• 更新日 : 2026年1月28日

退職証明書は何に使う?目的や具体的な利用シーン、 注意点など解説

「退職証明書」とは、従業員が退職した事実を企業が公的に証明する、人事労務手続きにおいて重要な書類です。しかし、この退職証明書を「具体的に何に使うのか」、また公的な「離職票」と法的にどう役割が異なるのかについて、正確に理解できているでしょうか。

本記事では、退職証明書とは何かという基本的な定義から始め、「何に使うのか」という核心的な疑問に回答します。国民健康保険への切り替えや転職先での証明といった具体的な利用シーン、離職票との決定的な違い、そしてスムーズな取得方法まで、人事労務の初心者が迷いやすいポイントを分かりやすく解説します。

退職証明書は何に使う書類なのか?

退職証明書は、主に公的機関での社会保険切り替え手続きや、転職先への経歴証明に使用します。

この書類が使われる最大の根拠は、公的な証明書(離職票)が手元に届くまでにタイムラグが発生するため、その間の「つなぎ」として退職事実を公的に証明できる唯一の手段だからです。

以下、利用される2つの目的について詳しく解説します。

国民健康保険・国民年金の切り替え手続き

退職日の翌日からすぐに、役所で健康保険や年金の加入手続きを行うために使います。

会社を退職すると翌日から社会保険の資格を失うため、速やかに国民健康保険へ切り替える必要があります。しかし、通常手続きに必要な「離職票」は退職後2週間ほど届かないことがあります。

退職証明書があれば、離職票を待たずに退職の事実を証明できるため、「無保険期間」を作らずに即座に切り替え手続きを完了させることができます。

転職先での在籍・経歴証明

新しい職場に対し、前職での在籍期間、業務内容、役職などが事実であることを証明するために使います。

中途採用において、企業側は応募者の経歴詐称や二重就労(前職に籍が残っていないか)のリスクを避ける必要があります。

退職証明書には法的に裏付けされた「使用期間」や「業務の種類」が記載されるため、客観的で信頼性の高い証明書類として、入社手続き時の提出が求められます。

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退職証明書が必要になる具体的なシーンとは?

退職証明書は「離職票が手元にないが、すぐに退職の証明が必要な場合」のすべてで必要になります。

企業の手続き遅れやハローワークの繁忙により離職票が届かない状況でも、行政サービスや転職先への対応を止めるわけにはいかないため、代替手段として機能します。

離職票が届く前に国保へ加入したい場合

病気通院中などで、退職翌日にすぐ健康保険を利用したい場合に必要です。

退職後に国民健康保険へ加入するには、資格喪失日(退職日の翌日)が確認できる書類が必須です。

離職票を待っていると加入が遅れ、その間に病院にかかると医療費を一旦全額(10割)負担しなければなりません。退職証明書を退職日に受け取っておけば、その足で役所へ行き、スムーズに国民健康保険に加入できます。

家族の扶養に入る手続きをする場合

配偶者や親の健康保険(被扶養者)に入る際、収入がなくなったことを証明するために必要です。

家族が勤務する会社で扶養加入の手続きをする際、「退職して給与収入が途絶えたこと」を証明する書類の添付を求められます。

ここでも離職票のコピーが一般的ですが、発行を待てない場合は退職証明書を提出することで、審査を早く進めてもらうことが可能です。

ハローワークで仮の手続きをする場合

会社が倒産したり、離職票の発行を拒否・遅延したりしている場合の緊急措置として使用します。

原則として失業給付には離職票が必要ですが、離職票の発行が遅れている場合、ハローワークによっては退職証明書等で退職の事実を確認し、仮の求職申込み(仮手続き)を受け付けてくれることがあります。 対応可否は管轄のハローワークにより異なるため、事前に電話等で相談することをおすすめします。

そもそも退職証明書とは?

