- 作成日 : 2026年1月14日
うなぎ養殖は儲かる?年収やコスト、新規参入できる可能性について解説
うなぎ養殖は、適切な経営戦略と高度な飼育技術を確立できれば、大きな収益を上げられる可能性を秘めたビジネスです。一方で、参入にあたっては厳格な許可制度や高額な初期投資といったハードルが存在し、誰でも簡単に始められる事業はありません。
本記事では、うなぎ養殖における収益が生まれる仕組みや具体的なコスト構造を整理したうえで、個人が新規参入するための現実的な方法について、想定されるリスクも踏まえながら、できるだけわかりやすく解説します。
目次
うなぎ養殖は本当に儲かる?
うなぎ養殖は、市場での高単価取引と底堅い需要を背景に、軌道に乗ればほかの水産業と比べても高い利益率を狙えるビジネスモデルです。取引価格が高く、需要も比較的安定しているため、一度収益構造を確立できれば大きなリターンが期待できます。一方で、自然環境や生育状況に左右されるリスクも大きく、参入すれば必ず成功する事業とは限りません。
ここでは、うなぎ養殖が持つ収益ポテンシャルと、その裏にある市場の現実について解説します。
結論:成功すれば年収1000万円超えも可能
うなぎ養殖の成功者の中には、年収1000万円を超える高収入を実現しているケースもあります。この高い収益性は、大規模な設備投資による生産効率の向上や、独自ブランドの確立によって支えられています。特に、法人化したうえで加工から販売までを一貫して手がける事業者は、一般的な平均年収を大きく上回る利益を確保している例が見られます。
ただし、これはあくまで経営が順調に進んだ場合の成功例にすぎません。病気による大量死やコスト管理の失敗によって赤字に転落するリスクも常に存在し、高収益は高度な飼育技術と経営手腕の積み重ねによって成立していることを理解しておく必要があります。
市場価格が高騰している
うなぎの市場価格は、天然資源の減少を背景に、長期的に高値圏で推移しています。かつては大衆魚として親しまれていたうなぎも、現在では「白いダイヤ」とも称される高級食材としての地位を確立しました。特に国産品は品質や安全性への評価が高く、輸入物と比べて有利な価格で取引される傾向にあります。
供給量を短期間で増やすことが難しい一方、需要は大きく落ち込みにくいため、単価が下がりにくい市場構造が形成されています。この需給バランスにより、生産者は必ずしも大量出荷を行わなくても、一定の売上を確保しやすい状況にあります。適正な価格水準の維持は消費者の離反を防ぐためにも重要ですが、生産者にとっては収益性を支える要因の一つといえるでしょう。
「土用の丑の日」など安定した需要がある
うなぎには、土用の丑の日を中心とした極めて安定的かつ強力な需要があります。夏場の特定時期にこれほど集中的に消費が見込まれる食材はほかになく、年間売上に明確なピークを作りやすい点が特徴です。また近年では、訪日外国人の増加や和食人気を背景に、伝統的な蒲焼き以外の食べ方への関心も広がりつつもあります。
こうした季節需要に加え、ハレの日の食事や贈答品としての通年需要も底堅く存在しています。流行に大きく左右されにくい食材であるため、一度販路を確保できれば、長期間にわたり安定した売上を見込みやすいといえるでしょう。食文化として定着している点は、ビジネスとして見た場合の大きな強みです。
稚魚(シラスウナギ)はリスクあり
うなぎ養殖経営における最大のリスクは、天然資源である稚魚(シラスウナギ)の仕入れ価格が大きく変動する点にあります。漁獲量は自然環境の影響を強く受けるため、年によって大きなばらつきが生じ、不漁の年には仕入れ値が平年の数倍に高騰し、1キログラムあたり数百万円水準に達するケースも見られます。
シラスウナギの価格高騰は製造原価を直接押し上げ、収益を圧迫します。販売価格がある程度市場で決まっている中で原価だけが上昇すれば、赤字に転落するリスクも高まります。2025年12月現在においても採捕状況は不透明であり、養殖業者は常に相場情報への注意を払う必要があります。この仕入れ価格の変動こそが、うなぎ養殖経営の難易度を高める最大の壁といえるでしょう。
うなぎ養殖のビジネスモデルと収益構造は?
