- 更新日 : 2025年12月5日
組織崩壊の4段階とは?前兆や助長する人物の特徴、予防策を解説
組織が崩壊する瞬間は、往々にして誰もが気づかない小さな違和感から始まります。
情報共有の滞り、信頼関係の揺らぎ、離職の増加などはすべて崩壊のサインです。
一度バランスを崩した組織は、放置すれば優秀な人材の流出や業績悪化、文化の崩壊へとつながります。
本記事では、職場崩壊(組織崩壊)の4段階とそれぞれの特徴、崩壊を助長する危険人物のタイプ、そして崩壊を防ぎ立て直すための具体的な予防・再建策を体系的に解説します。
経営者や管理職、人事担当者が「今、組織に何が起きているのか」を正しく把握し、早期に対処するための指針としてご活用ください。
目次
職場崩壊(組織崩壊)の4段階
職場崩壊(組織崩壊)は、ある日突然起こるわけではありません。
情報共有の乱れから始まり、社員のモチベーション低下、人材流出を経て、最終的に組織機能が失われていきます。ここでは、崩壊に至る4つの段階を順を追って説明します。
初期:情報伝達の速度・質の低下
崩壊の初期段階では、社内の情報伝達が滞りはじめることが大きな特徴です。会議やチャットでの報告・共有が遅れ、内容が表面的になります。
小さな連携ミスや意思疎通の遅れが、じわじわと全体の生産性を下げていきます。
初期段階での特徴は、具体的に以下のとおりです。
- 会議が形だけになり重要な議題が深掘りされない
- チャットやメールの返信が遅く共有漏れが増える
- 部署ごとに情報を抱え込み縄張り意識が強まる
- 現場と上層部の意図がずれ、「言った・言わない」のトラブルが起きる
放置すると、情報の遅延が業務全体のスピードを奪い、次第に信頼関係にも影響が及びます。
中期:従業員のモチベーション低下
中期では従業員のモチベーションが低下し、現場で働く人たちが「何のために働いているのか」が見えにくくなります。
具体的な特徴は、以下のとおりです。
- 方針や目標があいまいで目的意識を持てない
- 成果よりも忖度や印象が優先される
- 評価や昇進の基準が不透明で不公平感が広がる
- 改善提案が減り、言っても無駄という空気が漂う
この時期には、挑戦や創意工夫よりも波風を立てない働き方が増え、組織が徐々に停滞していきます。
後期:人手不足の加速
後期段階では、やる気を失った環境下で、優秀な人材から順に離職していくので、残された人の負担が増え、悪循環に拍車がかかります。
後期の人手不足が加速している状態の特徴は、以下のとおりです。
- コア人材やリーダー層が次々に退職する
- 採用が進まず、内定辞退や早期離職が増える
- 一部の社員に業務が集中し、残業や休日出勤が常態化する
- 心身の不調が増え欠勤や休職が相次ぐ
この段階では、人的リソースが限界を迎え、業務品質や顧客対応にも悪影響が及びはじめます。
末期:組織の崩壊
末期段階の組織崩壊では、現場からの意見や改善提案が完全に止まり、無関心と諦めの空気が増えていきます。
社員の関心は会社の将来よりも自分を守ることに向かい、全体の一体感が完全に失われていきます。
末期段階での組織の特徴は、以下のとおりです。
- 会議で誰も発言せず、現場の声が上に届かない
- トップの指示が現場に伝わらず、形だけの報告が続く
- 部署同士の対立が進み派閥化が強まる
- 責任の押し付け合いが増え、判断が止まる
- 社員同士の信頼が失われ協力体制が完全に崩れる
ここまで進行すると、内部からの立て直しは困難になり、外部のコンサルティング支援や経営陣の入れ替えといった抜本的改革が必要になります。
職場崩壊(組織崩壊)が起こる前兆
職場・組織が崩壊に至る前には、小さな兆候が現れます。前兆は大きなトラブルや離職の前に、日常業務の中でじわじわと進行していくものです。ここでは、崩壊を未然に防ぐために気づくべき主な前兆を3つ紹介します。
マニュアル頼りになっている
一見、仕組みが整っているように見えても、社員がマニュアルどおりに動くことだけを目的化している状態は危険です。
現場での判断よりも手順の遵守を優先するようになると、社員が自ら考える機会を失い、思考停止に陥ります。
具体的には以下のような状態が見られます。
- トラブルが起きた際に、マニュアルに記載がないと対応を止めてしまう
- 想定外の問題に対応できず柔軟な判断ができない
- 改善提案や新しいアイデアがまったく出なくなる
このような環境では、変化への対応力が弱まり、長期的には組織全体の競争力が失われていきます。
この状態が続けば、組織全体の思考力と柔軟性が低下していくでしょう。
コミュニケーションが減る
雑談や相談、議論などのコミュニケーションが減り、情報共有が滞りはじめるのも危険なサインです。
報連相が形骸化し、上司への報告が「やった感」だけの内容になっている場合、すでにコミュニケーションの質が低下しています。
現場でよく見られる具体的な変化としては、以下のとおりです。
- 会議で発言する人が限られ、沈黙が増える
- チャットやメールでの報告が一方的で議論が生まれない
