• 更新日 : 2025年2月21日

日雇い派遣とは?禁止されている理由や単発バイトとの違い、例外で許可されるケースを解説

日雇い派遣とは、「派遣期間が30日以内」の仕事を指します。平成24年の派遣法改正で原則禁止となった働き方ですが、一部の条件を満たす人や業務であれば労働が可能です。

本記事では日雇い派遣が禁止されている理由や派遣・単発バイトとの違い、例外で許可されているケースや働くメリット・デメリットについて解説します。

日雇い派遣とは?

日雇い派遣とは、人材派遣会社に登録して派遣スタッフとして働く登録型派遣の中でも、派遣期間が30日以内の労働契約となる働き方です。特定の日のみを1日~数日だけ働くという特徴から「スポット」とも呼ばれます。

人材不足を単発的に解消できる点と、労働者は好きなタイミングで働けることから、両者にとって需要のあるワークスタイルです。しかし、平成24年の「派遣法改正」からは、年齢や世帯収入などの特定の条件を満たした人以外は30日以内での労働契約は原則禁止になっています。次項で、日雇い派遣が禁止された理由について解説します。

日雇い派遣が禁止されている理由

日雇い派遣が禁止された理由に、適切な指導ができないなどの労働災害リスクから守ることが挙げられます。

短期間労働の日雇い派遣は、適切な雇用管理や安全教育の実施が困難であることから、労働災害のリスクが高まると指摘されてきました。そのため、労働者の安全を確保する目的で特定の条件を満たす、もしくは労災のリスクが低い業務でなければ禁止されています。

また、企業側に派遣法違反があった場合は「1年以下の懲役もしくは100万円以下」などの罰則が課せられます。登録者も派遣契約の取り消しや契約違反による解雇の可能性があります。そのため条件を満たしていない場合は、日雇い派遣での仕事は避けたほうがよいでしょう。

日雇い派遣と派遣の違い

日雇い派遣と派遣の違いは、「契約期間と福利厚生の内容」が主です。

区分期間福利厚生
日雇い派遣契約期間が30日以内
一般的な派遣派遣期間が31日以上
  • 条件を満たせば雇用保険や社会保険に加入可能
  • 交通費を支給されるケースが多い
  • 労働基準法に基づき有給休暇を取得できる
  • 定期健康診断の受診、産休・育休を取得可能

有給休暇・社会保険・健康診断などの福利厚生は長期就業する場合に与えられ、日雇い派遣の場合にはありません。上記を加味したうえで検討しましょう。

日雇い派遣と単発バイトの違い

日雇い派遣と単発バイトの違いについては、雇用主がそれぞれ異なります。

  • 日雇い派遣:雇用主は派遣会社
  • 単発バイト:雇用主は就業先の企業

日雇い派遣は派遣会社と雇用契約を締結し、紹介された求人の中から就業先を決めます。また、原則禁止されているため一定の条件や許可された業務でなければ従事できません。

一方で、単発バイトは求人を募集している企業に自ら応募し、直接雇用契約を結んで仕事をします。労働条件が法律で定められていないため、応募条件に合う人であれば誰でも働けます。

例外で許可される日雇い派遣の業務と条件

前述のとおり、日雇い派遣は原則禁止されていますが、例外として認められている業種があります。具体的には、専門性の高い業務やスポット業務などの以下18種です。

許可されている18業種
  • ソフトウェア
  • 機械設計
  • 事務用機器操作
  • 通訳、翻訳、速記
  • 秘書
  • ファイリング
  • 調査
  • 財務処理
  • 取引文書作成
  • デモンストレーション
  • 添乗
  • 受付、案内
  • 研究開発
  • 事業の実施体制の企画、立案
  • 書籍等の制作、編集
  • 広告デザイン
  • OAインストラクション
  • セールスエンジニアの営業、金融商品の営業

