共通の悩みとして挙げられるのが契約審査の属人化ではないでしょうか。大企業であればともかく、中小企業で法務担当者の数も少ないような場合は特に俗人化が発生しやすく、契約審査を初めとする法務分野におけるトラブルやミスが不…
詳しくみる債務不履行とは?成立要件や損害賠償請求の方法、時効などをわかりやすく解説
債務不履行とは、契約上の義務が果たされないことを指します。ただし、債務不履行が成立するには要件があるため、注意が必要です。 本記事では、債務不履行の概要や債務不履行の種類、債務不履行が成立する要件などについて解説します。債務不履行による損害…
詳しくみる商号とは?屋号・商標との違いや決め方・ルールについて解説!
商号は、企業や個人事業主が営業活動を行う際に使用する名称です。商法においては、登記された会社の名称を指します。法人は定款内で規定した商号の登記が必須です。 商号を決める際は、一定のルールがあります。本記事では、商号とは何か、商号と屋号や商標…
詳しくみる