- 部署間・上下間で関わりが減り、孤立したチームができる
この状態が続くと、情報の流れが分断され、組織の一体感が失われていきます。その結果、誤解や不信感が積み重なり、組織内の協力関係が崩れていくでしょう。
イエスマンばかりになっている
上司や経営層に対して意見を言える人が減り、同調ばかりするイエスマンが増えるのも、崩壊の前兆のひとつです。
否定や反論がタブー化すると、現場の問題が上層部に届かなくなり、意思決定が一方通行になります。
イエスマンが増えている職場の具体的な特徴は、以下のとおりです。
- 「上の決定には逆らわない」が暗黙のルールになっている
- 会議で反対意見が出ても、その後フォローされない
- トップの意見に全員が賛同し、実態とのズレが放置される
健全な組織ほど、意見の衝突や議論が活発に行われるものです。異なる視点を受け入れられなくなった瞬間から、組織はゆっくりと硬直化し、やがて崩壊へと向かいます。
この状態を放置すれば、組織は自浄作用を失い、やがて致命的な意思決定ミスを招くでしょう。
職場崩壊(組織崩壊)を助長する危険人物の特徴
どんなに制度や体制を整えても、特定の個人の言動が職場の空気を悪化させ、組織全体を崩壊へ導くことがあります。ここでは、とくに注意すべき4つのタイプの危険人物とその特徴を整理します。
仕事はできるが協調性がない
スタープレイヤー型の人材に多く見られる「仕事はできるが協調性がない」タイプは、職場崩壊を助長します。
仕事はできるが協調性がない人の特徴は、以下のとおりです。
- 自分の成果を最優先し、周囲への配慮を欠く
- 情報を独占し、独断で行動する傾向がある
- チーム全体の士気を下げる傾向がある
- 他人の失敗に非協力的な姿勢を取る
このタイプは、自分の成果を最優先し、周囲への配慮やチームワークを軽視する傾向があります。
短期的には優秀に見えますが、長期的にはチームの信頼を損ない、協力体制を壊す原因になります。
こうした人物を放置すれば、個人プレーが評価される風土が定着し、組織全体の一体感が崩れていくでしょう。
他責思考
問題が起きるたびに「自分は悪くない」と言い張る他責思考タイプも、組織を静かに蝕みます。
他責思考タイプの特徴は、以下のとおりです。
- 問題が起きると他人や環境のせいにする傾向がある
- 自分の非を認めず改善を怠る傾向がある
- 建設的な議論を避ける傾向がある
- 責任感が乏しく周囲の信頼を失う傾向がある
他人や環境のせいにして責任を回避するため、建設的な議論ができず、チームの信頼を失っていきます。
このタイプが増えると、組織全体に責任の所在があいまいな文化が広がります。結果として、誰も主体的に動かず、問題が放置される職場になってしまうでしょう。
人を見下す
肩書きや実績を根拠に人を見下す態度を取るタイプは、周囲のやる気を著しく低下させます。
人を見下すタイプの特徴は、以下のとおりです。
- 肩書きや実績を根拠に、他人を軽視する傾向がある
- 他人の意見を聞かず価値観を押し付ける傾向がある
- 指摘を受け入れず成長を拒む傾向がある
- 周囲のやる気を奪う言動を取る傾向がある
とくに、成果を出している社員がこの姿勢を取ると、周囲の信頼を失い、チームワークが崩壊します。
「人を育てる」よりも「自分を優位に見せる」行動に走るため、部下や同僚との関係性が断絶しやすいです。
このタイプが放置されれば、職場全体に不信と萎縮が広がっていくでしょう。
派閥主義
特定の仲間や上司とだけ強くつながり、社内に「内と外」を作る派閥主義タイプも危険です。
派閥主義の人の特徴は、以下のとおりです。
- 特定の上司や仲間を優遇する傾向がある
- 内輪の利益を優先し、公平性を欠く傾向がある
- 情報共有を妨げ協力体制を崩す傾向がある
- 組織内に分断を生む傾向がある
一見すると人脈が広く見えますが、実際は自分の立場を守るために関係性を操作しているケースが多く見られます。
派閥主義が増えた状態では、社員が「誰の顔を見て動けばいいのか」分からなくなり、現場の判断力が低下します。
放置すると、組織は分断され、最終的に派閥間の対立が職場崩壊の引き金になるでしょう。
職場崩壊(組織崩壊)を回避するための予防策
職場崩壊(組織崩壊)を防ぐには、問題が表面化する前に対策を講じることが大切です。いくつかの予防策を事前に整備することで、崩壊リスクを下げられます。
公正で透明な評価制度を整える
社員の努力や成果が正しく評価されない組織では、不満が蓄積し、モチベーション低下を招きます。
評価が不明確だと、どう頑張ればよいかわからない・上司の好みで決まるといった不信感が広がり、チームの一体感が失われていきます。
公正で透明な評価制度を整えるには、以下のような取り組みが有効です。
- 評価基準や査定プロセスを社内に公開する
- 上司の主観に頼らず、目標・成果・行動の3軸で判断する
- 定期的なフィードバックで、社員が納得感を持てるようにする
