- 作成日 : 2021年11月30日
2021年1月施行の著作権法改正をわかりやすく解説!
近年は海賊版による被害が拡大しており、それに対する世間の注目度も高まっているため、著作権法が改正されました。改正法は2021年1月に施行されましたが、著作物の海賊版を作成・販売している人でなくても注意すべき項目があります。ここでは改正の内容をわかりやすく解説しますので、法に抵触することのないよう十分気を付けましょう。
著作権法の改正目的とは?
著作権法は、著作物の公正な利用や著作者・著作権の保護を図るための法律です。
しかし、漫画や雑誌などの海賊版による被害が拡大しており、その権利や利益が守られていませんでした。権利者団体による調査・推計によると、一部の海賊版サイトだけでも3,000億円分もの出版物が無料で読まれており、漫画家や出版社の売上が20%も減ったとされています。
国内最大のリーチサイト(侵害コンテンツのリンクを集約したWebサイト)では、摘発までの1年間だけで700億円以上の被害が生じていました。
これだけ目立ったWebサイトであれば個別に対応して閉鎖させることもできますが、世の中には多くの海賊版サイトがあり、漫画以外にもゲームや新聞、専門書、写真集など、さまざまな分野で被害が発生しています。
そのため法整備によってルールから変える必要があり、改正著作権法が2020年6月に成立し、2021年1月1日に施行されました(一部は2020年10月1日に施行)。
参考:「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律 御説明資料」(文化庁)
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著作権法改正のポイント
改正著作権法のポイントは、以下のとおりです。
| リーチサイト対策 | リーチサイトが多数存在し、クリエイターなどに大きな被害が生じていた | サイト運営者だけでなく、リンクを提供した者にも刑事罰が科せられるようにした |
| 違法ダウンロード | 違法にアップロードされたコンテンツと知りつつダウンロードする行為の規制は、音楽や映像作品に限られていた | 規制対象を漫画や書籍など、著作物全般に拡大した |
| 証拠収集手続の強化 | 裁判所が、侵害立証に必要な書類の提出命令を出すための判断を下すのが難しかった | 侵害立証に必要かどうかを判断するため、書類を見ることができるケースが拡大された |
| アクセスコントロールの保護 | ライセンス認証を不正に回避する行為等に関して著作権法の規制が及んでいなかった | アクセスコントロールの定義規程を改正し、著作権法で不正なシリアルコード提供に対する規制も可能にした |
著作権法改正に併せて、プログラム登録特例法も改正されています。
この法律は、プログラム著作物の特殊性が高いことを鑑み、著作権法の特例を設けた法律です。改正によって、係争中のプログラム(著作物)と事前に登録しておいたプログラムが同一であることの証明を請求できるようになりました。つまり、訴訟における立証をスムーズにするための改正というわけです。
ここからは、著作権法の改正についてもう少し詳しく見ていきます。
リーチサイト対策
海賊版に対処するために、リーチサイト対策が強化されています。
大きな改正点は、以下の2点です。
- リーチサイトの運営行為を刑事罰の対象とすること
- リーチサイトへのリンク掲載行為を著作権侵害とみなし、民事上及び刑事上の責任を問えるようにする
侵害コンテンツとは、違法にアップロードされた著作物等のことです。
前者はサイト運営者に対する規制で、後者はリンクを提供する者に対する規制です。サイトを運営していなくても、リンクを提供するだけで刑罰に科される可能性があります。
運営者には刑事罰として5年以下の懲役または500万円以下の罰金、リンク提供者には刑事罰として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が設定されました。行為が悪質な場合は、数年間刑務所に入る可能性があることを覚えておきましょう。
なお、これは親告罪なので、被害者が告訴しなければ処罰されません。
侵害コンテンツのダウンロード違法化
海賊版対策のもう1つの柱が、「侵害コンテンツのダウンロード違法化」です。
これは一般ユーザーにも関係する内容ですので、しっかりチェックしてください。
違法にアップロードされたものと知りつつダウンロードすることを違法化し、刑事罰も設けられました。音楽や映像に関してはすでに実施されていますが、法改正により対象を漫画や書籍など著作物全般に拡大しています。
一定の要件を満たすと、目的が私的使用であったとしても違法となります。ただし、数コマ程度の漫画といった軽微なものは対象外ですし、スクリーンショットで違法画像が写り込んだとしても、それだけでは違法にはなりません。また、二次創作やパロディも対象外です。
なお、刑事罰が科されるのは「正規版が有償で提供されている」「継続的または反復してダウンロードしている」という要件も満たした場合です。最大で2年の懲役または200万円の罰金に科される可能性があります。ただしこちらも親告罪なので、被害者が告訴しなければ処罰されません。
著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
これまでは、著作権を侵害しているとして著作権者が民事訴訟を提起し、差止請求をしたとしても、侵害立証等に必要な書類を持つ被告に対して提出命令を出すのが容易ではありませんでした。提出命令の必要性を判断するための書類については、裁判所が提示を求められないという制度上の問題があったからです。
そこで改正法では、必要性を判断する前の段階で裁判所が書類の提示を求められるようにし、さらにその判断において専門委員のサポートを受けられるようにしました。
これによって裁判所は提出命令の申し立てを判断しやすくなり、専門家の知見によるサポートが受けられることで、その精度も上がります。
アクセスコントロールに関する保護の強化
近年はCDやDVDなどのパッケージとしてコンテンツを販売する形態から、インターネット配信に主軸が移っています。これに伴って、不正利用を防止する仕組みとしてライセンス認証が普及しました。特にシリアルコードを活用し、正当な権限を持つ者以外がコンテンツを利用できないようにする方法は多く用いられています。
これは「アクセスコントロール」の一種ですが、それを不正に回避する者もいます。
これまでの著作権法ではこれに対応できていなかったため、アクセスコントロールの保護にも同法の規制を及ばせるために定義規定を改正し、ライセンス認証等の技術も保護対象に含むことを定めました。また、ライセンス認証を回避するための不正なシリアルコードの提供行為を著作権侵害行為とみなし、民事上及び刑事上の責任を問えるようにもしました。
最大で3年の懲役または300万円の罰金に科される可能性があります。ただしこちらも親告罪なので、被害者が告訴しなければ処罰されません。
まとめ
改正著作権法のポイントをまとめると、「一般ユーザーが処罰されるコンテンツの幅が広がった」「著作権侵害訴訟をスムーズに進めやすくなった」、そして「最新の技術にも同法が対応できるようになった」となります。
よくある質問
著作権法はなぜ改正された?
海賊版被害が増えたことと、旧法では十分な保護ができなかったことが主な理由です。詳しくはこちらをご覧ください。
著作権法改正では何が変わる?
法改正によって、楽曲等に加えて漫画などのダウンロード行為も刑事罰の対象になる可能性があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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