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  • 作成日 : 2025年9月22日

飲食店の物件が見つからない？探し方のコツと契約前のチェックポイント

飲食店の物件探しは、立地選びから契約まで段階的に進めることで成功率が高まります。適切な手順を踏まずに探すと、理想の物件が見つからなかったり、後で問題が発覚したりする可能性があります。この記事では、飲食店の物件探し方の基本から応用まで、初心者でもわかりやすく解説します。

飲食店の物件の探し方の流れ

飲食店の物件探しは、いくつかのステップに分けて進めていきましょう。事業の柱となる計画をしっかり立て、予算を固めてから情報収集に移ることで、判断の軸がぶれにくくなります。この流れをふまえるだけで、理想の物件に出会える可能性がぐっと高まるのではないでしょうか。

1. 事業計画と物件に求める条件を整理する

はじめに、どんな飲食店にしたいかを考えましょう。ターゲットの客層やどんな料理を提供するのかを整理するところから始めます。カフェなら20〜30席程度、居酒屋なら40〜60席程度といったように、業態によって必要な広さが変わってくるからです。

立地についても、ファミリー向けなら住宅街、サラリーマン向けならオフィス街といった具体的な希望を決めておくとよいでしょう。事業計画が具体的になるほど、必要な広さや立地、設備といった物件に求める条件もはっきりしてきます。

2. 予算設定と無理のない資金計画を立てる

次に、物件取得にかけられる予算を決めていきましょう。物件にかかる費用は、毎月の賃料だけではありません。

  • 初期費用：保証金（敷金）、礼金、仲介手数料、前家賃など。一般的に賃料の6ヶ月～12ヶ月分が目安といわれています。
  • 内装工事費：スケルトン物件の場合はとくに高額になることがあります。
  • 設備費用：厨房機器や空調設備、テーブルや椅子などの購入費用です。

賃料は、予測される売上の10%以内が健全な経営の目安とされています。これらの費用を洗い出し、自己資金や融資をふまえた無理のない資金計画を立てることが大切です。

3. 情報収集と実際の物件探しを開始する

条件と予算が固まったら、いよいよ情報収集のスタートです。後ほどご紹介する店舗物件専門のサイトやテナント探しアプリを使ったり、地域の不動産会社に相談したりして、情報を集めていきます。

気になる物件が見つかったら、すぐに問い合わせて内見（現地見学）の予約を入れましょう。人気エリアの優良物件は、情報が出てすぐに申し込みが入ることも珍しくありません。スピード感を持った行動が求められます。

飲食店の物件探しで知っておきたい物件の種類

飲食店向けの物件には、主に「スケルトン物件」と「居抜き物件」という2つのタイプがあります。それぞれの良いところ、気をつけるところを理解して、ご自身の計画や予算に合ったタイプを選ぶことが、スムーズな開業につながります。あわせて、賃貸にするか、購入するかという点も考えてみましょう。

自由な店づくりが可能なスケルトン物件

スケルトン物件とは、建物の骨格（躯体）だけの、内装や設備が何もない状態で貸し出される物件のことです。

内装や厨房のレイアウト、デザインなどをゼロから自由に設計できるので、お店のコンセプトを隅々まで反映させたい場合にはぴったりです。オリジナリティあふれる理想の空間を実現できるのが最大の魅力ではないでしょうか。

その一方で、厨房設備、空調、給排水、ガス、電気といったインフラ設備から内装まで、すべてを新しく設置しなくてはなりません。そのため、居抜き物件に比べて初期費用が高額になり、工事期間も長くなる傾向があります。

初期費用を抑えられる居抜き物件

居抜き物件は、前のテナントが使っていた内装や厨房設備、テーブルなどが残ったままの状態で売りに出されたり、貸し出されたりする物件を指します。

一番のメリットは、なんといっても設備をそのまま使えるため、初期費用を大幅に抑えられる点でしょう。とくに厨房機器は高価なものが多いため、この差は大きいです。また、工事期間が短く済むので、スピーディーな開業ができます。

ただし、注意点もあります。残された設備が古かったり、実は故障していたりするケースも少なくありません。また、前の店のレイアウトに縛られるため、自分のお店のコンセプトに合わない可能性も考えておく必要があります。譲ってもらえる設備の内容や状態は、契約前にしっかり確認しましょう。

