• 作成日 : 2025年3月27日

飲食店におけるABC分析のやり方・活用方法を解説

飲食店経営において、適切な在庫管理や売上向上は重要なテーマです。その中で「ABC分析」という手法が注目されます。これは、売上や在庫を商品の重要度に応じて分類し、経営資源を効率的に配分するための分析方法です。本記事では、飲食店でのABC分析の具体的なやり方や、その活用方法について詳しく解説します。ABC分析を適切に理解し実践することで、戦略的な経営が可能になります。

ABC分析とは

ABC分析は、在庫や販売データを基にして、商品やサービスを重要度によって分類する手法です。この方法により、特に注力すべきアイテムを明確化し、効率的な経営戦略を立てることができます。

ABC分析は主に、売上や利益に応じて商品のグループを分けることで、経営資源を最適に配分するために利用されます。具体的には、売上の上位20%のアイテムが全体の80%の売上を占めるというパレートの法則に基づき、商品をA、B、Cの3つのカテゴリに分類します。

A商品

A商品は、売上や利益において最も重要なアイテムであり、全体の中で高いパフォーマンスを発揮します。このグループは通常、売上の約70%から80%を占め、企業にとっての主力商品です。顧客が最も求める商品であるため、在庫管理やマーケティング活動において特に注意を払う必要があります。

B商品

B商品は、A商品ほどの重要性はないものの、一定の売上を確保しているアイテムです。全体の売上の約15%から25%を占めており、安定した収益源となることがあります。B商品の管理はA商品ほど厳密でなくても良いですが、売上の増加を目指すための戦略を考えることが重要です。

C商品

C商品は、全体の売上において最も少ない割合を占めるアイテムです。通常、これらは売上の約5%から10%を占めますが、利益率が高い場合もあります。このグループには、販売頻度や売上が低いため、モニタリングを怠りがちです。しかし、適切に管理することで、思わぬ利益を生み出す可能性があります。

ABC分析は、飲食店の経営においても非常に有効です。メニューの中で特に売れる料理や、逆に売上が低迷しているアイテムを把握することで、プロモーションやメニュー改善の方向性を見出すことができます。データ分析を通じて、店舗の運営をより効率的に行うための基盤を提供するのがこの手法の最大のメリットです。

飲食店がABC分析で売上分析(メニュー分析)する方法

1. ABC分析の準備

(1) 期間を決める

まず、分析する期間 を決めましょう。

  • 1か月単位や3か月単位など、ある程度の売上データがたまる期間がよい。
  • 季節メニューがある場合は、なるべく季節が混ざらないような期間にすると分析結果が安定しやすい。

(2) 必要なデータを集める

次に、以下のデータを用意します。

  1. メニュー名
  2. 販売数(売上個数)
  3. 売上金額(合計金額)
  4. その他:原価や利益が分かればさらに良い(ただし最初は売上だけでもOK)
    ポイント:まずは「売上金額」にフォーカスするとABC分析をシンプルに始められます。

2. ABC分析の手順

(1) メニューを「売上金額」で大きい順に並べる

Excelやスプレッドシートに、先ほど用意したメニューのデータを入力し、“売上金額”で降順(大きい順)に並べ替え ます。

メニュー名売上金額(円)販売数(個)
A定食300,000200
Bラーメン250,000250
Cカレー200,000180
Dパスタ150,000100
Eサラダ100,00080
Fスイーツ80,00060
Gドリンク50,000100

並び替えたら、上から売上金額が高いメニューが順番に並びます。

(2) 売上の累計と全体に対する割合を計算する

並べ替えたら、各メニューの累計売上と、全体売上に対する累計の割合(%)を計算します。Excelなどでは「合計金額をもとに累計を出して、その累計を全体売上で割る」といった計算式を設定するだけでOKです。

  1. 全メニューの売上合計を求める
    • 合計 = 300,000 + 250,000 + 200,000 + 150,000 + 100,000 + 80,000 + 50,000 = 1,130,000円
  2. 各行の「累計売上金額」を計算する
    • A定食までの累計 = 300,000
    • A定食 + Bラーメンまでの累計 = 300,000 + 250,000 = 550,000
    • A定食 + Bラーメン + Cカレー = 550,000 + 200,000 = 750,000
      …といった具合で下へ足していく。
  3. 全体売上に対する累計売上の割合(%)
    • (累計売上 ÷ 全体売上) × 100
    • 例:A定食までの累計は300,000なので、(300,000 ÷ 1,130,000) × 100 ≈ 26.5%
    • 例:A定食 + Bラーメン= 550,000 なので、(550,000 ÷ 1,130,000) × 100 ≈ 48.7%
      というように順番に計算していく。

(3) A・B・Cのグループ分け

累計売上の割合が

  • 70〜80%ぐらいまでを Aグループ
  • 80〜90%ぐらいまでを Bグループ
  • それ以降 を Cグループ

など、自分の飲食店の状況に合わせて区切りを決めます。

たとえば、

  • 1位のA定食(300,000) → 全体の26.5%
  • 2位のBラーメンまでで48.7%
  • 3位のCカレーまでで66.4%
  • 4位のDパスタまでで79.7%
  • 5位のEサラダまでで88.5%
  • 6位のFスイーツまでで95.6%
    …というふうに累計割合が上がっていくとします。

上の例だと、累計79.7%まで(Dパスタまで)をAグループ、そこから88.5%(Eサラダまで)をBグループ、それ以降(FスイーツやGドリンク)をCグループ、といった形になります。

3. 分析結果の読み方・活かし方

(Aグループ)

