- 更新日 : 2025年3月18日
外国人労働者の雇用保険の加入条件や手続きを徹底解説
外国人労働者を雇用する際、日本人と同様に雇用保険の加入が必要です。週20時間以上の勤務や31日以上の雇用見込みがある場合、企業は適切に手続きを行わなければなりません。
本記事では、外国人労働者の雇用保険の加入条件や手続き方法をわかりやすく解説します。
目次
外国人労働者の雇用保険への加入条件
雇用保険制度は、労働者が失業した際に給付を受け取れる制度です。生活の安定と再就職のサポートを担っています。
雇用保険は適用基準を満たす労働者が加入対象です。外国人労働者も例外ではなく、一定の条件を満たせば被保険者として認められます。雇用主は、加入対象の労働者を公共職業安定所(ハローワーク)へ届出する義務があります。
1週間の所定労働時間が20時間以上である
雇用保険の加入条件の一つが、1週間の所定労働時間が20時間以上であることです。所定労働時間は、就業規則や雇用契約書で定められた通常の労働時間で、休日出勤や残業は含まれません。
欠勤や遅刻・早退があっても、契約上の所定労働時間が週20時間以上なら加入対象となります。一方で、実際の労働時間が20時間を超えていても、契約上の所定労働時間が20時間未満なら対象外です。
ただし、実際の労働時間が継続的に20時間以上となっている場合、遡って加入を命じられることがあります。
31日以上の雇用見込みがある
雇用保険の加入には、31日以上の雇用見込みが求められます。初日から31日以上の雇用契約がある場合や、期間の定めがない場合は加入対象となります。一方、契約更新なしと明記され、31日未満で終了することが明確な場合は対象外です。
更新の可能性がある場合や過去の同様の契約で31日以上雇用された実績があれば、雇用保険が適用されることがあります。そのため、契約内容や実態が重要な判断基準となります。
雇用保険の適用除外となる外国人労働者
外国人労働者でも雇用保険の適用を受ける場合がありますが、特定の在留資格では原則として被保険者になりません。
在留資格 | 雇用保険の適用 | 適用除外の理由 | 例外条件 |
---|---|---|---|
経営・管理 | 原則除外 | 経営者・役員のため | 使用人兼役員として雇用契約がある場合など |
留学 | 適用除外 | 学生のため | なし(アルバイトは可) |
特定活動 | 条件付き適用 | 特定目的の活動 | 週20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みがある場合 |
まず、経営・管理の在留資格は、会社経営者や役員が取得する在留資格で、雇用を結ばないため雇用保険の適用外です。ただし、使用人兼役員として雇用契約がある場合や明確な使用従属性がある場合は適用される場合があります。
留学は、大学生や専門学校に通う外国人向けの在留資格です。資格外活動許可があればアルバイトは可能ですが、昼間学生の場合は雇用保険には加入できません。
特定活動は特定研究等活動やインターンシップ、ワーキングホリデーなど、特定の目的で滞在する外国人向けの在留資格です。週20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みがあれば雇用保険の対象になりますが、ワーキングホリデーや昼間学生のインターンシップは適用除外となります。
上記のような在留資格は、雇用保険の適用外となるため注意が必要です。
外国人労働者の雇用保険加入の手続き方法と書き方
外国人労働者を雇用する場合、雇用対策法第28条により「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が義務付けられています。
届出には、雇用保険被保険者資格取得届の1〜16欄に加えて、17欄以降に「ローマ字氏名」「在留カード番号」「在留期間」「資格外活動許可の有無」「派遣・請負就労区分」「国籍・地域」「在留資格」を記入してください。旅券または在留カードを確認して正確に記入することが重要です。
なお、特別永住者については18欄以降の記入は不要です。
届出書は、事業所を管轄するハローワークに提出してください。雇入れ日の属する月の翌月10日までに提出する必要があります。また、電子申請によるオンラインでの手続きも可能です。
雇用保険手続きにはマイナンバーも必要です。在留カードを持ち、転入届を提出していれば、住民票とともに付与されます。マイナンバーを持っていない場合は取得するよう促しましょう。
外国人労働者を雇用できる条件
日本で外国人労働者を雇用するには、条件がいくつかあります。条件を知らずに外国人労働者を雇用してしまうと不法就労となる可能性があり、外国人労働者だけでなく企業も罰則の対象となるため注意が必要です。
