- 更新日 : 2026年1月6日
休職中に傷病手当金は使える?申請や社会保険料について解説
労働災害以外で病気に罹患して、あるいは事故で怪我をして仕事に就けず休職している場合は、傷病手当を受給可能です。この手当によって、当面の生活費などを補うことができます。この記事では休職中の傷病手当金の申請方法や受給条件、社会保険料の扱いについて詳しくご紹介しています。
目次
休職の際に「傷病手当金」が使える?
休職の際、一定の条件を満たせば傷病手当金を受給できます。まずは休職中の傷病手当金を受給できる具体的な条件や申請方法について詳しく見ていきましょう。
傷病手当金が支給される条件
傷病手当金が支給されるためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。まず、健康保険に加入していることが前提です。次に、業務外の病気や怪我によって働けない状態であるということ。業務災害と通勤災害による病気や怪我は傷病手当の対象ではなく、労災保険の対象となります。また、休業期間中に給与の支給がないことも条件です。
以上の3つの条件を全て満たさなければ、傷病手当金を受給することはできません。傷病手当金は待期期間(3日間連続して休業していること)の後、4日目から支給されます。
傷病手当金の支給金額・計算方法
傷病手当金の支給金額は標準報酬日額の3分の2が基準です。標準報酬日額は傷病手当金支給開始日以前12カ月間の各月の標準報酬月額を平均し、その平均額を30日で割ることで算出できます。
この標準報酬日額に対して3分の2を掛けた金額が、従業員が1日あたりに受給できる傷病手当金となります。計算式は以下のようになります。
支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3
標準報酬日額が10,000円の場合、1日あたりの支給額は約6,667円です。健康保険事業を運営する保険者が全国健康保険協会の場合は、支給金額の計算の仕組みは一律です。ただし、大手企業などが設立している健康保険組合が保険者の場合は、実際の支給額は各健康保険組合の規定によるため、詳細な金額については健康保険組合に確認されることをおすすめします。
傷病手当金が支給される期間
傷病手当金が支給される期間は最長で1年6カ月です。この期間は通算の支給日数で計算されます。つまり、休職が連続していなくても傷病手当金の支給期間は継続されるということになるのです。例えば最初の休職期間が6カ月で、その後一時的に復職し、再び休職する場合でも、支給期間の合計が最長1年6カ月を超えない限り、引き続き傷病手当金を受け取ることが可能です。
ただし、支給開始日から1年6カ月を超えると、残りの休職期間があっても傷病手当金の支給は終了します。支給期間中は定期的に医師の診断書を提出する必要があり、就業が不能である状態が継続していることを証明しなければなりません。
傷病手当金を申請する診断書の費用
基本的に傷病手当金の支給請求では医師の診断書は不要ですが、支給請求書の担当医が記入欄に証明を記載する必要があります。その際、文書料として通常、保険の自己負担として数百円から数千円の費用が必要になります。ただし、うつなどの精神障害の場合はその状況によっては、診断書が必要になることもあります。
その際、診断書の費用は健康保険の適用外なので、傷病手当金の受給者が自己負担しなければなりません。さらに、休職期間が長引く場合には診断書の更新が必要な場合もあるため、その都度費用が発生することを覚えておきましょう。
診断書の費用は医療機関によって差があるため、作成を依頼する前に問い合わせてください。
傷病手当金の調整とは?
傷病手当金の調整とは、受給者が他の収入や給付を受け取っている場合に傷病手当金の支給額が調整されることを指します。例えば休職中に企業から給与の一部が支給されている場合、その額が傷病手当金から差し引かれます。
また、労災保険などの他の公的給付金を受け取っている場合も同様に調整が行われます。傷病手当金の調整は健康保険組合によって実施され、適正な支給額が計算。二重に給付を受け取ることを防ぐためにこうした調整が行われるのです。なお、失業保険(雇用保険)の基本手当については、離職していることに加え、労働の意思・能力を有することが支給要件です。こうしたことから、併給できないということになります。
傷病手当金の調整に関する具体的なルールや詳細は各健康保険組合の規定に基づくので、申請前に確認しておくとよいでしょう。
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抑うつ状態や適応障害で休職する場合、傷病手当金はもらえる?
抑うつ状態や適応障害で休職する場合でも、一定の条件を満たせば傷病手当金を受給できます。以下で条件の詳細を見ていきましょう。
抑うつ状態や適応障害で傷病手当金を受給する条件
抑うつ状態や適応障害で休職する場合に傷病手当金を受給するためには、まず健康保険に加入していることが前提。加えて診断書の提出、業務外の原因による疾患であること、待期期間が満了していること、休業中に給与が支給されないことが必要です。
医師の診断書の重要性が高い
抑うつ状態や適応障害での休職は精神的な不調が起因するため、医師の診断書が重要な役割を果たします。医師の診断書に詳細な病状が書かれていれば、傷病手当金が支給される可能性が高まるでしょう。受給後も定期的に診断書の提出を求められる場合があります。
休職で傷病手当金を申請する方法
ここからは休職中に傷病手当金を申請する方法について、従業員と事業者それぞれの立場で手続きのしかたについてご紹介します。
従業員がすること
従業員が休職中に傷病手当金を申請するためには、まず主治医から診断書を取得しなければなりません。診断書には疾患名・休職の必要性・休職期間などが記載されていることが重要です。
次に取得した診断書とともに傷病手当金の申請書を記入し、協会けんぽ、または加入する健康保険組合に提出します。申請書には休職中に給与が支給されないことを証明するための企業の証明も必要です。
提出が完了したら、支給決定を待ちます。申請の際は必要な書類や手続きについて事前によく確認し、漏れなく対応しましょう。
事業者がすること
従業員が休職中に傷病手当金を申請したい意思を示したときは、事業者はその従業員の意思を尊重して適切なサポートをしなければなりません。
まず、医師の診断書と傷病手当金の申請書が必要なことを従業員に伝えましょう。診断書と申請書を受け取ったら、申請書に必要な証明を記載します。証明内容は従業員の休職期間中に給与が支給されていないということ。事業者は、傷病手当金支給申請書を診断書などの必要な添付書類とともに保険者に提出することになります。
休職で傷病手当金をもらっている場合、社会保険料はどうなる?