人は「正当に扱われている」と感じられたときにこそ、主体的に行動できます。
職場の仕組みを整えることで、努力が報われると実感できる健全な組織文化を形成できるでしょう。
働きやすい職場環境にする
安心して働ける環境づくりも、組織の維持には必要です。
労働環境が整っていない職場では、優秀な人材ほど早く離れてしまいます。
働きやすい職場環境にするには、以下の取り組みが有効です。
- 業務量の適正化とタスクの明確化
- リモート勤務やフレックス制度など、柔軟な働き方の導入
- メンタルヘルス支援や相談体制の整備
過度な残業やあいまいな役割分担が続くと、疲弊と不満が重なり、職場の信頼が壊れていきます。
まずは社員の働きやすさを最優先にし、社員が安心して能力を発揮できる環境を整えることを意識していきましょう。
チームの信頼関係を築く
制度やルール以上に、チームの信頼関係の有無が組織の強さにつながります。
信頼関係が築かれていない職場では、意見交換が減り、課題が表面化しづらくなってしまいます。
反対に何を言っても否定されないという安心感があると、風通しがよくなり自発的な職場になるでしょう。
信頼関係を築くための具体的な取り組みとしては、以下がおすすめです。
- リーダーが率先して対話を重ねる
- 1on1ミーティングを定期的に実施する
- 雑談やアイスブレイクを取り入れ、日常的な交流を増やす
信頼関係は一朝一夕では築けません。小さな対話を積み重ね、全員が意見を出し合える環境を意識的に作っていくことを意識しましょう。
組織のマネジメントを強化する
最後に重要なのは、マネジメント層の意識と行動です。
組織の状態は、リーダーの姿勢によって左右されます。
現場を理解せずに数字だけで判断するマネジメントでは、人の気持ちや実態が見えなくなります。
その結果、早期の課題発見や改善が難しくなり、崩壊につながってしまうでしょう。
マネジメントを強化する方法としては、以下がおすすめです。
- 管理職に対する定期研修を実施し、育成・傾聴スキルを高める
- 経営層が現場の声を直接聞く場を設ける
- データだけでなく、人の変化にも目を向ける
リーダーが数字と人の両面を見る姿勢をもつことで、組織は自然と健全な方向へと進んでいくでしょう。
職場崩壊(組織崩壊)を立て直す3つの方法
崩壊しかけた職場を再建するには、3つのステップを順に踏むことが欠かせません。感覚的な改革ではなく、根本から立て直す意識をもつことで、再び信頼される組織へと生まれ変われます。
組織課題を把握する
立て直しの出発点は、組織課題を正確に見極めることです。
経営層だけの判断で進めると、現場との温度差が生まれ、的外れな対策になる可能性があるので、組織の現状を正しく見ることから始めましょう。
具体的には、以下の3つの視点から課題を洗い出すことが重要です。
- 現場
- 経営
- 顧客
数字だけでなく、離職率・従業員満足度・コミュニケーション頻度といった組織状態に関するデータも確認し、全体像を多面的に把握します。
そのうえで、従業員アンケートや1on1などを通じて、現場の声を直接聞き取ることも効果的です。
定量と定性の両面から課題を分析すれば、表面的な問題ではなく「職場が崩壊した根本原因」が見えてくるでしょう。
ビジョンを明確にする
原因を把握したら、次はどのような組織を目指すのかというビジョンを再設定します。
崩壊した組織では、目標や価値観が共有されておらず、社員が「なぜ働くのか」を見失っているケースがあります。
そのため、まず組織が目指す姿や社会に提供したい価値を再定義しましょう。
経営層が一方的に決めるのではなく、社員が共感できる形でビジョンを言語化し、「自分たちの目標」として捉えられる状態を作ります。
また、短期的な業績目標だけでなく、長期的な存在意義(パーパス)を打ち出すことで、組織全体の判断軸が統一されていきます。
全員が同じ方向を向くことができるビジョンがあれば、社員の意識は自然と再び組織へ向き直るでしょう。
組織文化を定着させる
組織の再建を成功させるには、組織の理念やビジョンを根付かせる文化づくりを行いましょう。
掲げた言葉を形だけで終わらせず、日常の行動や意思決定にまで浸透させることで、組織は持続的に強くなっていきます。
まずは、理念や方針を会議や日常業務の中で繰り返し共有し、行動レベルで落とし込むことが大切です。
その際、トップダウンではなく、現場の声を取り入れながら文化を育てる意識が必要です。
さらに、定期的な振り返りや社内共有の場を設けることで、文化が一過性で終わらず、自然と社員の行動に定着していきます。
文化が根付いた組織は、トップの指示がなくても自律的に動ける自走型組織に変化します。
一時的な改革で終わらせず、理念を日常に息づかせることが、職場が崩壊した際に大切な取り組みといえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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