  • 売上を大きく支えているメニュー が並んでいます。
  • もし原価率が高すぎる(利益が少ない)などの問題があれば、レシピや価格の見直しをするとお店の利益が大きく変わる可能性があります。
  • 広告やSNS、メニュー表での見せ方をさらに工夫することで、売上アップに直結します。

(Bグループ)

  • 中堅どころのメニューです。伸びしろがあるメニューが含まれている場合も多いです。
  • Aグループに引き上げることができそうなものは、プロモーションや改良の候補に。
  • Aグループにはならないまでも、安定して売れるように品質維持やサービス向上などを行うと良いでしょう。

(Cグループ)

  • 売上貢献は少なめですが、「実は付加価値が高い」メニューが混じっている場合もあります。
  • 原価率が高すぎるなどで赤字になっているなら、メニュー削除や改善を検討します。
  • メニューが多すぎるとオペレーションの複雑化を招くため、集客効果が低いCメニューを整理して店の回転を良くするという選択もあります。

飲食店がABC分析で売上分析を行うことは、効率的なメニュー管理や利益最大化に役立ちます。この手法を活用することで、どのメニューが利益を生んでいるのか、または必要なくなったアイテムは何かを明確にすることができます。

飲食店におけるABC分析の活用方法

飲食店におけるABC分析は、売上の効率的な管理と改善に不可欠です。この手法を用いることで、どのメニューが収益に対して最も大きな影響を持つかを明確化し、経営戦略を最適化することが可能になります。

まず、ABC分析を活用するためには、売上データをもとに商品の分類を行うことが必要です。一般的に、売上における重要性や貢献度に基づいて、商品をA、B、Cの3つのカテゴリに分けます。

Aランク商品の特定

Aランクに分類される商品は、全体の売上の大部分を占めるため、特に注力が必要です。例えば、売上の70%を占める20%のメニューがこれに該当します。これらの商品は、品質の維持やプロモーション活動に重点を置くことで、さらなる売上の向上を図ることができます。

Bランク商品の見直し

Bランクは、売上の中程度の貢献をする商品であり、全体の売上の約20%を占める30%のメニューが含まれます。これらの商品は、顧客の嗜好や季節に応じたプロモーションや改善策を検討することで、Aランクに押し上げる可能性があります。

Cランク商品の管理

Cランクの商品は、売上の小部分を占める残りの50%のメニューです。このレベルの商品は、特に注力する必要はないものの、在庫や原価管理の観点から無駄を省くことが求められます。場合によっては、メニューから外す選択も検討することが効果的です。

このように、ABC分析を通じて飲食店は、それぞれの商品に対する適切な対応を行い、効率的な経営を実現できます。また、売上だけでなく、顧客のニーズに基づいた商品開発やマーケティング戦略にも役立てることができますので、ぜひ実践してみてください。

飲食店におけるABC分析の注意点

飲食店におけるABC分析は効果的な売上向上の手段ですが、注意すべきポイントも存在します。正確に分析を行うためには、いくつかの重要な注意事項を把握しておく必要があります。

データの正確性を確保する

ABC分析を行う際には、使用するデータの正確性が非常に重要です。販売データや在庫管理データが不正確な場合、分析結果が偏ってしまい、誤った施策を導入してしまう可能性があります。例えば、誤ったデータに基づいてメニューを調整した場合、実際には人気のあるメニューを削除してしまう結果を招くことがあります。このため、日常的なデータの確認と更新が不可欠です。

過去のトレンドに依存しない

ABC分析は過去の販売データを元に分析を行いますが、過去のトレンドに過度に依存することは避けるべきです。環境の変化や市場のトレンドが変わることはしばしばあります。たとえば、新しい食文化や流行が出現した際には、これまで人気があった商品がその影響を受けることがあります。そのため、過去のデータだけでなく、定期的な市場調査や競合分析も行うことが必要です。

カテゴリの設定に注意する

ABC分析では、商品のカテゴリ分けが重要です。カテゴリの設定が適切でないと、分析そのものが意味を持たなくなる場合があります。たとえば、揚げ物とサイドメニューを同じカテゴリにすることで、真の人気メニューを見逃してしまうことがあります。カテゴリ分けを行う際には、商品の特性や顧客のニーズを考慮し、論理的な基準をもとに行うことが大切です。

結果の解釈に細心の注意を払う

ABC分析の結果を解釈する際には、その背景にある要因を考慮することが重要です。たとえば、あるメニューがAランクに位置付けられていたとしても、一時的なキャンペーンに依存している場合もあります。このような誤解を招かないためには、他の指標や顧客のフィードバックと合わせて総合的に判断する必要があります。

継続的な見直しと改善を行う

一度ABC分析を行ったからといって、その結果に満足していてはなりません。市場環境や顧客の嗜好は常に変化しています。定期的に分析を見直し、新たなデータや情報をもとに改善を行うことが成功の秘訣です。これにより、常に最適なメニュー戦略を維持し、売上を向上させることができます。

まとめ

飲食店におけるABC分析は、効率的なメニュー管理と売上向上の鍵を握っています。顧客のニーズに応じてメニューの見直しを行うことで、収益性の高い商品を特定し、適切なマーケティング戦略を講じることができます。また、在庫管理や仕入れの最適化も図れるため、コスト削減にも繋がります。ただし、分析結果を鵜呑みにせず、実際の顧客の反応やトレンドを考慮した上で運営を行うことが重要です。このように、ABC分析を有効に活用することで、飲食店の競争力を高めることができるのです。


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