• 作成日 : 2022年10月28日

マネーフォワードクラウドPresents「& money」 株式会社ジオコード専務取締役CFO吉田知史さんに聞く!(後編)

マネーフォワードクラウドPresents「& money」 株式会社ジオコード専務取締役CFO吉田知史さんに聞く!

さまざまな企業のリーダー、ファイナンス部門の方にフォーカスを当て、その仕事や企業の成長戦略の裏側、その仕事術に迫ります。今回お話を伺ったのは、株式会社ジオコード専務取締役CFO吉田知史さん。Webマーケティングと営業DXで、集客から受注までの全てを一社完結で実現するジオコード。後編では引き続きIPO後先のこと、そしてCFO吉田さんの流儀、この社会の見方などについてお伺いします。

前編こちら

プロフィール

吉田知史
1994年 等松・トウシュ・ロスコンサルティング株式会社(現在のアビームコンサルティング株式会社)入社。1999年、公認会計士2次試験合格、朝日監査法人(現在の有限責任あずさ監査法人)入所。2003年公認会計士登録。Big4系ファイナンシャル・アドバイザリー会社を経て、2012年、アイビーシー株式会社入社。2018年株式会社ジオコード専務取締役CFO。趣味は積読(つんどく)、スロージョギング。

聞き手: 瀧口友里奈
経済キャスター/東京大学工学部アドバイザリーボード
東京大学卒。セント・フォース所属。「100分de名著」(NHK)、「モーニングサテライト」(テレビ東京)、「CNNサタデーナイト」(BS朝日) 、日経CNBCの番組メインキャスターを複数担当。ForbesJAPANで取材•記事執筆も行い、多くの経営者を取材。東京大学大学院在学中。

IPOの先にあるジオコードで実現したいこと

瀧口 IPOの前と後で、社内、ご自身の中でどんな変化がありましたか。

吉田 私がジョインしてからのことで言うと、IPOに向けて会社のマネージャークラスだけでなく多くの従業員まで含めて、ある意味、厳しさが徐々に身についていったと思います。それから会社のステージが変わっていくなかで、それに合わせて入ってくる人がいて、出ていく人がいて。だんだん会社が大人になっていくというそういうところがあったと思います。そしてその結果として最終的にIPOできたのではないかなと思っています。

瀧口 ご自身の中での変化はいかがでしたか。

吉田 私自身のことで言うと、2回目のIPOじゃないですか。しかも今回は、一年中審査対応しているような感じだったので、だいたい毎月1回は、徹夜を普通にしているんですね。多い時はタクシー帰りが、月の半分ぐらいな感じだったんですけどね・・・(苦笑)

瀧口 終電逃してしまうっていうことですか。

吉田 まあ、逃すというか、はじめから普通にタクシー前提なんです。だからって朝ゆっくり来るわけじゃないですよ。朝も普通に出社するんですけど。だから掃除のおじさんとか、おばさんとか、お友達になるんです。そんな感じでずっとやっていると、やはり朝方4時半過ぎぐらい、日の出ぐらいの時間帯に、ちょっと小難しい論点、例えば予算のところの数字のモデルを作ったり、検証したりしているときに「さすがに飽きたな」という感じになったことがあって(笑)。ロジック考えているときに、以前だとこれはいいアイデアだなと思ったんですけど、「ああ、これって前に自分で気づいてやっていたよな」とか、結構その辺のテクニックとかも、もう既に一回経験しているので、なんとなく新鮮味がなかったというのはありました。

瀧口 でもそこも乗り越えてということですね。

吉田 私の中ではIPO二度目のチャレンジというよりも、なぜこの会社に来たかというと、この会社でとりあえずIPOを実現して、そこから、まさに現在の当社のフェーズですけれども、IPOした会社をもっと大きくしていくところをやりたかったので、まだ準備段階をやっているんだなっていう感じだったのです。だから自分がやりたいその先のフェーズを目指して乗り越えられたのだと思います。

瀧口 IPOはあくまで通過点。その先に広がる世界への入り口という捉え方を、してらっしゃるっていうことですね。

吉田 そうですね。

IPOの鉄則 「出れるときに出る」

瀧口 これからIPOを考えている企業のCFOやファイナンス担当者の方に、これだけは伝えておきたいと言うことはありますか。

吉田 超優良企業だといつでもIPOできるんだと思いますが、ほとんどの会社にとってはやっとそこにたどり着くというところだと思います。しかも主幹事証券会社さんにテーマ性とか旬なタイミングとかで選ばれて実現できるものなので、やはり「出れるときに出る」というのが鉄則だと思います。

