- 作成日 : 2025年9月22日
キッチンカーのシンク基準とは?中古や自作の場合の注意点も解説
キッチンカー(移動販売車)で営業を始めるにあたり、シンクや水回りの設備はどのような基準があるのでしょうか。中古品や自作は認められるのか、費用はどのくらいかかるのでしょうか。この記事では、キッチンカーの営業許可に関わるシンクの基準について、サイズや数、給排水の仕組み、選び方、自作の注意点まで、わかりやすく解説します。
目次
キッチンカーのシンクに求められる保健所の基準
キッチンカーの営業許可を得るには、出店を希望する地域を管轄する保健所の施設基準をクリアしなくてはなりません。とくにシンクをはじめとする給水・排水設備は、衛生管理において重要な部分であり、細かく規定が定められています。
シンクの数は「2層式」が基本
キッチンカーに設置するシンクは、原則として「2層式」、つまりシンクが2つあるタイプが求められます。これは、食材や食器を洗うシンクと、手洗い専用のシンクを明確に分けることで、交差汚染を防ぎ、衛生レベルを保つためです。
片方のシンクで汚れた食器を洗い、もう片方で手を洗う、といった使い分けをします。保健所によっては、手洗い専用シンクに石鹸や消毒液、ペーパータオルなどの設置を義務付けている場合もあります。
手洗いは食中毒予防の基本です。調理の前後、金銭の受け渡し後、清掃後など、こまめな手洗いを徹底できる環境を整えることが重要になります。
シンクのサイズ規定
シンクのサイズにも基準が設けられています。これは営業許可を受ける保健所によって異なりますが、一般的には以下のサイズが目安とされています。
- 内寸:幅45cm × 奥行き36cm × 深さ18cm以上
このサイズは、比較的大きな調理器具でも問題なく洗浄できることを想定したものです。ただし、これはあくまで一例であり、自治体によっては「幅36cm × 奥行き28cm」など、異なる基準を設けている場合もあります。必ず、営業許可を取得する保健所の担当窓口に正確なサイズ規定を確認するようにしてください。
給排水タンクの容量基準
シンクを使用するためには、給水タンクと排水タンクが必要です。このタンクの容量は、2021年の法改正以降、全国的に「40L・80L・200L」に整理されており、営業内容に応じて必要な容量が決まります。
たとえば、ドリンクの提供のみで洗浄が少ない簡易な営業形態であれば約40L、本格的な調理を伴う場合には80Lまたは200Lが必要とされるケースが一般的です。調理工程の数や提供品目の種類によって、どの容量が必要かは自治体ごとに異なる場合もあるため、事前に所轄の保健所で確認することが重要です。
給水タンクは清潔な水を供給するためのもので、排水タンクは使用済みの汚れた水を貯めておくためのものです。排水タンクは、給水タンクと同等か、それ以上の容量を持つものを用意する必要があります。
材質はステンレス製が推奨される
シンクの材質については、多くの保健所で「洗浄・消毒がしやすく、錆びにくい不浸透性素材」と定められています。この条件に最も合致するのが「ステンレス」です。
ステンレスは耐久性が高く、汚れがつきにくく落としやすいという特徴があります。そのため、ほとんどの業務用厨房設備で採用されており、キッチンカーにおいてもステンレス製のシンクを選ぶのが一般的です。プラスチック製や陶器製などは、傷がつきやすく、そこから雑菌が繁殖するおそれがあるため、衛生面で指摘を受ける場合があります。
キッチンカーのシンクの選び方
保健所の基準を満たしたうえで、作業効率や使い勝手を考えたシンクを選びましょう。ここでは、シンク選びの具体的なポイントを解説します。
提供メニューにより3層式が必要なことも
基本は2層式シンクですが、提供するメニューや仕込みの工程によっては、3層式のシンクが必要になるケースもあります。
- 2層式シンクが適しているケース
- ドリンクや軽食など、簡易的な調理のみを行う場合
- 仕込みを別の場所(営業許可のある施設)で済ませ、車内では温めや盛り付けが中心の場合
- 3層式シンクが必要になる可能性のあるケース
- 生の肉や魚を取り扱い、下処理から調理までを車内で行う場合
- 仕込み、調理、食器洗浄をすべて車内で完結させる必要がある場合