参考:厚生労働省「日雇派遣の原則禁止について」

また以下の条件を満たす場合も、日雇い派遣で働けます。次項で詳しく解説します。

  • 60歳以上の人
  • 雇用保険の適用を受けていない学生
  • 生業収入が500万円以上の副業者
  • 世帯収入が500万円以上の家庭で最も収入が高い人以外

参考:厚生労働省「日雇派遣の原則禁止について

60歳以上の人

満60歳以上の人は、日雇い派遣で働くことを認められています。基準である「60歳」は、数え年ではなく実年齢で判断されます。

近年は60歳を過ぎても働きたいと考える人が増えており、企業側も雇用機会の確保や支援をできることから例外とされています。

雇用保険の適用を受けない学生

雇用保険の適用を受けない学生も、日雇い派遣で働けます。昼間に学校へ行く学生は勉学が本業であり、生活のために日雇い派遣で働くわけではないためです。

ただし、卒業見込みのある場合で卒業前に派遣先に就職している場合は働けきません。卒業後も同じ場所で働くことが確定している人は雇用保険の被保険者となるためです。

例外とされているのは、昼間学校に通う学生のみで、夜間学校や定時制高校に通っている学生も対象外となります。

生業収入が500万円以上の副業者

生業収入が500万円以上ある人は、副業として日雇い派遣で働くのは問題ないとされています。

生業収入とは、複数ある収入源の中で、最も高い収入源を指します。500万円の基準は、複数の収入源の合計ではなく、一か所の収入が500万円以上の場合です。

たとえば本業が会社員で年収700万円・副業収入300万円であった場合は、生業収入が500万円を超えているので日雇い派遣で働けます。

参考: 厚生労働省「改正に関するQ&A」

世帯収入が500万円以上の家庭で最も収入が高い人以外

世帯の中で、主たる生計者の年収が500万円を超えている人でなければ、日雇い派遣は可能です。

主たる生計者とは、世帯の中で最も収入が多い人を指します。たとえば、世帯の中で夫が年収600万円で妻が専業主婦であった場合、妻は日雇い派遣で働いてOKです。

500万円は税金や保険が引かれる前の「年収」であり、手取り額ではありません。年収は複数の収入による合算ではなく、一か所からの収入が500万円以上が条件となります。

日雇い派遣で働くメリット

自分のタイミングで働き、短期間で収入が得られたり、多種多様な仕事を経験できたりするなど、日雇い派遣で働くメリットは3つです。次章で詳しく解説します。

  • 気軽にはじめやすい
  • 多種多様な仕事を経験できる
  • 短期間で収入が得やすい

気軽にはじめやすい

い派遣は1日〜数日の短期契約となるので、自分の都合に合わせて働く日を柔軟に決められます。たとえば、学生であれば夜や長期休暇中、副業を考えている人であれば本業に支障をきたさない平日の夜だけといった働き方です。

また、単発の仕事は単純作業が一般的です。専門的なスキルや経験が不要な仕事もあり、初めての人でも気軽にはじめられやすいといえます。空いた時間にはスポットで仕事をしてもよいでしょう。

多種多様な仕事を経験できる

さまざまな仕事を経験できる点も日雇い派遣のメリットといえます。試験監督や覆面調査、イベントスタッフや倉庫内軽作業など業種が多岐です。

仕事を通して、興味や適性のある業務を見つけるきっかけにもできます。異なる業界業種を知ることで、将来の選択肢も広がるでしょう。

短期間で収入が得やすい

短期間で収入を得やすい点も日雇い派遣のメリットです。通常の雇用形態は1ヶ月分の給与をまとめて支払われることが一般的ですが、派遣会社によっては日払い・週末払いの企業もあります。

短期間で収入を得られるので、突発的な支出があっても柔軟に対応できます。

日雇い派遣で働くデメリット

日雇い派遣には、以下のようなデメリットもあります。次項で詳しく解説します。

  • 収入が不安定
  • キャリア形成に不向き
  • 福利厚生が充実していない場合がある

収入が不安定

勤務日数や労働時間が変動しやすい日雇い派遣は収入が安定しにくいといえます。体調不良や天候などの影響で勤務できない期間があると、収入が途切れる可能性も考えられます。

