• 作成日 : 2025年9月25日

キッチンカーの仕込み場所はどこにすべき?営業許可の条件から探し方まで解説

キッチンカーを出店するには、適切な「仕込み場所」の確保が不可欠です。食品衛生法上、保健所の営業許可を得た施設を用意しなければなりません。

この記事では、キッチンカーの仕込み場所に関する基本的なルールから、レンタルキッチン、自宅の改装、仕込みが不要なケースまで、キッチンカーの開業を目指す方が知るべき情報をわかりやすく解説します。

キッチンカーの仕込み場所に関する基本ルール

キッチンカーの営業を始めるには、まず専用の「仕込み場所」を用意することがルールになっています。これは、食中毒などを防ぎ、お客様に安全な食事を提供するための大切な決まりごとです。保健所の営業許可が取れる衛生的な場所を準備しましょう。

原則として自宅のキッチンでの仕込みはできない

キッチンカーで提供する食品の仕込みを、普段料理をしている自宅のキッチンで行うことは、原則として認められていません。

食品衛生法では、不特定多数に食事を提供する施設には、衛生管理の観点から厳しい基準が設けられています。自宅のキッチンは、生活用の水道設備や調理器具が営業用のものと区別されておらず、食中毒のリスクを管理できないと判断されるためです。営業許可は、施設に対して与えられるため、原則として許可のない場所で調理や仕込みを行うことはできません。

営業許可を得るための仕込み場所の条件

仕込み場所として営業許可を得るには、管轄の保健所が定める施設基準をクリアする必要があります。基準の詳細は自治体によって若干異なりますが、一般的に以下のような条件が求められます。

  • シンク:食器用と食材用で槽が分かれている二槽シンクが基本です。手洗い専用の設備も別に必要です。
  • 給排水・給湯設備:お湯が出る給湯設備が必須です。
  • 床・壁の材質: 床はタイルやコンクリートなど、耐水性で掃除しやすい材質である必要があります。壁も同様に、清掃しやすい構造が求められます。
  • 冷蔵・冷凍設備:温度計を備えた冷蔵庫や冷凍庫が必要です。
  • 収納設備:食器や器具を衛生的に保管できる、扉付きの収納棚が求められます。
  • 換気設備:調理中の熱や蒸気を排出するための換気扇が必要です。
  • その他:従業員の更衣スペースや、十分な明るさの照明、害虫駆除の対策なども基準に含まれます。

このように、食中毒を防ぎ、安全な食品を提供するためにさまざまな条件が設けられています。

キッチンカー内でできる調理と仕込みの範囲

2021年6月の食品衛生法改正により、キッチンカー(営業車)に関する基準が全国的に統一されました。

原則として、キッチンカーの車内で行えるのは、あらかじめ仕込み場所で下ごしらえした食材を「加熱する」「盛り付ける」「提供する」といった最終的な調理工程です。野菜を洗ってカットしたり、肉を切り分けたりといった本格的な仕込み作業は、許可を得た別の施設で行う必要があります。

ただし、自治体の判断によっては、提供する品目に応じて「野菜を洗う」などの軽微な作業が車内で認められるケースもあります。どの範囲の作業が許可されるかは、営業許可を申請する保健所に必ず事前に確認しましょう。

出典:食品衛生法の改正について|厚生労働省

キッチンカーの仕込み場所として認められる主な選択肢

仕込み場所を確保するには、自分で用意する方法と、既存の施設を借りる方法があります。それぞれの特徴、メリット、デメリットをふまえて、ご自身の事業計画や予算に合った方法を選びましょう。費用や利便性を比較検討することが大切です。

レンタルキッチンやシェアキッチンを利用する

営業許可を取得済みの厨房施設を、時間単位や月額で借りる方法です。

メリットは、開業時の初期費用を大幅に抑えられる点です。必要な設備がそろっているため、すぐに利用を開始できます。一方、デメリットとしては、利用したい日時に予約が取れない可能性や、他の利用者と共同で使うためのルールを守る必要がある点が挙げられます。月々のレンタル費用も発生します。

