- 更新日 : 2025年10月31日
離職率が高い会社の特徴6選
自社の離職率が高くなると、事業を進めるための人員が不足するだけではなく、ほかにもさまざまな悪影響があります。離職率が高い会社の特徴を把握し、社員が簡単に辞めないように対策したいと考える人事担当者もいるでしょう。
本記事では、離職率が高い会社の特徴6選や、離職率の増加を防ぐための7つの対策などを解説します。
離職率が高い会社の特徴6選
まずは、離職率が高い会社の特徴6選を解説します。
労働時間が長い
労働時間が長いと、残業や休日出勤が多くなり、従業員のプライベートの時間がなくなります。心身を休められないことで、健康状態に影響が出やすくなり、優秀な人材であっても離職せざるを得なくなります。
また、ほかの人の負担を気にして有給休暇を取得しづらい場合も、離職率が高まりやすいケースです。
職場の人間関係に問題がある
社員同士や部署間のコミュニケーションが希薄で、協力体制が築けていないと、気軽に相談できない雰囲気になります。相談しづらいと仕事を円滑に進められず、ストレスを抱えやすくなります。
また、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなども、人間関係のストレスが発生する要因です。
人間関係に問題がある職場は心理的な負担が大きくなるため、離職される可能性が高まります。
仕事の成果が給与に反映されない
職場の離職理由として、給料の少なさが挙げられるケースは多く見られます。入社直後の基本給が少ない場合だけでなく、仕事の成果が昇給や賞与額に反映されにくい場合も、離職率の高さにつながります。
社員からの給与面に関する不満をなくすには、基本給の引き上げに加えて、仕事の成果を正確に評価して昇給につなげることが大切です。
福利厚生が少ない
福利厚生には、法定福利厚生と法定外福利厚生の2種類が存在します。
法定福利厚生は、法律で与えることが義務付けられているものです。各種社会保険や、育児休業制度などが挙げられます。
一方、法定外福利厚生は企業が独自に従業員へ与えるもので、たとえば以下が挙げられます。
- 通勤手当
- 住宅手当
- 提携しているジムの割引利用
- 社員旅行
- 社内サークル活動
自社の法定外福利厚生が乏しいと、より充実している競合他社への転職を考える人が増えて、離職率が高まる可能性があります。
研修が不十分である
研修を十分に行わない職場では、新入社員が業務について行けなくなる可能性があります。結果として「仕事が自分に合わないのでは」と思われてしまい、早期離職されやすいです。
また、中堅社員向けのスキルアップ研修がないことで「この会社にいても成長できない」と感じ、他社へ転職してしまうケースもあります。
採用のミスマッチを頻繁に起こしている
会社説明会や面接で、企業の魅力的な面ばかりを強調すると、求職者が実際の職場と異なるイメージを持ちやすくなります。入社前のイメージと実際の職場との間に大きなギャップがあると、新入社員のモチベーションが下がり、早期離職につながりやすいため注意です。
採用のミスマッチを改善しないと、新入社員が繰り返し早期離職することで、従業員の定着率が下がってしまう可能性もあります。
厚生労働省の調査から見る離職の実態
厚生労働省が実施した「令和5年雇用動向調査結果の概況」は、産業別の離職率や前職の離職理由などがわかる調査です。離職率が高い会社の特徴とあわせて確認することで、社内の離職率が高い理由を考える際に役立ちます。
ここからは「令和5年雇用動向調査結果の概況」をもとに、離職率が高い業界や主な離職理由を解説します。
参考:「令和5年雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省)(2025年6月21日に利用)
離職率が高い業界
「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、離職率が高い業界の上位3つは以下の通りです。
- 生活関連サービス業、娯楽業(28.1%)
- 宿泊業、飲食サービス業(26.6%)
- 不動産業、物品賃貸業(16.3%)
