- 作成日 : 2025年9月22日
スプレッドシートで家計簿を作るには?エクセルとどっちがいい?
Googleスプレッドシートを使った家計簿は、無料で始められて、スマホからでもPCからでもアクセスできる便利な家計管理ツールです。自動計算機能やグラフ作成機能を活用すれば、お金の流れを視覚的に把握でき、節約や貯金の目標達成にも役立ちます。
この記事では、スプレッドシートで実用的な家計簿を作る手順から、挫折せずに続けるためのコツ、そしてエクセルとの比較まで、家計簿作成に必要な情報を詳しく解説します。
スプレッドシートで家計簿を作る手順
STEP1:家計簿の基本構成を設計する
スプレッドシートで家計簿を作る第一歩は、全体の構成を決めることです。まず新しいスプレッドシートを作成し、シート名を「2025年家計簿」などわかりやすい名前に変更します。1つのファイルに複数年分のデータを管理する場合は、年ごとにシートを分けると管理しやすくなります。
基本的な家計簿は、日付、項目、カテゴリー、収入、支出、残高の列で構成されます。A列に日付、B列に項目名、C列にカテゴリー、D列に収入金額、E列に支出金額、F列に残高を配置するのが一般的です。1行目には見出しを入力し、太字にして背景色を付けることで、データ部分と区別しやすくします。
カテゴリーは自分のライフスタイルに合わせて設定します。食費、光熱費、交通費、通信費、日用品、娯楽費、医療費、教育費などが基本的なカテゴリーですが、より細かく分類したい場合は、食費を外食と自炊に分けるなど、サブカテゴリーを作成することも可能です。管理のしやすさと詳細さのバランスを考えて、最適な分類を決めてください。
STEP2:自動計算機能を設定する
家計簿の醍醐味は、入力したデータから自動的に合計や残高が計算されることです。まず残高の計算式を設定します。F2セル(最初のデータ行の残高欄)に「=D2-E2」と入力すると、その行の収入から支出を引いた金額が表示されます。
F3セル以降は、前日の残高を考慮する必要があるため、「=F2+D3-E3」という数式を入力します。この数式をF列の下方向にコピーすることで、累積残高が自動計算されるようになります。オートフィル機能を使えば、セルの右下角をドラッグするだけで簡単にコピーできます。
月間の収支を把握するために、集計行も作成します。たとえば、32行目に月間集計を配置する場合、D32セルに「=SUM(D2:D31)」、E32セルに「=SUM(E2:E31)」と入力して、それぞれ月間の収入合計と支出合計を計算します。さらに「=D32-E32」で月間収支を表示させれば、その月の家計状況が一目でわかります。
STEP3:カテゴリー別集計機能を追加する
支出の内訳を把握するために、カテゴリー別の集計機能を追加します。別のエリア(たとえばH列以降)にカテゴリーリストを作成し、SUMIF関数を使って各カテゴリーの合計を自動計算します。
H1セルに「カテゴリー別集計」、H2セルから下に「食費」「光熱費」「交通費」などのカテゴリー名を入力します。I2セルに「=SUMIF($C$2:$C$31,H2,$E$2:$E$31)」と入力すると、C列のカテゴリーが「食費」と一致する行のE列(支出)の合計が計算されます。この数式をI列の他のセルにコピーすれば、すべてのカテゴリーの集計が完成します。
カテゴリー別の予算管理も重要です。J列に月間予算を入力し、K列に「=J2-I2」という数式で予算残高を表示させます。さらに条件付き書式を設定して、予算を超過したカテゴリーを赤色で表示させれば、使いすぎの項目が一目でわかるようになります。
STEP4:グラフによる可視化機能を実装する
数値だけでは把握しにくい支出の傾向を、グラフで視覚化します。カテゴリー別集計のデータ範囲(H2:I10など)を選択し、「挿入」メニューから「グラフ」を選択します。円グラフを選ぶと、支出の内訳が一目でわかるようになります。
グラフエディタで、タイトルを「今月の支出内訳」などに変更し、凡例の位置やフォントサイズを調整します。パーセンテージ表示を有効にすれば、各カテゴリーが支出全体に占める割合も把握できます。3D表示や色のカスタマイズも可能ですが、見やすさを優先してシンプルなデザインを心がけましょう。
月間推移を見るための折れ線グラフも有効です。複数月のデータがある場合は、月ごとの収入、支出、貯金額の推移をグラフ化することで、家計の改善傾向や季節変動を把握できます。グラフは別シートに配置して、ダッシュボードとして活用するのもお勧めです。
STEP5:入力を効率化する機能の設定
毎日の入力作業を効率化するために、データ入力規則やプルダウンリストを設定します。カテゴリー列(C列)を選択し、「データ」メニューから「データの入力規則」を選択します。条件として「リストを直接指定」を選び、カテゴリー名をカンマ区切りで入力します。
