• 作成日 : 2025年11月6日

飲食店の坪単価とは?売上・家賃・内装費の目安と計算方法、利益を最大化する戦略を徹底解説!

飲食店経営を成功させる上で、店舗の収益性を客観的に評価する指標の理解は不可欠です。中でも「坪単価」は、店舗の規模に対してどれだけの価値を生み出しているかを示す重要な経営指標となります。しかし、一言で「飲食店 坪単価」と言っても、実は「売上」「家賃」「内装費」という3つの異なる側面があることをご存知でしょうか。

この記事では、これら3つの坪単価のそれぞれの意味、計算方法、業態別の目安、そして店舗経営に活かすための具体的な戦略まで、専門家の視点から詳しく解説します。

飲食店の成功を測る3つの「坪単価」とは?

飲食店の坪単価とは、店舗の収益性や効率性を1坪(約3.3㎡)あたりで測る指標のことで、主に「売上坪単価」「家賃坪単価」「内装工事費坪単価」の3つがあります。

これらの指標を正しく理解し分析することで、店舗の現状把握、収益性の改善、適切な物件選び、そして精度の高い資金計画の立案などが可能になります。漠然とした感覚ではなく、具体的な数値に基づいて経営判断を下すための羅針盤となるのが、この3つの坪単価なのです。

売上坪単価:店舗の稼ぐ力を示す指標

売上坪単価は、店舗の1坪あたりがどれくらいの売上を生み出しているかを示す指標です。「月間売上坪単価」や「坪効率」とも呼ばれ、この数値が高いほど、店舗スペースを効率的に使って稼げていることを意味します。繁盛店かどうかを判断する際の、最も基本的な指標と言えるでしょう。

家賃坪単価:物件コストの妥当性を判断する指標

家賃坪単価は、1坪あたりの月額家賃を示す指標です。店舗の固定費で最も大きな割合を占めるのが家賃であり、この坪単価は物件の賃料が立地や条件に見合っているか、つまりコストの妥当性を判断するために用いられます。出店候補の物件を比較検討する際にも重要な基準となります。

内装工事費坪単価:初期投資の規模を示す指標

内装工事費坪単価は、店舗の内装工事にかかる費用を1坪あたりで示した指標です。新規出店や改装の際に、初期投資(イニシャルコスト)の規模感を把握し、資金計画を立てる上で欠かせません。業態やコンセプトによって大きく変動するため、あらかじめ目安を知っておくことが重要です。

坪単価の種類概要計算式主な活用場面
売上坪単価店舗が1坪あたりで生み出す月間売上高月間売上高 ÷ 店舗の総坪数経営状況の分析、収益性の目標設定
家賃坪単価1坪あたりの月額家賃月額家賃 ÷ 店舗の総坪数物件選び、コストの妥当性判断
内装工事費坪単価1坪あたりの内装工事費用内装工事費総額 ÷ 店舗の総坪数新規出店・改装時の資金計画、予算策定

飲食店の「売上坪単価」の目安はいくら?計算方法と目標設定

飲食店の月間売上坪単価の一般的な目安は10万円〜30万円ですが、これは業態によって大きく異なります。カフェ業態では10万円前後が平均的ですが、坪効率の高いラーメン店は業態や立地によりますが、月坪売上20〜30万円としっかり目標を掲げる店舗もあります。

自店の業態における平均的な数値を知り、それを上回る具体的な目標を設定することが、収益性の高い店舗運営を実現するための第一歩となります。

売上坪単価の計算方法

売上坪単価の計算は非常にシンプルです。

売上坪単価 = 月間売上高 ÷ 店舗の総坪数

例えば、月商300万円で20坪の居酒屋の場合、以下のように計算します。

300万円 ÷ 20坪 = 15万円/坪

この計算により、この店舗は1坪あたり月間15万円の売上を生んでいることがわかります。

【業態別】売上坪単価の目安一覧

売上坪単価は、客単価や回転率が異なるため、業態によって目安が大きく変わります。以下に代表的な業態の目安をまとめました。

業態月間売上坪単価の目安特徴
カフェ・喫茶店8万円 ~ 15万円客単価が低く、滞在時間が長めのため坪単価は低くなる傾向。
居酒屋・バル15万円 ~ 25万円ディナータイムが中心。アルコール提供で客単価を上げやすい。
レストラン15万円 ~ 30万円コース料理などで客単価は高いが、回転率は比較的低い。
ラーメン店20万円 ~ 40万円提供時間が短く回転率が非常に高い。坪効率を追求しやすい業態。
焼肉・寿司(専門店)25万円 ~ 50万円以上客単価が非常に高く、繁盛店は高い坪単価を実現しやすい。