賃貸か購入か、判断基準は？

ほとんどの飲食店の開業者は賃貸物件を選びますが、資金に余裕があるなら購入も選択肢のひとつです。

Pお店を賃貸するメリット・デメリット
  • メリット：初期費用を抑えられる、経営状況に応じて移転しやすい、固定資産税がかからない
  • デメリット：毎月の賃料が発生する、契約更新料が必要な場合がある、内装の変更に制限がある
お店を購入するメリット・デメリット
  • メリット：自分の資産になる、レイアウト変更や改装が自由、賃料の支払いがなくなる
  • デメリット：初期費用がとても高額、固定資産税などの維持費がかかる、簡単に移転できない

事業の将来性や資金力をふまえて、慎重に判断することが求められます。一般的には、まず賃貸で開業し、経営が軌道に乗ってから購入を検討するのが現実的な流れといえるでしょう。

効率的な飲食店物件の探し方

理想の飲食店物件と出会うには、できるだけたくさんの情報を集めることが欠かせません。ネットの物件サイトやアプリ、地域密着の不動産屋さん、そして自分の足で歩いて探す方法。これらを上手に組み合わせることで、より良い条件の物件を見つけられる可能性が高まるでしょう。

店舗物件サイトを複数活用する

今や、物件探しにインターネットの物件情報サイトを使うのは当たり前になりました。豊富な情報の中から、条件に合った物件を効率的に探せる便利なツールです。

こうしたサイトでは、エリアや広さ、賃料といった基本的な条件での絞り込みはもちろん、「居抜き物件の一覧」から厨房設備の状態を確認したり、営業中の店舗を引き継ぐ「店舗譲渡情報」を探したりすることもできます。時間や場所を選ばずに多くの物件の写真や間取りを比較検討できるため、希望エリアの相場観をつかむのにも役立ちます。また、物件情報だけでなく、内装工事の会社探しといった開業支援の情報が見つかることもあります。

ただし、ウェブサイトを活用する際には、いくつか心に留めておきたい点があります。

  • サイトに掲載されている物件が、市場に出ている情報のすべてではありません。ネットに載る前に決まってしまう非公開物件も存在します。
  • 写真やデータだけでは、実際の街の雰囲気、日当たりや騒音、設備の細かな状態まではわかりません。
  • 便利なツールですが、あくまで情報収集の手段と考え、気になる物件が見つかったら必ず現地へ足を運び、自分の目で確かめることが大切です。

不動産会社に相談する

物件サイトに載っているものが、市場に出ている物件のすべて、というわけではありません。オーナーさんの意向で公開されていない「非公開物件」や、サイトに載る前の「水面下の物件」というものも存在します。

こうした貴重な情報を手に入れるには、店舗専門の不動産会社に直接相談するのが効果的です。自分の事業計画や希望条件を熱意をもって伝え、良い関係を築くことで、良い情報を紹介してもらいやすくなります。複数の不動産会社をまわって、担当者さんとの相性を見てみるのも良い方法です。

自分の足で歩いて探す

街の雰囲気や人の流れを肌で感じられるため、自分の足で歩いて探すのもおすすめです。「貸店舗」の張り紙が出ている物件にばったり出会うこともあります。

また、営業しているお店の店主さんと話をするなかで、近所の空き物件の情報を教えてもらえるかもしれません。デジタルな方法と、こうしたアナログな方法を両方やってみることが、物件探しを成功に導きます。

飲食店の物件探しで成功するための重要ポイント

飲食店の開業にあたり、良い物件を見つけるには、立地、設備、そしてコストを重視しましょう。この3つのバランスを考えながら、「自分の計画にとって、これだけは譲れない！」という優先順位をはっきりさせておくことが、後悔のない物件選びにつながります。

売上を左右する立地条件の見極める

飲食店を開業する際に立地は売上に直結するため慎重に選びましょう。まず、お店の前の「通行量」をチェックします。ただし、ただ人が多ければ良い、というものでもありません。

