• 作成日 : 2025年8月8日

クラウドファンディングで飲食店は始められる?リターン例や必要な準備

クラウドファンディングとは、アイデアや目的に共感した人から資金を募る仕組みです。2000年代にアメリカで広まり、日本では2011年ごろから普及が進みました。

飲食店でも開業や改装、新メニュー開発などで利用されることが増えています。一方で「そもそもどんな仕組みなのか」「本当に集まるのか」「失敗しないのか」と疑問に思う方も多いはずです。この記事では、仕組みから活用例までわかりやすく解説します。

飲食店のクラウドファンディングとは?

クラウドファンディングは、店舗やプロジェクトの計画をインターネット上に公開し、それに賛同した人から資金を募る方法です。日本では2011年ごろから普及が進み、特に同年に発生した東日本大震災の復興支援をきっかけに、寄付型のプロジェクトが数多く立ち上がったことで、社会的な認知が大きく広がりました。個人や中小企業の資金調達手段として定着してきています。

飲食店では、新規開業、店舗の改装、新メニューの開発、地域イベントとの連携など、さまざまな目的で活用されています。飲食店で主に利用される購入型クラウドファンディングでは、銀行融資とは異なり、集めた資金の返済義務がない点が大きな特徴です。

この仕組みは次の3者によって構成されます。

  • 資金を出す「支援者」
  • プロジェクトを企画・実行する「飲食店」
  • 両者をつなぐ「プラットフォーム」

飲食店で主に利用されているのは「購入型クラウドファンディング」です。これは、支援者が資金を提供する代わりに、店舗の商品やサービスをリターン(特典)として受け取る形式です。

リターンの内容は多岐にわたり、支援金額に応じて食事券、限定メニューの試食会、店内への名前掲載などが提供されることが一般的です。支援者にとっては、お店とのつながりを感じながら応援できる魅力があります。

クラウドファンディングのプラットフォーム選び

クラウドファンディングを活用して飲食店のプロジェクトを立ち上げる際、どのプラットフォームを使うかは成果に大きく関わります。サービスごとに特徴や支援者の傾向が異なるため、目的に応じた選定が必要です。

CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

プロジェクト掲載数や支援者数などで国内最大級の実績を持つクラウドファンディングサイトです。飲食店関連の実績も多く、特に個人店や地域密着型の企画が目立ちます。手数料は一般的な水準で、初心者にもわかりやすい運営画面とサポート体制が整っています。

Makuake(マクアケ)

「応援購入」というスタイルが特徴で、新商品や新サービスの発表に強みがあります。飲食店では、オリジナルのメニューや特別な食体験の企画など、目新しさのある内容と相性が良好です。事前審査はありますが、掲載されると社内に蓄積された知見をもとにアドバイスを行うなど、プロジェクトのPRを支援する体制が整っています

READYFOR(レディーフォー)

NPO支援や地域活性化、医療研究など社会貢献性の高いプロジェクトを数多く扱っており、こうしたテーマに関心を持つ支援者が集まりやすい傾向があります。

フードロス対策など、社会的なテーマと結びついた飲食店プロジェクトにも適しており、地産地消をテーマにした取り組みなどが支持されやすい傾向です。

飲食店のクラウドファンディングのリターンの例

クラウドファンディングの成功には、支援者が「応援したい」と思う魅力的なリターンを用意することです。リターンは単なるお礼ではなく、お店のコンセプトや価値を伝える手段でもあります。

支援額に応じて複数のリターンを用意するのが一般的です。

飲食店の場合、リターンは料理やサービスに直結することが多く、支援者が応援の実感を持ちやすいのが特徴です。内容によって支援額や来店数に大きく影響するため、魅力的かつ実現可能な内容にすることが求められます。

食事券やコース料理

定番のリターンが「支援額に応じた食事券」です。たとえば「3,000円の支援で店で使える食事券」など、お得感を出しつつ来店を促す設計が効果的です。また、コース料理や限定メニューを提供することで、特別な体験を演出できます。

限定イベントや試食会

開業前の試食会や支援者限定のオープンイベントなどは、支援者との関係づくりに役立ちます。少人数制の特別感や店主との交流の場を用意すると、熱量の高いファンを増やせます。メニュー開発の裏話を交えたトークイベントなども喜ばれる傾向があります。

店内への名前掲載や感謝状

支援者の名前を店舗の壁に掲示する、公式サイトやSNSに名前を載せるといった“名誉系”のリターンも人気です。金額に応じて掲載場所やデザインを変えることで、より多くの支援を集めやすくなります。感謝状や手書きメッセージを添えることで温かみが伝わります。

オリジナルグッズ

店舗ロゴ入りのTシャツ、エコバッグ、コースターなどのグッズは、自宅でも店とのつながりを感じられるアイテムとして効果があります。製作コストはかかりますが、広告としての役割も果たします。店のコンセプトや雰囲気を反映したデザインが好まれます。