※上記は一般的な目安であり、立地や店舗のコンセプトによって変動します。

自店の坪単価を計算し、この表の数値と比較することで、経営状態を客観的に把握できます。もし平均を下回っている場合は、次のセクションで解説する改善策に取り組む必要があります。

売上坪単価を上げるにはどうすればいい?具体的な4つの戦略

売上坪単価を向上させるには、「客単価を上げる」「回転率を高める」「座席稼働率を向上させる」「坪数に依存しない売上を作る」という4つの戦略が有効です。

これらの施策を単体または組み合わせて実行することで、限られた店舗スペースから得られる売上を最大化することが可能になります。

戦略1:客単価を上げる

坪数が同じでも、お客様一人ひとりの支払額が増えれば売上は向上します。

  • アップセル・クロスセルの徹底: 「ご一緒にポテトはいかがですか?」といった声かけや、セットメニュー、コースのアップグレード提案などを徹底します。
  • メニュー構成の見直し: 高単価メニューや付加価値の高い限定メニューを開発し、注文されやすいようにメニューブックを工夫します。
  • ドリンクメニューの強化: オリジナルカクテルやこだわりのワインなど、利益率の高いドリンクの注文を促進します。

戦略2:回転率を高める

お客様の滞在時間を適切にコントロールし、より多くのお客様を受け入れることで売上を伸ばします。

  • 提供スピードの向上: 調理工程の見直しやキッチンの動線改善により、注文から提供までの時間を短縮します。
  • オペレーションの効率化: オーダーエントリーシステムやセルフレジを導入し、スタッフの業務負担を軽減します。
  • ランチタイムの工夫: ランチ限定の短時間で提供できるメニューを用意するなど、ピークタイムの回転を意識します。

戦略3:座席稼働率を向上させる

満席時以外でも、空席を減らす工夫で売上は変わります。

  • レイアウトの最適化:2名席、4名席、カウンター席などをバランス良く配置し、様々なグループ人数に柔軟に対応できるようにします。デッドスペースをなくすことも重要です。
  • 予約管理の徹底:予約サイトや電話予約を効果的に管理し、ノーショー(無断キャンセル)対策を講じることで、機会損失を防ぎます。

戦略4:坪数に依存しない売上を作る

店内の座席数という物理的な制約を超えて売上を伸ばす方法です。

  • テイクアウト・デリバリーの導入:Uber Eatsや出前館などのプラットフォームを活用したり、自社で持ち帰りメニューを開発したりします。
  • ECサイトでの商品販売:オリジナルのドレッシングやレトルト食品、コーヒー豆などをオンラインで販売し、新たな収益源を確保します。

飲食店の「家賃坪単価」の相場と適正な目安は?

飲食店の家賃坪単価は立地によって極端に異なり、東京の銀座や新宿といった一等地では5万円を超えることも珍しくありませんが、地方都市の中心部では1万円~2万円、郊外では1万円以下が相場です。経営の健全性を示す指標として、売上に対する家賃比率は10%以内に抑えるのが理想とされています。

家賃は売上の変動にかかわらず毎月発生する最大の固定費です。そのため、出店を計画する段階で、そのエリアの家賃相場と、事業計画に見合った適正な家賃坪単価を見極めることが経営の安定に直結します。

【エリア別】家賃坪単価の相場データ

実際の家賃相場はどのようになっているのでしょうか。飲食店専門の物件情報サイト「飲食店.COM」の調査データを見てみましょう。

【関東エリア】2024年4~6月期における飲食店の平均坪単価家賃

エリア平均坪単価家賃
東京23区25,984円
– 千代田・中央・港区32,836円
– 新宿・渋谷・豊島・文京・目黒区26,808円
– 台東・墨田・江東・品川・大田区22,176円
神奈川県(横浜・川崎)17,665円
埼玉県(さいたま市)15,699円
千葉県(千葉市)15,084円