うなぎ養殖で利益を出すためには、売上規模だけでなく、コスト構造を正確に把握したうえで、継続的な管理を行うことが不可欠です。経費の大半を占める稚魚代や燃料費は、資源状況やエネルギー価格といった外部要因の影響を受けやすく、経営努力だけでは完全にコントロールできない側面があります。
ここでは、うなぎ養殖における具体的なお金の流れに加え、開業に必要な資金規模や投資回収までに要する期間について解説します。
売上-(稚魚代+餌代+燃料費)=利益
うなぎ養殖の利益は、成魚の売上高から、稚魚代や燃料費などの各種経費を差し引くことで算出されます。変動費の中でも特に大きな割合を占めるのがシラスウナギの購入費で、年によっては経費全体の半分以上を占めるケースもあります。
また、うなぎの成長を促すには水温を高く保つ必要があり、重油や電気といった光熱費も無視できないコスト要因となります。さらに、高品質な配合飼料についても価格は上昇傾向にあります。ビジネスとして成立させるためには、シラスウナギをいかに低コストで仕入れ、効率的に給餌を行い、歩留まりを高めて出荷できるかが、収益性を左右する重要なポイントとなります。
初期費用は最低でも3,000万円〜が必要
うなぎ養殖の開業には、最低でも3,000万円以上の初期投資が必要となるのが一般的です。具体的な設備としては、土地、ビニールハウス、コンクリート製の養殖池に加え、ボイラーや大規模なろ過システムなどを整備する必要があります。
施設を整えるだけでなく、最初のシラスウナギを仕入れるための運転資金も欠かせません。稚魚の取引は現金決済が基本となるケースが多く、数百万から数千万円規模の現金を事前に用意しておく必要があります。融資を利用する場合でも、事業計画の実現性や収益性見通しが厳しく審査されるため、資金調達のハードルは非常に高いといえるでしょう。
個人や自宅でうなぎ養殖はできる?
副業や自給自足の一環として自宅でうなぎ養殖を検討する人がいますが、現実には法的な規制と技術的な難易度の両面から、実現は極めて困難です。うなぎ養殖は趣味の延長で始められるビジネスではなく、許可・管理面での厳格なルールと、専門的な飼育管理体制が求められるためです。
ここでは、なぜ個人レベルでの参入が現実的ではないのか、その理由を詳しく解説します。
結論:自宅の庭やガレージでの養殖は法的にほぼ不可能
個人が自宅の庭などで販売目的のうなぎ養殖を行うことは、法的に認められていません。業としてうなぎを育てる行為は「内水面漁業」に該当し、国や都道府県が定める厳格なルールに従う義務が生じるためです。
無許可でシラスウナギを捕獲したり、正規ではないルートで入手して養殖したりする行為は、密漁や違法取引とみなされ、重い罰則の対象となります。仮に正規の手続きを踏もうとしても、後述する許可制度の高いハードルが存在するため、個人による新規参入は事実上困難なのが現状です。市販されている養殖キットなどは、あくまで観賞用や小規模な実験用途として捉えるべきでしょう。
農林水産大臣の許可が新規で下りない
うなぎ養殖への新規参入ができない主な理由は、農林水産大臣による許可が原則として下りないためです。絶滅危惧種であるニホンウナギの資源保護を目的として、国全体で養殖池の面積やシラスウナギの池入れ量の上限が厳格に管理されています。
この上限枠は既存の養殖業者によってほぼ埋まっており、新たに参入を希望しても割り当てられる枠が残っていません。特区制度などを活用した例外的なケースを除けば、個人が申請して許可を取得することは事実上不可能です。この強固な法的規制こそが、うなぎ養殖を誰でも自由に始められない決定的な要因となっています。
水質管理と24時間監視が個人レベルを超えている
うなぎの飼育に必要な水質管理の難易度は、個人が対応できる範囲を大きく超えています。うなぎは水質の変化に極めて敏感で、食べ残しや排泄物による水の汚れが引き金となり、わずかな時間で大量死に至ることもある生き物だからです。
プロの養殖現場では、水温や溶存酸素濃度などを24時間体制で監視し、ろ過装置や給水設備にトラブルが発生した場合でも、深夜を問わず即座に対応できる体制を整えています。「朝晩に餌をやるだけ」といった片手間の飼育では、商品価値のある成魚に育つ前に、病気や環境悪化で死滅してしまう可能性が高いでしょう。多大なコストと手間をかけても全滅リスクが常につきまとうため、個人規模では採算が合いません。
うなぎ養殖に新規参入する唯一の方法とは?