これにより、セルをクリックするとプルダウンリストが表示され、カテゴリーを選択するだけで入力できるようになります。入力ミスが減り、集計の精度も向上します。同様に、よく購入する店舗名や定期的な支出項目もリスト化しておくと便利です。
日付の自動入力も設定できます。TODAY関数やNOW関数を使えば、ファイルを開いた時点の日付が自動的に入力されます。ただし、これらの関数は値が変動するため、記録として残したい場合は、入力後に値として貼り付け直す必要があります。定期的な支出については、前月のデータをコピーして日付だけ変更する方法も効率的です。
スプレッドシートで家計簿を続けるためのコツ
家計簿入力を習慣にする
家計簿を継続するための最大のポイントは、入力を習慣化することです。まず、スマホのホーム画面にスプレッドシートのショートカットを配置し、ワンタップでアクセスできるようにします。買い物直後や1日の終わりなど、決まったタイミングで入力する習慣を作ることが大切です。
レシートをその場で入力できない場合は、スマホで写真を撮っておき、後でまとめて入力する方法も有効です。レシート画像をスマホから自動でクラウド保存したい場合は、Googleフォトの『バックアップ』をオンにし、必要ならレシート用の端末内フォルダをバックアップ対象に設定してください。Googleドライブに保存したい場合は、手動でアップロードするか、自動化アプリ等を利用します(フォトとドライブは自動同期されません)。週に1回程度、まとめて入力する時間を確保するのも良いでしょう。
通知機能を活用することも継続の秘訣です。Googleカレンダーに「家計簿入力」の定期的なリマインダーを設定したり、スマホのアラーム機能を使って入力時間を知らせたりすることで、入力忘れを防げます。最初は毎日の入力が難しくても、週2〜3回から始めて徐々に頻度を上げていくアプローチも効果的です。
シンプルな仕組みを保つ
家計簿が続かない原因の多くは、複雑すぎる仕組みにあります。最初は必要最小限の項目から始め、慣れてきたら徐々に機能を追加していくことが重要です。収入、支出、残高の3項目だけでも、十分な家計管理は可能です。
カテゴリー分けも、最初は5〜7個程度に留めることをお勧めします。あまり細かく分類すると、どのカテゴリーに入れるか迷って入力が滞る原因になります。「その他」カテゴリーを作っておき、分類に迷ったものはとりあえずそこに入れるという柔軟性も必要です。
1円単位の正確性にこだわりすぎないことも大切です。家計簿の目的は完璧な記録ではなく、お金の流れを把握して改善することです。100円未満は四捨五入する、少額の現金支出はまとめて記録するなど、自分なりのルールを決めて、入力の負担を軽減しましょう。
成果を可視化してモチベーションを維持する
家計簿を続けるモチベーションを保つには、成果を可視化することが効果的です。月末に必ず振り返りの時間を設け、その月の収支状況を確認します。予算内に収まったカテゴリーや、前月より改善した項目があれば、それを認識することで達成感を得られます。
貯金目標を設定し、その進捗をグラフで表示するのも有効です。別シートに「貯金目標管理」を作成し、目標金額、現在の貯金額、達成率を表示します。棒グラフや進捗バーを使って視覚化すれば、目標に向かって着実に前進していることが実感できます。
年間サマリーシートを作成して、月ごとの推移を一覧できるようにすることも重要です。収入、支出、貯金額の月別推移を表にまとめ、前年同月との比較ができるようにします。改善傾向が見えることで、家計簿を続ける意味を実感でき、長期的な継続につながります。
家族での共有する
家族がいる場合は、家計簿を共有することで、全員の協力を得やすくなります。Googleスプレッドシートの共有機能を使えば、家族全員がリアルタイムで家計簿を確認・編集できます。それぞれのGoogleアカウントに編集権限を付与し、誰でも支出を入力できるようにします。
家族会議の資料として家計簿を活用することも効果的です。月に1回、家族で家計簿を見ながら、支出の見直しや来月の予算について話し合います。子どもにもわかりやすいグラフを用意して、お金の大切さを教える機会にすることもできます。
役割分担を明確にすることも重要です。たとえば、日用品の買い物は妻が入力、光熱費は夫が入力など、担当を決めておくと責任感が生まれます。また、入力した人の名前を記録する列を追加すれば、誰がどれだけ協力しているかも把握できます。
エクセルとスプレッドシート、家計簿で使うならどちらが最適か
アクセシビリティと利便性の比較
家計簿として使う場合の最大の違いは、アクセシビリティです。Googleスプレッドシートは、インターネット環境があればどこからでもアクセスできます。自宅のPC、職場のPC、スマホ、タブレットなど、デバイスを選ばず同じデータを編集できるため、いつでもどこでも家計簿を更新できます。