トラブルを避けるためにも、以下では外国人労働者を雇用できる条件について解説します。
在留カードを持っている
外国人を雇用するには、在留カードの確認が必須です。在留カードは、中長期間日本に滞在する外国人に対し、出入国在留管理庁が交付する身分証明書を指します。
在留カードに記載されている内容は以下のとおりです。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 住居地
- 在留資格
- 在留期間
- 就労の可否 など
在留カードに記載された上記の項目を確認することにより、就労の可否を判断できます。
外国人は在留カードを常に携帯する義務があるため、所持していない場合、原則として就労できません。在留カード未確認のまま雇用すると、不法就労助長罪に問われる可能性があります。雇用前に必ず在留カードを確認し、適法に雇用しましょう。
就労が認められている在留資格である
外国人労働者を雇用する際は、就労が認められている在留資格かの確認が重要です。
就労可能な在留資格には「技術・人文知識・国際業務」「介護」「特定技能」などがあり、業務内容や本人のスキル・学歴に基づいて適切な資格が付与されます。申請者が自由に選べるわけではなく、資格ごとに就労範囲や期間も異なります。
原則として、在留資格の範囲を超えた就労は認められておらず、違反すると雇用主も罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。ただし、「資格外活動許可」を得れば、一部の制限付きで本来の資格外の業務に従事できる場合もあります。
適切な在留資格を確認し、合法的な雇用を行うことが重要です。
在留資格については下記の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
在留期限が残っている
外国人労働者を雇用する際は、在留期限が残っているかを確認する必要があります。在留期限とは、日本に滞在できる最終日を指し、在留資格ごとに期間が異なります。たとえば、「教授」は最長5年、「技能実習1号」は最長1年(法務大臣の指定による)、「永住者」は無期限です。
在留期限を1日でも超えると不法滞在となり、オーバーステイとして摘発や強制送還の対象になります。違反者には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があり、日常の手続きなどを通じて突然逮捕されることもあります。
在留期限が経過した外国人を雇用すると、不法就労助長罪に問われるリスクがあるため、必ず有効な在留資格と期限を確認することが重要です。
業務内容が在留資格に適している
外国人労働者の業務内容は、在留資格に適している必要があります。在留資格ごとに就労可能な職種が明確に決められており、多くは専門職や特定の業務に限定されています。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の資格では、エンジニアや通訳などの専門職に従事できますが、単純労働は認められていません。誤った在留資格で働かせると、法律違反となり、外国人労働者は退去強制の対象となる可能性があります。
企業側も処罰を受けるリスクがあるため、業務内容と在留資格の適合性を確認することが重要です。
外国人労働者を雇用したらすべきこと
外国人労働者を雇用したらすべきことがいくつかあります。もし、怠ってしまうと罰則を科される可能性があるため注意が必要です。以下では、外国人労働者の雇用後にすべきことについて解説します。
外国人労働者を雇用するための手続きについては、下記の記事で詳細に解説しているためぜひ参考にしてみてください。
「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出する
外国人労働者を雇用した場合、事業主は「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出する義務があります。届出は、雇入れや離職の際に、外国人労働者の氏名や在留資格などを報告するものです。そのため、提出を怠ったり虚偽の届出を行ったりすると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります
外国人雇用状況の届出の方法は以下のとおりです。
対象者 | 書式 | 期限 |
---|---|---|
雇用保険の適用対象者 | 雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)または喪失届(様式第4号) | 雇入れは翌月10日まで、離職は翌日から10日以内 |
