- 作成日 : 2025年11月6日
移動販売のPL保険はなぜ必要?キッチンカーのリスク対策、料金相場、おすすめの選び方を徹底解説
移動販売やキッチンカーの開業で、美味しい料理やサービスを提供することと同じくらい重要なのが、万が一のリスクに備えることです。その中心となるのがPL保険(生産物賠償責任保険)ですが、その必要性や適切な選び方がわからず悩む方も少なくないかもしれません。
この記事では、移動販売におけるPL保険の重要性から、キッチンカーで備えるべき他の保険の種類、気になる料金相場、そして事業に合った保険の選び方まで、専門家の視点からわかりやすく解説していきます。
目次
移動販売にPL保険(生産物賠償責任保険)はなぜ必要か?
移動販売やキッチンカーの運営にPL保険が必要なのは、提供した飲食物が原因でお客様に健康被害や損害を与えてしまった場合の、高額な賠償責任に備えるためです。
食中毒や異物混入といった事故は、どれだけ衛生管理を徹底していても100%防ぐことは難しいといえます。もし、提供した商品が原因でお客様が食中毒になったり、商品内の異物で口の中を怪我したりした場合、事業者は製造物責任法(PL法)に基づき、治療費や休業損害、慰謝料などの損害賠償を請求される可能性があります。
個人事業主や小規模な法人にとって、その賠償額は経営を揺るがしかねない大きな負担となるため、PL保険への加入は事業を守るための必須の対策といえるでしょう。
キッチンカー(移動販売車)が備えるべき保険の種類は何か?
キッチンカーの運営には、PL保険だけでなく、事業形態や運営方法に応じた複数の保険を組み合わせることが推奨されます。主に「PL保険」「自動車保険」「施設賠償責任保険」の3つが基本となります。
これらの保険はそれぞれ補償対象となるリスクが異なるため、一つの保険だけでは全ての事故をカバーできません。事業を取り巻く様々なリスクを漏れなく補償するために、それぞれの保険の役割を理解し、適切に組み合わせることが重要です。
生産物賠償責任保険(PL保険)
提供した飲食物(生産物)に起因する事故を補償する保険です。
- 具体例
- 販売したお弁当で集団食中毒が発生した。
- ドリンクに混入した硬い異物で、お客様が歯を折ってしまった。
- 提供した料理が原因でお客様が重いアレルギー症状を起こした。
自動車保険(任意保険)
キッチンカー(車両)の運転中に発生した事故を補償する保険です。
- 具体例
- 出店場所への移動中に追突事故を起こし、相手の車や運転手に損害を与えた。
- 駐車する際に、誤って他の車両や店舗の壁にぶつけてしまった。
- 車両が盗難に遭った、または車上荒らしの被害を受けた。
- 注意点 キッチンカーは特殊な架装をしているため、一般的な家庭用の自動車保険では補償が不十分な場合があります。事業用(業務用)車両として、適切な補償内容で加入することが不可欠です。
施設賠償責任保険
営業中のキッチンカー本体や、その周りに設置した設備・備品が原因で第三者に損害を与えた場合の事故を補償する保険です。
- 具体例
- 強風でパラソルやのぼりが倒れ、通行人に当たり怪我をさせてしまった。
- お客様が鉄板の近くで火傷を負った。
- 調理中にお客様の衣服を汚してしまった。
- ポイント この補償は、PL保険とセットで加入できる場合が多いため、保険会社に確認してみましょう。
| 保険の種類 | 主な補償対象 | 具体的な事故の例 |
|---|---|---|
| 生産物賠償責任保険(PL保険) | 提供した飲食物が原因の事故 | 食中毒、異物混入による怪我、アレルギー反応 |
| 自動車保険(任意保険) | 車両の運転中・駐車中の事故 | 交通事故(対人・対物)、車両の盗難・破損 |
| 施設賠償責任保険 | 営業中の車両や設備が原因の事故 | 看板の転倒による怪我、調理中の火傷 |
移動販売のPL保険の料金相場はいくらか?