新規の許可が下りない現状においても、既存の権利や設備を引き継ぐ形であれば、うなぎ養殖へ参入する余地は残されています。ゼロから事業を立ち上げることが事実上不可能な今、すでに許可を保有する事業者からバトンを受け取る形が、唯一の現実的な正攻法といえるでしょう。
ここでは、うなぎ養殖への具体的な参入ルートとして考えられる「事業承継」と「フランチャイズの活用」について解説します。
事業承継(M&A)する
現在のうなぎ養殖への最も現実的な参入手段は、既存業者からの事業承継(M&A)です。廃業を検討している業者は、農林水産大臣からの許可(養殖権)に加え、必要な設備や土地、そして長年にわたって蓄積されたノウハウを保有しており、これらを引き継ぐことで比較的スムーズに事業を開始できます。
後継者不足に悩む養殖場を探す方法としては、地域の養鰻漁業協同組合に問い合わせたり、都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターを活用したりするのが有効です。この手法であれば、新規申請という高い壁を回避できるだけでなく、設備投資に要する時間や労力も大幅に抑えることが可能です。さらに、ベテラン従業員の雇用も継続できれば、技術面でのリスクも軽減できるでしょう。
参考:事業承継・引継ぎ支援センター|独立行政法人 中小企業基盤整備機構
フランチャイズや養殖学校を活用する
未経験から始める場合、フランチャイズや養殖学校を活用して体系的に技術を習得する方法が有効です。近年では、陸上養殖のパッケージシステムを提供する企業が、設備導入とあわせて技術指導や経営面のサポートを行うフランチャイズ型の参入モデルを展開しています。
また、水産系の大学や自治体が主催する漁業就業支援フェアなどを通じて、基礎的な知識や現場情報を得ることも可能です。こうした場で経験を積みながら業界内の人脈を築いておくことで、将来的に独立や事業承継の話が持ち上がった際にも、スムーズに話を進めやすくなります。技術とネットワークの両方を育てることが、成功への重要な布石となるでしょう。
うなぎ養殖はなぜ「やめとけ」と言われる?
ネット上でうなぎ養殖について「やめとけ」という意見が見られるのは、生き物を扱うビジネス特有のハイリスクな構造に起因しています。うなぎの生態や業界の仕組みそのものが、経営の安定性を損なう要因を内包しているからです。
ここでは、多くのチャレンジャーが撤退を余儀なくされる要因として挙げられる「病気」と「投資回収期間」という2つの大きなリスクについて解説します。
病気による全滅リスクと隣り合わせだから
うなぎ養殖は、閉鎖環境での高密度飼育を前提とするため、感染症による全滅リスクと常に隣り合わせの事業です。一度ウイルスや細菌が発生すると、水を介して急速に拡散し、数千、数万匹規模のうなぎが短時間で死滅する恐れがあります。
病気を防ぐためには、水質や水温を安定的に維持する必要があり、電気代や薬剤費などのコストが継続的に発生します。万が一、全滅に至った場合には、それまでに投じた経費が回収できないばかりか、養殖中の資産価値が一瞬で失われることになります。「在庫が腐る」というレベルを超えたスピードで損失が発生するリスクこそが、参入をためらわせる大きな要因といえるでしょう。
設備投資の回収に時間がかかるから
うなぎ養殖は、莫大な初期投資を必要とする装置産業であり、資金回収までに10年以上を要するケースも少なくありません。土地や建物に加え、ボイラー、ろ過槽、自家発電装置などを整備し、事業として成立する規模にまで引き上げるには、億単位の資金が必要となる場合もあります。
仮に経営が順調に進んだとしても、投資回収までには長い期間を要し、その間にも設備の老朽化による修繕費や更新費用が継続的に発生します。さらに、台風や地震といった自然災害によって設備が損壊した場合、事業の継続が困難になる可能性も否定できません。長期にわたり多額の負債を抱え続けるプレッシャーと、将来の不確実性こそが、「やめとけ」という警告につながっています。
成功しているうなぎ養殖業者の共通点とは?
