• 更新日 : 2025年12月19日

国家公務員の扶養手当とは?支給要件や配偶者手当廃止の影響を解説

国家公務員の扶養手当について、支給額や対象要件、特に注目される配偶者手当の廃止時期など、最新の情報を知りたい担当者も多いでしょう。国家公務員の手当制度は民間の給与体系とは異なり、子の手当が増額される一方、配偶者手当は令和8年度に廃止が予定されています。

この記事では、国家公務員の扶養手当の具体的な要件、支給額、今後の見直しについて詳しく解説します。

国家公務員の扶養手当とは?

国家公務員の扶養手当は、扶養親族のある職員に対して支給される生活補助的な手当です。法律に基づき、配偶者、子、父母などの扶養親族を有する職員に、所定の金額が支給されます。これは給与の一部であり、民間企業における福利厚生(法定外福利厚生)としての「家族手当」に相当するものといえるでしょう。

支給対象となる扶養親族の範囲

国家公務員の扶養手当における「扶養親族」とは、一般的に職員の収入によって生計を立てている家族を指します。配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹などが含まれますが、同居・別居や仕送り状況に応じた細かい基準が定められています。

参照:一般職の職員の給与に関する法律 第十一条|e-Gov法令検索

民間企業の家族手当との違い

国家公務員の手当は「一般職の職員の給与に関する法律」によって支給額や要件が全国一律で定められています。一方、民間企業の家族手当は、各企業が任意で定める法定外福利厚生の一つです。そのため、支給の有無、支給額、対象とする家族の範囲や収入要件は、企業ごとに異なります。

国家公務員と地方公務員との違い

国家公務員とは、国の行政機関(各省庁やその出先機関、国会、裁判所など)に勤務し、国全体の業務に従事する職員のことです。国家公務員は「一般職」と「特別職」に大別され、この記事で取り上げる扶養手当などの給与制度は、主に一般職の職員を対象としています。

一方、地方公務員(市役所職員、公立学校の教員、警察官など)は、都道府県や市町村に勤務します。地方公務員の手当は、国の制度を参考にしつつも、最終的には各自治体が定める「条例」によって決められる点が大きな違いです。

参照:公務員の種類と数|内閣官房

国家公務員の扶養手当の支給額はいくら?

令和7年4月現在、国家公務員の扶養手当の支給額(月額)は、扶養親族の区分によって異なります。配偶者については3,000円、子については11,500円、父母などについては6,500円が基本です。ただし、職員の職位によって一部支給されない場合があります。

親族区分ごとの支給月額(令和7年度)

国家公務員の扶養手当の支給額(月額)は、令和7年度(2025年度)の改定内容をふまえると以下のとおりです。

  • 配偶者:3,000円 ※1
  • :11,500円
  • 子(16歳~22歳):16,500円 ※2
  • 父母等:6,500円 ※3

※1 本府省の管理職等(行政職俸給表(一)8級以上職員等)は支給されません。
※2 16歳の年度初めから22歳の年度末までの子については、さらに5,000円が加算されます。
※3 行政職俸給表(一)8級職員等は3,500円、9級以上職員等は支給されません。

出典:国家公務員の諸手当の概要|人事院

子の加算措置について(16歳~22歳)

扶養手当の中でも、子に対する支給は重視されています。通常の子(15歳年度末まで)は月額11,500円ですが、高校生や大学生の年齢にあたる「16歳の年度初めから22歳に達する日の属する年度末までの子」については、月額5,000円が加算されます。

つまり、この期間の子1人あたりの支給額は合計16,500円(11,500円 + 5,000円)となります。

国家公務員の配偶者手当は廃止される?

国家公務員の配偶者に係る扶養手当は段階的に見直され、令和8年度(2026年度)以降は完全に支給されなくなります。政府全体として、配偶者の働き方に中立となるよう制度見直しが進められていることをふまえた措置です。

配偶者手当の段階的廃止スケジュール

国家公務員の配偶者手当の見直しは、段階的に実施されています。

  • 令和6年度:6,500円(管理職等は3,500円)
  • 令和7年度:3,000円(管理職等は支給なし)
  • 令和8年度:支給しない

代わりに「子の手当」が増額

配偶者手当が廃止される一方で、子育て世帯への支援「子に係る扶養手当」は増額されています。

  • 令和6年度:10,000円
  • 令和7年度:11,500円
  • 令和8年度:13,000円

この見直しは、家計の支援を配偶者から子育て世帯へと重点的に移行させる意図があるといえるでしょう。

扶養手当を受け取るための収入要件とは?

