• 作成日 : 2025年11月6日

キッチンカー経営はきつい?「やめとけ」といわれる5つの理由と儲かるメニューで成功する秘訣

キッチンカーでの独立開業に憧れを抱く方は多いですが、同時に「キッチンカーはきつい」「甘くない」といった声もよく耳にします。華やかなイメージの裏には、厳しい現実が隠されていることも少なくありません。

この記事では、なぜキッチンカー経営が「きつい」といわれるのか、その具体的な理由から、廃業の後悔をしないための対策、さらには「儲かるメニュー」の考え方や年収1000万円を目指すための戦略まで、詳しく解説していきます。現実を直視し、成功への道を一緒に探っていきましょう。

なぜキッチンカーは「きつい」「やめとけ」といわれるのか?

キッチンカー経営が「きつい」といわれる主な理由は、見た目の自由さとは裏腹に、過酷な長時間労働と不安定な収入という現実にあります。これらを理解せず始めると「こんなはずではなかった」と後悔につながりかねません。

長時間労働と体力的な負担

キッチンカーの仕事は、お客様に商品を販売している時間だけではありません。早朝からの食材の仕入れ、営業前の仕込み、営業終了後の長い片付けと清掃、翌日の準備、売上計算などの事務作業まで、その業務は多岐にわたります。

時間業務内容
7:00起床、食材の買い出し
9:00自宅やシェアキッチンで仕込み開始
11:00キッチンカーで出店場所へ移動
12:00ランチ営業開始
15:00ランチ営業終了、片付け、移動
17:00ディナー営業の準備
18:00ディナー営業開始
21:00営業終了、片付け
22:00帰宅、車内の清掃、翌日の準備
23:00売上計算、発注業務
0:00就寝

上記は一例ですが、実働時間は12時間を超えることが珍しくなく、特に一人で運営する「ワンオペ」の場合は休憩時間もままならないことがあります。夏の猛暑や冬の極寒の中、狭い車内で立ちっぱなしの作業は、想像以上に体力を消耗します。

天候や季節に左右される不安定な売上

キッチンカーの売上は、天候に大きく左右されるという宿命を持っています。雨や雪の日は客足が遠のき、強風や猛暑でも売上は大きく落ち込む傾向にあります。

  • 悪天候:イベントが中止になれば、その日の売上はゼロになります。
  • 季節変動:かき氷や冷たいドリンクは夏に売れますが冬は厳しく、逆に温かいスープや焼き芋は冬が本番です。

このように、自分の努力だけではどうにもならない要因で収入が不安定になりがちな点は、精神的にもきつい部分といえるでしょう。

利益を出すのが難しい出店場所の確保

キッチンカービジネスが成功するかは、出店場所によって大きく左右されると言われています。しかし、儲かる一等地の確保は決して簡単ではありません。

  • 出店料:オフィス街のランチ出店や商業施設、イベントなど、集客が見込める場所は出店料も高額になる傾向があります。売上から出店料やロイヤリティを支払うと、手元に残る利益はわずか、というケースも少なくありません。
  • 場所探しの労力:常に新しい出店場所を探し、土地のオーナーや管理者と交渉する手間と時間も大きな負担となります。良い場所は競争率も高く、新規参入者が入り込むのは困難な場合もあります。

仕込みから片付けまで一人でこなすワンオペの現実

人件費を抑えるために一人(ワンオペ)で運営するオーナーは多いですが、それは想像を絶する大変さを伴います。前述の通り、調理や接客だけでなく、仕込み、清掃、運転、経理、SNSでの宣伝・広報活動まで、すべてを一人でこなさなければなりません。体調を崩せば収入は途絶え、代わりもいないため、精神的にも肉体的にも追い詰められやすい環境といえます。

初期投資と継続的な維持費のプレッシャー

キッチンカーの開業には、車両の購入・改造費、厨房設備の導入などで数百万円の初期投資が必要です。自己資金だけでなく、融資を受けて開業するケースも多く、その返済は大きなプレッシャーとなります。

▼ 主な費用

初期費用
  • 車両購入・改造費 :250万円~500万円
  • 調理設備費 :50万円~100万円
  • 許認可取得費:5万円~10万円
運転資金・維持費
  • 食材費(原価):売上の30%~40%
  • 出店料:売上の10%~20% or 固定費
  • 燃料費・駐車場代:5万円~10万円/月
  • 各種保険料:2万円~5万円/月
  • 車両メンテナンス費:不定

これらの費用を毎月確実に稼ぎ出さなければならないというプレッシャーは、売上が不安定な時期には特に重くのしかかります。

キッチンカー経営の廃業率はどれくらいか?

キッチンカーに特化した公的な廃業率のデータは存在しませんが、飲食店全体の厳しい現実が参考になります。中小企業庁の「2017年版 小規模企業白書」によると、宿泊業・飲食サービス業の廃業率は他の業種と比較して高い水準にあります。

出典:「2017年版 小規模企業白書の概要」|中小企業庁

飲食店経営は参入障壁が比較的低い一方で、継続することがいかに難しいかを示唆しています。キッチンカーも例外ではなく、ブログなどで廃業を報告するオーナーがいることからも、厳しい現実がうかがえます。

「きつい」を乗り越え、キッチンカーで儲かるための戦略はあるか?

