- 更新日 : 2025年10月6日
退職勧奨した場合でも離職票を発行する?発行の流れや離職証明書の書き方も紹介
退職勧奨により従業員が会社を辞める場合でも、本人が離職票の発行を求めた場合は対応する必要があります。
ただ、離職票の発行手続きを行おうとしている人の中には「退職理由に何を選べば良い?」「退職勧奨した場合の離職証明書の書き方は?」と悩んでいる人もいるでしょう。
そこで本記事では、退職勧奨した場合の離職票を発行する流れや離職証明書の書き方について詳しく解説します。また、離職票を発行できる条件や発行に関する注意点などもまとめています。
退職勧奨をした場合でも離職票は必要?
退職勧奨をした場合でも、本人に離職票の発行を依頼されたら発行手続きをする必要があります。
また、退職日時点で本人の年齢が59歳以上である場合も、必ず発行手続きをしなければなりません。これは、60歳〜64歳の人が対象となっている「高年齢雇用継続給付」の手続きをするときに離職票が必要であるためです。
ただ、本人が退職日時点で59歳未満であり、なおかつ明確に「離職票は不要です」と発言した場合は、発行手続きをしなくても問題ありません。
離職票を発行できる条件
離職票はすべての退職者に発行できるわけではなく、雇用保険に加入していることが条件となります。雇用保険の加入条件は以下の3つです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
- 学生ではないこと
上記の条件をいずれも満たしている場合は、正社員だけでなく契約社員やパート・アルバイトなどにも離職票を発行可能です。反対に、雇用保険に加入していなければ離職票は発行できず、失業保険も受給できません。
雇用保険に加入しているかどうかは「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」で確認可能です。通知書があれば、その従業員は雇用保険に加入しているという判断となります。
なお、雇用保険に加入できていたとしても、失業保険の受給条件を満たしていなければ受給できません。会社都合退職の場合は、離職日より前の1年間で被保険者期間が通算して6ヶ月以上あることが条件です。条件を満たしていないのであれば、退職手続きの際に本人に伝えてあげると親切でしょう。
離職票の発行方法
離職票の発行方法について順に解説します。
1. 本人に離職票が必要か聞く
従業員が退職勧奨に合意して正式に退職することが確定したら、本人に離職票が必要かどうか聞きましょう。
のちにトラブルとなるのを防ぐため、なるべく退職前に聞くのが望ましいです。また、本人の生年月日をもとに、退職日時点で59歳を迎えているかどうかも確認することをおすすめします。
もし前述の離職票を発行する条件を満たしていないにもかかわらず、離職票を発行してほしいと言われたり催促されたりした場合は、発行できない旨を本人に伝えましょう。
2. 離職証明書を作成してハローワークへ提出する
離職票を発行することが確定した場合は、離職証明書を作成して退職日の翌々日から10日以内にハローワークへ提出する必要があります。
この期限は雇用保険法施行規則の第7条によって規定されているうえに、離職証明書の提出が遅くなると失業保険の受給も遅くなってしまうため、必ず期限内に提出しましょう。
また、離職証明書を提出するときは、給与明細やタイムカードなどの書類を添付する必要があります。加えて退職勧奨の場合は、その事実を証明するために退職願・労働者名簿・退職証明書などの書類も添付します。
離職証明書が完成して添付書類も用意できたら、窓口への持参・郵送・電子申請のいずれかでハローワークに提出しましょう。
3. ハローワークから離職票が送られてくる
離職証明書がハローワークに届いたら、記載されている離職理由や退職日などが確認されます。特に記載内容に問題がなければ、おおよそ1日〜5日ほどで離職票が発行されるため必ず受け取りましょう。
ただし、3〜5月の年度替わりやボーナス支給の翌月にあたる1月や7月などは、退職者が増えてハローワークの繁忙期となるため、離職票の発行が遅くなる場合があります。
もし10日ほど待っても届かないようであれば、離職票の発行状況についてハローワークに確認してみることをおすすめします。
4. 退職者の自宅へ離職票を送付する
ハローワークから離職票が届いたら、速やかに退職者の自宅に郵送します。早めに失業保険に申請したい退職者も多いと考えられるため、離職票の到着から2、3日以内には送りましょう。
また、離職票は重要な書類であるため、普通郵便で郵送するのは避けたほうが良いです。配達記録が残る簡易書留・特定記録郵便・レターパックのいずれかの方法で送るのが望ましいです。
退職勧奨した場合の離職証明書の書き方
退職勧奨により従業員が辞職したときの離職証明書の書き方を詳しく紹介します。
退職者の個人情報や雇用保険に関する情報を記載する
引用:記入例:雇用保険被保険者離職票−2(様式第6号)|ハローワークインターネットサービス
まずは、退職者の個人情報や雇用保険に関する情報を、赤枠で囲った部分に記載しましょう。
- 退職者の被保険者番号
- 事業所番号
- 退職者の氏名
- 離職年月日
- 事業所の名称・所在地・電話番号および事業主の住所・氏名
- 退職者の住所および電話番号
退職者の被保険者番号については「雇用保険被保険者証」で確認可能です。また、離職年月日については、原則として「雇用保険被保険者資格喪失届」に記載した離職年月日と同じ日付を記載しましょう。
続いて、用紙の右側にて退職理由として該当するものを選択して印を付けます。退職勧奨の場合は会社都合となるため、「4 事業主からの働きかけによるもの」のうち「(3)希望退職の募集又は退職勧奨」を選択しましょう。
そして、用紙の右側の青枠で囲った部分に退職理由を記載します。退職勧奨の場合は「会社都合による退職」と記載すれば問題ありません。
失業保険の受給資格に関する情報を記載する
オレンジの枠で囲った部分に、失業保険の受給資格に関する以下の情報を記載します。
- 被保険者期間算定対象期間
- 被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数
被保険者期間算定対象期間とは、離職日から遡った2年間のことです。賃金支払基礎日数とは、出勤日や有休取得日など賃金の支払対象となる日数のことです。