瀧口 「出れるとき」というのは、市況ということですか。

吉田 IPO準備が順調に進んで来たけれど、最終段階のIPOファイナンスで公開価格が希望価格に届かない等で、ちょっと1年待とうかなっていう、余裕のある会社さんはいいですが、普通の会社ではそんなこと言っているとIPOの順番を飛ばされてしまうので。IPOしてからでも第三者割当増資等マーケットでの資金調達は十分可能ですし、それで株価が落ちるわけでは必ずしもないので、IPOの段階では、やはり「出れるときに出る」というのを優先するのが鉄則だと思うんです。IPOプロセスでは主幹事証券や監査法人等の関係者が登場して、その関係者の方々にいろいろとご指導していただくわけですが、その指導期間はある程度会社の行動も制限されるので、そこを早く切り抜けた方が中長期的にはいいのではないかと思うんですよね。

瀧口 「出れるとき」というのはもうす少し言語化すると、この“主幹事さんの後押しがあるタイミング”ということですか。

吉田 そうとも言えますね。

瀧口 ある意味チャンスと捉えてしっかりIPOに向かってという決断が大事ということですかね。

吉田 そうですね、はい。

会社は生き物 その成長こそが醍醐味

瀧口 改めてこのCFOのお仕事の醍醐味、大変さについていかがでしょうか。

吉田 まず、大変さでいうと、私は以前、監査法人とかアドバイザリーファームに在籍していたのですが、その時は同じ様なキャリアの人たちが周りに大勢いるので、専門的な論点も気軽に相談できる環境でした。これに対して事業会社でCFOという立場で仕事をする場合、チームの中にはいろいろな専門の知識を持った人がいるのですが、物事を動かしていくときに「それどうしよう」って判断するという意味での相談相手、同じレベルの相談相手が社内にはなかなかいないんです。CFOというのは、基本的には会社のリスクを全部把握して、それを責任者としてどうしていくかという部分も担わなければいけないので、そういうところの判断とか、リスクの認識という部分は自分でやらなければいけないので。そこを日常的に幅広く業務を管理・管掌しながら、また体力的にもキツイ中でやっていくのは、結構シビアだと思います。でもそこは気力・体力・時の運じゃないですけど、それで一気に乗り越えていくというのが必要かなと思っています(笑)

瀧口 醍醐味は如何でしょう

吉田 醍醐味ということでいうと、会社って生き物じゃないですか。生き物である有機体がどんどん、どんどん成長していくんです。それを間近で見られるというのが、やはりおもしろい、醍醐味かなと思っています。監査法人やアドバイザリーファームに在籍していて、たとえばM&Aとかのお手伝いをしていても「黒子」っていうんですかね。黒子の状態なので、かなり大きな案件とかでプロジェクトマネージャーとして担当させていただいたときでも、案件が良い方向に運べば、それはそれでとても「よかったな」と思うんですけれども、主役ではないんですね。べつに主役になりたいわけではないですが、主体的にやった感がちょっとないのかなと思うことがありました。そういった意味では事業会社のCFOというのは、主体的な立場で醍醐味を直接味わえるというところがあると思います。

瀧口 もともと、吉田さんは、大学時代は京都大学の工学部で量子化学を専攻してらっしゃった。そこから公認会計士になられてお金を扱うような職種へと進まれていったわけですが、どのようなきっかけがあったのでしょう

吉田 私の実家が埼玉県の川口市というところで鋳物工場をやっていたんです。川口というと、昔『キュープラのある街』という映画がありましたが鋳物の町だったんですね。その後どんどん都市化して、今では高層マンションが数多く建っていますけれど、あれは鋳物工場の跡のまとまった土地に建っているんです。そういう場所、土地柄で育ったので、親戚一同、ほぼ自営業なんです。だから“サラリーマン”と称する人たちが自分の周りにはいなかったので、感覚的に“経営”っていう方向に向かったんです。実家の工場を創業した祖父が長男である私には家業を継いでほしい、父親もそうですけど“継いでほしい”というのがあったので、結果的に大学も材料系に進みました。ですが、時代が進んで実家の工場をたたむっていうようなタイミングになったのでその中で、これからどうしていこうかなと思っていろいろ模索している中で、会計士という選択肢に至りました。「たしかに、実家にも会計士さん来ていたな」と。それからちょうど高校の同級生が6人、会計士に受かっていたんですね。あとお世話になった高校の陸上部の一年先輩が会計士になっていて。それで先輩や同級生に相談にのってもらったり、実際に監査法人を見学させてもらったりしました。

