- 更新日 : 2025年9月22日
キッチンカーで揚げ物は儲かる?フライヤー選びから油処理まで開業ガイド
キッチンカーで揚げ物屋を開業したいけれど、「どのフライヤーを選べばいいの?」「大量の油の処理はどうするの?」といった設備や運営に関する悩みや、本当に儲かるのかという収益性への不安はありませんか。
この記事では、揚げ物がキッチンカービジネスで成功しやすい理由から、フライヤーの選び方、廃油の処理方法、火災対策、そして開業までの流れまで、わかりやすく解説します。安全で収益性の高いキッチンカー運営のために、ぜひ参考にしてください。
目次
キッチンカーで揚げ物は儲かる?
キッチンカーで提供される数あるメニューの中でも、唐揚げやフライドポテトといった揚げ物は、とくに利益を出しやすいジャンルといわれています。キッチンカービジネスと相性の良い4つの理由を解説します。
原価率が低く高い利益率を狙える
揚げ物メニューは原価率の低さが最大の魅力です。たとえば、唐揚げの主な材料は鶏肉と小麦粉(片栗粉)、油であり、いずれも比較的安価に仕入れることが可能です。一般的に、唐揚げの原価率は25%程度が目安とされています。
これは飲食業の平均原価率30%と同等か、それ以下であり、安定した利益を確保しやすいことを意味します。
調理がシンプルで提供スピードが速い
揚げ物の調理は、「下味をつけた食材に衣をつけ、フライヤーで揚げる」と工程もシンプルです。一度に多くの量を調理できるため、注文を受けてからお客様に提供するまでの時間を短縮できます。とくにランチタイムやイベント時など、お客様が集中する場面では、この提供スピードの速さが売上を大きく左右するでしょう。
組み合わせで客単価をアップさせやすい
揚げ物は、他のメニューと組み合わせやすいのも強みです。たとえば、「唐揚げ+フライドポテト+ドリンク」といったセットメニューを用意することで、お客様の満足度を高めながら、自然な形で客単価を上げることができます。ディップソースを有料オプションにするなど、細かな工夫でも収益アップが見込めます。
定番メニューで集客しやすい
唐揚げやフライドポテトは、子どもから大人まで幅広い世代に愛される「定番メニュー」です。流行に左右されにくく、ランチ、おやつ、軽食と、さまざまなシーンで需要があります。この安定した需要は、キッチンカーの出店場所を選ばず、安定した集客と売上につながる大きなメリットといえるでしょう。
キッチンカーでの揚げ物に欠かせないフライヤー選び
キッチンカーで揚げ物をする際は、フライヤー選びにかかっているといっても過言ではありません。ここでは、フライヤーの種類や選び方、中古品購入の注意点、そして廃油処理と火災対策について詳しく解説します。
フライヤーの種類(ガス式・電気式)
フライヤーには大きく分けて「ガス式」と「電気式」の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットをふまえ、自分の営業スタイルに合ったものを選びましょう。
種類 | メリット | デメリット | おすすめの営業スタイル |
---|---|---|---|
ガス式 |
|
| イベントなど、電源確保が難しい場所での大量調理 |
電気式 |
|
| 電源が確保できる場所での少量・多品種調理 |
容量・サイズ・価格で選ぶ
フライヤーを選ぶ際は、種類だけでなく、提供するメニューや販売量に合わせた「油量(容量)」と「サイズ」の検討が不可欠です。
- 容量:
揚げ物メニューが中心なら6〜12L程度のフライヤーが使われることが多いです。チュロスなど長さのあるものを揚げる場合は、油槽が深い、または広い特殊な形状のフライヤーが必要になります。 - サイズ:
キッチンカーの限られた作業スペースに収まるか、事前に寸法をしっかり確認しましょう。とくに卓上型か床置き型かは、厨房全体のレイアウトに関わります。 - 価格:
小型の卓上型なら2〜10万円程度、大型の床置き型は20〜50万円以上になる場合もあります。
中古フライヤー購入時のチェックリスト
初期費用を抑えるために中古フライヤーを検討する方も多いでしょう。しかし、安易に選ぶと故障や事故の原因になりかねません。購入前には必ず以下の点をチェックしましょう。
- 動作確認:
実際に電源やガスをつなぎ、正常に加熱されるか、温度調節機能は働くかを確認する。 - サビや劣化:
油槽内のサビや、ガス管・配線部分の劣化は故障のサイン。とくにひどい場合は避けるべきです。 - 掃除のしやすさ:
排油コックの有無や、部品が取り外しやすいかなど、日々のメンテナンス性も重要なポイントです。 - 保証の有無:
