- 更新日 : 2025年11月5日
年次有給休暇の日数を計算する方法は?雇用形態や勤続年数ごとにわかりやすく解説
年次有給休暇、いわゆる有給休暇は、一定の要件を満たす労働者に認められた大切な権利です。しかし、付与される日数は入社からの年数や働き方によって異なり、特にパートやアルバイトの方は計算が複雑に感じられるかもしれません。
この記事では、有給休暇の基本的な付与日数の計算方法、勤続年数ごとの日数、パート・アルバイトの方の計算方法、知っておくべき出勤率の考え方まで詳しく解説します。
目次
年次有給休暇が付与される条件は?
年次有給休暇の付与日数は、主に勤続年数と所定労働日数の2つの要素で決まります。このルールは労働基準法第39条で定められており、以下の2つの条件を満たしたすべての労働者に有給休暇が与えられます。
- 入社日から6ヶ月間、継続して勤務している
- その期間の全労働日の8割以上出勤している
この2つの条件をクリアすると、最初の有給休暇が付与されます。
年次有給休暇の付与日数を計算する方法は?
付与される日数は、正社員のようなフルタイム勤務か、パート・アルバイトのような短時間勤務かで異なります。
正社員・フルタイムの有給休暇付与日数
週の所定労働時間が30時間以上、または週の所定労働日数が5日以上もしくは年間所定労働日数が216日超のフルタイム労働者は、入社から6ヶ月後に10日の有給休暇が付与されます。
その後は1年ごとに付与日数が増えていき、勤続6年半以上で最大日数の20日が付与されます。
| 勤続期間 | 付与日数 |
|---|---|
| 6ヶ月 | 10日 |
| 1年6ヶ月 | 11日 |
| 2年6ヶ月 | 12日 |
| 3年6ヶ月 | 14日 |
| 4年6ヶ月 | 16日 |
| 5年6ヶ月 | 18日 |
| 6年6ヶ月以上 | 20日 |
これは労働基準法で定められた最低基準です。これより多い日数を就業規則で定めているケースもあるため、正確な日数はご自身の会社の就業規則を確認しましょう。
パート・アルバイトの有給休暇日数
週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下のパート・アルバイトの方は、勤務日数に比例して有給休暇の日数が決まります。これを比例付与と呼びます。
計算方法は、週の所定労働日数、または年間の所定労働日数のどちらかを用いて決定されます。
週の所定労働日数で決まるケース
| 勤続期間 | 週4日 | 週3日 | 週2日 | 週1日 |
|---|---|---|---|---|
| 6ヶ月 | 7日 | 5日 | 3日 | 1日 |
| 1年6ヶ月 | 8日 | 6日 | 4日 | 2日 |
| 2年6ヶ月 | 9日 | 6日 | 4日 | 2日 |
| 3年6ヶ月 | 10日 | 8日 | 5日 | 2日 |
| 4年6ヶ月 | 12日 | 9日 | 6日 | 3日 |
| 5年6ヶ月 | 13日 | 10日 | 6日 | 3日 |
| 6年6ヶ月以上 | 15日 | 11日 | 7日 | 3日 |
年間の所定労働日数で決まるケース
シフト制などで週の勤務日数が変動する場合は、年間の所定労働日数に応じて付与日数が決まります。
| 勤続期間 | 年間169~216日 | 年間121~168日 | 年間73~120日 | 年間48~72日 |
|---|---|---|---|---|
| 6ヶ月 | 7日 | 5日 | 3日 | 1日 |
| 1年6ヶ月 | 8日 | 6日 | 4日 | 2日 |
| 2年6ヶ月 | 9日 | 6日 | 4日 | 2日 |
| 3年6ヶ月 | 10日 | 8日 | 5日 | 2日 |
| 4年6ヶ月 | 12日 | 9日 | 6日 | 3日 |
| 5年6ヶ月 | 13日 | 10日 | 6日 | 3日 |
| 6年6ヶ月以上 | 15日 | 11日 | 7日 | 3日 |
年次有給休暇の日数計算で重要な出勤率8割の考え方とは?
有給休暇が付与されるための条件である出勤率8割は、「出勤日数 ÷ 全労働日」で計算します。
この計算をする際、間違いやすいのが「出勤日数」と「全労働日」の考え方です。特定の休業期間などは、計算上特別な扱いをします。
出勤したものとして扱う日 以下の期間は、出勤したものとして扱います。
- 仕事中のケガや病気による休業期間
- 育児休業や介護休業の期間
- 法律で定められた産前産後休業の期間
- 有給休暇を取得した日
全労働日から除外する日 以下の日は、もともとの労働義務がない日として、計算の分母である全労働日から除外します。
- 会社都合による休業日
- 天災等不可抗力による休業日
- ストライキなどによる休業日
- 会社の休日(法定休日や所定休日)
出勤率が8割に満たない場合、その期間に対応する有給休暇は付与されません。
年次有給休暇の日数計算に便利なツールは?