退職者の過去の勤怠を確認して、算定対象期間と基礎日数をそれぞれ算出しましょう。
なお、この箇所に関しては、基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上になるまで記載しなければなりません。11日未満の月が多いと1枚では足りなくなることもあるため、その場合はもう1セット離職証明書を用意して記入する必要があります。
賃金に関する情報を記載する
緑の枠で囲った部分に、以下の賃金に関する情報を記載します。
- 賃金支払対象期間
- 賃金支払対象期間の基礎日数
- 賃金額
- 備考
- 賃金に関する特記事項
賃金支払対象期間とは、賃金の締め日のことです。最新の日付から過去に遡るように記載します。賃金支払対象期間の基礎日数とは、賃金支払の対象となった日数のことです。有給休暇を取得した日や半日のみ出勤した日も1日として換算します。
なお、この箇所に関しては、基礎日数が11日以上ある月が6ヶ月以上になるまで記載しなければなりません。
そして、締め日ごとの賃金の総額を記載しましょう。備考には未払いの賃金について、特記事項には3ヶ月以内の期間ごとに支払っているお金がある場合に支払日・賃金名称・支給額を記載します。
離職票を発行するときの注意点
離職票の発行に関する注意点をいくつか紹介します。
退職理由は会社都合を選択する
退職勧奨で会社を辞めた場合の退職理由は、会社都合として扱う必要があります。根本の原因が従業員の能力不足や問題行動であったとしても、退職のきっかけが会社の働きかけによるものであるためです。
ハローワークも「事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者」は特定受給資格者(会社都合)として扱うよう規定しています。
そのため、退職勧奨により従業員が退職したにもかかわらず、会社独自の判断で自己都合退職として処理するべきではありません。
もし自己都合として扱うと、従業員本人が失業保険を受給できるまでに数ヶ月ほどかかってしまうほか、もらえる失業保険の額が減る可能性もあります。
また、本人が失業保険に申請するときに退職理由について異議を唱えて、ハローワークの職員により事実調査が実施される場合もあります。会社の勝手な判断で自己都合退職にしていたことが発覚すると、ハローワークから指導が入ることもあるでしょう。
参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス
離職証明書は期限内にハローワークへ提出する
離職票の発行手続きに必要な離職証明書は、退職日の翌々日から10日以内にハローワークへ提出することが雇用保険法の第7条にて義務付けられています。
正当な理由なく提出を怠ったり虚偽の離職証明書を届け出たりした場合は、6ヶ月以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金が科されることがあります。
提出が1日遅れただけで罰則が適用されるというわけではありませんが、ハローワークからの催促や指導などを無視し続けると処分の対象となる可能性が高いです。
また、離職証明書の提出が遅れると、そのぶん離職票の発行も遅くなります。失業保険の受給開始も後ろ倒しになってしまい、従業員本人の生活に支障が出てしまうこともあるでしょう。
期日に1日遅れただけですぐに罰則の対象とはならないとしても、本人の生活に影響が及ぶ可能性もあるため離職証明書は必ず期限内に提出すべきです。
離職票の発行手続きを怠ると法律違反となる
離職票の発行手続きは会社の義務です。雇用保険法の第76条の第3項にて、離職票の発行を求められたら会社は対応しなければならないと規定されています。
発行手続きに対応しなかった場合は法律違反となり、同法の第83条の第4項によって6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という処罰の対象となり得ます。
したがって、従業員から離職票を発行してほしいと求められた場合や退職日の時点で本人が59歳以上である場合は、必ず離職票の発行手続きを行いましょう。
退職勧奨した場合の離職票についてよくある質問
最後に、退職勧奨した場合の離職票についてよくある質問をいくつか紹介します。
離職票はいらないと言われたら発行手続きをしなくても問題ない?
「離職票は不要です」と従業員本人が明確に言ったのであれば、発行手続きをしなくても問題ありません。
しかし、退職後に本人が心変わりをして離職票の発行を依頼してくることがあります。そのような場合は、直ちに発行手続きを始めなければなりません。また、本人が離職票を紛失して退職後に再発行を依頼されたときも対応する必要があります。
なお、従業員本人が退職日時点で59歳以上である場合は、必要ないと言われたとしても発行手続きをしなければならないため注意しましょう。
本人から退職理由を自己都合にしてほしいと頼まれた場合はどうすれば良い?
転職活動への影響を懸念して本人から退職理由を自己都合にしてほしいと依頼されることがありますが、この場合は自己都合で手続きを進めても問題ありません。
ただし、失業保険を申請するときにトラブルに発展する可能性があるため、自己都合を依頼しているチャットやメールなどを証拠として残しておくことをおすすめします。
加えて、退職合意書に「自己都合として扱うことに合意した」という一文を記載して、署名・捺印をもらっておくと良いでしょう。
それでも不安な場合は、弁護士に確認してみることが推奨されます。
パートやアルバイトに退職勧奨した場合も離職票の発行は必要?
パートやアルバイトに退職勧奨した際も、以下の要件をどちらも満たす場合は離職票を発行する必要があります。
- 雇用保険に加入している
- 離職票の発行を依頼された
上記のどちらにも該当する場合は、正社員の従業員と同様に離職票を発行することが会社に義務付けられています。雇用形態や役職などは関係なく、外国人労働者であっても同様に離職票の発行手続きをしなければなりません。
なお、本人が退職日時点で59歳以上である場合は、離職票の発行を依頼されなかったとしても手続きする必要があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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