離職率がもっとも多い「生活関連サービス業」とは、ペット美容室や観光案内業、ハウスクリーニング業などを指します。「宿泊業、飲食サービス業」も数値が高いことから、接客業の離職率が高まりやすい点が伺えます。
男性の離職理由トップ3
「令和5年雇用動向調査結果の概況」では、前職を辞めた理由を男性と女性にわけて集計しています。男性の離職理由トップ3は以下の通りです。
- 定年・契約期間の満了(16.9%)
- 職場の人間関係が好ましくなかった(9.1%)
- 給料等収入が少なかった(8.2%)
※「その他の個人的理由」「その他の理由(出向等を含む)」を除く
「定年・契約期間の満了」を除くと、職場の人間関係や給料に関する内容が多く挙げられています。離職率を抑えるためには、各種ハラスメントへの対策をはじめ、職場の人間関係を改善することが大切です。
女性の離職理由トップ3
「令和5年雇用動向調査結果の概況」における、女性の離職理由トップ3は以下の通りです。
- 職場の人間関係が好ましくなかった(13.0%)
- 労働時間、休日等の労働条件が悪かった(11.1%)
- 定年契約期間の満了(9.8%)
※「その他の個人的理由」を除く
女性の場合も、職場の人間関係に関する離職理由が多く挙げられています。男性と異なる特徴としては、労働時間や休日等の条件に関する理由が多い点が見られます。
離職率が高いことによる会社への影響
ここからは、離職率が高まることで、会社にどのような影響があるかを解説します。
採用や教育のコストが無駄になる
社員を採用する場合、求人広告の掲載料や採用活動の人件費など、さまざまなコストがかかります。また、新入社員を教育する際にも時間的なコストが必要です。
採用や教育のコストをかけた社員がすぐ離職すると、コストに見合った恩恵を得られません。新入社員の早期離職が絶えない職場は、常に採用や教育のコストが無駄になるため、企業の財務状況を圧迫するおそれがあります。
長時間労働が常態化する
離職率が高い会社は、業務に必要な人員が不足しやすいです。人員が足りないことで、社員に多くの負担が発生するため、長時間労働せざるを得ない状況に陥ります。
長時間労働が常態化すると心身を休める機会が減る分、社員が業務に集中しにくくなり、生産性の低下や業務品質の悪化につながりかねません。
また、長時間労働で社員の心身が疲弊することで、さらなる離職者が発生するおそれもあります。
幹部候補となる人材が育たない
離職率が高い会社では、幹部候補の人材が経験を積む途中で流出しやすい特徴があります。ベテラン社員が社内に残らないことで、現場をまとめるリーダーがいない状況に陥りやすいです。結果として、組織全体の力が弱まり、事業が成長しなくなるおそれがあります。
幹部候補が育たない状況を放置していると、事業利益に大きな影響を与える可能性があるため、迅速な対応が必要です。
外部へのイメージダウンにつながる
離職率が高い会社は「社員がすぐに辞める会社」「労働条件が悪い会社」など、ネガティブな評判が広がります。企業のイメージダウンにつながるため、新入社員を採用しようとしても、優秀な人材が応募しない可能性が高まります。
企業のイメージが低下することで、取引先からの印象も悪くなるため、ビジネスチャンスを失いやすい点もリスクの一つです。
離職率を抑えるための7つの対策
ここからは、離職率が高い会社の特徴をもとに、離職率の増加を防ぐための7つの対策を解説します。
社内の人員配置や業務量を見直す
特定の社員に業務の負担が偏っていると、負担が大きい社員の労働時間が長くなりやすいです。労働時間が長いと社員のモチベーションが下がりやすく、離職する可能性が高まります。
一度、個人の業務量を見直し、負担が偏っている人がいないかを確認しましょう。負担が偏っている人がいる場合は、部署の人員を増やしたり、業務量を調節するよう交渉したりすることが重要です。
業務効率化ツールの導入を検討する
労働時間が長くなる原因として考えられるのが、業務中の細かい作業ロスです。たとえば、必要資料を探すのに時間をかけたり、ほかの人と話すために席を立ったりする時間が作業ロスとして挙げられます。一つひとつは微々たるものですが、積み重なることで大きな無駄になるため、注意が必要です。