移動販売向けのPL保険の料金は、年間で数千円から数万円程度が一般的な相場です。ただし、この金額はあくまで目安であり、保険料は事業の規模や補償内容によって大きく変動します。
保険料は、主に「年間の売上高」「補償限度額」「免責金額(自己負担額)」「取り扱い品目」などの要素を基に算出されます。例えば、売上規模が大きければそれだけリスクも増えるため保険料は高くなる傾向にあります。また、万が一の際に支払われる保険金の上限(補償限度額)を高く設定すれば、その分保険料も上がります。
保険料を決める主な要素
- 年間予想売上高:売上高が高いほど、潜在的なリスクが大きいと判断され、保険料は高くなる傾向があります。
- 補償限度額(支払限度額):1回の事故で支払われる保険金の上限額です。対人・対物それぞれで設定し、一例として、対人であれば1名あたり1億円や3億円などのプラン、対物であれば1件100万円や1000万円のプランなどがあります。補償額を大きくするほど安心ですが、保険料は上がります。
- 免責金額:事故が発生した際に、自己負担する金額です。免責金額を高く設定すると、保険料を安く抑えることができます。
- 取り扱い品目:提供する飲食物の種類によってもリスクの度合いが異なると判断される場合があります。
料金を安く抑えるためのポイント
保険料を少しでも安くしたい場合は、いくつかの方法が考えられます。
- 補償内容を見直す:過剰な補償限度額になっていないか、免責金額を少し引き上げられないかなどを検討します。ただし、必要な補償を削ってしまうと本末転倒になるため、事業リスクとのバランスを慎重に考える必要があります。
- 複数の保険会社から見積もりを取る:同じ補償内容でも、保険会社によって保険料は異なります。複数の代理店や保険会社から相見積もりを取り、比較検討することが賢明です。
- 団体や組合の保険制度を利用する:所属する商工会議所や業界団体によっては、割安な団体保険制度を用意している場合があります。
おすすめのPL保険の選び方と加入方法は?
自社に最適なPL保険を選ぶためには、補償内容と保険料のバランスを慎重に比較検討し、事業規模やリスクに見合ったプランを選択することが重要です。以下のステップで進めることをおすすめします。
STEP1:必要な補償内容を整理する
まずは、ご自身の事業にどのようなリスクがあり、どれくらいの補償が必要かを考えます。
- 補償限度額はいくらにするか?:もし食中毒事故を起こした場合、被害者が複数名に及ぶ可能性も考慮しなくてはなりません。出店場所が大規模なイベント会場などであれば、より高額な補償を設定しておくと安心感が増すでしょう。一般的には対人・対物ともに1億円以上のプランが推奨されることが多いようです。
- 施設賠償責任の特約は必要か?:パラソルやテーブル、看板などを設置して営業する場合は、施設賠償責任をカバーする特約の付帯を検討しましょう。
STEP2:複数の保険会社や代理店から見積もりを取る
必要な補償内容がある程度固まったら、複数の保険会社や保険代理店に見積もりを依頼します。キッチンカーや移動販売の保険に詳しい代理店に相談すると、事業内容に合ったプランを提案してくれるでしょう。
STEP3:補償内容と保険料を比較検討する
受け取った見積もりを基に、年間の保険料だけでなく、補償範囲の詳細、事故発生時の対応やサポート体制などを総合的に比較します。一番安いプランが必ずしも最適とは限りません。万が一の際に、しっかりと事業を守ってくれる保険を選ぶことが最も大切です。
即日加入は可能か?
「明日からイベントに出店するのに、保険に入り忘れた」といったケースもあるかもしれません。PL保険の即日加入については、保険会社や代理店によります。Webサイトで手続きが完結するタイプの保険であれば即日に近い形で対応可能な場合もありますが、審査や手続きに数日を要するのが一般的です。余裕を持ったスケジュールで加入手続きを進めるようにしましょう。
主な保険会社(損保ジャパン・三井住友海上・東京海上日動)の特徴は?