瀧口 経営に関われるということをイメージしながら、公認会計士取られたっていうことなんですね。

吉田 はい。

“守りつつ攻める”CFO

瀧口 ご自身は今、どんなタイプのCFOになったなと思われていますか。

吉田 私、サッカー全然やらないんですけれど、サッカーに例えると多分一番ピンとくるんですね。CFO、最近ではCAOという称号をつけられている方もいらっしゃいますが管理部門の長というのもあるので、やはりディフェンスラインのセンター、センターバックって言うんですかね、センターバックの位置で会社全体を見ながら、リスクを把握して、失点を許さないような守りの要としての立場が一つ重要な職責だと思っています。ただ、私の場合は、この会社入った理由でもあるのですが、ビジネスの部分にも積極的に寄与していきたいなというところがあって。だからセンターバックなのですが、いつの間にかスルスルっと上がっていって得点に絡むような、攻撃型のディフェンダーでもあるみたいな、そんな感じでやっています。“守りつつ攻める”。守りも攻めもやる、というような感じですかね

瀧口 CAOっていうのは、どういうことなんでしょう。

吉田 「CAO」は、「Chief Administrative Officer」の略で、Administration≒管理なので、どちらかというと管理系の方ですかね。CAOを管理系を束ねる責任者ということでCFOと分けていたり、両方合わせて、というような方もいらっしゃるようです。私の監査法人時代の後輩の一人がCAOとして上場企業で活躍しています。

瀧口 普段、ご自身のステップアップのためにどんなことをしていらっしゃいますか

吉田 「CFOの会」とかそういうところには積極的に参加するようにしています。100人規模の会もあるし、定期的に開催している会もあって、その中でいろいろな方と知りあって。そうすると仕事の関係に発展するんですね。私も営業しているので。名刺交換した方には、その日のうちにFacebookで友達申請して、みたいな感じで、そこから始まるビジネスもあって。当然、ビジネスライクな話だけじゃなくて、いろいろ繋がって、相談もできるし、逆に相談してもらったりもします。そういった横の関係を大切にしています。貴重な場だと思います。

瀧口 ご趣味は、積読(つんどく)とスロージョギング?

吉田 池袋にある大型書店に足しげく通ってるんです。小学校の頃はテレビばかり見ていたのですが、いつしか本を読む、いや読むというか、眺めるようになって。今は月に数万円分とか、大人買いしてしまうこともあります。ジャンルは、書店さんの中を散歩しながら上から下まで。どちらかというと理系の専門系の本と、歴史の本がメインになります。

瀧口 ビジネスの本ではなく理系 の本ですか。

吉田 ビジネスの論理っていうのは、最終的には物理法則とかに行きつくと思っているので、根本を学んだ方が、押さえた方がいいだろうというのと、そもそも自分の興味がそちらにあるので、だいたいそこを押さえていくと、人と話をしていても、そういった領域からポッと発想が出てくるという感じがしています。

瀧口 そういったところからも、インスピレーションを受けているんですね。スロージョギングというのは?

吉田 ただのジョギングだと大変なので、これもスロージョギングについて書いてある本がたまたまあって。もともと私は陸上部で、幅跳び・三段跳びといった跳躍種目をやっていたのですが、跳躍種目って一度に18歩ぐらいしか走らないので長距離を走るのが苦手だったんです。しかも競技をしているときに足の靭帯を痛めてしまったので、あまり負荷をかけずにそれでいて効果の得られる運動ということで、歩くスピード、“時速8キロで1時間走る”というのを毎週、家の近くを流れる川沿いを往復して実践しています。

瀧口 無理しないで続けられるという感じですか。

吉田 そうなんです。ちょうど心地よい汗がかけて、ほんとうに息も上がらずという感じです。「心・技・体」って言いますけど、それを整えるっていう意味でもそういうことが必要かなと思い実践しています。

目的適合、自走、そして結果

マネーフォワードクラウドPresents「& money」 株式会社ジオコード専務取締役CFO吉田知史さんに聞く!(後編)

瀧口 さていよいよお話も佳境になってきました。未来のお話伺っていきます。今「VUCA(ブーカ)の時代」なんて言われていて、激変する社会ですが、これから未来を見通すためのファイナンスのキーワードというのは、どんなことだと考えてらっしゃいますか。

吉田 近未来のことになってしまうかもしれないですけれど、今はどうしても、アメリカの金融政策が気になっています。いろいろ考えてみても、やはり金融政策がポイントになるだろうなと思っています。当社はリスク分散というか、お客様もいろいろな業種があって、基本的に偏っていないんですね。なので、コロナの影響といったときに、大きくこれっていうのはないんですけども、金利の影響というのは日本経済全体に効いてくるので、これはキーワードになると思っています。