  • ターゲット層が多く通るか
    自分のお店に来てほしいお客さま（たとえば、ビジネスパーソン、ファミリー、学生など）が、どの曜日のどの時間帯に、実際にその場所を通るのかを確認します。
  • 平日と休日、昼と夜での人の流れの変化
    ランチ需要がメインのオフィス街、週末に賑わう住宅街など、場所によって人の流れはまったく異なります。必ず曜日や時間帯を変えて複数回現地を訪れ、自分の目で確かめましょう。
  • お店の存在がわかりやすいか（視認性）
    メイン通りからお店がどう見えるかは重要です。角地や1階路面店は目立ちますが、その分、賃料も高くなる傾向があります。2階以上の空中階や地下の物件は、賃料が割安なことが魅力ですが、看板の設置ルールを確認し、お客さまを呼び込むための工夫が必要です。
  • 周辺の競合店の状況とエリアの特性
    まわりにどんな飲食店が繁盛しているかを調べてみましょう。強力なライバル店がいる一方で、「ラーメン激戦区」のように、同じジャンルのお店が集まることでお客さまを呼び込む相乗効果が生まれるエリアもあります。

業態に合った設備と建物の構造か

飲食店を営業するには、専門的な設備が必要です。内見のときには、以下の点を確認してみましょう。

  • 電気容量
    多くの厨房機器を同時に使うため、十分な電気容量（Aアンペア）があるかを確認します。小規模なカフェで50A、厨房機器が多いレストランなら75A以上が目安になることも。容量が足りない場合の増設工事は高額になる可能性があります。
  • ガス
    都市ガスかプロパンガスかを確認します。一般的にプロパンガスはコストが割高になる傾向があります。中華料理のように強い火力が必要な場合は、ガスの供給量（号数）も重要なチェックポイントです。
  • 給排水設備
    厨房には自治体にもよりますが、グリストラップ（油脂分離阻集器）の設置が求められています。設置スペースの有無や、シンクの数、排水管の口径が業態に適しているかを確認しましょう。
  • 排気・換気設備
    煙やにおいをスムーズに外部へ排出できるかは、お客さまとスタッフの快適性、そして近隣トラブルの防止に直結します。住宅が近い物件では、においの苦情を避けるためにビルの屋上までダクトを延長する工事が必要になるケースもあります。

これらの設備工事には高い費用がかかることもあるため、物件にもともと備わっているかは大きなチェックポイントです。

賃料と初期費用のバランスを考える

飲食店の賃料は、月間売上予測の10%以内に抑えるのが健全な経営の目安といわれています。

初期費用については、保証金（敷金）、礼金、仲介手数料、前家賃に加え、内装工事費や設備の購入費（居抜きの場合は造作譲渡料）など、総額でいくらかかるのかを正確に把握しておきましょう。居抜き物件は初期費用を抑えられますが、古い設備の修理代や交換費用が後からかかる可能性も考慮に入れておく必要があります。目先の安さだけでなく、開業から運営までを見通した長期的な視点で、コスト全体のバランスを判断しましょう。

飲食店の物件が見つからない時の対処法

一生懸命探していても、希望にぴったりの物件がすぐに見つかるとは限りません。そんなときは、少し見方を変えたり、探し方を見直したりすると、意外な道が開けることがあります。焦らず、柔軟な発想で向き合っていきましょう。

理想を追い求めすぎていないか条件を見直す

100点満点の完璧な物件はほとんどない、と考えたほうがよいかもしれません。物件が見つからない原因として、もしかしたら設定した条件が厳しすぎることが考えられます。

「駅徒歩3分以内」「1階路面店」「築5年以内」など、すべての理想をかなえようとすると、当てはまる物件はとても少なくなってしまいます。これだけは譲れない「必須条件」と、できれば満たしたい「希望条件」に分けて、優先順位を整理してみましょう。

たとえば、「エリアは変えられないけど、駅からの距離は少しなら歩いてもOK」「広さは譲れないけど、2階や地下の物件も見てみよう」といったように、条件を少し緩めるだけで、選択肢が大きく広がることがあります。

東京などの人気エリアでは探し方の視点を変える

東京のような競争の激しい人気エリアでは、良い条件の物件はあっという間に契約が決まってしまいます。情報収集のスピードを上げると同時に、探し方の視点を変える工夫もしてみましょう。

たとえば、最初は「小さい店舗の賃貸」からスタートするのもひとつの手です。席数が少ない小さなお店であれば、比較的物件が見つかりやすく、最初の投資も抑えられます。まずは小さく始めてファンを増やし、経営が軌道に乗ってから、より広い店舗へ移るという考え方もあります。激戦区だからこそ、柔軟な事業計画がうまくいく鍵になるかもしれません。