退職証明書とは、労働者が退職したという事実について、元雇用主(企業)が証明し発行する書類のことです。

労働基準法第22条に基づき、労働者から請求があった場合、企業は遅滞なくこれを交付する義務があるため、正当な権利として入手できます。

この書類は、決まったフォーマットがない「私文書」ですが、法的に定められた記載項目(使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職事由)を含めることで、公的な証明力を持ちます。

退職証明書の定義と記載項目

退職証明書には最大5つの項目を記載できますが、労働者が請求していない事項を記載することは禁止されています。

これは、労働者の再就職活動を妨害する意図で、不要な情報(解雇の理由など)が勝手に公開されるのを防ぐためです。

具体的に記載可能な項目は以下の通りです。

  1. 使用期間(入社日〜退職日)<
  2. 業務の種類(職種・担当業務)
  3. その事業における地位(役職)
  4. 賃金(給与額・手当)
  5. 退職の事由(自己都合、解雇など)

退職証明書と離職票の違い

最大の違いは「発行元」と「失業保険の手続きに必須かどうか」です。

離職票はハローワークが発行する公文書であり失業給付に不可欠ですが、退職証明書は企業が発行するもので失業給付の本手続きには原則使えません。

比較項目退職証明書離職票(雇用保険被保険者離職票)
主な用途健保・年金の切り替え、転職先への証明失業給付(失業保険)の受給
発行元企業(事業主)ハローワーク(手続きは企業経由)
発行スピード即時(退職時など)遅い(退職後10日〜2週間)
請求の要否必要(請求しないと貰えない)請求しないと発行されない場合がある

このように、「失業保険をもらうなら離職票」「それ以外の手続きを急ぐなら退職証明書」と使い分けます。

退職証明書と離職票の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

退職証明書の取得・発行方法は?

退職証明書は、労働者からの「請求」に基づき、企業が「指定された項目のみ」を記載して発行する書類です。

自動的に発行される書類ではないため、労働者側のアクション(請求)が起点となります。一方、企業側(人事担当者)は労働基準法に基づき、請求があった場合は遅滞なくこれに応じる義務があります。双方にとって「どの項目を記載するか」のすり合わせがトラブル防止の鍵となります。

【労働者側】会社へ請求する手順とポイント

人事・総務担当者へ「利用目的」と「必要な記載項目」を伝え、直接発行を依頼します。

労働基準法により請求権が保証されているため、遠慮せず所定の手続きを踏めば確実に取得できます。

退職時に請求する場合

退職届を提出する際や、最終出社日に合わせて依頼するのが最もスムーズです。

  • 依頼: 「国民健康保険の切り替えに使いたいので、退職証明書の発行をお願いします」と伝えます。
  • 項目指定: 「退職年月日と使用期間だけ記載してください」と具体的に指定します(転職活動に使う場合など、不要な情報を書かせないため)。
  • 受取: 退職日に手渡しで受け取るか、後日郵送してもらうかを取り決めます。

退職後に請求する場合

退職してから2年以内であれば、電話やメールで元勤務先に請求可能です(時効は2年)。

  • 連絡: 「再就職先から提出を求められたため」など理由を添えて連絡し、郵送先を伝えます。
  • 対応: 企業によっては「発行申請書」への記入や、返信用封筒の送付を求められる場合があるため、担当者の指示に従いましょう。

【人事担当者側】発行依頼への対応手順とポイント

労働者が「請求した事項のみ」を記載した証明書を作成し、遅滞なく交付します。

人事担当者は、労働者から発行依頼があった際、以下の手順でミスなく対応する必要があります。特に記載項目の扱いは法的な禁止事項が含まれるため注意が必要です。

1. 記載希望項目の確認(最重要)

労働者が「何を証明してほしいのか」を確認します。

  • 注意点: 労働者が請求していない事項(例:解雇の理由、賃金など)を記載することは、労働基準法第22条第3項で禁止されています。良かれと思って全項目を埋めるのはNGです。

2. 書面の作成

決まった公的様式はないため、自社のフォーマット(WordやExcelなど)で作成します。

  • 必須項目: 社印(角印)や代表者印を押印し、公的な証明能力を持たせます。

3. 遅滞なく交付

作成後は速やかに手渡し、または郵送します。

  • スピード感: 退職証明書は、遅滞なく発行が求められる書類です。可能な限り当日〜数日以内に対応しましょう。

退職証明書の注意点である使用目的と記載項目のミスマッチとは?