日本の主要な損害保険会社である損保ジャパン、三井住友海上、東京海上日動は、いずれも飲食店向けのPL保険を取り扱っています。各社で補償内容や特約、サービスに特徴があるため、比較検討する際の参考にしてください。
- 注意点:ここで紹介するのは一般的な特徴であり、内容は改定される可能性があります。必ず公式サイトや正規代理店で最新の情報をご確認ください。
損害保険ジャパン(損保ジャパン)
中小企業から大企業まで、幅広い業種に対応した賠償責任保険を提供しています。飲食業者向けのプランも充実しており、全国に広がるネットワークによるサポート体制が強みです。Webサイトでの情報提供も積極的で、個人事業主でもアクセスしやすい点が特徴といえるでしょう。
三井住友海上火災保険(三井住友海上)
中小企業向けの保険商品に力を入れており、事業活動のリスク全般を包括的にカバーするような保険プランを提供しています。リスクコンサルティングサービスなども展開しており、単に保険に加入するだけでなく、事業のリスク管理について相談したい事業者にとっては心強い存在となりえます。
東京海上日動火災保険(東京海上日動)
業界最大手の一つであり、豊富な実績と安定した経営基盤が特徴です。多様な特約を組み合わせることで、事業者の個別のニーズに合わせたカスタマイズが可能な保険設計に強みがあります。事故対応のノウハウも豊富で、万が一の際のサポート体制にも定評があります。
これらの大手損保会社の商品は、多くの場合、保険代理店を通じて加入することになります。キッチンカーの保険に精通した代理店を探し、相談してみるのが最適なプランを見つける近道といえるでしょう。
美味しい料理と安心を届けるために
この記事では、移動販売やキッチンカーを運営する上で不可欠なPL保険について解説しました。PL保険は、提供した商品が原因で起こる万が一の事故から、お客様とご自身の事業を守るための重要なセーフティネットです。
移動販売の成功のためには、PL保険をはじめとする各種保険への適切な加入が欠かせません。ご自身の事業規模やリスクを正しく把握し、複数の保険プランを比較検討することで、安心して日々の営業に臨むことができます。この記事が、あなたのキッチンカー事業における最適なリスク管理の一助となれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
飲食店の売上分析とは?見るべき指標から改善方法までわかりやすく解説
飲食店の売上分析は、経営状況の改善や現場の見直しにつながる手段です。感覚に頼った経営だけでは限界があるため、データをもとにした判断が欠かせません。この記事では、飲食店の売上分析の基本的な考え方から、活用できる経営指標、Excelやツールの使…
詳しくみるカフェ定員が業務で使える英語フレーズまとめ
カフェで働く皆様にとって、英語を使う場面は増えてきています。国際化が進む中、外国のお客様に対してスムーズにサービスを提供するためには、基本的な英語フレーズを身につけておくことが重要です。この記事では、来店時や注文時、メニュー提供時など、業務…
詳しくみるGoogleマップで理想の飲食店を探す方法|検索のコツと飲食店経営者必見の集客方法も解説
Googleマップは、今や多くの方にとって、お店探しの定番ツールといえるでしょう。しかし、ただ検索機能を使うだけでなく、便利な機能やコツを知ることで、お店選びの質は格段に上がります。 この記事では、基本的な探し方から口コミの賢い見方、さらに…
詳しくみるフードロス対策の面白いアイデアとは?国内外のユニークな企業の取り組み事例から飲食店で実践できることまで解説
飲食店の経営や事業活動において、フードロスは避けて通れない課題ではないでしょうか。しかし、この課題へのアプローチは、コスト削減や環境配慮といった側面だけではありません。近年、消費者を惹きつける「面白い」アイデアや、創造性あふれるフードロス対…
詳しくみるクラウドキッチンとは?仕組みやメリットデメリットまとめ
クラウドキッチンとは、飲食業界の新しい形態であり、実店舗を持たずに調理を行い、主にデリバリーサービスを通じて提供するシステムです。この業態の仕組みは、クッキングスペースを効率的に利用することで、運営コストを抑えつつ、多様なメニューに対応でき…
詳しくみる飲食店クレーム対応マニュアルの作り方!事例と例文でわかりやすく
飲食店を運営していると、どれだけ気をつけていてもクレームをゼロにすることは難しいものです。しかし、クレーム対応の仕方によっては、お客様の不満を和らげ、印象を好転させることにつながる場合もあります。そのためには、しっかりとした「クレーム対応マ…
詳しくみる