• 作成日 : 2025年11月6日

飲食店の電気代を削減するには?平均相場と内訳、厨房・空調の効果的な節約術、電力会社の選び方を徹底解説!

飲食店経営において、売上向上と並行して取り組むべき重要な課題が「コスト削減」です。中でも、毎月必ず発生する水道光熱費、特に「電気代」は多くの経営者を悩ませる経費の一つではないでしょうか。

この記事では、飲食店の電気代の平均相場や主な内訳といった基本情報から、明日から実践できる具体的な節約術、さらには電力会社の切り替えといった根本的なコスト削減策までを網羅的に解説します。自店のコスト構造を見直し、利益改善につなげるためのヒントがここにあります。

飲食店の電気代、平均相場はいくら?

飲食店の電気代の平均は、店舗規模にもよりますが月額3万円〜15万円程度が目安です。一般的に、売上高の3%〜7%の範囲内に収めるのが健全な経営の一つの指標とされています。

電気代は、店舗の坪数、業態、席数、営業時間、立地など様々な要因で変動します。まずは自店の電気代が平均的な水準と比べてどうなのかを客観的に把握することが、コスト意識を高める第一歩となります。

【坪数別】電気代の目安一覧

店舗の広さは、電気代を左右する大きな要因です。空調や照明の規模が広さに比例するためです。

店舗規模(坪数)月額電気代の目安
〜15坪(小規模店舗)30,000円 ~ 60,000円
15〜30坪(中規模店舗)60,000円 ~ 120,000円
30坪以上(大規模店舗)120,000円 ~

※上記の金額はあくまで一般的な目安です。最新の省エネ設備を導入しているか、24時間営業かなどによっても変動します。

売上高に占める電気代の割合は3〜7%が目安

坪数だけでなく、売上高に対する比率で見ることも重要です。株式会社シンクロ・フードの調査によると、飲食店においては、水道・ガス・電気などの光熱費が売上の約5%以下であるという回答が過半数を占めています。

もし、電気代比率が7%を大幅に超えている場合は、何らかの要因で電力を過剰に消費している可能性があります。

参照: 飲食店.COM(株式会社シンクロ・フード)調べ

業態によっても電気代は変わる

大量の熱を発生させる調理機器を多用する焼肉店、中華料理店、鉄板焼き店などは、他の業態に比べて電気代(ガス代含む)が高くなる傾向があります。強力な排気ダクトや冷房設備が必要になるためです。一方で、カフェやバーなど、比較的大掛かりな調理が少ない業態は、電気代を抑えやすいと言えるでしょう。

なぜ飲食店の電気代は高くなる?3つの主な内訳

飲食店の電気代が高くなるのは、「厨房機器」「空調」「照明」の3つが電力消費の大部分を占めるためです。特に、熱を発し、24時間稼働し続ける厨房機器が全体の約半分を占めることも珍しくありません。

消費電力の大きい設備を正しく把握することが、効果的な節電対策を講じるための鍵となります。それぞれの内訳を詳しく見ていきましょう。

内訳1:厨房機器(消費電力の約40〜50%)

飲食店の心臓部である厨房は、まさに電気消費の中心地です。

  • 24時間稼働の機器:業務用冷蔵庫・冷凍庫、製氷機などは、営業時間にかかわらず常に電力を消費し続けます。
  • 高出力の熱源機器:IH調理器、電子レンジ、フライヤー、コンベクションオーブン、食器洗浄機などは、使用時に非常に大きな電力を必要とします。

内訳2:空調(消費電力の約20〜30%)

お客様に快適な空間を提供するため、空調は不可欠ですが、これもまた大きな電力消費源です。

  • 客席の冷暖房:お客様の満足度に直結するため、安易に停止することはできません。特に夏場や冬場のピーク時には稼働時間が長くなります。
  • 厨房の排熱と換気:厨房で発生する熱を強力な換気扇で排出し、同時に外気を取り込んで冷房で冷やすため、家庭用とは比較にならないほどの電力を使います。

内訳3:照明(消費電力の約10〜20%)

店舗の雰囲気を演出し、安全を確保するために必要な照明も、積み重なると大きなコストになります。

  • 長時間の点灯:営業時間が長いほど、照明にかかる電気代も増加します。
  • 演出照明:スポットライトや間接照明など、店舗のコンセプトに合わせて多くの照明器具を使用すると、その分消費電力も増えます。

明日からできる!飲食店の電気代を削減する具体的な節約術とは?

