- 作成日 : 2025年9月25日
飲食店でアイコスに対応するには?経営者が知っておきたいルールと設備導入のポイント
飲食店を経営している方にとって、アイコスをはじめとする加熱式たばこの取り扱いは、店舗づくりの方針や集客戦略にも関わる重要なテーマです。
2020年4月に改正健康増進法が全面施行され、加熱式たばこも法律の規制対象となったことで、「喫煙できる空間を店内に設けるには、どんな条件が必要なのか」「お客様やスタッフへの影響はどうなのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、飲食店の経営者や店舗責任者の方を対象に、アイコスを含む加熱式たばこの取り扱いに必要な法律知識、喫煙室の設置方法、届出手続き、そして導入メリットとリスクまでをわかりやすく解説していきます。
目次
飲食店でも加熱式たばこは吸えるの?まずは法律の確認から
加熱式たばこの取り扱いについて考えるうえで、まず知っておきたいのが法律の基本ルールです。飲食店で喫煙を許可するには、どのような制限があるのかを把握することが第一歩になります。
改正健康増進法で飲食店の屋内は原則禁煙に
2020年に施行された改正健康増進法では、受動喫煙の防止を目的として、多くの施設で屋内喫煙が禁止されました。飲食店もその対象となり、店内でたばこを吸えるかどうかは、明確なルールに従う必要があります。
このルールの対象には紙巻たばこだけでなく、加熱式たばこも含まれています。紙巻たばこに比べて煙が出にくくにおいも控えめですが、法律上は”加熱式たばこ”として分類されており、屋内での使用は制限されています。
違反した場合のリスクも知っておく
法律に違反すると、保健所などの行政機関から指導を受ける可能性があります。改善されなければ、最大50万円の過料が科されることもあります。こうしたリスクを避けるためにも、正しい知識をもとに適切な対応を進めていくことが大切です。
喫煙可能にするには?加熱式たばこへの対応方法は主に3つ
飲食店で加熱式たばこに対応するには、喫煙できる専用スペースを設ける必要があります。法令に基づいた整備方法は主に3種類あり、それぞれに特徴があります。
1. 喫煙専用室を設ける
紙巻たばこや加熱式たばこを吸うためだけの部屋を作る方法です。この部屋では喫煙のみが認められており、飲食はできません。たばこの使用と飲食スペースをしっかり分けたい場合に適した方法です。
2. 加熱式たばこ専用喫煙室を設ける
加熱式たばこのみに対応した喫煙室を設ける方法です。紙巻たばこは使用できませんが、加熱式たばこを吸いながら飲食ができる点が大きな特徴です。アイコスユーザーの来店を意識した導入を考えている場合に向いています。
3. 経過措置による喫煙可能室を活用する
2020年4月1日時点で営業していた、資本金5,000万円以下・客席面積100平方メートル以下の飲食店には、経過措置として喫煙可能室の設置が認められています。この場合、紙巻・加熱式たばこを吸いながら飲食することが可能です。ただし、新規開業店舗には適用されません。また、実際の運用は自治体によって異なるので、詳しくは所在地の保健所や自治体の最新情報を確認してください。
「加熱式たばこ専用喫煙室」の設置には基準がある
実際に喫煙室を店内に設けるには、法律で定められた技術的な条件をクリアする必要があります。特に加熱式たばこ専用喫煙室をつくる場合は、一定の設備基準が設けられているため、事前の確認が欠かせません。
技術的な条件を満たす必要がある
加熱式たばこ専用喫煙室を設けるには、いくつかの基準をクリアしなければなりません。代表的な条件として、室内から煙が漏れないようにするための空気の流れ(出入口で室外から室内に秒速0.2メートル以上)、完全な区画構造、そして煙を屋外に排出するための排気設備の設置が求められます。
これらの基準を満たすには、専門業者による設計や工事が必要になることがほとんどです。規模によっては、数十万〜数百万円の費用がかかる可能性もあります。
標識の掲示と保健所への届出も必要
喫煙室を設置した場合は、店舗の入口と喫煙室の入口に、決められた標識を掲示することが義務づけられています。あわせて、管轄の保健所に届出書類を提出する必要もあるため、自治体ごとのルールを事前に確認しておきましょう。
導入のメリットと注意したいポイント
加熱式たばこに対応することで得られるメリットは多くありますが、注意すべき点も存在します。導入を検討する際は、店舗の特性や客層との相性をしっかり見極めることが大切です。
喫煙者の来店動機になる可能性も
店内で加熱式たばこが吸えるという点は、喫煙者にとって大きな魅力になります。とくに最近では、喫煙できる店舗が減ってきていることから、「吸える場所」として認知されることで、新たな集客につながるケースもあります。
バーやカフェ、居酒屋など、長時間滞在しやすい業態ではとくに効果的です。
一方で非喫煙者への配慮も必要
喫煙可能な店舗であることを理由に、非喫煙者の来店が減る可能性もゼロではありません。完全分煙を実現していても、「においが気になる」「喫煙者が多い印象がある」といった理由で敬遠されることもあります。
店舗の立地や客層をふまえて、費用対効果をしっかり検討することが大切です。
「IQOSスポット」は販促手段として選択肢に
加熱式たばこに対応したいと考える飲食店は、まず法令に準拠した喫煙環境を整備することが大前提となります。たとえば、改正健康増進法に則り、専用の喫煙室や一定条件を満たしたテラス席などを適切に設置・運用する必要があります。
そのうえで、加熱式たばこが可能な店として認知を高めたい場合は、「IQOSスポット」に登録する方法があります。
IQOSスポットとは?
IQOSスポットは、加熱式たばこ「IQOS」の使用が認められている店舗として、フィリップ モリス ジャパンに登録された飲食店や施設のことです。登録されると公式サイトに掲載され、喫煙可能な店を探しているユーザーに見つけてもらいやすくなります。
たとえばテラス席など、一定の条件を満たせば登録できるケースもあります。
法律を守りながら柔軟に対応する
IQOSスポットに登録することで、加熱式たばこに対応していることをアピールできます。ただし、法律の規制が緩和されるわけではなく、改正健康増進法のルールに従った運用が前提です。
喫煙者への配慮と販促を両立したい場合には、有効な選択肢となるかもしれません。
経営判断には現場の声も参考に
導入を判断する際は、現場の声やデータを参考にすることも重要です。喫煙対応の有無によって、客層や来店頻度にどのような影響があるのかを把握しておくと、経営判断に役立ちます。
経営者が悩む「分煙と集客のバランス」
加熱式たばこへの対応を検討する中で、経営者が悩むのが、喫煙者と非喫煙者の両方にどう対応するかという点です。
飲食店が全面禁煙になった際は喫煙者の来店が減る可能性があり、一方で非喫煙者が増える可能性があります。対応によって客層がガラッと変わるかもしれません。
ユーザーが求めているのは快適に過ごせる空間
喫煙者の中には、「吸える場所が少ない」「喫煙スペースが落ち着かない」と感じている方も多くいます。単に吸えるだけでなく、まわりに気兼ねなく過ごせる清潔で快適な空間が求められていることを意識することが大切です。
店舗の方針と客層に合わせて柔軟に判断を
加熱式たばこに対応するかどうかは、飲食店の経営方針や立地、客層に応じて異なる判断が求められます。法律上のルールをしっかりと理解したうえで、コストや集客効果、非喫煙者への影響を含めて、総合的に検討していきましょう。
喫煙者と非喫煙者のどちらにとっても過ごしやすい環境をつくることが、長く選ばれる店舗づくりにつながっていきます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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