中古厨房機器の専門店であれば、一定期間の保証が付いている場合があります。
廃油の処理方法
キッチンカーで毎日出る大量の廃油は、下水に流すことは法律で固く禁じられています。必ず適切な方法で処理しましょう。
- 廃油回収業者に依頼する:
最も一般的で確実な方法です。地域の産業廃棄物処理業者と契約し、定期的に回収してもらいます。 - 凝固剤で固めて捨てる:
油の量が少ない場合、家庭ごみとして処分を認めている自治体では市販の凝固剤で固め、「燃えるゴミ」として廃棄できるケースもあります。ただし、多くの自治体では事業用の油にはこの方法を認めていないため、必ず管轄自治体に確認することが重要です。
火災を防ぐための安全対策
油を高温で熱するフライヤーは、常に火災のリスクと隣り合わせです。万が一に備え、以下の対策は必ず行いましょう。
- 換気設備の設置:
熱気や油煙を車外に排出するための換気扇やダクトの設置が義務付けられています。定期的な清掃も欠かせません。 - 消火器の設置:
業務用消火器(ABC粉末消火器10型など)を、すぐに手が届く場所に必ず設置します。天ぷら油火災に対応した消火器が望ましいでしょう。 - 周囲の整理整頓:
フライヤーの周りには、燃えやすいものを置かないように徹底します。
キッチンカーで揚げ物を販売する車両・設備・費用
揚げ物に適したキッチンカーを準備するには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。車両選びのポイントから、必要な設備、初期費用の目安までを解説します。
車両と基本設備
唐揚げやポテトなど、比較的小規模な設備で始められるメニューであれば、軽トラックをベースにしたキッチンカーでも開業は可能です。ただし、大型のフライヤーを複数台設置したり、複数人での作業スペースを確保したりしたい場合は、1t~1.5tトラックをベースにしたほうが余裕をもって運営できるでしょう。
保健所の営業許可を取得するために、以下の基本設備は必須です。
- シンク(規定の数と大きさ)
- 給排水タンク(規定の容量)
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 換気扇
- 収納棚
- 作業台
揚げ物販売に必要な特殊設備と初期費用
基本設備に加えて、揚げ物販売には以下の専用設備が必要になります。これらを合計した初期費用の総額は、250万円~500万円程度が目安となるでしょう。
設備項目 | 費用目安 | 備考 |
---|---|---|
車両 (中古軽トラックベース) | 150万円~ | 内装・基本設備込み |
フライヤー (ガス式 or 電気式) | 5万円~20万円 | 新品の場合。中古ならさらに安価に。 |
コールドテーブル (作業台付き冷蔵庫) | 10万円~ | 省スペースで効率的。 |
プロパンガス設備 | 5万円~ | ガス式フライヤーの場合に必要。 |
発電機 | 10万円~ | 電気式フライヤーやその他機器用。 |
消火器・その他備品 | 5万円~ | |
合計 | 約185万円~ |
※これはあくまで一例です。車両を新車にしたり、大型の設備を導入したりすると、費用はさらに上がります。
キッチンカーで揚げ物を販売するための資格と許可
キッチンカーで揚げ物屋を開業するには、食品を安全に提供するための資格と、公的な営業許可の申請が必要です。とくに火を扱うため、追加で必要な届出もあります。
- 食品衛生責任者
キッチンカー1台につき1名以上の配置が義務付けられています。各都道府県の食品衛生協会が実施する1日の養成講習会を受講すれば取得できます。 - 保健所の営業許可(飲食店営業)
出店したいエリアを管轄する保健所から「飲食店営業」の許可を取得します。車両の設備が基準を満たしているか、実地検査を受ける必要があります。 - 火気使用に関する届出
プロパンガスや発電機など、火気を使用する設備をキッチンカーに設置する場合、管轄の消防署への届出が必要になることがあります。自治体によって基準が異なるため、保健所への相談とあわせて消防署にも確認しておくと安心です。 - 営業場所の許可申請
スーパーやドラッグストア内の駐車場など営業場所によっては、事前の許可申請を得る必要があります。また道路で営業をする場合は、警察庁に行き「道路使用許可」の取得が必須です。これらの申請は、営業場所に応じて事前に確認することが大切です。
キッチンカーでの調理と仕込み場所のルール