キッチンカー経営は厳しい側面ばかりではありません。リスクを理解し、正しい戦略を立てることで、成功を掴むことは十分に可能です。

利益率の高い「儲かるメニュー」の考え方

成功の鍵の一つは、利益率の高い「儲かる商品」を選ぶことです。ポイントは「原価率が低い」「提供スピードが速い」「専門性が高い」の3つです。

  • 原価率が低いメニュー:ドリンク類(コーヒー、タピオカ)、粉もの(クレープ、ベビーカステラ)などは、一般的に原価を抑えやすいといわれています。
  • 提供スピードが速いメニュー:ランチタイムなど時間が限られた場面では、作り置きがある程度可能で、注文から提供までが速いメニュー(唐揚げ、カレー、丼もの)が有利です。回転率が売上を大きく左右します。
  • 専門性が高いメニュー:「〇〇専門店」としてメニューを絞ることで、食材のロスを減らし、オペレーションを効率化できます。また、顧客にも「〇〇を食べるならあのお店」と覚えてもらいやすくなります。

リピーターを生む魅力的なコンセプト設計

数多くのキッチンカーの中から選ばれるためには、明確なコンセプトが不可欠です。「何を売るか」だけでなく、「誰に」「どのような価値を提供したいか」を考え抜きましょう。

  • ターゲット設定:「オフィス街の健康志向の女性」「イベントに来たファミリー層」など、ターゲットを具体的に設定します。
  • 世界観の構築:車両のデザイン、ロゴ、ユニフォーム、メニュー名、接客スタイルまで、一貫した世界観を演出することで、ファン(リピーター)が生まれます。

売上を最大化する出店場所の選定方法

闇雲に出店するのではなく、戦略的に場所を選ぶことが重要です。平日のランチ、休日のイベント、夜の駅前など、複数のタイプの出店場所を組み合わせることで、収入の安定化を図れます。

  • 平日:オフィス街、大学のキャンパス、工場地帯など、ランチ需要が安定している場所。
  • 休日:公園、商業施設、大規模なフェスティバルやマルシェなどのイベント。大きな売上が期待できますが、出店料や競合の多さも考慮が必要です。
  • 場所の探し方:出店場所を仲介してくれるプラットフォームの活用、地域のイベント情報のチェック、自ら商業施設や企業に営業をかけるなどの方法があります。

SNSを活用した効果的な集客術

キッチンカーは店舗が移動するため、SNSとの相性が非常に良いビジネスです。日々の出店情報や新メニューの告知、調理風景などを発信することで、顧客とのつながりを構築できます。

  • X (旧Twitter):出店場所や営業時間の変更など、リアルタイムな情報発信に向いています。
  • Instagram:見た目の華やかなメニューの写真を投稿し、「シズル感」を演出するのに最適です。
  • LINE公式アカウント:友だち登録してくれたお客様に、クーポンや限定情報を配信し、リピート利用を促進します。

キッチンカーで年収1000万円は実現可能か?

「キッチンカーで年収1000万円」という目標は、決して不可能ではありませんが、極めて高いハードルであることは事実です。単独オーナーの所得(年収)が1000万円に達するには、相応の売上が必要になります。

年収1000万円を達成するための売上シミュレーション

仮に、売上に対する利益率(オーナーの所得)を20%と仮定すると、年収1000万円を得るためには年間5000万円の売上が必要です。

年間売上 5000万円 × 利益率 20% = 年収 1000万円

これを月商に換算すると約417万円。週6日営業すると仮定した場合、1日あたりの売上目標は約17.3万円になります。客単価を1000円とすると、1日に173人以上のお客様に購入してもらう必要があります。これを一人で達成するのは非常に困難であり、複数台の運営や従業員の雇用が現実的な選択肢となるでしょう。

成功事例から学ぶ事業拡大のヒント

年収1000万円を超えるオーナーは、1台の運営にとどまらないケースがほとんどです。

  • 多店舗展開:キッチンカーを複数台所有し、アルバイトや従業員を雇用して複数の場所で同時に営業する。
  • イベント企画・出店:自らフードイベントを企画したり、大規模イベントの飲食ブースを統括したりする。
  • プロデュース・コンサルティング:自身の成功ノウハウを活かして、これから開業する人向けのコンサルティングや車両プロデュースを手がける。

これらの事業拡大には、経営者としてのスキルが不可欠です。

開業後に後悔しないためのチェックリスト

キッチンカー開業は、夢や情熱だけで乗り切れるほど甘くはありません。後悔しないために、以下の点を自問自答してみてください。

  • 事業計画は具体的か?:売上目標、経費、利益の見込みを数字で具体的にシミュレーションしましたか?
  • 運転資金は十分か?:開業資金だけでなく、売上が安定しない数ヶ月間を乗り切るための運転資金(生活費含む)を確保していますか?
  • 体力と覚悟はあるか?:長時間労働や過酷な環境に耐えうる体力と、何があってもやり抜くという強い覚悟はありますか?
  • 家族の理解は得られているか?:不規則な生活や不安定な収入になる可能性について、家族に説明し、理解と協力を得ていますか?
  • なぜキッチンカーなのか?:固定店舗ではなく、なぜキッチンカーでなければならないのか、明確な理由を説明できますか?

成功の鍵は、現実的な計画と覚悟にあり

本記事では、「キッチンカーはきつい」といわれる理由と、その厳しさを乗り越えて成功するための戦略を解説しました。長時間労働や不安定な収入など、決して甘くない現実がある一方で、緻密な戦略と実行力があれば、大きな可能性を秘めたビジネスであることも事実です。

重要なのは、憧れだけで飛び込むのではなく、事業としての厳しさを十分に理解し、現実的な計画を立て、やり抜く覚悟を持つことです。この記事が、あなたのキッチンカー開業の成功への一助となれば幸いです。


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