「激安居抜き物件」の注意点

開業コストをできるだけ抑えたい方にとって、「激安の居抜き物件」はとても魅力的に見えるでしょう。こうした物件は、前の店が閉まるときに、内装や設備がとても安い価格、あるいは無料で譲ってもらえるケースです。

このような物件情報は、居抜き物件専門サイトで「造作譲渡料無料」といった条件で探したり、不動産会社から紹介されたりします。ただ、安いことには何かしらの理由があることが多いものです。

  • 設備がかなり古くなっている
  • 人通りが少なく、集客が難しい立地
  • 前の店が何らかのトラブルで閉店した

契約する前には、なぜ安くなっているのか、その理由をしっかり調べることが必要です。設備の動作確認はもちろん、近所の人に話を聞いてみるなど、慎重に判断しましょう。

飲食店物件の契約前に確認すべきチェックポイント

飲食店開業に向けて理想の物件が見つかり、「いよいよ契約！」となっても、ここで焦るのは禁物です。契約を交わす前に、法律のことや契約内容をしっかり確認しておくことが、将来の思わぬトラブルを防ぎます。とくに個人で契約するなら、いくつか準備しておくこともあるので、チェックしていきましょう。

飲食店営業に関わる法的な規制と許可

その物件で問題なく飲食店の営業許可が取れるかどうかを確認する必要があります。

  • 用途地域：
    都市計画法や建築基準法によって、用途地域の区分や地域ごとに建てられる建物の種類が決まっています。たとえば「第一種低層住居専用地域」では、基本的に飲食店は営業できません。自治体のウェブサイトや窓口で必ず確認しましょう。
  • 保健所の施設基準：
    飲食店を営業するには、管轄の保健所から営業許可をもらう必要があります。シンクの数や手洗い場の設置など、お店の種類に応じたルールが決まっています。事前に図面を持って保健所に相談に行くと安心です。
  • 消防法：
    お客さまの収容人数や建物の広さによって、消火器や火災報知機、避難用の誘導灯などの設置が義務付けられています。消防署への確認も忘れずに行いましょう。

契約書でとくに注意すべき項目

賃貸借契約書は、専門用語も多くて読むのが大変かもしれませんが、とても大切な書類です。わからないことがあれば、遠慮せずに不動産会社に質問し、納得できるまで説明を求めましょう。とくに以下の項目はしっかりチェックしてください。

  • 契約期間と更新：契約は何年間か、更新はできるのか、更新料はかかるのか。
  • 禁止事項・特約：営業できる業種や営業時間の制限、看板設置のルールなど、特別な約束事がないか。
  • 修繕義務の範囲：設備が壊れたとき、修理代は大家さんと自分、どちらが負担するのか。
  • 原状回復義務：お店を閉めて退去するときに、どこまで内装を元に戻す必要があるか。「スケルトン（何もない状態）に戻すこと」が条件だと、解体費用が高額になることもあります。
  • 解約予告期間：契約の途中でやめる場合、何か月前に伝える必要があるか、違約金は発生するか。

個人で契約する場合の準備と注意点

個人事業主として契約する場合、法人に比べて社会的な信用を証明しにくいため、連帯保証人を求められることがほとんどです。親族などにお願いしておく必要があるでしょう。

最近では、保証会社への加入が必須の物件も増えています。その場合は、別に保証料がかかります。契約の際には、住民票や印鑑証明書、所得を証明する書類（確定申告書の写しなど）が必要になるので、あらかじめ準備しておくと話がスムーズに進みます。

飲食店の物件探しは多くの情報源を使い計画的に

飲食店の物件探しは、事業計画から始まり、条件整理、情報収集、内見、そして契約まで、一つひとつのステップを丁寧に進めていくことで、成功の可能性が高まります。物件の種類ごとの特性を理解し、店舗物件サイトや不動産会社といった複数の情報源を上手に使うことが、理想の物件への近道になるでしょう。

希望の物件がすぐに見つからない場合は、条件の優先順位を見直すなどしましょう。そして、契約の段階では法律のことや契約内容の細かい部分まで確認を怠らないことが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

  • 監修：マネーフォワード クラウド

    飲食店経営に関するお役立ち情報を、マネーフォワード クラウドが提供します。専門家の監修のもと、飲食店の開業から日々の業務まで、飲食店経営で役に立つ情報をご紹介します。

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