出典: 飲食店.COM「【2024年4~6月期】関東の飲食店の『平均賃料』を調査」

このように、都心部と郊外では坪単価に大きな差があることがわかります。出店希望エリアの相場をリサーチし、事業計画上の売上予測と照らし合わせて、無理のない家賃の物件を選ぶことが重要です。

家賃比率から考える適正家賃

物件を選ぶもう一つの重要な尺度が「家賃比率」です。これは、売上高に占める家賃の割合を示すもので、以下の式で計算します。

家賃比率 (%) = 月額家賃 ÷ 月間売上高 × 100

一般的に、この家賃比率は10%以下が健全な経営の目安とされています。

例えば、月商300万円を目指す店舗であれば、適正家賃の上限は30万円となります。

目標月商 300万円 × 10% = 適正家賃 30万円

この30万円を希望する物件の坪数で割ることで、支払える家賃坪単価の上限を算出できます。例えば20坪の物件を探すなら、坪単価1.5万円が上限の目安となります。

飲食店の「内装工事費坪単価」の目安は?

飲食店の内装工事費坪単価は、何もない状態のスケルトン物件で30万円~60万円程度、厨房設備などが残っている居抜き物件で15万円~40万円程度が目安です。ただし、これは業態やデザイン、使用する素材のグレードによって大きく変動します。

内装工事費は、物件取得費と並んで初期投資の大部分を占めます。開業時の資金計画を正確に立てるために、業態ごとの坪単価の目安を知っておくことが非常に重要です。

【業態別】内装工事費坪単価の目安一覧

内装工事費は、厨房設備の規模や排煙・給排水工事の複雑さなどによって変動します。

業態スケルトン物件の坪単価目安居抜き物件の坪単価目安特徴
カフェ・バー30万円~50万円/坪15万円~30万円/坪比較的大掛かりな厨房設備が不要なため、費用を抑えやすい。
居酒屋40万円~60万円/坪20万円~40万円/坪排煙・換気設備や個室の造作などで費用がかさむ傾向がある。
レストラン50万円~70万円以上/坪25万円~50万円/坪専門的な厨房機器や、高級感のある内装材を使用すると高額になる。
焼肉・中華60万円~80万円以上/坪強力な排煙・空調設備、ガス工事などが必要なため最も高額になる。

内装工事費を抑えるための3つのポイント

初期投資はできるだけ抑えたいものです。以下のポイントを意識することで、工事費用を賢く節約できます。

  1. 居抜き物件を有効活用する:前のテナントの設備や内装を流用できる居抜き物件は、スケルトン物件に比べて工事費を大幅に削減できる傾向があります。ただし、設備の劣化状況やレイアウトが自店のコンセプトに合うか、慎重な見極めが必要です。
  2. 複数の業者から相見積もりを取る:必ず2〜3社以上の内装工事業者から見積もり(相見積もり)を取りましょう。金額だけでなく、提案内容や過去の実績、担当者との相性などを総合的に比較検討することが重要です。
  3. 素材や設備のグレードを調整する:お客様の目に触れないバックヤードの素材は安価なものにする、厨房機器は中古品やリースを活用するなど、こだわりたい部分とコストを抑える部分にメリハリをつけることで、全体の費用をコントロールできます。

飲食店経営の成功は「坪単価」の理解から始まる

この記事では、飲食店経営における「坪単価」について、「売上」「家賃」「内装費」の3つの側面から解説しました。坪単価は、あなたの店舗の収益性、コスト構造、投資効率を可視化する強力なツールです。

まずは自店の売上坪単価を計算し、業態の平均と比較することから始めましょう。そして、出店や移転を考える際には、家賃坪単価と内装工事費坪単価の相場を基に、綿密な事業計画と資金計画を立てることが不可欠です。感覚だけに頼らず、これらの具体的な数値を羅針盤とすることで、リスクを抑え、利益体質な店舗経営を実現することができます。あなたの店舗の成功は、「坪単価」を正しく理解し、活用することから始まるのです。


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