飲食店の厨房を間借りする

既存の飲食店の、使われていない時間帯(アイドルタイム)の厨房を借りる方法です。

すでに営業許可を得ており、プロ仕様の設備が整っているため、効率的に作業できるのがメリットです。デメリットは、貸主である店舗オーナーとの関係構築が求められることや、利用できる時間や曜日に制約があることです。賃料や利用ルールについては、双方で納得のいくまで話し合い、書面で契約を交わすことがトラブル回避につながります。

自宅のキッチンを改装して営業許可を取得する

自宅の一部を改装し、居住スペースとは完全に区画された営業専用の厨房を設けて許可を取得する方法です。

好きな時間に仕込みができ、移動時間がかからない点が大きなメリットでしょう。しかし、改装には保健所の基準を満たすための大規模な工事が必要で、数百万円単位の費用がかかることもあります。また、生活スペースと完全に分けなければならず、工事期間中は生活にも影響が出ます。

プレハブやコンテナハウスで仕込み場所を作る

自宅の敷地内などに、独立したプレハブやコンテナハウスを設置し、厨房として営業許可を取得する方法です。

自宅の改装と比べて、住居部分への影響が少なく、自由な設計ができるのがメリットです。ただし、プレハブ本体の購入費用や設置費用、厨房設備の導入費用など、初期投資は高額になります。また、設置にはある程度の広さの土地が必要であり、建築基準法上の確認が必要になる場合もあります。

自宅をキッチンカーの仕込み場所にする際の注意点

移動時間がなく便利なため、住んでいる一軒家やアパートを仕込み場所にしたいと考える方は少なくありません。しかし、実現するにはいくつかのハードルがあります。とくに集合住宅であるアパートでは、規約や衛生設備の問題から難しいのが実情です。

自宅のキッチンを改装する場合の条件と費用

自宅のキッチンを仕込み場所にするには、保健所の基準を満たすための改装工事が必要です。

具体的には、シンクを営業用の二槽シンクに入れ替え、専用の手洗い器を設置し、床や壁を耐水性のある掃除しやすい素材に変更する、といった工事が求められます。居住スペースとの間に壁や扉を設けて、完全に区画することも必須です。

工事費用は、規模や導入する設備によって大きく変わりますが、100万円から300万円程度、あるいはそれ以上かかることも想定しておく必要があります。

アパートのキッチンで仕込みができない理由

アパートやマンションといった集合住宅のキッチンを、キッチンカーの仕込み場所として営業許可を得ることは難しいといえます。

主な理由として、まず賃貸借契約で事業目的での使用が禁止されているケースがほとんどです。また、排水管の構造や電気容量などが業務用に対応しておらず、大家さんや管理組合の許可を得るのも困難でしょう。仕込み作業に伴う騒音や臭いが、近隣住民とのトラブルに発展するリスクもあります。

出典:賃貸住宅標準契約書|国土交通省

大家さんや管理組合への確認は必須

自宅(とくに持ち家)の改装や、敷地内にプレハブを設置して仕込み場所にしようと計画する場合でも、事前に確認すべきことがあります。

分譲マンションであれば管理規約で事業利用が制限されているかもしれません。また、住宅ローンを利用している場合、契約内容によっては居住以外の目的での使用が認められないこともあります。後々のトラブルを避けるためにも、関連する規約の確認や、管理組合、金融機関への事前相談を行いましょう。

キッチンカーで仕込み場所が不要になるケースとは

提供するメニューによっては、必ずしも専用の仕込み場所を用意しなくても営業が可能な場合があります。初期投資を抑えたい、まずは小さく始めたいと考える方にとっては、有力な選択肢となるでしょう。

仕込み済みの食材や半製品を活用する

仕込みが不要になる最も一般的な方法が、すでに加工・調理された食材を利用することです。

たとえば、冷凍された唐揚げやポテト、業務用のソース、カット済みの野菜、缶詰などを仕入れて、キッチンカーでは温めたり組み合わせたりするだけで提供します。この方法であれば、仕込み場所を確保するための初期投資や手間を省けます。ただし、原価が高くなる傾向があり、オリジナリティを出しにくいという側面もあります。