「何に使うか」で必要な情報は変わるため、転職用なら「不要情報の除外」、公的手続きなら「正確な日付」など、目的に応じた項目の選定が重要です。

退職証明書は、使用目的(転職先への提出、国保の手続きなど)によって求められる情報が全く異なります。 全ての項目を網羅した証明書を発行してしまうと、本来見せる必要のない「退職理由(解雇など)」が転職先に伝わってしまったり、逆に手続きに必要な「退職日」が不明確で役所に受理されなかったりするトラブルが起きます。 ここでは、主な使用シーン別に、労働者と人事担当者が注意すべきポイントを解説します。

【転職先に使う場合】「退職の事由」が含まれていないか確認する

新しい会社に提出する場合、不利になる可能性がある「退職理由」や「賃金」は、あえて記載しない場合があります。

転職先が知りたい情報のメインは「在籍期間の証明(職歴詐称がないか)」や「業務内容」です。ここに不要な「詳しい退職事情(懲戒や解雇など)」や「前職の給与」が記載されていると、採用判断や給与交渉で不利になるリスクがあるためです。

  • 労働者の注意点:「何も言わなくても分かってくれるだろう」は危険です。請求時に「転職先に出すので、使用期間と業務の種類だけ記載してください」と指定しましょう。
  • 人事担当者の注意点:「次の会社でも頑張ってほしい」という親切心でも、本人の同意なく退職理由や賃金を書くと、労働基準法違反になるリスクがあります。「提出先はどちらですか?記載してはいけない項目はありますか?」と必ず確認しましょう。

【公的手続きに使う場合】「退職年月日」の正確性が最優先

国民健康保険や年金の切り替えに使う場合、「いつ資格を喪失したか」が最も重要なため、日付のミスは致命的です。

役所の手続きでは、「退職理由」は基本的に問われませんが、「退職日(資格喪失日の前日)」が一日でもズレていると、保険料の計算が変わったり、手続きが受理されなかったりします。

  • 労働者の注意点: 受け取ったらすぐに、記載されている「退職年月日」が正しいか(最終出社日ではなく、正式な退社日になっているか)を確認してください。
  • 人事担当者の注意点: 有給消化などで最終出社日と退職日が異なるケースで記載ミスが起こりがちです。公的書類(離職票など)と日付が整合しているか、厳重にチェックしてください。

【共通】会社が発行を拒否した場合の対処法

どのような目的であれ、会社には発行義務があるため、拒否された場合は労働基準監督署の力を借ります。

「自分から辞めたわけじゃない(解雇など)」というケースで、会社側がトラブルを恐れて発行を渋ることがあります。しかし、会社は請求があれば、発行を拒むことはできません。

  • 労働者のアクション: 健康保険の切り替えができなくて困っています」と実害を伝え、それでもダメなら労働基準監督署に「法第22条違反」として相談してください。
  • 人事担当者のリスク管理: 感情的な対立があった退職者であっても、請求を無視すれば30万円以下の罰金対象(労働基準法第120条)となります。「事務的に淡々と発行義務を果たす」ことが、会社を守る最善策です。

出典:労働基準法 | e-Gov 法令検索

退職証明書は何に使うのかを正しく理解して手続きを円滑に

この記事では、退職証明書は何に使うのかという基本的な疑問から、離職票との決定的な違い、そして具体的な取得手順について詳しく解説しました。

特に押さえておきたいのは、退職証明書が離職票の到着を待たずに使える最速の公的証明手段だという点です。 主な出番は「国民健康保険の切り替え」や「転職先への在籍証明」ですが、何も考えずに全項目を記載してしまうと、労働基準法違反のリスクを招きかねません。そのため、請求のない事項を記載しないように注意しましょう。

退職後の手続きにおいて、「書類が届かない」という焦りは禁物です。退職者は自身の目的に合わせて賢く請求を行い、人事担当者は法的なルールを守って迅速に対応することで、双方が安心して次のステップへ進めるようになります。本記事の知識を活用し、滞りのないスムーズな退職・入社手続きを実現してください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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