キッチンカーで揚げ物屋を運営する上で、衛生管理の観点から「車内でできること」と「車外の専用施設で行うべきこと」が明確に区別されています。このルールを理解することが、保健所の営業許可を取得し、安全な商品を提供するための基本です。
キッチンカー内で許可される調理工程
基本的に、キッチンカー内で行えるのは「揚げる」「盛り付ける」といった最終的な加熱調理や簡単な仕上げ作業に限られます。たとえば、下味を付けて衣までつけた冷凍の鶏肉を揚げる、冷凍ポテトを揚げる、揚げたチュロスに砂糖をまぶす、といった工程です。
食中毒のリスクを最小限にするため、車内での複雑な調理は認められていません。
別途「仕込み場所」が必要な作業
食材のカット、肉の下味付け、衣作りなど、食中毒のリスクが伴う複雑な下準備は、キッチンカー内では行えません。これらの作業は、営業許可を取得した別途の「仕込み場所」で行う必要があります。
重要なのは、自宅のキッチンは、生活スペースと完全に分離されていないため、この「仕込み場所」として認められないという点です。シェアキッチンやレンタルキッチン、あるいは専用に借りた施設などで、別途営業許可を取得する必要があります。
キッチンカーで人気の揚げ物メニュー5選
揚げ物と一口に言っても、その種類はさまざまです。ここでは、キッチンカーでとくに人気が高く、収益を上げやすいメニューを5つ紹介します。
- 唐揚げ
キッチンカーの揚げ物メニューの王道。味付け(醤油、塩、スパイシーなど)や部位(もも、むね)で差別化を図りやすく、ランチのおかずからおつまみまで幅広い需要があります。 - フライドポテト
唐揚げと並ぶ人気メニュー。形状(シューストリング、ナチュラルカットなど)やディップソースで独自性を出せます。メインメニューのサイドとして、客単価アップに貢献します。 - チュロス
テーマパークでおなじみのスイーツ。揚げたてを提供できるのがキッチンカーの強みです。チョコレートやシナモンシュガーなど、フレーバーでバリエーションを広げられます。 - ドーナツ・揚げパン
おやつ需要に強いメニューです。昔ながらのシンプルな揚げパンから、クリームを詰めたドーナツまで、アイデア次第で専門店にも負けない商品開発が可能です。 - メンチカツ・コロッケ
ガッツリ食べたい層に響く、おかず系の揚げ物。パンに挟んでカツサンドとして提供するなど、アレンジの幅も広いです。
キッチンカーで揚げ物屋を開業するまでの5ステップ
実際にキッチンカーで揚げ物屋を開業するまでの流れを、5つのステップに分けて解説します。計画的に準備を進めましょう。
- STEP1:事業計画と資金調達
どんな揚げ物を、誰に、どこで売りたいのかというコンセプトを明確にし、必要な資金を計算します。自己資金で足りない場合は、日本政策金融公庫の融資などを検討します。 - STEP2:資格取得と許可申請の準備
食品衛生責任者の資格を取得します。同時に、保健所や消防署に事前相談に行き、車両の設備基準や必要な届出について確認しておきましょう。 - STEP3:車両と設備の準備
事業計画と予算、そして保健所の指導内容に基づき、キッチンカーの車両とフライヤーなどの設備を準備します。信頼できる製作会社に依頼するのがおすすめです。 - STEP4:仕入れ先の確保
味の決め手となる食材(鶏肉、じゃがいもなど)や、油、包材などを安定的に供給してくれる仕入れ先を見つけます。複数の業者を比較検討しましょう。 - STEP5:出店場所の確保と保険への加入
ランチ需要のあるオフィス街や、人が集まるイベント会場など、コンセプトに合った出店場所を確保します。万が一に備え、PL保険(生産物賠償責任保険)や車両保険への加入も忘れずに行いましょう。
キッチンカーでの揚げ物販売は安全と衛生管理が重要
キッチンカーでの揚げ物販売は、原価率が低く、調理がシンプルで、幅広い層から愛される定番メニューであるため、収益を上げやすいビジネスモデルです。唐揚げやフライドポテトといった食事系から、チュロスやドーナツといったスイーツ系まで、メニューの幅が広いのも魅力でしょう。
揚げ物を販売する際は、フライヤー設備や油の扱いが特に重要になります。適切なフライヤー選びはもちろん、日々の清掃、確実な廃油処理、そして火災への備えを徹底しましょう。また、仕込み場所の確保といった衛生管理のルールを遵守して、お客様に信頼される安全なキッチンカー販売にしましょう。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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