Excel はデスクトップ版に加え、Excel for the web(無料)やモバイルアプリでも利用できます。OneDrive に保存すればクラウド連携・共同編集が可能です。高度機能は Microsoft 365 契約が必要な場合があります。ファイルの同期にはOneDriveなどの設定が必要で、スプレッドシートほどシームレスではありません。
外出先での入力頻度が高い家計簿の用途では、スプレッドシートの方が圧倒的に便利です。買い物直後にスマホで入力できることは、記録の正確性と継続性の両面でメリットがあります。レシートを溜めずにその場で処理できるため、入力作業へのハードルが大幅に下がります。
コストパフォーマンスの観点
Googleスプレッドシートは無料から利用でき、Googleアカウントさえあれば、すぐに家計簿を始められます。15GBの無料ストレージも提供されているため、家計簿データの保存には十分と言えるでしょう。テンプレートギャラリーからも無料で家計簿テンプレートをダウンロードできます。
エクセルは、Microsoft Officeの購入またはMicrosoft 365の契約が必要です。買い切り版は3万円程度、サブスクリプション版は年間1万円以上のコストがかかります。家計簿だけのために購入するには、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
ただし、すでにエクセルを所有している場合や、仕事で使用しているため操作に慣れている場合は、新たに操作を覚える必要がないというメリットがあります。学習コストを考慮すると、使い慣れたツールを選ぶことも合理的な選択です。
機能面での違いと家計簿への影響
基本的な表計算機能は両者ともに充実していますが、細かな違いがあります。エクセルの方が関数の種類が豊富で、複雑な分析が可能です。ピボットテーブルやマクロ機能も充実しており、高度な自動化を実現できます。
しかし、家計簿として必要な機能に限定すれば、スプレッドシートで十分対応可能です。SUM、SUMIF、AVERAGE、IF関数など、家計簿で使用する基本的な関数はすべて利用できます。グラフ作成機能も充実しており、支出の可視化に必要な機能は網羅されています。
GOOGLEFINANCE 関数で株価や為替を取得できますが、取引所・銘柄によって遅延(数分〜約20分)が発生します。また、フォーム機能と連携すれば、専用の入力画面を作成することもできます。
データの安全性と永続性
スプレッドシートは自動保存機能により、入力すると間もなくクラウドに保存されます。保存先がクラウド環境のため、PCが故障してもデータは失われず、誤って削除してしまった場合も、変更履歴から復元できます。バージョン履歴から過去の状態に戻せますが、無期限保存が保証されるわけではありません。長期保管したい版は『名前付きバージョン』として保存してください。
エクセルの場合、ローカル保存が基本となるため、定期的なバックアップが必要です。PCの故障やファイルの破損によってデータを失うリスクがあります。自動保存機能もありますが、OneDriveなどのクラウドストレージの設定が必要です。
長期的な家計簿の運用を考えると、データの安全性は極めて重要です。数年分の家計データが失われることは、大きな損失です。この点で、標準でクラウド保存されるスプレッドシートの方が、家計簿用途には適していると言えます。
共有と共同編集の容易さ
家族で家計簿を管理する場合、共有機能の使いやすさは重要な要素です。スプレッドシートは、メールアドレスを入力するだけで簡単に共有でき、複数人が同時に編集することも可能です。誰がどの部分を編集しているかもリアルタイムで表示されます。
エクセルも OneDrive/SharePoint に保存すれば共同編集が可能です。Excel for the web は無料の Microsoft アカウントで同時編集できます(機能はデスクトップ版より限定的)。
コメント機能を使った家族間のコミュニケーションも、スプレッドシートの方がスムーズです。特定のセルにコメントを付けて、「この支出は何?」といった確認ができ、返信機能で会話のように やり取りできます。家計簿を通じた家族のコミュニケーションツールとしても活用できます。
スプレッドシート家計簿で賢い家計管理を始めよう
Googleスプレッドシートを活用すれば、家計簿を無料で始められ、PC・スマホからいつでも入力できます。自動計算やSUMIFによるカテゴリー集計、グラフ化で支出の傾向が把握しやすく、継続しやすい仕組みを整えられます。家族で共有すれば協力体制も作りやすく、コミュニケーションにもつながります。
Excelは分析機能が豊富ですが、家計簿用途ではスプレッドシートの手軽さとアクセス性が大きな強みです。続けやすい工夫を取り入れて、日々の家計管理に役立てましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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