厳しい環境下でも利益を上げ続けている養殖業者には、時代の変化に応じて経営手法をアップデートしているという共通点があります。従来の経験や勘だけに依存するのではなく、テクノロジーの活用や販売手法の工夫を取り入れることで、リスクに強い経営体質を築いているのです。
ここでは、勝ち残っているうなぎ養殖業者が実践している具体的な取り組みや、他社との差別化のポイントについて紹介します。
IoT導入でコストを削減し生存率をアップさせている
成功しているうなぎ養殖場では、IoT技術を導入して飼育管理を自動化し、コスト削減と生存率の向上を実現しています。水温や溶存酸素濃度、pHといったデータをセンサーで24時間継続的に監視し、スマートフォンでリアルタイムに確認できる体制を構築することで、異常の早期発見と迅速な対応につなげています。
また、AIがうなぎの行動や食欲を解析し、最適な量を給餌する「スマート給餌機」の活用により、無駄な餌代を抑えつつ、残餌による水質悪化も防いでいます。データに基づく管理を行うことで、少人数でも安定した高品質な管理が可能となり、人件費の削減と生産性の向上を同時に実現している点が特徴です。
加工・直販・ふるさと納税で利益率を高めている
収益性の高いうなぎ養殖事業者は、加工から直販までを手がける6次産業化や、ふるさと納税制度の活用によって利益率を高めています。市場流通に依存せず、自社工場で蒲焼きなどに加工し、ECサイト等を通じて消費者に直接届けることで、中間マージンを抑え、収益構造を改善することが可能になります。
特に、ふるさと納税の返礼品として提供する手法は、全国からの需要を集めやすく、広告費を抑えながら販路を拡大できる点が強みです。自社ブランドとして販売することは品質への責任意識を高める効果もあり、結果としてブランド力の向上とリピーター獲得につながる好循環を生み出しています。
陸上養殖(閉鎖循環式)で環境に配慮している
環境意識の高い消費者層に向けて、閉鎖循環式の陸上養殖を採用し、高付加価値化を図る動きが広がっています。海や河川の水を直接使用せず、ろ過システムによって水を浄化・循環させるため、排水による環境負荷が小さく、立地条件の制約も比較的少ない点が特徴です。
完全に管理された環境下では、抗生物質などに依存しない「無投薬養殖」も実現しやすくなります。食の安全性・持続可能性に重視する層に対して、「サステナブルで安全なうなぎ」として訴求できるため、価格競争に巻き込まれにくい強みを持っています。
うなぎ養殖は生半可な覚悟では儲からない
うなぎ養殖は、日本の食文化を長年にわたって支えてきた重要な産業であり、成功すれば大きな経済的リターンを得られる可能性を秘めたビジネスです。一方で、シラスウナギの供給不安や厳格な法的規制、24時間体制での管理が求められる点など、乗り越えるべきハードルは極めて高く、安易な参入は推奨できません。
本気で挑戦するのであれば、「儲かりそう」という動機だけでなく、事業承継に向き合う覚悟や最新技術を継続的に習得する姿勢、さらには不漁局面にも耐えうる強固な資金計画が不可欠です。ビジネスとしての厳しさを十分に理解したうえで、それでも情熱を持って取り組める人こそ、成功への道が開かれるといえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
中古アパート経営で利益を出すには?利回り計算や始め方を解説
中古アパートの経営は、新築に比べて初期費用が安く、利回りを出しやすい点がメリットです。また、節税効果が高いという利点もあります。一方で、空室のリスクが高く、修繕費も高くなりやすいのがデメリットです。 本記事では、中古アパート経営と新築アパー…
詳しくみる風力発電事業の許認可とは?建設に必要な手続きや資金調達方法を解説
再生可能エネルギーとして、洋上風力などの風力発電事業が注目されています。風力発電設備を設置するには、設置条件を満たした建造物を準備するとともに、法令で定められた手続きが必要です。 本記事では、風力発電設備の建設や運営における許認可や受付窓口…
詳しくみる一人社長のお金はどう管理する?給料(役員報酬)や経費について解説
一人社長として会社を設立する際、多くの方が「会社のお金は自由に使えるのか」「個人のお金と会社のお金はどう分けるべきか」といった疑問を抱きます。結論から言うと、一人社長であっても会社のお金を私的に使うことは法的に問題があり、適切な管理が必要で…
詳しくみる失業保険をもらいながら起業準備はできる?受給条件や金額、再就職手当についても解説
退職後、失業保険(雇用保険の基本手当)を受給できるのは、企業に再就職する場合だけだと思われがちです。 しかし、起業する場合でも、条件を満たして適切な手続きを踏めば、失業保険や「再就職手当」を受給できます。 この記事では、失業保険を受給しなが…
詳しくみる人手不足で儲かる仕事とは?業界別おすすめ22選や選び方のポイントを解説
日本国内では現在、人手不足が深刻化しています。これは多くの企業にとっては危機ですが、これから起業や独立を目指す個人にとっては、高単価で受注できる千載一遇のビジネスチャンスとなるでしょう。 本記事では、単なる激務ではなく構造的に稼げる「人手不…
詳しくみるコインランドリー経営は儲かる?開業費用や成功のポイントを解説
共働き世帯や単身者の増加により、コインランドリー経営の需要が高まりつつあります。有人常駐を前提としないセルフサービス型ビジネスとして注目されていますが、実際にどの程度の管理工数で運営できるか、また儲かるかどうかは、立地や運営体制によって大き…
詳しくみる