社内の書類を一元管理できるツールや、自席からコミュニケーションを取れるチャットツールを導入することで、小さな作業ロスを解消しやすくなります。労働時間を削減し、従業員が働きやすい職場を目指すなら、業務効率化ツールの導入も検討してみましょう。
職場内のコミュニケーションの機会を増やす
統計結果からもわかるように職場の人間関係が良くないために離職するケースは多く見られます。人間関係を良好にして、人材を定着しやすくするには、社員同士でコミュニケーションを取る機会を増やすことが大切です。
コミュニケーションの機会を増やす取り組みとして、上司と部下が1対1で話す個人面談が挙げられます。仕事の進め方やほかの人との関係など、職場の悩みを気軽に相談できる場を設けることで、上司と部下でコミュニケーションを取りやすい状態を作れます。また、ランチ会の開催や社内SNSの導入も、人間関係を良くするために有効な手段です。
コミュニケーションの機会を増やすと、人間関係が原因で離職する可能性が減るほか、社員同士が連携しやすくなることで生産性の向上も期待できます。
社員の成果を明確に評価する
社員への評価基準が曖昧だと、仕事で高い成果を上げている社員が正当に評価されにくくなります。仕事を頑張っても評価されない職場は、昇給や昇進が難しいため、社員のモチベーションが低下しやすくなります。
明確な評価制度を導入し、社員の頑張りを給与に反映できる職場づくりを心がけましょう。評価制度の例としては以下が挙げられます。
| 評価制度 | 説明 | メリット |
|---|---|---|
| 目標管理(MBO) | 社員自身で一定期間内の目標を設定し、期間終了後に目標の達成度合いで評価する方法 | 社員に目標を設定させることで、自主性を育てやすい |
| コンピテンシー評価 | 成果を生み出す社員の行動特性に着目して作成した評価基準を使って、各社員を評価する方法 | 成果のみならずその過程においても評価基準が明確になることで、全社員を公平に評価しやすい |
| 360度評価 | 一人の社員に対し、複数の社員が評価を行う方法 | 一人の上司だけでは判断できない部分を補えるため、全社員を公平に評価しやすい |
それぞれのメリットや、準備に必要な工数などを考慮しながら、どの評価制度を導入するか決めましょう。
法定外福利厚生の導入を検討する
法定外福利厚生を充実させると、社員を大切にしている印象を与えられるため、離職率を抑えやすくなります。
法定外福利厚生の中でも、通勤手当や資格取得支援制度などは要件に応じて金銭を支給すれば良いため、比較的導入が簡単です。会社の予算に余裕がある場合は、社員旅行やジムとの提携など、より手厚い福利厚生も検討してみましょう。
新入社員へのサポート体制を整える
研修をはじめ、新入社員をサポートする体制が整っていないと、新入社員が仕事でミスしやすくなります。その結果「仕事が自分に合わない」と思うことで、早期離職する可能性が高まります。
座学研修で業務の基礎知識やビジネスマナーを教えたうえで、実際に作業しながら仕事を覚えてもらうOJTを実施し、新入社員が不安なく仕事できる環境を整えましょう。
また、先輩社員が新入社員の相談に乗るメンター制度を導入すると、より新入社員の心理的な負担を解消しやすくなります。
採用活動において、仕事内容や社風を明確に伝える
採用時活動で説明する仕事内容や社風が実態とかけ離れていると、入社した社員がすぐ辞めやすくなります。採用のミスマッチが起こらないように、会社説明会や面接では、仕事内容や社風を明確に伝えましょう。
選考プロセスにおいて、現場社員と話す機会や職場見学などを取り入れると、より入社後のリアルなイメージを伝えやすくなります。
また、応募者からの質問を積極的に受け付けて、不明点や不安に感じる点はできる限り解消した状態で入社してもらうことも心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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