特別な体験の提供

「店主による出張料理」「一日店長体験」「貸切ディナー」など、日常では味わえない体験型のリターンは、高額支援者向けに有効です。少数限定にすることで特別感が増し、希少性のあるリターンとして機能します。無理なく実行できる内容にすることが重要です。

クラウドファンディングに向いている飲食店

向いているのは、共感を呼べるストーリーや発信力がある店です。

クラウドファンディングは、どの飲食店でも成功するわけではありません。資金を集める仕組みであると同時に、“応援したくなる店”であることが問われます。コンセプトや価値観に共感が集まり、支援者の心に届く店が選ばれやすくなります。

独自のコンセプトがある飲食店

他では見ないような明確なテーマを持つ飲食店は、支援者の関心を集めやすい傾向があります。例えば「地元の未利用魚を使った寿司店」や「アレルギーに配慮したスイーツ専門店」など、背景やこだわりに物語があると、その想いに共感して支援する人が増えます。

地域とのつながりがある飲食店

地元の食材を活用している、地域イベントと連携している、など地域密着型の飲食店は、地元の人々や地域を応援したい層から支援を集めやすくなります。店舗がある地域を一緒に盛り上げたいと考える人々との相性が良いため、プロジェクトの内容に地域性を盛り込むことが有効です。

社会的なテーマを取り入れている飲食店

フードロス削減、障がい者の雇用支援、オーガニック食材の普及など、社会課題と関わるテーマを持った飲食店は、高い共感を得やすくなります。支援者の中には、商品よりも理念に賛同して出資する人も多く、こうしたテーマを明確に打ち出すことで幅広い層に訴求できます。

すでにファンがいる飲食店

常連客やSNSのフォロワーが多い店は、クラウドファンディング開始直後に一定の支援が集まりやすく、初速がつくことで他の人の支援も後押しされます。既存の顧客基盤がある場合は、その人たちを巻き込む設計にすると、成功の可能性が高まります。

情報発信に積極的な飲食店

プロジェクトの公開だけでなく、SNSやブログ、LINEなどを使った継続的な情報発信ができるお店は、支援者との信頼関係を築きやすくなります。活動の進捗や裏側を見せることで“応援したくなる”気持ちが生まれ、ファンとしての関係性が深まります。

飲食店のクラウドファンディングの成功例と失敗例

クラウドファンディングの成功と失敗には、いくつかの共通点があります。

クラウドファンディングの成功例

成功した飲食店のクラウドファンディングには、共通する特徴があります。お店の背景にあるストーリーや熱い思いを伝えることで、支援者の共感を呼んでいます。

たとえば、過疎地の古民家を再生するカフェの開業資金や、地域の伝統野菜を使った新メニュー開発のように、具体的な物語があるプロジェクトは支援を集めやすい傾向があります。

また、支援者が「お金を出してでも手に入れたい」と思うようなユニークで価値あるリターンを用意しているプロジェクトは成功します。集まった資金が何に、どのように使われるのかを具体的かつ分かりやすく説明しているプロジェクトは、支援者に信頼感を与えます。

さらに、積極的な情報発信とコミュニケーションも成功に欠かせません。プロジェクトの開始前からSNSやブログで告知を行い、支援を呼びかけるだけでなく、プロジェクト期間中も進捗状況をこまめに報告し、支援者からのコメントに丁寧に返信するなど、積極的なコミュニケーションを取ることで、支援者の満足度を高め、追加支援や口コミによる広がりを促します。

クラウドファンディングの失敗例

一方で、失敗してしまう飲食店クラウドファンディングにも共通点があります。

一方で、失敗してしまう飲食店クラウドファンディングにも共通点があります。準備不足と計画性の欠如は、失敗の大きな要因です。目標金額の根拠が曖昧だったり、リターンの内容が不十分だったり、プロジェクト公開後のプロモーション計画がなかったりすると、目標達成は難しくなります。綿密な事前準備と現実的な計画がなければ、支援は集まりません。

魅力に欠けるプロジェクトも失敗につながります。お店のコンセプトが不明確で、支援者が共感しにくいプロジェクトは支援が集まりません。また、リターンが一般的な食事券だけであったり、他の支援型プロジェクトと差別化できていない場合も、支援者の関心を引くことは難しいでしょう。

最後に、情報発信の不足と不誠実な対応も失敗の原因です。プロジェクトを公開しただけで満足し、その後のSNS更新や進捗報告を怠ると、支援者の期待を裏切ってしまいます。リターンの遅延やトラブルが発生した際に、適切な説明や対応ができないと、支援者の不満や炎上につながる可能性があります。透明性を保ち、誠実に対応することが重要です。

飲食店がクラウドファンディングを始める流れ

飲食店がクラウドファンディングを始めるには、企画・設計・広報・実施・リターン提供まで、一つひとつのステップを丁寧に進めていきましょう。

ステップ1:目的と目標金額を明確にする

プロジェクトの目的を具体的に定め、何のために資金が必要なのか(開業資金、新メニュー開発、改装費用など)を明確にし、具体的な目標金額を設定します。目標金額の内訳も明確にすることで、支援者に信頼感を与えます。

