• 作成日 : 2025年9月25日

キッチンカーと移動販売車の違いとは?許可から選び方までの完全ガイド

店舗を持たずにビジネスを始められる移動販売は、飲食業や小売業において非常に魅力的な選択肢です。その際、「キッチンカー」と「移動販売車」という言葉を耳にしますが、この2つがどう違うのか、ご存知でしょうか?

これらは似て非なるもので、その定義から必要な許可、適した商材まで異なります。

この記事では、これから移動販売を始めたい方へ向けて、二つの車両の根本的な違いから、事業目的に合わせた最適な車両の選び方、開業に必要な手続きまで、網羅的に解説します。

キッチンカーと移動販売車の基本的な違い

移動販売車とは自動車などを用いて、店舗以外の場所で食品や雑貨類等の販売を行う形式です。一方、キッチンカーは自動車に調理設備が備えてあり、調理したものを販売するのが特徴です。

「キッチンカー」は車内で調理を行う移動販売車

一方、「キッチンカー」は、移動販売車の中でも特に「車内にキッチン設備を備え、その場で調理した食品を提供する車両」に限定して使われる呼称です。「フードトラック」とも呼ばれ、シンクやコンロ、冷蔵庫などを搭載し、温かい食事や冷たいスイーツなどを提供します。

キッチンカーと移動販売車で必要な許可と資格

移動販売の開業には、いくつかの許可や資格が必須です。ここでは、「すべての移動販売に共通する許可・資格」と、「キッチンカー独自に必要な許可」の2ステップで、シンプルに解説します。

すべての移動販売車に共通の許可と資格

どのような商品を売るかに関わらず、移動販売ビジネスを始める上で土台となる許可と資格です。

  • 許可①:車両の車検(自動車検査証)
    大前提として、公道を安全に走行できる車両でなければなりません。設備を積むため、多くは特殊用途自動車(8ナンバー)として登録されます。
  • 許可②:営業場所の許可
    公園、イベント会場、商業施設の駐車場など、実際に営業したい場所の管理者から、その都度許可を得る必要があります。公道で無断営業することは法律で禁じられています。
  • その他の許可(必要な場合)
    扱う商品によっては、専門の許可が必要です。例えば、古着や古本など中古品を売るなら「古物商許可」が、包装済みの食肉や魚介類を売るなら「食肉等販売業」「魚介類販売業」といった許可が別途求められます。
  • 資格
    食品衛生責任者(食品を扱う場合)の資格を必ず取得しましょう。 調理の有無にかかわらず、パンやお弁当、野菜など、お客様の口に入る食品を販売する場合は、この資格を持つ人を施設ごとに1名置くことが法律で義務付けられています。

キッチンカーに必要な許可と資格

上記の許可・資格に加えて、車内で火を使ったり、食材を盛り付けたりといった「調理」を行うキッチンカーの場合は、飲食店と同じ、最も厳格な許可が追加で必要になります。

【追加で必要な許可:飲食店営業許可】

これが、キッチンカーと他の移動販売車を分ける決定的な許可です。管轄の保健所から取得し、飲食店営業許可があることで初めて、出来立ての温かい料理やその場で作るスイーツが提供できるようになります。取得のためには、給排水タンクの容量やシンクの数など、自治体が定める厳しい施設基準をクリアした厨房設備が車内に必須です。

※注意:必要な許可の正式名称や基準は、営業する自治体によって大きく異なる場合があります。計画段階で、必ず出店を希望する地域の保健所や関係各所に直接問い合わせて確認するようにしてください。

【目的別】キッチンカー・移動販売車の選び方

車両選びは、事業の成否を左右する重要な決断です。「何を・どこで・いくらで売りたいか」という目的に沿って、最適な一台を見つけましょう。

目的1:提供したいメニューから選ぶ

  • ドリンクや軽食(クレープ、コーヒー等)がメインなら → 「軽トラック・軽バン」
    大がかりな設備が不要なため、コンパクトな車両で十分です。小回りが利き、狭い場所にも出店しやすく、初期費用や維持費も抑えられます。
  • 本格的な食事(カレー、ピザ等)を提供したいなら → 「普通車バン(1t〜1.5tトラック)」
    複数の調理器具を載せ、複数人で効率よく作業するには、広いスペースと十分な積載量が必要です。対応できるメニューの幅が広がり、売上アップも狙えます。

