• 更新日 : 2026年2月19日

運送業の就業規則とは?記載必須事項や業界特有の注意点を解説

Point運送業の就業規則は何を定めるべき?

運送業の就業規則は、労働時間管理や安全運行ルールなどを明記する文書です。

  • 改善基準告示と年960時間上限を反映する
  • 36協定と運行・車両管理を明文化する
  • 違反・事故時の服務規律を規定する

労働時間の規定は就業規則に必ず書く必要があり、改善基準告示に基づき、拘束時間・休息・連続運転などの具体的上限を明示しなければなりません。

運送業で働くドライバーの安全と働きやすさを守るには、実態に合った就業規則の整備が欠かせません。就業規則は、労働条件やルールを明文化し、現場でのトラブルを防ぐための大切な土台となります。

本記事では、運送業における就業規則の記載項目(法定・任意)、作成時の注意点、届け出・周知の方法などを解説します。

就業規則とは?運送業で作成が必要な理由は?

運送業では、労働時間が長くなりやすく、勤務形態も不規則になりがちです。そのため、労働条件や職場内のルールを明文化し、会社と従業員の共通認識を持つことが欠かせません。就業規則は、その基盤となる重要な文書です。ここでは、就業規則の基本的な役割と法律上の位置づけを確認したうえで、なぜ運送業で特に作成が求められるのかを整理します。

就業規則は労働条件と職場ルールを明文化した文書

就業規則とは、従業員の労働条件や職場内で守るべきルールを体系的にまとめた文書です。労働時間、休日、賃金の決定方法、退職や解雇の手続きなど、労働関係の基本事項が網羅されており、会社と従業員双方が判断の拠り所とする基準になります。口約束や慣例に頼らず、文書として明確に定めることで、認識の食い違いを防ぎ、労務トラブルの予防につながります。

就業規則は労働基準法により作成と届け出が義務付けられている

労働基準法第89条では、常時10人以上の従業員を使用する事業場に対し、就業規則の作成と労働基準監督署への届け出を義務付けています。この人数には正社員だけでなく、パートやアルバイトも含まれます。作成時には、労働組合または従業員の過半数を代表する者の意見を聴取し、意見書を添付する必要があります。また、就業規則は作成するだけでなく、従業員に周知されて初めて効力を持ちます。閲覧できる場所への備え付けや配布、社内システムでの公開など、誰でも確認できる状態を整えることが前提となります。

参考:労働基準法|e-GOV

運送業では労務管理と安全確保のため就業規則が不可欠

運送業では、長時間労働や不規則な勤務、突発的な残業が発生しやすく、労働時間管理が大きな課題となります。さらに、自動車を使用する業務である以上、安全運転の徹底や事故防止も重要な責務です。就業規則によって、勤務時間の考え方や休息の取り方、安全運転に関する社内ルールを明確にすることで、現場の判断に迷いが生じにくくなります。結果として、ドライバーの健康と安全を守り、会社としての法令遵守やリスク管理にもつながる点で、運送業における就業規則の整備は大きな意味を持ちます。

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運送業の就業規則を作成する際のポイントは?

運送業では、一般企業と異なり、長時間労働・安全管理・運行業務の特殊性など独自の課題があります。以下では、作成時に押さえるべき重要なポイントについて解説します。

労働時間の上限や36協定の扱いを就業規則に明記する

運送業では労働時間の管理に特例があり、2024年の猶予期限経過後、上限規制の適用が開始されています。原則として労働時間は1日8時間・週40時間までとされていますが、運送業では荷物の遅延や交通渋滞といった不確実な要素が多く、残業が発生しやすい傾向にあります。

これまでは自動車運転者に対する上限規制の適用が猶予されていましたが、2024年4月からは「年間960時間まで」とする新たな上限が設けられ、一般業種より緩やかではあるものの、無制限な残業は認められなくなりました。これにより、就業規則にも「法定時間外労働の上限」「36協定の届出が必要な時間外勤務の取り扱い」など、具体的な記述が求められます。

また、変形労働時間制を採用する場合には、その導入条件、期間、適用対象者なども明確にし、深夜・休日勤務の割増賃金率についても詳しく定める必要があります。こうした項目を曖昧にすると、労務トラブルや監督署の指導対象となるおそれがあります。

参考:建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制|厚生労働省

運行や車両の管理ルールは業務実態に即して明文化する

運送業では、運行管理や車両管理に関する明確なルールが就業規則に不可欠です。運転者の「拘束時間」「休息期間」「連続運転可能時間」などを就業規則内に明記し、業務ごとの基準を可視化することで、安全運行を徹底させることが可能になります。

