• 作成日 : 2025年9月22日

キッチンカーと屋台(露店)の7つの違いとは?費用・許可・メリットを比較

移動販売での開業を考えたとき、「キッチンカー」と「屋台(露店)」とどちらが良いか迷う方もいるのではないでしょうか。法律上の違いや、結局どちらが儲かるのか、そして自分にはどちらのスタイルが合っているのか、といった疑問を持つ方もいるでしょう。

この記事では、キッチンカーと屋台(露店)の基本的な違いから、初期費用、営業許可、収益モデル、そして失敗しないための注意点まで解説します。それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、最適なスタイルを見つけましょう。

キッチンカーと屋台(露店)の7つの違い比較表

キッチンカーと屋台の主な違いを一覧表で確認しましょう。それぞれの項目について、この後詳しく解説していきます。

比較項目キッチンカー屋台(露店)
① 初期費用高い(250万円~500万円)安い(30万円~100万円)
② 機動力・出店範囲高い(全国どこへでも移動可能)低い(近隣のイベント中心)
③ 設備の柔軟性設備基準を満たしやすい(シンク・給排水・冷蔵庫など)大型機材や電化製品の導入は難しい
④ 営業許可飲食店営業(車両ごとに取得)臨時営業許可などイベントごとに取得
⑤ 天候の影響営業は可能だが客足は減少営業中止のリスクが高い
⑥ ブランドイメージ車体デザインが広告塔になりやすいテント規格が似通い差別化が難しい
⑦ ランニングコスト高い(車両維持費、駐車場代など)安い(車両関連費が不要)

① 初期費用:手軽さの屋台、本格設備のキッチンカー

屋台(露店)の最大のメリットは、初期費用を抑えられる点です。 テント、テーブル、簡易的な調理器具(カセットコンロなど)、折りたたみ式の什器などを揃えれば開業でき、30万円~150万円程度が目安となります。

一方、キッチンカーは「移動できる店舗」であるため、車両購入費と厨房設備の設置に多額の費用がかかります。 中古の軽トラックベースでも250万円以上、普通車ベースの新車となると500万円以上かかることも珍しくありません。

② 機動力・出店範囲:全国を駆けるキッチンカー、地域密着の屋台

キッチンカーは自動車であるため、高速道路を使えば県外のイベントにも遠征でき、全国どこでも出店できる可能性があります。(営業する地域ごとに営業許可が必要)平日と週末で出店エリアを変えるなど、戦略的な移動が可能です。

対して屋台は、 店舗を解体してトラックなどで運ぶため、移動に手間と時間がかかります。 そのため、出店範囲は自宅から近い地域のイベントやお祭りに限定されがちです。

③ 設備の柔軟性:改装可能なキッチンカー、制約が多い屋台

キッチンカーは車両内装を改装することで、フライヤーやオーブン、冷蔵庫など多様な機材を設置可能です。メニューに合わせて柔軟に設備を整えられる点は大きな強みです。

屋台はスペースや電源が限られているため、大型機材や電化製品を導入するのは難しく、設備面での自由度は低くなります。

④ 営業許可:車両ごとのキッチンカー、場所ごとの屋台

キッチンカーは「飲食店営業(自動車)」の許可を車両ごとに取得します。 一度許可を取れば、その車両で許可されたエリア(例:〇〇県内一円)のさまざまな場所で営業できます。

屋台はイベントや祭りごとに、臨時営業許可などを管轄保健所から取得します。 この許可は有効期間が数日と短く、常設での営業は認められていません。

⑤ 天候の影響:営業を継続しやすいキッチンカー、中止リスクが高い屋台

悪天候は、どちらの形態にとっても客足を遠のかせる大きな要因です。しかし、営業を継続できるかどうかの観点では、キッチンカーに分があります。

キッチンカーは車体がスタッフと設備を雨風から守るため、小雨程度であれば営業を続けることが可能です。 もちろん客足は減りますが、売上がゼロになるリスクを多少は軽減できます。

一方、屋台はテントでの営業が基本となるため、少しの雨風でも商品や設備が濡れてしまい、営業中止を余儀なくされるケースがあります。 とくに強風時にはテント自体が危険になるため、安全面から撤収せざるを得ません。イベント自体が天候で中止になるリスクも受けます。

⑥ ブランドイメージ:走る広告塔のキッチンカー、個性を出しにくい屋台

キッチンカーは、車両のデザインやラッピングそのものが「走る広告塔」になります。 おしゃれで個性的なデザインはSNSでも拡散されやすく、お店のブランドイメージを構築しやすいのが特徴です。

屋台は、テントやのぼりで個性を出すことになりますが、規格がある程度決まっているため、他店との差別化が難しい側面があります。 ブランドイメージは、商品の味や店主の人柄に頼る部分が大きくなるでしょう。

⑦ ランニングコスト:車両維持費がかかるキッチンカー、低コストの屋台

キッチンカーは、初期費用だけでなくランニングコストも高くなる傾向があります。 毎月の駐車場代、ガソリン代、自動車税、保険料、車検費用といった車両の維持費が継続的に発生します。

屋台は、車両関連の維持費が不要なため、ランニングコストを低く抑えられます。 主な経費は、出店料、材料費消耗品費、プロパンガス代などになります。

キッチンカーと屋台の収益モデルの違い

開業スタイルが違えば、当然、収益を上げるための戦略も異なります。「どちらが儲かるか」は、それぞれのビジネスモデルの特性を理解し、自分に合った戦略を実行できるかにかかっています。