扶養手当の対象となる親族には、年間収入が130万円未満であることなどの収入要件が定められています。扶養親族とは、職員の収入によって生計を維持されている必要があるため、一定額以上の収入がある場合は対象外となります。これは健康保険の被扶養者認定の基準(いわゆる「130万円の壁」)と近い考え方ですが、扶養手当は給与制度上の独自の基準であり、健康保険とは別制度である点に注意が必要です。。

年間収入130万円の基準

扶養親族として認定されるためには、原則として、その親族の将来にわたる年間収入が130万円未満(障害年金受給者などは180万円未満)である必要があります。この年間収入は「将来の見込み収入」に基づいて判断されは、給与収入事業所得、不動産所得、年金収入などが含まれます。

参照:扶養手当の運用について|人事院

税制改正による「扶養基準」の変更(令和7年度)

扶養手当の収入要件(社会保険上の扶養)と、税金計算上の「扶養控除」は異なる制度です。

令和7年度の税制改正により、所得税の「配偶者控除」の対象となる扶養基準(いわゆる「103万円の壁」)が、123万円に引き上げられました。また、「配偶者特別控除」(満額)の対象となる配偶者の給与収入の上限も、150万円から160万円に引き上げられています。

この税制改正は、あくまで所得税の計算上の話です。国家公務員の扶養手当(給与)や健康保険(社会保険)の扶養認定における収入要件(130万円)が変更されたわけではないため、混同しないよう注意が必要です。税制上の扶養と、給与制度上・社会保険上の扶養はそれぞれ独立した基準で運用されています。

一方が国家公務員で共働きの場合、扶養手当はどうなる?

夫婦が共働き(一方が国家公務員、もう一方が民間会社員など)の場合、原則としてどちらか一方の収入が高い方が、子などの扶養親族の手当をまとめて受け取ることになります。

扶養手当や健康保険の被扶養者認定は、重複して受けることはできません。

夫婦の年間収入を比較し、主として生計を維持している(収入が多い)方の勤務先で手続きを行うのが一般的です。このように、扶養手当の判断は「収入の多寡」が基準となるケースが一般的ですが、生計維持関係(生活費の負担割合など)も考慮されます。

収入が多い方の勤務先で申請する

たとえば、妻が国家公務員、夫が民間会社員で、夫の収入が妻より多い場合、子は夫の勤務先(民間企業)の健康保険の被扶養者となり、家族手当(企業にあれば)も夫が受け取ることが一般的です。この場合、妻(国家公務員)は子の扶養手当を受け取れません。

収入が同程度の場合の判断

夫婦の収入が同程度で変動がある場合、どちらの扶養に入れるか迷うケースもあるでしょう。国家公務員の場合、子の扶養手当は令和8年度から13,000円(+特定年齢の加算)となる予定です。一方、民間企業の家族手当は企業によって異なります。

単純な手当額だけでなく、健康保険の付加給付(国家公務員共済と民間企業の健康保険組合)の内容なども比較材料になるかもしれませんが、基本は「主として生計を維持する側」で判断されます。

ただし、健康保険と扶養手当は別制度であり、どちらの扶養に入るかの判断基準が常に同じとは限らない点に注意が必要です。

国家公務員には他にもどんな手当がある?

国家公務員には扶養手当のほかにも、生活補助的な手当(住居手当、通勤手当など)、地域的な手当(地域手当、寒冷地手当など)、職務の特殊性に基づく手当(特殊勤務手当など)、時間外勤務手当など、さまざまな手当が法律に基づいて支給されます。国家公務員の給与は、基本給である「俸給」と、これらの「諸手当」によって構成されています。

主な生活関連・地域関連の手当

  • 住居手当:借家に住む職員などに、家賃額に応じて最高28,000円(月額)まで支給されます。
  • 通勤手当:交通機関利用者は6か月定期券額、自動車等使用者は距離に応じて支給されます(上限月150,000円)。
  • 地域手当:民間賃金の高い地域(東京都特別区で20/100など)に勤務する職員に、俸給月額等に一定割合を乗じて支給されます。
  • 単身赴任手当:異動に伴い単身赴任となった職員に、交通距離に応じて月額30,000円~100,000円が支給されます。

出典:国家公務員の諸手当の概要|人事院

賞与(ボーナス)に相当する手当

民間企業の賞与(ボーナス)に相当するものとして、「期末手当」と「勤勉手当」が年2回(6月、12月)支給されます。勤勉手当は、勤務成績に応じて支給割合が変動する、査定要素を含んだ手当です。

国家公務員の扶養手当は見直しが進められている

国家公務員の扶養手当制度は、社会情勢の変化にあわせて見直しが進んでいます。特に配偶者手当を段階的に廃止し、子に係る扶養手当を拡充するという点です。これは、配偶者の「年収の壁」の要因の一つとされる配偶者手当のあり方を見直し、子育て世帯への支援を厚くする方向性を示しています。


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