- 更新日 : 2026年1月14日
取締役と執行役員の違いとは?法律上の地位・報酬・任期まで徹底比較
取締役と執行役員は、どちらも企業のトップ層を示す肩書きですが、その役割と法的地位には明確な違いがあります。最大の違いは、取締役が「経営の意思決定」を行う法律上の役員であるのに対し、執行役員は「業務の実行」を担う従業員(またはそれに準ずる立場)である点です。
本記事では、取締役と執行役員の定義、契約形態、任期、そして報酬面での違いを体系的に解説します。組織運営における役割分担を理解し、正しいガバナンス体制の構築やキャリアパスの参考にしてください。
目次
取締役と執行役員の違い【一覧表】
以下は、取締役と執行役員の主な違いを整理した一覧表です。
| 項目 | 取締役 | 執行役員 |
|---|---|---|
| 役割 | 経営の意思決定・監督 | 業務の執行・遂行 |
| 法的地位 | 会社法上の「役員」 | 社内制度上の役職 (多くの場合は従業員) |
| 契約形態 | 委任契約 | 雇用契約 または 委任契約 |
| 選任機関 | 株主総会 | 取締役会 |
| 任期 | 原則2年 (非公開会社は最長10年) | 一般的に1年 |
| 報酬 | 役員報酬 (株主総会で決定) | 従業員給与 (社内規定で決定) |
| 労働基準法 | 適用外 | 適用あり (雇用型の場合) |
取締役と執行役員の違い1. 役割と法的地位
取締役と執行役員の決定的な違いは、経営を行うか現場を指揮するかという役割分担にあります。これを「経営と執行の分離」と呼びます。
取締役|経営の意思決定機関
取締役は、会社法で設置が義務付けられている法的な役員であり、株主総会で選任されます。会社の重要事項を決定し、業務執行を監督する権限を持つため、会社に対して「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」と「忠実義務」という重い法的責任を負います。
執行役員|業務遂行の責任者
執行役員は、取締役会が決定した経営方針に基づき、実際の事業運営(現場)を取り仕切るポジションです。法律で定義された役職ではなく、企業が独自に定める内部的な役職であるケースが大半であり、法的な立ち位置はあくまで従業員のトップであることが一般的です。
※「指名委員会等設置会社」における「執行役」は会社法上の機関ですが、一般的な日本企業で導入されている「執行役員」とは異なります。本記事では一般的な「執行役員」について解説します。
取締役と執行役員の違い2. 契約形態
取締役は会社と「委任契約」を結びますが、執行役員は「雇用契約」または「委任契約」のいずれかとなります。この契約の違いは、労働基準法の適用有無や、残業代、解雇規制などに大きく影響します。
取締役の契約形態
取締役は会社から経営を任されているため、委任契約となります。したがって「労働者」には該当せず、労働基準法は適用されません。原則として雇用保険や労災保険の対象外となり、残業代という概念もありません。
執行役員の契約形態
執行役員には2つのパターンがあります。
- 雇用契約(雇用型)
会社と雇用契約を結んでおり、取締役などの指示を受けて働きます。法的には労働者として扱われるため、労働基準法が適用され、雇用保険や労災保険の対象となります。 - 委任契約(委任型)
経営陣に近い立場で、会社と委任契約を結びます。労働者性は弱まり、独立性が高くなります。
参考:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省
取締役と執行役員の違い3. 報酬(給料)の仕組み
取締役は「役員報酬」として株主総会などで決定されますが、執行役員は「給与+賞与」として社内規定に基づき支払われます。
取締役の役員報酬
取締役の報酬は、株主総会で総額枠を決めるか、定款に定める必要があります。また、定期同額給与などの税務上のルールに従う必要があり、期中の減額・増額は原則認められません。
執行役員の給与
執行役員(特に雇用型)の場合、従業員と同様に毎月の給与と賞与が支払われます。成果に応じたインセンティブ設計がしやすく、期中でも変更が可能な場合があります。ただし、委任型執行役員の場合は役員報酬に準じた扱いになることもあります。
参考:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁
取締役と執行役員の違い4. 任期と選任方法
取締役と執行役員は、任期と選任方法にも違いがあります。
取締役の選任・解任
取締役の任期は原則2年(非公開会社は最長10年まで伸長可)で、選任には株主総会の決議が必要です。解任に関しても株主総会の決議が必要であり、正当な理由がない解任は損害賠償のリスクを伴います。
執行役員の選任・解任
執行役員の任期は1年とする企業が一般的です。選任・解任は取締役会の決議のみで決定可能です。ただし、雇用契約がある執行役員を解任(解雇)する場合は、労働契約法に基づく「解雇権濫用の法理」が適用され、客観的で合理的な理由がない解雇は法的に無効となる点に注意が必要です。
執行役員制度を導入するメリットは?
企業が会社法上の役員(取締役)とは別に、あえて執行役員制度を導入する背景には、「経営効率化」と「人材登用」の狙いがあります。
1. 意思決定の迅速化
最大のメリットは、取締役が担っていた業務を切り分けることで、経営スピードが上がることです。 取締役は経営方針の決定と監督に専念し、執行役員は現場の業務遂行に専念する体制を作ることで、取締役会の議題を重要事項に絞り込めます。これにより、市場の変化に対応した素早い意思決定が可能になります。
2. 若手・優秀な人材の抜擢
法的な役員ではないため、登用のハードルを下げて優秀な人材を確保できる点もメリットです。 取締役のポスト数には限り(定款等の制限)がありますが、執行役員であれば企業の裁量でポストを増やすことが可能です。将来の幹部候補に経営に近い経験を積ませたり、特定の専門スキルを持つ人材を柔軟に処遇したりできるため、社内のモチベーション向上や次世代リーダーの育成につながります。
執行役員制度導入のポイントは?
執行役員制度は会社法上の制度ではないため、定款変更などの厳格な手続きは不要ですが、取締役会の決議によって決定します。導入にあたっては、トラブルを防ぐために「執行役員規定」を作成し、以下の項目を明確にしておく必要があります。
- 契約形態の選択: 雇用契約(労働者性が強い)にするか、委任契約(経営に近い)にするか。
- 任期と定年: 一般的に1年更新が多いが、雇用型の場合は就業規則の定年も考慮する。
- 報酬と評価: 従業員給与規定とは別に、役割に応じた報酬体系を設計する。
- 勤怠管理: 雇用型の場合は労働基準法が適用されるため、管理監督者に該当しない限り、残業代の支払い義務が生じる点に注意が必要です。
特に「雇用型」を選択した場合は労働基準法が適用されるため、就業規則との整合性について、専門家(弁護士や社労士)を交えて慎重に設計することが推奨されます。
経営と執行の分離による組織力強化へ
本記事では、取締役と執行役員の違いについて、「役割・法的地位」「契約形態・労働基準法」「報酬」「任期・選任機関」の4つの観点から解説しました。
取締役は経営の方針を決める法的な役員であり、執行役員はその方針を実行する業務の責任者です。両者の違いを正しく理解することは、適切なガバナンス体制の構築や、自身が昇進・就任する際のリスク管理において不可欠です。特に契約形態や労働基準法の適用の有無は個人のキャリアに直結するため、自社の規定や契約内容を改めて確認することをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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