高単価・多メニューで稼ぐ「キッチンカー」の戦略

キッチンカーは、本格的な厨房設備を活かし、客単価の高いメニューや複数のメニューを提供することで収益を上げるのが基本戦略です。

たとえば、平日ランチでは1,000円前後の丼ものや定食を、週末のイベントでは高単価なステーキやこだわりのスイーツを販売するなど、場所と客層に合わせた柔軟なメニュー展開が可能です。

初期投資とランニングコストを回収するため、しっかりとした売上目標と価格設定が求められます。

低リスク・高回転で稼ぐ「屋台」の戦略

屋台は、初期費用とランニングコストが低い分、一つのメニューに特化し、それを大量に販売(高回転)することで利益を積み上げるのが基本戦略です。

お祭りの焼きそばやかき氷のように、調理がシンプルで提供スピードが速いメニューを選び、短い時間でいかに多くのお客様に提供できるかが勝負となります。一つあたりの利益は小さくても、低リスクで始められるのが魅力です。

出店場所による収益性の違い

キッチンカーと屋台、どちらも出店場所が売上を大きく左右します。

平日のオフィス街ランチは、安定した需要が見込めるためキッチンカーに向いています。一方、週末の地域のお祭りやフリーマーケットは、短期集中で集客が見込めるため、屋台でも大きな収益を上げるチャンスがあります。

大規模な音楽フェスやフードイベントは、来場者数が桁違いに多いため、どちらの形態でも大きな売上が期待できますが、出店料も高額になる傾向があります。

キッチンカーや屋台開業で知るべき失敗パターンと対策

「キッチンカーは儲からない」「屋台は大変」といった声もあります。安易に始めると失敗につながる、共通のパターンとそれぞれの対策を知っておきましょう。

【共通】出店場所を確保できない

どんなに美味しいメニューを作っても、売る場所がなければ始まりません。出店場所の開拓は、開業後も続く最も重要な営業活動です。マッチングサイトの活用、イベント主催者への直接交渉など、常に行動し続ける必要があります。

【共通】資金計画が甘い

初期費用だけでなく、開業後数ヶ月は赤字になることも想定し、運転資金を十分に用意しておくことが不可欠です。とくにキッチンカーは、急な車両トラブルで思わぬ出費が発生することもあります。

【キッチンカー特有】車両・設備のトラブル

中古のキッチンカーを購入した場合、エンジンの故障や厨房設備の不具合が起こるリスクがあります。購入前に信頼できる業者でしっかりと点検を行う、定期的なメンテナンスを怠らないといった対策が重要です。

【屋台特有】天候による売上の不安定さ

屋台は天候に弱いビジネスモデルです。雨天中止のリスクを常に念頭に置き、一つのイベントに依存するのではなく、複数の出店先を確保しておくことでリスクを分散させましょう。

屋台からキッチンカーに変更するには?

屋台からキッチンカーに変更するには、車両の準備だけではなく、事業計画の見直しや営業許可の再取得が必要です。ここでは主な流れと注意点を解説します。

STEP1:事業計画の見直しと資金調達

まず、キッチンカーの購入・製作費用、駐車場代や保険料といった毎月のランニングコストを具体的に算出し、事業計画を練り直します。

屋台での営業実績(売上や利益の記録)は、金融機関から融資を受ける際の信頼性を高める重要な資料となります。

自己資金で不足する場合は、日本政策金融公庫の融資などがあります。

STEP2:キッチンカーの車両・設備準備

事業計画に基づき、コンセプトに合った車両(新車・中古)を選び、厨房設備を整えます。重要なのは、車両の製作を始める前に、必ず保健所に事前相談に行くことです。

自治体によってシンクの数や給排水タンクの容量といった設備基準が異なるため、基準を満たさない車両を製作してしまうと、許可が下りず無駄な投資になってしまいます。

屋台で使用していた調理器具が流用できる場合もありますが、キッチンカーのレイアウトや熱源(ガス・電気)に合わせて選定し直す必要があります。

STEP3:営業許可の再取得と各種届出

屋台とキッチンカーでは、必要な営業許可が異なります。屋台の「臨時営業」許可は使えないため、新たにキッチンカーで「飲食店営業(自動車)」の許可を取得し直さなければなりません。これは車両に対して与えられる許可で、保健所の担当者による実地検査に合格する必要があります。

また、プロパンガス(LPガス)を使用する調理器具を設置する場合は、火災予防の観点から、管轄の消防署へ「火を使用する設備等の設置届出」の提出が義務付けられていることがほとんどです。

これらの手続きを漏れなく行うことで、安心して新しいスタートを切ることができます。

キッチンカーと屋台の違いを理解し、最適な開業スタイルを選ぼう

キッチンカーと屋台(露店)は、同じ移動販売でありながら、初期費用から許可、ビジネスモデルに至るまで異なります。本格的な料理で全国を舞台に勝負したいならキッチンカー、低リスクで地域のお祭りを中心に商売を始めたいなら屋台が、それぞれ適しているといえるでしょう。

どちらのスタイルを選ぶにしても、事前のリサーチと綿密な事業計画が成功の鍵となります。この記事で解説した7つの違いを参考に、ご自身の資金、提供したいメニュー、そして理想の働き方に合った、最適な開業スタイルを選んでください。

関連:移動販売やキッチンカーの事業計画書の書き方!テンプレートをもとに記入例、コツを解説
関連:飲食店の事業計画書の書き方・記入例は?無料でダウンロードできるテンプレートつき
関連:キッチンカーの独立開業を支援する補助金・助成金まとめ


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事