社会保険料とは、健康保険・介護保険(40歳以上の加入者対象)・厚生年金保険・雇用保険の保険料を指します。ただし、労災保険料は全額事業者負担であるため、従業員の負担はありません。休職中に傷病手当金を受給している場合でも社会保険料の支払い義務は基本的には継続します。
休職中の社会保険料の取り扱い
休職中に傷病手当金を受給している場合でも、健康保険料や厚生年金保険料の支払い義務は基本的に継続します。一方、雇用保険料は給与に連動しているため、給与が支給されない期間中は納付義務がありません。なお、企業によっては休職中の社会保険料を負担してくれる場合もあるので、人事部や総務部などで事前に確認してみましょう。
社会保険料の納付方法
休職期間中の社会保険料の一般的な納付方法としては、以下のようなものがあります。
- 休職期間中に毎月、従業員が企業指定の口座に振り込む方法
- 企業が立て替えを行い、復職後の給与から控除する方法
- 企業が立て替えを行い、復職後に一括で従業員が支払う方法
いずれの方法を採用するかは、企業の方針や従業員との合意によって決定します。
休職で傷病手当金を受給中に退職する場合の扱い
休職中に傷病手当金を受給している従業員が退職する場合でも、一定の条件を満たせば退職後も傷病手当金の受給を継続できます。
傷病手当金を継続受給できる条件
退職後にも傷病手当金の受給を継続できるための条件は、退職日までに傷病手当金の受給要件を満たしており、退職後も引き続き「労務不能の状態」であること。受給要件の中では健康保険の加入期間が特に重要です。
健康保険の加入期間
傷病手当金の継続受給において特に重要なのは、退職前に継続して1年以上の健康保険加入期間があることです。この条件を満たしている場合は退職後も傷病手当金を受け取ることができます。健康保険の継続加入期間が1年未満の場合は退職後に受給が終了する可能性があります。
労働不能状態の証明
退職後も傷病手当金を受給するためには、退職後も医師の診断書を継続的に提出します。それは、労働不能の状態が続いていることを証明するためです。また、退職時に健康保険組合に継続受給の意思を伝えることも重要となります。
休職と傷病手当金に関するよくある質問
最後に休職と傷病手当金に関するよくある質問と、その回答を掲載。休職中の手当金の計算方法や傷病手当金の申請手続きについての具体例をピックアップしているので、疑問点の解消にお役立ていただけます。
休職中に傷病手当金をもらっても、生活費が足りないことはありますか?足りない場合どうしたらいいですか?
傷病手当金は標準報酬日額の3分の2の支給となるため、通常の給与に比べて支給額が少なくなり、生活費が不足することもあるでしょう。家計の見直しや節約を行っても生活が厳しい場合には、自治体や労働基準監督署や社会保険労務士などに相談し、他の支援制度の利用を検討することも一つの手段です。例えば東京都では、生活困窮者に対して無利子または低利子で資金を貸し付ける生活福祉資金貸付制度があります。
休職手当と傷病手当の違いは何ですか?
休職手当には明確な定義はありませんが、一般的には傷病手当金のことを指す場合が多いです。所属する企業によっては人事労務担当者が休職手当と呼んでいる場合もあるので、傷病手当金の申請時には確認しましょう。
また、休職手当とよく似た名称として「休業手当」というものも存在します。休業手当とは、会社側の都合で労働者を休ませた場合に支払わなければならない手当のことで、支給すべき金額は平均賃金の6割以上とされています。混同しないように注意してください。
2回目の休職の場合、傷病手当金はもらえますか?
2回目の休職の場合に傷病手当金を受け取れるかどうかは申請者の状況によります。まず1回目と同じ病気での休職の場合は、支給開始から1年6カ月以内であれば傷病手当金の支給が継続されます。この期間を超えると原則として支給は終了しますが、一度完治したと判断された後に再発した場合であれば、新たな支給が認められる可能性があります。
また、1回目と異なる病気での休職の場合は、新たに1年6カ月の支給期間が開始されます。ただし、関連性がある病気とみなされる場合、同一傷病として扱われ、支給対象外となることがあるので注意が必要です。
休職制度が会社にない場合でも、傷病手当金はもらえますか?
会社に休職制度がない場合でも、健康保険法に基づく傷病手当金は受け取ることができます。ただし、申請者が健康保険に加入していることが絶対条件です。傷病手当金は健康保険法に基づく法定給付なので、会社に休職制度があるかどうかは関係ありません。業務外の病気や怪我で働けなくなった場合には協会けんぽ、または健康保険組合に傷病手当金の申請を行えます。会社に休職制度がない場合でも、傷病手当金の受給を希望する場合は人事労務担当者に相談してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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