3層式の場合、衛生管理の面で「食材用」「食器用」「手洗い用」と、より厳密に用途を分けます。ただし、設置スペースが大きくなるため、車内のレイアウトを慎重に検討しなくてはなりません。
「作業台」としての活用を考えた形状に
カフェなどで見かける丸型のおしゃれなシンクもありますが、キッチンカーでは実用性の高い「四角いシンク」がおすすめです。
四角いシンクは、洗浄時の水はねが少なく、調理器具を洗いやすい利点があります。また、シンクの上にフタをすれば、洗浄時以外は「作業台」としてスペースを活用できます。限られた車内スペースを最大限に活用できます。
蛇口まわりは衛生管理を徹底する
各シンクには1つずつ蛇口を設置する必要がありますが、とくに手洗い専用シンクの蛇口は、洗浄後の清潔な手で再びハンドルに触れることのない「非接触型」が求められます。
- 非接触型の例:レバー式、センサー式(自動)、足踏み式
また、シンクの近くには、手洗い用の石鹸(またはハンドソープ)、手指消毒用のアルコールスプレー、ペーパータオルなどの設置も義務付けられています。これらの設備を正しく選び、常に使える状態にしておくことが大切です。
冬場の営業や油汚れ対策に給湯器を検討する
油汚れの多いメニューを扱う場合や、冬場に営業する際には、給湯器の設置が必要となります。冷たい水だけでは油汚れをきれいに落とすことが困難なうえ、手洗い時の作業負担も大きくなります。
保健所の基準として給湯器の設置を義務付けている自治体もあります。ガス式や電気式の小型温水器など、キッチンカーに適した製品がありますので、衛生レベルの維持と快適な作業環境のために、導入を積極的に検討しましょう。
キッチンカー用シンクや水回りの費用
キッチンカーのシンク周りの設備を整えるには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。ここでは、シンク本体から関連パーツ、設置工事までの費用相場を解説します。
シンク本体の価格相場
キッチンカー用のシンク本体の価格は、サイズや層の数、メーカーによって幅があります。
種類 | 価格相場 |
---|---|
2層式シンク(小型) | 20,000円~50,000円 |
2層式シンク(大型) | 40,000円~80,000円 |
3層式シンク | 60,000円~120,000円 |
業務用厨房機器を扱う通販サイトや専門店で購入できます。少しでも費用を抑えたい場合は、中古品を探すという選択肢もありますが、後述する注意点をよく確認してください。
給排水タンクやポンプの費用
シンクと合わせて必要になる給排水タンクやポンプにも費用がかかります。
- 給排水タンク(40L、80、200L)
- 1個あたり:5,000円~15,000円程度
- 給水用と排水用の2つが必要です。
- 電動給水ポンプ
- 1台あたり:5,000円~20,000円程度
- 給湯器(小型温水器)
- 1台あたり:20,000円~60,000円程度
これらのパーツは、ホームセンターやインターネット通販などで購入できます。
設置工事にかかる費用
シンクやタンク、ポンプなどを車両に取り付けるための工事費用も考慮しなくてはなりません。配管作業や固定作業など、専門的な知識が必要になるため、キッチンカーの製作を専門とする業者に依頼するのが一般的です。
設置工事の費用は、取り付ける設備の数や車両の構造によって大きく変動しますが、おおよそ50,000円〜150,000円程度が目安となるでしょう。複数の業者から見積もりをとり、費用と作業内容を比較検討することをおすすめします。
キッチンカーで中古シンクや自作シンクを使う際の注意点
初期費用を抑えるために、中古のシンクやシンクの自作を検討する方もいるかもしれません。安易に決めてしまわないよう、以下の注意点を参考ください。
中古シンクを選ぶ際のチェックポイント
中古のシンクは新品に比べて安価で手に入りますが、購入前に以下の点を必ずチェックしてください。
- サイズが保健所の基準を満たしているか
中古品の中には、現在の保健所の基準に満たない古い規格のものもあります。購入前に必ず内寸を計測し、出店予定地の基準をクリアしているか確認しましょう。 - サビやひどい傷、へこみがないか