日々の運用改善で電気代を節約するには、「空調の適切な設定と管理」「厨房機器の効率的な使用」「照明のLED化」が即効性の高い3大ポイントです。

高額な設備投資をせずとも、スタッフ全員で節電意識を高め、日々の機器の使い方を見直すだけで、電気代は着実に削減できます。ここでは、誰でもすぐに取り組める具体的な手順を紹介します。

【空調編】設定温度の見直しと空気循環の工夫

STEP1:冷暖房の設定温度を適正に保つ

環境省が推奨する室温の目安(冷房時28℃、暖房時20℃)を基準に、お客様が不快に感じない範囲で設定温度を調整しましょう。設定温度を1℃変えるだけで、消費電力は約10%も削減できると言われています。

STEP2:サーキュレーターや扇風機を併用する

冷たい空気は下に、暖かい空気は上に溜まりやすい性質があります。サーキュレーターなどを活用して店内の空気を循環させることで、空調効率が格段にアップし、設定温度を控えめにしても快適な空間を維持できます。

STEP3:フィルターをこまめに清掃する

エアコンのフィルターが目詰まりすると、空気の吸い込みが悪くなり、余計な電力を消費します。2週間に1回程度のフィルター清掃で、冷房時で約4%、暖房時で約6%の消費電力削減につながるとされています。

STEP4:室外機の周環境を整える

室外機の吹き出し口の前に物を置くと、放熱効率が下がり、無駄な電力消費の原因になります。周囲は常に整理整頓し、夏場は「すだれ」などで日陰を作ってあげることも効果的です。

【厨房機器編】冷蔵庫・冷凍庫の使い方を徹底する

STEP1:ドアの開閉時間と回数を最小限にする

ドアを開けるたびに庫内の冷気が逃げ、再び冷やすためにコンプレッサーが作動して電力を消費します。食材の出し入れは計画的に行い、開閉は「素早く、短く」を徹底しましょう。

STEP2:食材を詰め込みすぎない(7割収納が目安)

食材をパンパンに詰め込むと、冷気の循環が悪くなり、冷却効率が低下します。冷気の通り道を確保するため、7割程度の収納を心がけることが節電につながります。

STEP3:パッキンの劣化を定期的にチェック・交換する

ドアのゴムパッキンが劣化して隙間ができると、そこから冷気が漏れ続け、24時間無駄な電力を消費することになります。定期的に点検し、亀裂や硬化が見られたら速やかに交換しましょう。

【照明編】最も確実な節電はLEDへの交換

もし店舗の照明がまだ蛍光灯や白熱電球なら、LED照明への交換を強く推奨します。 初期費用はかかりますが、LEDは従来の照明に比べて消費電力を50%〜85%も削減できます。さらに、寿命が非常に長いため、交換の手間とランプ自体の購入コストも大幅に削減可能です。国や自治体の補助金制度を活用できる場合もあるため、一度調べてみると良いでしょう。

契約を見直すだけでOK?電気代を根本から下げる2つの方法

電気代を根本的に削減するには、現在の電力会社や契約プランが自店にとって最適かを見直すことが最も効果的です。具体的には「電力会社の切り替え」と「契約プランの最適化」を検討しましょう。

2016年4月からの電力自由化により、私たちは地域電力会社(東京電力、関西電力など)以外からも電気を買えるようになりました。これにより価格競争が生まれ、より安価で多様な料金プランが提供されています。

方法1:電力会社の切り替えを検討する(新電力)

電力自由化に伴い市場に参入した「新電力」と呼ばれる小売電気事業者は、飲食店向けのお得なプランを用意していることがあります。

  • 切り替えのメリット:従来の電力会社よりも電気料金単価が安く設定されていることが多く、切り替えるだけで電気代が5%〜10%以上安くなるケースも珍しくありません。
  • 切り替えの簡単さ:電力会社の切り替えは、ウェブサイトなどから簡単に申し込むことができ、原則として工事は不要です。電気の品質や安定供給も従来と全く変わりません。
  • 注意点:切り替えを検討する際は、複数の会社の料金プランを比較できるサイトなどを利用し、自店の電力使用状況(検針票を確認)に基づいたシミュレーションを行うことが重要です。

方法2:契約プラン(契約アンペア・動力プラン)を見直す

現在契約している料金プランが、店舗の実態に合っていない可能性もあります。

  • 契約アンペア(A)の見直し:照明やコンセントで使う電気(電灯契約)の基本料金は、契約アンペア数で決まります。同時に使用する電気機器の量に対して契約アンペアが過剰になっている場合、これを下げることで基本料金を安くできます。
  • 動力プランの見直し:業務用エアコンや大型冷蔵庫などで使用する「動力(三相200V)」は、基本料金の計算方法が電灯契約と異なります。あまり使わない時期でも基本料金が高額になりがちなので、デマンドコントロールシステム(使用電力量を監視・制御する装置)の導入などを検討する価値があります。

電気代の見直しは、利益を生み出す第一歩

本記事では、飲食店の電気代について、平均相場から日々の節約術、そして根本的な契約の見直しまで幅広く解説しました。電気代は「厨房・空調・照明」が三大要因であり、まずは自店の現状を平均と比較して把握することが重要です。

日々の地道な節電努力と並行して、電力会社の切り替えや契約プランの見直しといった抜本的な対策を講じることが、コスト削減を成功させる鍵となります。電気代という経費を正しく管理・削減することは、飲食店の利益体質を強化し、経営を安定させるための確実な一歩となるでしょう。


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