「1日の拘束時間は原則13時間以内」「連続運転は4時間を超えないようにし、30分以上の休憩をはさむ」といったように、業界のガイドラインや改善基準告示に基づいた表現が必要です。

また、車両管理においても「点検・整備の実施時期」「異常発見時の報告方法」「社用車の私的使用の禁止」「デジタルタコグラフ等の運行記録の保存と確認手順」といった事項は、就業規則の中で標準化しておくことが重要です。

さらに、安全運転管理者の選任、運転者台帳や車両台帳の整備状況、保険加入内容の記録なども、監査や事故発生時の対応に備え、規則内に記述しておくと実務的な効力を発揮します。

参考:自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)|厚生労働省

交通違反や事故に対する懲戒処分の方針を明確に定めておく

運送業では、自動車を使用する性質上、交通違反や事故は企業リスクとして避けて通れません。そのため、就業規則には違反・事故に対する社内処分ルールを具体的に記載し、従業員への抑止力を確保することが求められます。

「酒気帯び運転が判明した場合は懲戒解雇」「故意または重大な過失による事故については修理費を一部負担させる」といった具体的な処分基準を明示しておくことで、対応の一貫性と公平性を担保できます。

また、安全運転のための社内規範として、「速度超過の禁止」「過労運転の禁止」「シートベルト着用の徹底」「悪天候時の運行判断基準」なども明記し、会社の方針として日常的に意識させる仕組みを整えておくことが重要です。

こうした懲戒規定や安全ルールの明文化は、トラブル発生時の法的対応にも役立つほか、会社のコンプライアンス体制の強化にもつながります。

運送業の就業規則に記載すべき項目は?

就業規則に盛り込む内容は、大きく分けて「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意的記載事項」の3種類があります。運送業の場合、法定の基本事項に加えて安全運行や車両管理に関する独自規定を充実させることがポイントになります。

【絶対的必要記載事項】必ず記載が必要な基本項目

絶対的必要記載事項とは、労働基準法第89条により、就業規則に必ず記載しなければならない法定項目です。運送業においては、特に労働時間と安全管理に直結する内容を具体的に定める必要があります。

  • 労働時間に関する事項
    始業・終業時刻、所定労働時間、休憩時間、休日、交替制勤務の転換手続きなどを定めます。
    運送業では、配送スケジュールに応じた変形労働時間制の適用条件、待機時間の扱い、長距離運行時の仮眠・休息時間の確保方法なども具体的に記載することが重要です。
  • 賃金に関する事項
    賃金の決定方法、計算方法、締日および支払日、昇給の有無や条件を明示します。あわせて、時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金計算方法を明確にし、運転手当、無事故手当、夜間手当、長距離手当など運送業特有の手当の支給条件も記載します。
  • 退職に関する事項
    退職の申出方法、退職時期、解雇事由、定年の有無や年齢を定めます。
    運送業では、安全確保の観点から、重大な交通事故や度重なる交通違反への対応を明文化することが重要です。例えば「重大な事故により運転免許取消処分を受けた場合は解雇対象とする」といった規定を設けることで、会社としての安全管理方針を明確にできます。

【相対的必要記載事項】制度がある場合に必要な項目

相対的必要記載事項とは、会社が任意で導入している制度について、制度が存在する場合に限り記載が義務となる項目です。運送業の業務特性を踏まえて、以下のような内容を就業規則に盛り込みましょう。

  • 退職金制度の有無と支給基準
    例:勤続年数別の支給額や不支給条件、算定方法など。
  • 賞与(ボーナス)の支給要件と計算方法
    営業成績・無事故期間などを基準とした明確な支給ルールを明記します。
  • 無事故・無違反手当や安全運転表彰制度
    例:「1年間無事故無違反のドライバーに対し月額〇円の手当を支給する」など。
  • 出張・運行中の費用負担のルール
    例:宿泊費・高速道路料金・燃料代・食事代の会社負担範囲を明示。
  • 安全および衛生に関するルール
    例:感染症予防対策や安全講習の実施などを定めた場合は、その方法。
  • 職業訓練に関する制度
    例:新規採用者の同乗研修などの実施方法。。
  • 災害補償や傷病手当、見舞金制度
    業務中の事故による補償制度や、慶弔見舞金など福利厚生関連です。
  • 表彰・懲戒のルール
    例:優良ドライバーの表彰制度、交通違反時の懲戒処分基準など。

【任意的記載事項】企業が独自に追加する項目

任意的記載事項とは、法的義務はないものの、企業ごとの判断で自由に定められる独自の職場ルールや方針です。特に運送業では、運転中の行動や車両・貨物の取り扱いに関する細かなルールを記載することで、トラブル防止や安全意識の向上に役立ちます。

