- 更新日 : 2025年12月19日
雇用保険被保険者転勤届の書き方は?提出先や添付書類も解説
従業員の支店間異動(転勤)などが発生した際、「雇用保険被保険者転勤届」の手続きが必要になることがあります。この届出は、従業員が同じ会社(同一事業主)の異なる事業所へ移る際に、雇用保険の情報を正しく引き継ぐために行います。
しかし、人事労務の担当者にとっては「どのような場合に提出が必要か」「書き方は正しいか」「添付書類は何か」といった疑問や、人事異動により多忙な中での手続きの手間が悩みの種となることもあるでしょう。
特に転勤前の事業所と転勤後の事業所での連携が必要になるため、手続きが漏れやすくなるケースもあります。
この記事では、雇用保険被保険者転勤届の基本的な役割から、提出が必要なケースや不要なケース、具体的な書き方を、わかりやすく解説します。
目次
雇用保険被保険者転勤届とは?
雇用保険被保険者転勤届(様式第10号)は、雇用保険の被保険者(従業員)が、同一事業主の他の事業所に転勤した場合に提出する書類です。
雇用保険は、原則として事業所単位で適用されます。従業員がA支店からB支店へ転勤すると、所属する事業所が変わります。この届出は、転勤後も雇用保険の被保険者資格を正しく継続させるために、「A支店での資格」から「B支店での資格」へ情報を引き継ぐ役割を持ちます。
参照:雇用保険被保険者転勤届|ハローワークインターネットサービス
転勤と転職の違い(届出が必要なケース)
雇用保険被保険者転勤届が必要なのは、あくまで「転勤」の場合です。株式会社X社の東京本社から、同社の大阪支店へ異動した場合など、同一の事業主(同じ会社)の中での事業所間の移動を指します。
一方、「転職」、つまり異なる事業主(別の会社)へ移る場合は、この届出の対象ではありません。転職の場合は、前職の会社が「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出し、転職先の会社が「雇用保険被保険者資格取得届」を新たに提出する流れになります。
[補足]健康保険の手続きとの違い
従業員の「転職」や結婚・出産などで扶養家族の状況が変わる場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」という別の書類が必要になります。これは健康保険の手続きであり、雇用保険の「転勤届」とは目的も様式も異なるため注意しましょう。
転勤届が不要なケース
転勤(同一事業主内の異動)であっても、以下のケースでは原則として転勤届の提出は不要です。
事業所の雇用保険が本社などで一括されている場合(継続一括の承認を受けている場合)
大企業などで、各支店の労働保険料の申告・納付の手続きを本社でまとめて行っている(労働保険の継続事業一括の認可を受けている)場合でも、雇用保険の被保険者に関する手続きは事業所単位で行います。ただし、支店、営業所などの事業所に独立性がなく、労働者名簿や賃金台帳などを本社で管理し、本社でまとめて処理していることが多くあります。この場合、「事業所非該当承認申請書」を申請して承認を受ければ、従業員が支店間を異動しても、被保険者資格は本社で管理されているため、転勤届は不要です。
在籍出向の場合
出向元との雇用契約を維持したまま出向先で勤務する場合、雇用保険は生計維持に必要な主たる賃金を支払う企業で加入します。雇用保険の扱いは出向の形態(賃金の支払い状況など)によって変わりますが、多くの場合、転勤届ではなく「出向・派遣」に関する別の手続きや、資格喪失・取得の手続きが必要になることがあります。
雇用保険被保険者転勤届はいつまでにどこへ提出する?
雇用保険被保険者転勤届の提出期限は、転勤(異動)の事実があった日の翌日から起算して10日以内です。期限が短いため、転勤の辞令が出たら速やかに準備を進める必要があります。
提出先は、転勤「後」の事業所(新しい勤務地)の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)です。転勤「前」の事業所を管轄するハローワークではない点に注意してください。
雇用保険被保険者転勤届を提出する義務は事業主にあります。 実務上は、転勤前の事業所の人事担当者と、転勤後の事業所の人事担当者が連携して手続きを行います。たとえば、転勤前の担当者が必要書類を準備し、転勤後の担当者が管轄のハローワークへ提出する、といった流れが一般的です。
雇用保険被保険者転勤届の入手方法(ダウンロード先)
雇用保険被保険者転勤届(様式第10号)の届出用紙は、いくつかの方法で入手できます。届出は、社会保険労務士による代行申請も認められています。
労働基準監督署・ハローワークインターネットサービスからダウンロードする
ハローワークインターネットサービスや各都道府県のハローワークのウェブサイトで様式が提供されています。ダウンロードして印刷・使用できます。手書きやパソコンで入力して作成する場合に便利です。
ダウンロード先
雇用保険被保険者転勤届|ハローワークインターネットサービス
様式ダウンロード(被保険者関係)|ハローワーク大阪東
ハローワークの窓口で受け取る
全国のハローワーク(公共職業安定所)の窓口で、雇用保険関係の届出用紙として配布されています。
e-Gov(電子申請)を利用する
紙の届出に代わり、政府の電子申請窓口「e-Gov」を利用してオンラインで手続きを完結させることも可能です。移動時間や窓口での待ち時間がなくなり、業務効率化につながります。
参照:e-Gov 電子申請
雇用保険被保険者転勤届の書き方(記入例)
雇用保険被保険者転勤届の主な項目の書き方を解説します。この届出書はOCR(光学式文字読取装置)で処理されるため、枠内のカタカナや数字を明瞭に記載しましょう。
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① 被保険者に関する情報(1〜5欄)
従業員(被保険者)本人の情報を記載します。
1. 被保険者番号
「雇用保険被保険者証」に記載されている番号を転記します。