不測の事態によって収入源が途絶えてしまわないように、副業など日雇い派遣以外の仕事も検討しておきましょう。

キャリア形成に不向き

日雇い派遣は単純作業が中心のため、履歴書や職務経歴書に書ける経歴とはならないケースがあります。実績としてみられなければ、キャリアアップにはつながりにくいです。

特定の職種で経験を積みたい場合は、長期雇用の仕事やスキルアップのための学習と並行して働くことを検討してもよいでしょう。

福利厚生が充実していない場合がある

短期雇用となる日雇い派遣は、コストや運用面の観点から福利厚生に制限を設けている場合があります。

また、加入条件を満たさなければ社会保険には加入ができず、国民健康保険の全額自己負担が発生します。働き口が日雇い派遣だけの場合は、念頭においておきましょう。

参考:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」

日雇い派遣で働くかを決める際のポイント

日雇い派遣で働くかどうか決める際は、以下のポイントをおさえておきましょう。

  • 働く目的や希望条件を明確にする
  • 仕事の内容や条件を事前に確認する
  • 派遣会社が適切な運営をしているか調べる

働く目的や希望条件を明確にする

日雇い派遣で働くか決める前に、なぜ選ぶのかを明確にしましょう。

「短期間でまとまった収入を得たい」や「さまざまな仕事を経験したい」、「本業の合間に副業として働きたい」など、目的を定めることで最適な仕事を見つけやすくなります。

勤務日数や勤務地、給与の支払い方法や体力的な負担など、自分の希望条件を整理しておくことも大切です。無理なく働ける案件を選びましょう。

仕事内容や条件を事前に確認する

同じ職種であっても派遣会社によっては、仕事内容や条件面が異なる場合があります。トラブルを防ぐためにも、業務内容などは事前に確認しておきましょう。求人情報を比較することで希望に合ったものが見つかるかもしれません。

【求人情報で確認しておく項目】

  • 従事する仕事内容
  • 勤務時間(始業時刻や終業時刻、休憩時間など)
  • 残業の有無
  • 報酬(金額、支払い方法や期日)
  • 福利厚生(交通費の有無や手当など)
  • 必要なスキルや資格

派遣会社が適切な運営をしているか調べる

日雇い派遣を提供する派遣会社の中には、適切な運営がなされていないケースが考えられます。コンプライアンス意識が高いかなど、信頼できる会社か事前に確認しておけると安心です。

  1. 厚生労働省が行っている「優良派遣事業者認定」の有無
  2. 過去の日雇い派遣の実績が公表されている
  3. 派遣労働者や派遣先企業の口コミ

違法な労働条件を提示する会社に注意し、適正条件で働ける会社を選びましょう。

日雇い派遣で働くために提出が必要な書類

日雇い派遣で働くには、派遣会社に例外要件を満たしていることを証明できる書類の提出が必要です。スムーズに提出できるように準備しておきましょう。

提出書類例外要件
年齢確認できる運転免許証やパスポート60歳以上
学生証(学生の場合)雇用保険の適用を受けない学生
収入を証明できる源泉徴収票や課税証明書等生業収入が500万円以上の副業者
世帯収入を証明できる所得証明書世帯収入が500万円以上の家庭で最も収入が高い人以外

日雇い派遣の例外条件に該当しない場合は単発バイトを探そう

日雇い派遣は収入の不安定さから原則禁止されていますが、例外条件を満たしていれば働けます。柔軟性の高さから、自分のライフスタイルに合わせて働きたい人には、重宝する働き方です。

しかし、誰でも働けるわけではありません。例外条件に当てはまらない場合は、企業と直接的に雇用契約を結ぶ「単発バイト」を選ぶのもよいでしょう。


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