有給休暇の管理は複雑に感じることもあります。そこで、手軽に使える計算・管理方法を紹介します。
- Webの自動計算ツール
インターネット上には、入社日や勤務形態を入力するだけで自動で有給日数を計算してくれるウェブサイトがあります。手早く自分の日数を確認したい場合に便利です。 - エクセル
自分で管理したい方にはエクセルが便利です。入社日や付与日数、取得日、残日数を一覧で管理できるテンプレートを作成すると、状況を把握しやすくなります。簡単な関数を使えば、次の付与日や消滅日を自動で表示させることも可能です。 - スマホアプリ
勤怠管理用のアプリの中には、有給休暇の残日数や取得状況を管理できるものもあります。スマートフォンで手軽に確認できるため、計画的な休暇取得に役立ちます。
年次有給休暇についてよくある質問
年次有給休暇のルールについて、特に疑問の多い点をQ&A形式で解説します。
有給休暇はいつ付与される?
原則として、入社日から6ヶ月が経過した日に最初の有給休暇が付与されます。その後は、1年経過ごとに次の有給休暇が与えられます。
たとえば、2025年4月1日に入社した場合、最初の付与は2025年10月1日、次は2026年10月1日となります。
会社によっては、管理のしやすさから全社員の付与日を毎年4月1日などに統一している場合もあります。
年に5日の有給取得義務とは?
2019年4月から、年に10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、会社が1年以内に5日間の有給休暇を取得させることが義務付けられました。
これは正社員だけでなく、条件を満たすパート・アルバイトも対象です。自分で5日以上取得していれば問題ありませんが、5日に満たない場合は会社側が労働者の意見を聴いた上で日付を指定して取得させなければなりません。
使いきれなかった有給休暇はどうなる?
その年度に使いきれなかった有給休暇は、翌年度に限り繰り越すことができます。
しかし、有給休暇の権利は付与日から2年で消滅します。これは法律で定められた時効です。たとえば、2025年10月1日に付与された有給休暇は、2027年9月30日までに取得しなければ権利が消滅してしまい、取得できなくなります。
繰り越し分があるため、保有できる最大の日数は40日(前年度からの繰り越し分20日+その年の新規付与分20日)となります。
年次有給休暇日数の正確な計算で、働きやすい環境づくりを
ご自身の有給休暇の付与日数を正確に知ることは、計画的に休みを取るためにとても大切です。また、会社の労務管理担当者にとっては、法令を遵守した勤怠管理の基本となります。
働き方や勤続年数によって付与日数は変わります。この記事で解説した内容を参考に、ご自身の有給休暇日数を確認し、有効に活用してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
労働時間の上限は1日8時間!上限を超えた場合のルールや時間外労働の上限規制も解説
労働時間の上限は、労働基準法で厳しく規制されています。法定労働時間は「1日8時間・週40時間」と定められており、法定労働時間以上の労働をさせるには、労使間で36協定を締結しなければなりません。 また、「月45時間・年360時間以内」の時間外…
詳しくみる新型コロナで働く妊婦の在宅勤務や休暇 企業に義務づけるガイドラインとは?
新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、妊娠中の女性労働者の健康管理上の措置として、厚生労働省より「新型コロナウイルス感染症に関する措置」が新たに規定されました。 そこで今回は、新型コロナウイルス感染症に関するガイドラインを解説します。 従…
詳しくみるフレックスタイム制とは?メリット・デメリットや導入の注意点をわかりやすく解説!
フレックスタイム制は、従業員が自由に始業と就業の時刻を決められます。柔軟な働き方をサポートする労働時間制度ですが、「完全自由」「残業代がつかない」など様々な誤解があるのも事実です。 ここでは制度の基本を説明すると共に、メリット・デメリットを…
詳しくみる時間外労働が360時間を超えたらどうなる?36協定のルールや時間外労働の上限について解説
長時間労働の是正が社会的な課題となる中、「36協定の360時間」を超える時間外労働が発生した場合に企業が直面するリスクは極めて深刻です。企業の人事担当者や労務担当者にとって、労働時間の管理は法令遵守のみならず従業員の健康管理の観点からも重要…
詳しくみるブラック企業化を阻止するために!経営者が知っておくべき就業規則作成の4つのポイント
最近はブラック企業と呼ばれている企業がたくさん存在します。時にはメディアなどに取り上げられ、会社のマイナスイメージが発生してしまうこともあります。 また、ブラック企業では、従業員の定着率が低かったり、モチベーションが高くない場合があったりす…
詳しくみる36協定を結ばない・廃止して残業がない会社は違法?影響やルールを解説
「36協定を廃止して、残業も一切ない会社」と聞くと、理想的な職場環境に思えるかもしれません。しかし、法的な観点から見ると、本当に問題ないのでしょうか。また、そのような状態は企業や従業員にどのような影響を与えるのでしょう。この記事では、36協…
詳しくみる