10桁(下段)のみを記載するケースが多いため、注意事項を確認しましょう。
2. 生年月日
元号(大正・昭和・平成・令和)を番号で選択し 、年月日を記載します。
年・月・日が1桁の場合は「0」を加えて2桁にします。
(例:昭和50年4月1日 → 3 50 04 01)
3. 被保険者氏名(フリガナ)
カタカナで記載し、姓と名の間は1マス空けます。
4. 被保険者氏名(ローマ字)
被保険者が外国人の場合のみ、在留カード記載順にローマ字で記載します。
5. 資格取得年月日
その会社(転勤前の事業所)に入社した日(雇用保険の資格を取得した日)を記載します。
② 転勤に関する情報(6〜9欄)
転勤前と転勤後の事業所情報を記載します。
6. 事業所番号
転勤「後」の事業所番号を記載します。
7. 転勤前の事業所番号
転勤「前」の事業所番号を記載します。
8. 転勤年月日
転勤した日(転勤後の事業所での勤務が開始された日)を記載します。
9. 転勤前事業所 名称所在地
「7欄」で記載した転勤「前」の事業所の名称と所在地を記載します。
③ 氏名変更があった場合の記入(10〜11欄)
転勤と同時に、または過去に氏名変更があり、まだ雇用保険の氏名変更手続きが済んでいない場合(例:結婚による改姓)に記載します。
10. 変更前氏名(フリガナ)
変更前の氏名をカタカナで記載します。
11. 氏名変更年月日
氏名が変更された年月日を記載します。
④ 事業主の記入欄
届出の末尾には、事業主の情報を記載します。
- 届出日:実際にハローワークへ提出する日(または郵送日)を記載します。
- 事業主 住所・氏名・電話番号:
法人の場合は、本社の所在地、法人名、代表者の役職・氏名を記載します。 - 社会保険労務士記載欄:
手続きを社会保険労務士に委託している場合に記載します。
雇用保険被保険者転勤届の添付書類は?
雇用保険被保険者転勤届を提出する際は、原則として以下の書類を添付する必要があります。
1. 雇用保険被保険者資格喪失届
転勤「前」の事業所における資格喪失届(様式第4号)もあわせて添付します。 これは、転勤前の事業所での資格を「喪失」し、転勤後の事業所で資格を「継続(転入)」する、という形式をとるためです。
2. その他(個人番号未届の場合や氏名変更があった場合など)
転勤の事実を証明する書類(労働者名簿や辞令等)を確認されることがあります。また、長く働いている従業員は個人番号の登録がされていないケースもありますので、未届の場合は「個人番号登録・変更届」を提出してください。もし「③ 氏名変更があった場合の記入」欄に記載した場合は、氏名変更の事実が確認できる書類(住民票の写しなど)の提出を求められることがあります。
雇用保険被保険者転勤届の提出後の受け取り書類
雇用保険被保険者転勤届がハローワークで受理されると、以下の書類が交付されます。これらはミシン目の入っている1枚の種類になっています。
- 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)・雇用保険被保険者証(新しいもの)
転勤届を提出することで、転勤後の事業所名が記載された新しい「雇用保険被保険者証」が交付されます。これは従業員が雇用保険に加入していることを証明する大切な書類ですので、従業員本人へ渡すか、会社が責任を持って保管しましょう。 - 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)
提出した転勤届の控えの代わりになります。手続きが完了した証明となりますので、会社で保管します。 - 雇用保険被保険者資格喪失届(事業主控)
これも同様に会社で保管します。
雇用保険被保険者転勤届を提出しないとどうなる?
もし雇用保険被保険者転勤届の提出を怠った場合、従業員の雇用保険情報が古い事業所のままとなり、更新されません。
その結果、将来的にその従業員が離職した際の失業給付(基本手当)の手続きや、在職中の高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付などの申請手続きに支障が出る可能性があります。
たとえば、離職票を作成する際、転勤前の事業所での加入履歴と転勤後の事業所での加入履歴が正しくつながらず、被保険者期間が正確に算定されないといったリスクが考えられます。従業員の不利益につながらないよう、転勤が発生したら速やかに手続きを行いましょう。
マネーフォワード クラウド社会保険で転勤の手続きをスムーズに
転勤にともなう「雇用保険被保険者転勤届」の作成や電子申請は、担当者にとって手間のかかる作業です。こうした手続きは、マネーフォワード クラウド社会保険のような人事労務ソフトを活用することで、大幅に効率化できる場合があります。
マネーフォワード クラウド社会保険には雇用保険の被保険者が転勤したときの届出を作成できます。画面の案内に沿って従業員や異動日、転勤先の事業所情報を入力するだけで、「雇用保険被保険者転勤届」の電子申請用データを作成できます。従業員情報を転記する手間や記入ミスを減らし、煩雑な転勤手続きがよりスムーズに進められるようになるでしょう。
参照:「転勤」機能の使い方|マネーフォワードクラウド社会保険使い方ガイド
雇用保険の転勤手続きを正確に行うために
雇用保険被保険者転勤届は、従業員の転勤にともなう重要な手続きですが、提出期限が転勤の翌日から10日以内と短く 、添付書類(資格喪失届など)の準備も必要です。特に転勤前後の事業所間での連携が欠かせません。
書き方や手続きで不明な点があれば、事前に転勤後の事業所を管轄するハローワークに確認しましょう。また、手続きの頻度が多い場合は、e-Govによる電子申請を活用することで、人事労務担当者の負担を軽減することも可能です。手続き漏れを防ぐことにもつながるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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