• 作成日 : 2025年8月8日

タバコが吸える居酒屋を営業するには?条件・制限・注意点を解説

2020年4月に施行された改正健康増進法により、居酒屋における喫煙環境は大きく変わりました。多くの居酒屋で原則屋内禁煙となり、「タバコが吸える居酒屋」は少なくなりました。しかし、条件を満たせば喫煙可能店として営業を続けられます。

この記事では、居酒屋でタバコが吸えるのかどうか、法律で定められた条件や喫煙可能にするための手続き、売上や客層への影響、さらには喫煙室設置の注意点まで、店舗経営者の方々が抱える疑問や不安を解消できる具体的な情報を提供します。

居酒屋でタバコは吸える?

現在の法律では、居酒屋でタバコを吸えるかどうかは、店舗の規模や構造、運営方針によって異なります。2020年4月1日から施行された改正健康増進法により、飲食店での喫煙ルールは原則、屋内禁煙が義務付けられました。

しかし、全ての居酒屋が完全に禁煙になったわけではありません。一部の条件を満たせば例外的に喫煙可能とされるケースもあります。

健康増進法により全面禁煙

改正健康増進法は、「望まない受動喫煙の防止」を目的として施行され、飲食店を含む多くの施設で屋内では禁煙が原則とされました。従来の「分煙」や「喫煙席」は基本的に廃止され、店舗側は喫煙専用の設備を設けるか、全面禁煙に移行する必要があります。

この法律では、違反した場合、施設の管理者には喫煙室の基準違反に対する改善命令への不履行で最大50万円、標識の掲示義務違反で最大30万円の過料が、また喫煙者本人にも禁煙場所での喫煙で最大30万円の過料が科される可能性があります。

そのため、法令遵守が強く求められます。

禁煙・分煙・喫煙可の3分類の違い

居酒屋における喫煙環境は、現行制度上、大きく3つの形態に分類されます。店舗ごとに該当する形態を正しく把握し、ルールに則った運営を行うことが求められます。

  1. 全面禁煙店:紙巻たばこ・加熱式たばこを問わず、店内のすべてのエリアでタバコが吸えない。非喫煙者や家族連れに好まれる形態。
  2. 分煙店(喫煙室あり):飲食不可の「喫煙専用室」または、飲食も可能な「加熱式たばこ専用喫煙室」を設置。十分な換気の設備など一定条件下で使用を許可。
  3. 喫煙可能店:2020年4月1日以前から営業している小規模な既存店で、特定の条件をすべて満たす場合に限り、店内で喫煙と飲食を同時に行う営業が認められる形態。営業継続には保健所への届出と「喫煙可能店」の表示が必要となる。
    新規開業店舗はこの対象外であり、屋内で喫煙を可能にするには専用の喫煙室を設置する必要がある。また、20歳未満の入店は認められない。

居酒屋でタバコを吸えるようにする条件とは

居酒屋でタバコを吸える営業形態にするには、法律で定められた条件を満たす必要があります。特に、2020年の法改正以前から営業している店舗と、新規開業の店舗とでは対応方法が異なるため、自店の状況に合わせて適切な判断を行うことが求められます。

2020年4月以前から営業している場合

飲食しながらタバコを吸える居酒屋として営業を継続するには、「喫煙可能店」としての条件をすべて満たす必要があります。対象となるのは、以下の3つの条件です。

  • 2020年4月1日以前から営業している
  • 客席面積が100㎡以下
  • 中小企業基本法における定義などから資本金5,000万円以下であること

これらの条件に該当する場合は、喫煙専用室を設けることなく、店内でタバコを吸いながら飲食を提供することが可能です。ただし、保健所への届出が必要であり、店舗の出入口には「喫煙可能店」の表示を掲示しなければなりません。また、20歳未満の入店は法律で禁じられています。

新規開業の店舗の場合

新規開業の店舗や、上記の条件を満たさない既存店舗でタバコに対応するためには、「喫煙専用室」または「加熱式たばこ専用喫煙室」の設置が必要です。

  • 喫煙専用室:紙巻たばこ・加熱式たばこが使用可能。飲食は禁止。
  • 加熱式たばこ専用喫煙室:加熱式たばこのみ使用可能。飲食が可能。

どちらの喫煙室を選ぶかは、店舗の方針や客層の喫煙スタイルに応じて判断します。

喫煙室の設置基準を確認する

喫煙室を設置する場合は、タバコの煙が店内に拡散しないよう、法律で定められた以下の基準を満たす必要があります。

  • 出入口において、室外から室内に流入する空気の風速が0.2m/秒以上あること
  • 壁や天井で室内が完全に区画され、タバコの煙が漏れない構造であること
  • タバコの煙を屋外に排気するための換気設備が整っていること