瀧口 たしかに、まんべんなく効いてくるところにはなりますよね。金融政策を深く理解して、そこのニュースにも敏感になっているっていう形なんですか。

吉田 そうですね、常に。

瀧口 これからの組織のあるべき姿、働き方というのは、これからの新しい時代にどうあるべきだと思われていますか

吉田 これは当社の枠を超えてより大きな、抽象的な話になりますが、あるべき組織っていうのは、今のトレンドとか置いておくと、まず目的適合しているということが必要な要素になると思っています。これは最近の話題でいうと「パーパス」とかの概念が注目されているのでその枠組みでいえば、社会目的に適合しているということになりますが、これがたとえば戦後まもなくの時期だと、とりあえず自分の会社の生き残りに目的適合しているということになるのだと思うんです。そういうことで、目的適合というのはまず組織としての前提であって、そのうえで次に、自走できる組織でないといけないと思うんです。

瀧口 ジソウって、自らの力で走る。

吉田 はい。例えば京セラさんなんかそういう感じだと思うんですが、アメーバ経営ということで、各組織、小組織が自分たちで走れる。そういう組織はやはり強いし、そうあるべきだと思います。それから最終的に「なんで組織なの?」っていったときに、なんらかの結果を出さないと意味がないと思うんです。組織っていうのは、特に会社だと、全くの他人が何かの目的のために集まって、束ねて集団になっているわけで。だからやはり結果を出すとか、結果にこだわるというのは必要なのかなと思います。この3つの要素は、あるべき組織の普遍的な骨格ではないかなと思っています。

瀧口 目的適合、自走、そして結果を出していく。

吉田 そうですね、この3要素を基本として、組織のスケールや時代背景によって、社会に適合するとか、いろいろ変わっていくんだと思います。だから、そういった要素を軸としながら、今の時代に合わせて組織を柔軟に動かしていくといいのかなと思っています。

瀧口 そういったことを踏まえ、ジオコードは、今後どういった企業になっていくのか、どのような企業に導いていきましょう?

吉田 そもそも私がどうしてこの会社に入ったかということにも絡んでくるのですが、Webマーケティングって、結構、物やサービスを拡販できるというか、商圏を一気に拡大できるツールであると思っていて、いわゆる「地方創生」とか「デジタル田園都市構想」なんていうのとも絡んでくるんですけど。東京の企業だとWebマーケティングっていうと今では結構当たり前に対応していると思いますが、東京から離れた地域では、Webマーケティングに力を入れている企業はまだまだ限定的な状況で、現在、広告市場において、インターネット広告が広告4媒体を抜いたといいますが、それはまだ東京中心のことであって、その他の地域ではまだそこまでは至っていない。ただ、たとえば、鯖江の眼鏡というのも、これはWebマーケティングではないですけれども、とあるプラットフォームで、モデルさんたちにちょっと眼鏡かけてランウェイしてもらって、それを後日「いまでしょ」と言ってテレビで取り上げてもらうと。そういう風に全国的な媒体に乗せてブランディングしていくということがWebの世界ではとても簡単にできるし、やり方次第では日本を飛び越えて世界にまでいけるんです。やはりそういうことで地域の経済の活性化、たとえば地域の特産物や工業製品を拡販して、それができると日本全体が活性化すると思っています。だから、そういう展開の中で、ジオコードの存在がこれからとても意義あるものになっていけばいいなと思っています。

瀧口 日本全体の地方の活性化をWebマーケティングを通してできる……

吉田 地方の活性化が日本を強くするっていうことだと思うんです。

瀧口 そういう目的適合という意味では、日本全体を活性化する。

吉田 歴史を見ているとやはり経済を活性化しないと、地域は活性化しないと思っているので。そのために当社は現在、地方金融機関さんとの関係を構築・強化して、東京以外の地域に展開していくということを徐々に進めているところなんです。

瀧口 これからが楽しみです。最後に吉田さんご自身のこれからの挑戦、野望をお聞かせください。

吉田 まあ、年齢も年齢ですけれども・・・(笑) 現在、当社は時価総額も低迷しているので、もう上しかない、無限の可能性しかないと思っています。まずはこの会社をどんどん、どんどん成長させて大きくしていくこと。それが結果として自分の次の挑戦に繋がっていくのかなと思っています。

瀧口 これからのご活躍、さらに楽しみにしております。今日はありがとうございました。

吉田 ありがとうございました。

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