- 更新日 : 2024年8月30日
創業株主間契約書とは?ひな形をもとに書き方やチェック時の注意点を解説
複数人が共同で起業して株主になる場合は、創業株主間契約書を作成して締結します。これはどのような契約書なのでしょうか。なぜ締結する必要があるのでしょうか。
今回は創業株主間契約書を結ぶケースや記載すべき内容についてご紹介します。すぐに使えるテンプレートもご用意しておりますので、ぜひダウンロードされることをおすすめします。
目次
創業株主間契約とは
創業株主間契約とは会社の創業者同士が締結する契約です。複数人が共同で起業する場合、各々が会社の株式を保有することになります。しかし、経営を続けているうちになんらかの事情があって共同創業者が経営を退くことも考えられます。
基本的に会社は株主から一方的に株式を剥奪することは認められていません。他の株主は経営から退く株主から「株を売れ」とは強制できないのです。しかし、経営から退いた創業メンバーがいつまでも株式、つまり経営権を保有しているとトラブルにつながる可能性もあります。
創業メンバーが経営から退く際の株式の取り扱いのルールについて創業株主間契約書で明らかにして契約を締結するのです。
創業株主間契約書を結ぶケース
創業株主間契約書を結ぶケースとしては、前述の通り複数人が株式会社を共同で創業する際が挙げられます。たとえばAさんとBさん、Cさんの3人が共同で起業する場合は、この3人がそれぞれ契約書に署名押印します。
多くの場合、創業株主間契約書では共同創業者が経営を退いた際には、株主は残りの共同創業者が株式を買い取るようなルールを定めます。Aさんが50%、BさんとCさんが25%ずつ株式を保有するとして、Cさんが退任した場合、AさんとBさんは創業株主間契約に基づきCさんの保有分である25%を買い取ることになります。
創業株主間契約書のひな形
友人やビジネスパートナー、親族など複数人と起業する場合は創業株主間契約書を作成する必要がありますが、特に初めて起業される方はどのように書いていいのか戸惑われるかと思います。
また、会社設立時には他にもさまざまな書類を作成して手続きをしなければならないため非常に大変です。そこで、今回すぐに使える便利なテンプレートをご用意しました。
創業株主間契約書に記載すべき内容
ここからは創業株主間契約書に盛り込むべき内容について項目別に見ていきましょう。テンプレートに基づいてご説明していきますので、参照しながら読み進めていただくと、より理解が深まるかと思います。
契約者
まずは誰と誰が、どの会社の株式に関する創業株主間契約を締結するのかを明確にしましょう。契約者の氏名と対象となる株式の会社名を記載します。なお、以降は契約者名や会社名を「甲」「乙」「丙」「丁」などに置き換えることが可能です。
目的
なんのために創業株主間契約を締結するのか、目的を明記しておきましょう。
「各人が丁社の経営から離れる際の株式の取り決めを行うことを目的とするものである。」というように、創業者が経営から退いた際の株式の取り扱い方法を定めることを目的とするケースが多いです。
株式の譲渡について
創業者が経営から退いた場合の株式の共同株主への譲渡に関するルールと譲渡する株式の割合の計算方法について記載します。この条項があることによって、共同株主は退く株主に株式の譲渡を求めることが可能となります。
計算式については「本契約締結日から○年以内に譲渡事由が生じた場合、譲渡株主が保有する丁社株式数の○%」「本契約締結日から○年経過後○年以内に譲渡事由が生じた場合譲渡株主が保有する丁社株式数の○%」というように、条件と割合を明記しましょう。
譲渡価格
退く株主が株式を譲渡する価格に関するルールです。譲渡価格については請求株主が決定できるというように記載するのが一般的です。
契約終了について
創業株主間契約が終了する条件について記載します。「株式上場した場合」「当事者の全員が会社の株主を保有しないことになったとき」「当事者が全員一致で創業株主間契約の終了を決定したとき」などの条件を設定します。これらの条件に合致する事象が発生した場合は、創業株主間契約は効力を失います。
権利の譲渡に関して
創業株主間契約によって生じた権利を、当事者が第三者に譲渡できるかどうかを記載します。「本契約上の地位及び本契約に記載する権利を、他の当事者の書面による同意なく第三者に承継または譲渡してはならない。」というように、権利を譲渡してはならない場合、あるいは権利を譲渡してもいい場合を記載しましょう。
協議
創業株主間契約書に定められている規程では解決できないような問題が発生した際に、当事者間が話し合って解決する旨を定めます。
合意管轄
当事者間で紛争が発生した場合に訴訟を行う裁判所を指定します。「○○地方裁判所」というように具体的な裁判所を指定するほか、「○○を管轄する地方裁判所」というように記載することも可能です。
署名捺印欄
当事者全員が署名捺印した契約書を保管する旨を記載し署名捺印欄を設けます。契約締結日と当事者全員の住所、氏名が記載され、捺印がなされれば、契約が成立したとみなされます。
創業株主間契約書の作成ポイント
最後に、創業株主間契約書を作成する際の注意点についてご紹介します。以下のことを意識して作成し、相手側が作成した場合はご自身に不利な内容が含まれていないかをチェックしましょう。
株主退任時の義務や譲渡価格について取り決めておく
株式を保有するということは、その会社の経営権をもつということです。経営を退いたのに株式を保有したまま経営に影響力を与える株主がいると、経営がスムーズにいかなくなってしまう場合があります。また、株式を巡って株主間で揉めたりトラブルが発生したりすることもよくあります。創業株主間契約書にはしっかりと「経営から退いた株主は何をすべきか」を明記しましょう。
また、株式の譲渡価格の決め方についても明らかにしておく必要があります。
株式売却を強制される内容になっていないかどうかを確認する
創業株主間契約は共同株主が経営から退いたときに他の株主に株式を譲渡するよう定めた契約ですが、前述の通り原則として第三者が株式を譲渡するように強制することはできません。
「株式を譲渡しなければならない」ではなく、「株主から請求があった場合には(略)株式を譲渡するものとする」というような表現にしましょう。
なあなあでは済まさず創業株主間契約を締結しよう
特に友人や親族など、親しい間柄で共同起業する場合は、なあなあで物事を進めがちです。しかし、いざとなった場合、揉め事やトラブルが起こって関係が悪化しかねません。ビジネスをする以上は、親しい間柄でも必ず契約書などの書面でルールを定め、契約を交わしましょう。
特に株式の保有については問題が発生しがちです。しっかりと創業株主間契約を締結し、株主の退任時の株式の扱いについて、お互いが把握しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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