これらの基準は、設置後も継続して保たれていることが求められます。特に換気設備の不備があると、保健所からの是正指導や罰則の対象となる可能性があります。

標識の掲示義務を守る

店内でタバコの喫煙を許可する営業形態をとる場合は、来店者にその旨が明確に伝わるよう、所定の標識を掲示する義務があります。主な標識の種類は以下のとおりです。

  • 喫煙可能店:店内で喫煙・飲食ともに可能。20歳未満は入店不可。
  • 喫煙専用室:飲食不可。紙巻たばこ・加熱式たばこに対応。
  • 加熱式たばこ専用喫煙室:飲食可。加熱式たばこのみ対応。

標識は、来店者が一目で分かる位置に掲示しなければなりません。デザインやサイズについては、厚生労働省の定める様式に従う必要があります。

タバコが吸える居酒屋は売上にどう影響するか

全面禁煙が進んだことで、タバコが吸える居酒屋は全国的に減少しました。

これにより、喫煙可能な店舗は希少性が高まり、タバコを吸いたい顧客にとっては”選ばれる店”として存在感を増しています。一方で、20歳未満の入店制限や非喫煙者の敬遠といった影響もあり、売上への影響は一様ではありません。

客数の変化をデータで把握する

改正健康増進法の施行以降、全面禁煙に移行した居酒屋では、喫煙者の来店が一時的に減少したケースも報告されています。特に、タバコが吸えなくなったことを理由に常連客が離れたり、家飲みへ移行したりする動きが見られました。

一方で、店内の空気環境が改善されたことにより、これまで煙を敬遠していた非喫煙者や家族連れが来店しやすくなり、新たな顧客層を取り込めたという店舗もあります。

居酒屋の立地やターゲット層によって、その影響の出方が大きく異なります。

タバコOKの店が好まれる業態や地域を分析する

タバコが吸える居酒屋を好む顧客層は確実におり、地域性や業態によっては、喫煙可能であること自体が来店の大きな動機になることも少なくありません。

以下のようなケースでは、喫煙可能な店舗の方が選ばれやすいと言われています。

  • サラリーマンが集まるオフィス街の居酒屋
  • 昭和レトロな雰囲気のある大衆居酒屋
  • 喫煙を前提とした接待や個室利用の多い店舗
  • 海外観光客が多く、タバコ文化の違いに配慮が必要なエリア

ターゲットとなる客層に喫煙者が多い場合、タバコ対応の有無が来店の決め手になることもあります。

居酒屋でタバコを巡るトラブルを防ぐ対策

喫煙可能な居酒屋では、タバコを巡るトラブルが思わぬクレームや低評価につながることがあります。特に、非喫煙者との摩擦、喫煙エリアでのマナー違反、未成年の立ち入りなどが原因となるケースが多く見られます。快適な空間を維持しながら営業を続けるためには、事前のルール整備と従業員への教育が欠かせません。

以下は、実際に店舗運営で取り入れやすい基本的な対策です。

  • 店舗入口や店内に喫煙ルールを明示し、誰にでもわかる形で掲示する
  • 喫煙可能エリアと禁煙エリアを明確に分け、動線も配慮する
  • 従業員全員に喫煙区分、対応ルール、トラブル時の対応方法を共有する
  • 喫煙エリアには十分な換気設備や空気清浄機を設置する
  • 入店時や予約時に喫煙・禁煙の希望を確認し、希望に沿った席に案内する

このような対策を事前に講じておくことで、トラブルを未然に防げるだけでなく、喫煙者・非喫煙者のどちらにとっても快適な空間を提供することができます。

また、喫煙可能店であることを明示しつつ、非喫煙者に対しても丁寧な説明を行うことで、クレームの抑制だけでなく、誠実な店舗運営として評価される可能性も高まります。トラブルが起きた際はその場で迅速に対応し、SNSなどでの悪評拡散を防ぐ意識も重要です。

居酒屋で喫煙室を設置する場合の注意点

喫煙可能店としての要件を満たさない居酒屋がタバコに対応するには、法令に基づいた喫煙室の設置が必要です。運用面・設計面・法令対応の3点で適切な対応が求められます。

以下では、喫煙室を実際に設ける際に押さえておきたい具体的な注意点を解説します。

タバコの種類と飲食の可否を明確に区別する

喫煙室には「喫煙専用室」と「加熱式たばこ専用喫煙室」の2種類があり、それぞれで対応内容が異なります。利用できるタバコの種類や室内での飲食可否に違いがあるため、この点を明確にしておかないと、従業員の対応ミスや顧客からのクレームにつながるおそれがあります。