  • 運転中の行動ルール
    例:「運行中の携帯電話使用禁止」「運転中の飲食・喫煙の制限」「荷待ち中のアイドリングストップ励行」など。
  • 業務車両の損傷・事故時の対応
    事故や破損が発生した場合の報告手順、修理費用の負担範囲、業者連絡のフローなどを明示します。
  • 荷主対応・クレーム処理の手順
    例:誤配送・遅延・破損・荷崩れ時の初動対応、報告書の提出先、再発防止策の提示フローなど。
  • 貨物事故・トラブル時の報告と処理ルール
    例:「荷崩れ等が発生した場合は即時連絡し、写真を添付の上、事故報告書を提出する」など。
  • 制服・装備品・運転日報の管理ルール
    支給・返却の条件や、日報提出の締切時間、デジタコ・ドラレコ記録の確認についても定めておくと実務が円滑になります。

就業規則の届け出・周知と運用のポイントは?

就業規則は、作成しただけでは効力を持ちません。労働基準監督署への届け出と従業員への周知を経て、はじめて法的に有効となり、社内ルールとして機能します。

作成・変更後は労働基準監督署への届け出が必要(従業員10人以上の場合)

従業員が常時10人以上いる事業場では、就業規則を新たに作成または変更した際に、労働基準監督署への届け出が義務付けられています。

この届け出には、就業規則の本文に加えて「労働組合または従業員代表の意見書」を添付する必要があります。従業員代表は、労働組合が存在しない場合、従業員の過半数による投票や話し合いで選ばれた者であることが求められます。店長や管理職など経営側の立場の人は対象外です。

意見書は、就業規則案に対して賛成・反対いずれでも構いませんが、書類に添付しなければ届け出自体が受理されません。加えて、運送業では法令上の特殊な基準、たとえば「改善基準告示(トラック運転者の労働時間管理に関する規定)」などに適合しているかも確認が必要です。労働時間の上限や休息期間、拘束時間の扱いなどについて、法律違反がないか事前にチェックしましょう。

法令や制度が複雑なため、内容に不安がある場合は社会保険労務士などの専門家の助言を受けることが望まれます。特に重大な不利益変更(賃金減額や手当廃止など)を行う場合は、トラブルを防ぐために事前に丁寧な説明と合意形成に努めることが重要です。

就業規則は周知されて初めて効力を持つ

就業規則は、従業員にきちんと周知されていなければ、その効力が及びません。労働基準法第106条により、すべての従業員がいつでも就業規則を確認できる状態にしておくことが義務づけられています。

周知方法としては以下のような手段が有効です。

  • 書面を配布して個別に交付する
  • 事務所や休憩室など、見やすい場所に掲示または備え付ける
  • 社内クラウドやチャットツールにPDFデータを掲載し、従業員が自由にアクセスできるようにする

運送業では、ドライバーが社内に常駐せず、長距離運行や夜間業務などで不在がちです。このため、紙面での掲示だけでは不十分であり、スマートフォンや社内アプリでの閲覧環境の整備が重要となります。たとえば、就業規則をスマートフォン対応のPDFで共有したり、LINE WORKSやTeamsなどのチャットツールで更新情報を通知したりする方法が実務的です。

また、新人乗務員の入社時には必ず就業規則の説明を行い、安全運転講習などのタイミングでも規則の再確認を行うと、現場でのルール定着に効果的です。

規則は作成後も定期的に見直す

就業規則は一度作って終わりではなく、法改正や事業内容の変化に応じて随時見直すことが求められます。働き方改革関連法の改正、改善基準告示の改定、トラック運転手の待遇見直しなど、外部要因による変更が発生する場合は、内容を最新の法令に合わせて修正しなければなりません。

また、社内制度の変更に対応する場合も、就業規則の改定が必要です。この場合も、従業員代表の意見を聴取し、労基署に届け出て、従業員に再周知するという一連のプロセスが必要になります。

適切なタイミングで見直しを行うことは、労使間の信頼関係の維持や、労務リスクの予防につながります。運送業界では、業務内容の変化や法改正が頻繁にあるため、定期的な就業規則の確認・更新を習慣化することが重要です。

運送業の就業規則を適切に整備して安全・安心な職場づくりを

運送業における就業規則は、労働時間管理や安全運転のルールなどドライバーの働き方全般を支えます。法律上、従業員数が一定以上なら作成と届け出が義務となり、内容には絶対的記載事項をはじめ運送業ならではの規定(運行管理や事故対応策等)も盛り込む必要があります。36協定の締結・届け出や労働時間の特例に関する最新法改正への対応も欠かせません。作成した就業規則は全ドライバーに周知し、定期的に見直して常に現行法と現場実態に即した内容にアップデートしていきましょう。


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