ステンレス製でも、使い方によってはサビが発生することがあります。また、深い傷やへこみは汚れが溜まりやすく、不衛生になる原因になります。 - 排水口や付属品の状態は良好か
排水トラップやホースなどの付属品が劣化していると、水漏れの原因になります。交換が必要な場合は、別途部品代がかかることも念頭に置いておきましょう。
シンクを自作する場合の法的要件と手順
DIYが得意な方であれば、シンクの自作を考えるかもしれません。ステンレス板を加工してシンクを自作したり、市販のステンレスボウルを天板に埋め込んだりする方法があります。最近では、キッチンカーシンクの自作キットなども販売されています。
ただし、自作する場合も保健所の基準をすべて満たす必要があります。とくに、シンクのサイズ、材質、そしてシンクと天板の接合部分の処理には注意が必要です。接合部分に隙間や段差があると、汚れが溜まりやすく洗浄が困難になるため、保健所の検査で指摘される可能性があります。コーキング材などで滑らかに、かつ防水処理を施すなど、衛生的な状態を保てる施工が求められます。
保健所の事前相談が必須
中古シンクの利用やシンクの自作を検討している場合は、必ず、保健所に事前相談しましょう。実際に車両に設置する前に、使用したい中古シンクの写真や図面、あるいは自作シンクの設計図などを持参して、保健所の担当者に確認してもらいましょう。
「安く手に入れたのに、基準が満されず使えなかった」「苦労して自作したのに、許可が下りなかった」という事態を避けるために、この一手間を惜しまないようにしましょう。
キッチンカーのシンクの衛生管理
キッチンカー販売の営業許可を取得した後も、シンク周りの衛生管理を徹底することは、お客様に安全な商品を提供し、食中毒のリスクを防ぐうえで欠かせません。
日常的な清掃とメンテナンス方法
営業終了後は、毎日必ずシンクを清掃・消毒しましょう。
- シンク内の大きな食材カスなどを取り除く。
- スポンジに中性洗剤をつけ、シンク全体を丁寧に洗浄。排水口周りや蛇口の根元はとくに念入りに洗います。
- 洗剤が残らないように、水またはお湯で十分にすすぐ。
- アルコールスプレーや次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒する。
- 清潔な布巾で水分を拭き取るか自然乾燥。雑菌の繁殖を防ぐためしっかりと乾燥させる。
衛生的な給水・排水のポイント
給水タンクは常に清潔な水を入れ、定期的に内部を洗浄・消毒してください。排水タンクに溜まった汚水は、営業終了後に必ず指定された場所(下水道施設など)で適切に処理します。決して側溝や地面に捨てることのないようにしましょう。
また、給水ホースや排水ホースも汚れが溜まりやすい部分です。定期的に洗浄し、衛生的な状態を保つように心がけてください。
食中毒を防ぐための手洗い徹底
どれだけ設備が整っていても、最終的に衛生を守るのは「人」です。調理スタッフは、定められた手洗い専用シンクで、正しい方法での手洗いを徹底しなくてはなりません。
- 調理を開始する前
- 生の肉や魚、卵などを触った後
- トイレの後
- 金銭の受け渡しをした後
- 清掃作業を行った後
これらのタイミングで、石鹸を使って指先から手首までを丁寧に洗い、清潔なペーパータオルで拭くことを習慣づけましょう。
キッチンカーのシンク基準を理解し、適切な設備を整える
キッチンカーのシンクは衛生管理を徹底しましょう。営業許可を取得するためには、保健所が定めるシンクの数やサイズ、材質、そして給排水タンクの容量といった基準を正確に理解し、すべて満たす必要があります。とくに、2層式のシンクと手洗い設備の設置は、ほとんどの地域で求められる基本的な要件です。
これからキッチンカーを準備する方は、まず出店を希望する地域の保健所に問い合わせ、詳細な基準を確認することから始めましょう。中古品や自作を検討する場合も、必ず事前に相談し、承認を得てから進めることが失敗を避けるポイントです。基準に沿った適切な設備を計画的に整え、お客様に安心と信頼を提供できるキッチンカーの開業を実現してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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