ステップ2:伝えたいコンセプトを整理する

お店の強み、伝えたい思い、提供する価値などを言語化し、プロジェクトの核となるコンセプトを固めます。これが支援者の共感を呼ぶ土台となります。飲食店の想いやストーリーが明確になっていると、支援者が共感しやすくなります。

ステップ3:魅力的なリターンを設計する

支援額に応じて、魅力的なリターンを複数用意します。実用的なものから体験型のものまで、支援者が「欲しい」と思うような特別なリターンを設定することが重要です。リターンにかかる費用も考慮し、無理のない範囲で設定しましょう。

ステップ4:プラットフォームを選定する

CAMPFIRE、Makuake、READYFORなどから、プロジェクトの目的に合ったプラットフォームを選びます。各プラットフォームの手数料や特徴を比較検討しましょう。

ステップ5:プロジェクトページを作成する

お店の魅力、プロジェクトの目的、資金の使い道、リターンの詳細などを、写真や動画を多用してわかりやすく説明します。共感を呼ぶストーリーを盛り込み、支援者が「応援したい」と思えるようなページを作り込みます。

ステップ6:事前告知と広報を行う

プロジェクト公開前から、お店のSNS、ウェブサイト、ブログ、メールマガジンなどで告知を行い、期待感を高めます。既存の顧客や友人・知人に協力を呼びかけるのも有効です。

初動の支援が集まるよう準備を整えておくことで、公開直後の流れをつかみやすくなります。

ステップ7:公開後の発信とリターン対応を進める

プロジェクトを公開したら、定期的に活動報告を行い、支援者とのコミュニケーションを密に取ります。SNSでの拡散や、メディアへのプレスリリースなども積極的に行い、より多くの人にプロジェクトを知ってもらいます。

プロジェクトが終了し、目標金額が達成されたら、約束通りにリターンを提供します。リターンの発送や準備に遅れが生じる場合は、速やかに支援者に状況を報告し、誠実に対応することが重要です。

飲食店がクラウドファンディングを始める際の注意点

クラウドファンディングは資金を集めるチャンスである一方、慎重さも求められます。計画や運営において注意点を押さえておくことで、支援者の信頼を守り、炎上やトラブルを防ぐことができます。

目標金額と手数料を把握する

クラウドファンディングには2つの方式があり、それぞれにリスクがあります。

  • All-or-Nothing方式:目標金額に達しないと資金を受け取れません。目標は現実的な水準で設定し、無理のない達成計画を立てる必要があります。
  • All-in方式:達成しなくても資金を受け取れますが、リターンの提供が難しくなる可能性もあるため、慎重な予算設計が求められます。

どちらの方式でも、プラットフォーム手数料が差し引かれる点に注意が必要です。一般的には集まった金額の10〜20%が差し引かれます。例えば、CAMPFIREは約17%、READYFORは約14%、Makuakeは約20%です。

事前に確認し、手数料を含めたうえで、必要な手取り額を逆算して目標金額を設定しましょう。

炎上のリスクと信頼維持に努める

クラウドファンディングでは、支援者との関係性がプロジェクトの評価に直結します。

  • 炎上リスクの回避:不十分な説明、進捗報告の遅れ、不誠実な対応は炎上につながります。資金の使い道を明示し、こまめな報告で透明性を保つことが信頼につながります。
  • リターンの管理:約束したリターンは、期限通りに、確実に提供することが前提です。特に数量限定や手作業が必要な内容は、スケジュールと対応能力を慎重に見積もりましょう。遅延や不備が生じた場合は、早めに状況を説明し、支援者に丁寧に対応することが求められます。

食品衛生法・営業許可を遵守する

飲食店としてクラウドファンディングを行う場合、リターンに飲食物を含めることが多くなります。

リターンとして調理済みの食品や加工品を発送・提供する際には、製造場所が保健所の「菓子製造業」や「そうざい製造業」といった営業許可を得ていることが食品衛生法で義務付けられています。

許可のない場所での製造はできません。また、リターンには製造者情報、原材料、アレルギー表示、賞味期限などを定めに従って正確に表示する必要があります。

「出張料理」や店舗での「支援者限定イベント」などで食品を提供する場合は、その内容に応じて「飲食店営業」などの許可が必要になることがあります。どのような許可が必要か、必ず企画段階で管轄の保健所に詳細を相談・確認してください。

不明な点があれば、行政書士や保健所などの専門機関に事前相談することで、トラブルを防げます。

クラウドファンディングで飲食店の可能性を広げる

クラウドファンディングは、飲食店が資金を調達するだけでなく、お店のファンを増やし、開業前から集客効果を生み出す有効な手段です。成功させるためには、明確なコンセプト、魅力的なリターン、そして支援者との継続的なコミュニケーションが欠かせません。

クラウドファンディングを通じて得られるのは、資金だけではありません。支援者からの温かい応援メッセージやフィードバックは、お店を運営していく上での大きな支えになります。


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