ドリンクやかき氷など簡易的な調理のみのメニュー

仕込み作業そのものがほとんど発生しないメニューを選ぶのも一つの方法です。

注文を受けてから豆を挽いて淹れるコーヒーや、シロップと氷を機械にかけるだけのかき氷、市販のジュースを混ぜるタピオカドリンクなどが該当します。これらのメニューは、車内で作業が完結しやすく、保健所の許可も比較的得やすい傾向にあります。メニューの幅は狭まりますが、専門店として特化することで強みになる場合もあります。

「仕込み不要」で営業するメリットとデメリット

仕込み場所を不要にする営業形態には、良い面と注意すべき面の両方があります。

最大のメリットは、仕込み場所を確保するための費用や時間を大幅に削減できる点です。これにより、開業資金を抑え、スピーディーに営業を始めることができます。

一方、デメリットは、メニューの選択肢が限られること、仕入れコストが高くなり利益率が圧迫されやすいこと、他店との差別化が難しくなることなどが挙げられます。

キッチンカーの仕込み場所探しでよくある疑問と対策

仕込み場所の準備は、キッチンカー開業におけるつまずきやすいポイントの一つです。実際に探し始めると、さまざまな疑問や不安が出てくるでしょう。ここでは、よくある質問とその対策をまとめます。

自治体ごとのルールの違いと確認方法は?

2021年の食品衛生法改正でキッチンカーに関する大きな枠組みは統一されましたが、施設基準の細かな解釈や運用は、現在も管轄の保健所によって異なる場合があります。

たとえば、シンクのサイズや手洗い設備の仕様、許可される作業範囲など、細部で違いが見られます。そのため、必ず出店を計画している地域の保健所に事前相談に行くようにしましょう。その際は、提供予定のメニューを伝え、どのような設備が必要か、車内での作業はどこまで許されるかなど、具体的な内容を確認することが大切です。

出典:食品衛生法の改正について|厚生労働省

仕込み場所の費用を抑えるには?

仕込み場所にかかる費用は、開業資金の中でも大きな割合を占めます。コストを抑えるにはいくつかの方法が考えられます。

最も手軽なのは、レンタルキッチンやシェアキッチンを時間単位で利用することです。また、飲食店のアイドルタイムを狙って間借りの交渉をすれば、比較的安い賃料で借りられるかもしれません。自宅改装やプレハブ設置を検討する場合は、国や自治体が提供する小規模事業者向けの補助金や助成金が活用できないか、調べてみるのもよいでしょう。

契約前に確認しておくべきことは?

レンタルキッチンや飲食店の厨房を間借りする場合、口約束で済ませずに必ず書面で契約を交わしましょう。

後々のトラブルを防ぐために、契約書では以下の点を確認します。

  • 利用できる曜日や時間帯
  • 料金体系(固定費、光熱費の負担など)
  • 利用ルールの詳細(清掃、ゴミ処理など)
  • 万が一の事故に備えた保険の加入状況
  • 契約期間と解約条件

これらの内容を双方が納得したうえで契約することが、良好な関係を保ちながら事業を続けることにつながります。

自分に合ったキッチンカーの仕込み場所を見つけることが成功への第一歩

キッチンカーの開業準備では、ついメニュー開発や車両のカスタマイズに気持ちが向かいがちですが、安心して営業を続けるためには「仕込み場所」の確保がとても大切です。

食品衛生法などのルールを守り、安全な商品を提供することは、お客様からの信頼を得るための大前提となります。レンタルキッチンを利用するのか、お店を間借りするのか、あるいは自宅を改装するのか。それぞれの方法に良い点と注意点があります。

メニューや予算、理想の働き方をよく考えて、長期的な視点で「ここなら続けられる」と思える場所を選びましょう。


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