  • 紙巻たばこを許可する場合は、「喫煙専用室」(飲食不可)を設置する
  • 飲食しながら加熱式たばこを楽しむニーズがある場合は、「加熱式たばこ専用喫煙室」(飲食可)を設置する

特に紙巻たばこを希望する層と、加熱式たばこに切り替えている層とでは来店動機や滞在スタイルが異なるため、ターゲット顧客の喫煙習慣を事前に把握し、それに合った設計を行うことが必要です

メンテナンスと日常管理の体制を整える

喫煙室は日常的に使用される空間であるため、衛生管理が甘くなると短期間で劣化が進みます。特にタバコの煙によるヤニ汚れや臭気は、非喫煙者にも影響を与えやすく、店舗全体のイメージダウンにつながりかねません。法令上の構造基準を満たしていても、管理が不十分であれば顧客満足度は維持できません。

  • 換気フィルターや空気清浄機の定期清掃・交換をスケジュール化する
  • 壁・床材には耐煙・防臭性のある素材を選定し、汚れやすい箇所は目立たない色味にする
  • 灰皿は営業中にも定期的に清掃・交換し、吸い殻の臭気を最小限に抑える
  • 臭気対策として、脱臭機や空間除菌装置を併用するのも効果的

これらの清掃・点検体制は、設置時点で業務フローに組み込んでおくのが理想です

他エリアへの煙や臭いの漏れを防ぐ

喫煙室の設計基準を満たしていても、実際の運用ではドアの開閉や人の出入りによって、煙や臭いが漏れることがあります。これは非喫煙エリアの顧客満足度を下げる要因となるため、設計段階から煙漏れ対策を講じる必要があります。

  • 喫煙室の入口は、ホールや厨房、非喫煙エリアから物理的に距離を取る
  • 出入口には自動ドアや二重扉を採用し、開閉時の煙拡散を抑制する
  • 客席との間に中間スペース(待合、手洗い場など)を挟み、空気の流れを制御する

煙や臭いの漏れは、非喫煙者のクレームだけでなく、口コミサイトでの評価低下につながるリスクもあるため、構造上の工夫と定期的な点検が不可欠です。

 喫煙ルールを店舗全体で共有し、対応を標準化する

設計や設備が整っていても、現場のスタッフが喫煙ルールを理解していなければ、トラブルを防ぐことはできません。喫煙室の運用ルールは、口頭の共有ではなくマニュアル化し、全従業員に周知・訓練しておくことが重要です。

  • 利用可能な喫煙室の種類とルール(喫煙対象・飲食可否・利用時間など)を掲示・共有する
  • 喫煙室を利用しない顧客への説明方法を統一する
  • 喫煙マナー違反やクレーム発生時の対応方法を事前に訓練しておく

また、店舗のホームページやグルメサイトにも、喫煙室の種類・ルール・設備内容を正確に掲載することで、来店前の誤解を防ぎ、トラブルを未然に回避できます。

店舗イメージへの影響はブランディング戦略として考える

喫煙室の設置は、「吸えるかどうか」だけでなく、店舗のイメージやブランドポジションにも影響を与えます。喫煙対応が強みとなる一方で、禁煙志向の高い層にはネガティブに映る可能性があるため、設置の有無だけでなく、見せ方にも工夫が必要です。

  • 喫煙室の内装にも気を配り、店舗全体の雰囲気と調和させる
  • 「喫煙可」であることを明確に伝えつつ、清潔感や空間分離をアピールする
  • 非喫煙者にも配慮した動線・換気・案内を整備し、“共存型”の方針を打ち出す

喫煙対応は、店舗の方針・客層・立地と一貫性を持たせることが成功のポイントです

このように、居酒屋で喫煙室を設置する場合は、法令遵守だけでなく、実際の使われ方・顧客対応・ブランディング戦略まで含めた総合的な設計と運営が求められます。タバコを吸えることが強みになるかどうかは、設置の質と伝え方にかかっていると言えるでしょう。

タバコが吸える居酒屋は法律に沿った設備が必要

タバコが吸える居酒屋として営業を続けるには、健康増進法に基づいた厳格な条件を満たす必要があります。特に、新規開業や既存店の再構築では、「喫煙専用室」や「加熱式たばこ専用喫煙室」の設置、標識の掲示、換気設備の管理など、法令に沿った対応が求められます。

さらに、喫煙者・非喫煙者の両方に配慮した空間づくりや、従業員のルール共有、ブランディング戦略も不可欠です。

タバコ対応は店舗の方針と一貫性を持たせ、信頼と収益を両立させる経営判断として取り組むことが大切です。


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