雇用保険の適用外の外国人 | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) | 雇入れ・離職ともに翌月末日まで |
届出を正しく提出することで、ハローワークは事業主への助言や離職者の再就職支援を行い、適正な外国人雇用環境の整備を進められます。
中長期在留者の受け入れに関する届出を行う
外国人労働者を雇用した際、一定の在留資格を持つ中長期在留者を受け入れる機関は、「中長期在留者の受け入れに関する届出」を出入国在留管理庁長官に提出する義務があります。
中長期在留者の受け入れに関する届出の概要は以下のとおりです。
対象者 | 就労資格(芸術、宗教、報道、技能実習、特定技能を除く)、研修、留学の在留資格を持つ中長期在留者を受け入れる機関 |
---|---|
届出期間 | 受け入れ開始・終了から14日以内(留学生の場合は5月1日・11月1日から14日以内) |
届出者 | 所属機関の職員 |
届出方法 | 出入国在留管理庁電子届出システム(オンライン可) |
届出を怠ると罰則の対象となる可能性があるため注意が必要です。インターネットを活用すれば、24時間365日提出できます。
在留資格を更新する
外国人労働者の在留資格は期限があるため、適切に更新する必要があります。
在留カードの有効期限が切れる3ヶ月前から更新申請が可能ですが、更新を忘れると期限が切れ、不法滞在となります。不法滞在になると、本人は退去強制の対象となり、雇用企業も法的責任を問われるリスクがあるため注意が必要です。
トラブルを防ぐためには、企業は従業員の在留資格の期限を管理し、早めの更新を促すことが重要です。適切な更新手続きを行い、安定した雇用環境を維持しましょう。
雇用契約書を作成する
雇用契約書は、民法第623条に基づき、企業と労働者が雇用契約を結んだ証明となる重要な書類です。
外国人労働者の場合、日本語だけの契約書では内容を理解できず、労働条件の誤解や業務の支障を招く可能性があります。そのため、日本語の契約書に加え、英語や母国語の翻訳文を作成し、両方を本人に渡すことが重要です。
契約内容の十分な理解は、労働トラブルの防止にもつながります。企業は適切な雇用契約書を作成し、外国人労働者の働きやすい環境を整えましょう。
雇用契約書の作成方法については下記記事で解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。
外国人労働者を雇用する際の注意点
外国人労働者を雇用する際は、注意点を確認しておくことが重要です。外国人労働者の雇用に関する正しい情報を身につけることで、企業の人手不足や生産性の向上など、多くのメリットを得られます。以下では、外国人労働者を雇用する際の注意点について解説します。
雇用保険の届出を怠ると罰則を科される
外国人労働者を雇用する際、雇用保険の届出を怠るもしくは「加入条件を満たす従業員はいない」と虚偽の届出をした場合は、6ヶ月以下の懲役または罰金30万円以下の罰則を受ける可能性があります。雇用保険は労働者の生活を守る制度であり、企業側の義務です。
外国人労働者を適正に雇用するため、必要な届出を確実に行い、法令を遵守しましょう。
外国人労働者の不法就労は処罰の対象になる
外国人労働者の不法就労は処罰の対象となり、労働者だけでなく事業主も罰則を受ける可能性があります。
事業主が不法就労させたり、不法就労をあっせんしたりした場合は、不法就労助長罪に該当し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。さらに、不法就労を行った外国人事業主は退去強制の対象です。
また、ハローワークへの届出を怠ったり虚偽の届出をしたりした場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。外国人労働者を雇用する際は、法律に従って適切に届出を提出しましょう。
外国人労働者の雇用保険の加入は忘れずに行おう
外国人労働者を雇用する際は、雇用保険の加入を忘れずに行うことが重要です。
加入条件を満たしていれば、失業手当などの支援を受けられる可能性があるため、労働者の安心感にもつながります。必要な手続きや書類を確認し、適切に対応することで、企業としての責任を果たし、トラブルを防げます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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