目的2:メインの出店場所・営業スタイルから選ぶ

  • 平日のオフィス街や住宅街で販売したいなら → 「軽自動車〜普通車バン」
    限られた時間とスペースで営業するには、準備・撤収がしやすい機動力の高さが武器になります。大きすぎる車両は出店場所が限られるため注意が必要です。
  • 週末の大型イベントやフェスに出店したいなら → 「普通車バン〜大型トラック」
    多くのお客様に対応するため、食材を大量にストックでき、スムーズに調理できる広い厨房が求められます。大きな車体は遠くからでも目立ち、それ自体が強力な看板になります。

目的3:開業予算とスピード感から選ぶ

  • 初期費用を抑え、スピーディーに始めたいなら → 「中古車を購入する」
    中古車は新車に比べて費用を大幅に削減でき、納車も早いのが魅力です。ただし、希望のレイアウトでなかったり、設備の劣化があったりするリスクも。特に個人売買では、営業許可基準を満たしているかなど、慎重な確認が不可欠です。
  • デザインや機能にこだわり、理想のお店を実現したいなら → 「新車を製作する」
    外装から厨房レイアウトまで、すべてを自由に設計できます。ブランドイメージを完璧に表現し、作業効率を最大化した理想の一台が手に入ります。ただし、費用は高額になり、納車まで数ヶ月かかるのが一般的です。

キッチンカー・移動販売車に向いている商材

自身の事業がどちらの形態に適しているか、具体的な商材例から考えてみましょう。

キッチンカー(調理あり)に向いている商材例

その場で調理する付加価値が活きる、出来立ての商品が中心です。特にイベントでは、片手で気軽に食べられるワンハンドフードが人気です。

  • 食事系: カレー、タコライス、ロコモコ、ケバブ、焼きそば、唐揚げ、ピザ
  • 軽食・スイーツ系: クレープ、ワッフル、かき氷、タピオカドリンク、スペシャルティコーヒー

キッチンカー以外の移動販売車(調理なし)に向いている商材例

別の場所で製造・包装された商品や、食品以外のアイテムを販売します。

  • 食品(包装済み): こだわりのパン、焼き菓子、弁当、農家直送の野菜や果物
  • 物販: ハンドメイド雑貨、古着、アクセサリー、移動花屋、セレクト古本屋

集客力アップ!おしゃれな移動販売車にするためのポイント

数ある出店者の中からお客様に選んでもらうには、車両の見た目が極めて重要です。

  • コンセプトに合った外観:お店の第一印象を決めるカラーリングとロゴは、遠くからでも認識しやすく、提供する商品のイメージに合わせましょう。(例:オーガニックなら緑や白、情熱的な料理なら赤や黄色)
  • 照明や装飾の効果的な活用:特に夜間営業では、照明が雰囲気を創り出します。暖色系のライトや間接照明で温かみや洗練さを演出し、タペストリーや黒板メニューで個性を光らせましょう。
  • 「見た目」と「効率」を両立したレイアウト:おしゃれさだけを追求して作業がしにくくなっては本末転倒です。お客様からの注文、調理、提供までがスムーズに行える「動線」を意識した設計が、顧客満足度を高めます。

違いを理解し、あなただけの移動販売ビジネスを始めよう

この記事では、キッチンカーと移動販売車の違いから、必要な許可、車両の選び方までを解説しました。

  • 移動販売車: 商品を移動販売する車両の総称。
  • キッチンカー: その中でも、車内で調理を行う専門車両。

この基本的な違いと、ご自身の事業計画(メニュー、出店場所、予算)を照らし合わせることで、取るべき手続きや準備すべき車両が明確になります。ぜひ今回の内容を参考に、あなたの理想の移動販売ビジネスを始めてください。


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