- 更新日 : 2025年10月21日
創業融資に年齢制限はある?未成年や女性若者シニアの支援も解説
創業時の融資には明確な年齢制限はありませんが、女性やシニア、若者など金利が有利になる融資制度も用意されています。また、未成年者の融資の申し込みは、原則として親権者の同意が必要です。
この記事では、創業融資と年齢の関係、日本政策金融公庫や自治体が提供する融資制度の年齢条件、審査を通過するための実践的なコツまで、わかりやすく解説します。
目次
創業融資に年齢制限はある?
日本政策金融公庫や自治体の多くの創業融資には、原則として上限年齢の制限はありません。ただし、実務上は返済期間との関係で完済時の年齢や健康状態が考慮される場合があります。
一方で、未成年者が事業を始める場合、融資の申し込みには注意が必要です。民法上、未成年者が単独で融資のような法律行為(契約)を結ぶことはできず、親権者の同意が必要になります。金融機関によっては、親権者の同意書や連帯保証を求める場合があります。
融資の審査では年齢そのものよりも、事業計画の実現性や返済能力が重視されますが、未成年者の場合は親権者のサポート体制もあわせて確認される点をおさえておきましょう。
年代ごとに審査のポイントは異なる場合がある
融資の条件が年齢によって直接変わることは少ないですが、年代ごとに審査で見られるポイントは異なる場合があります。 たとえば、若年層は経験が浅いと見られる一方、将来性や熱意が評価されることがあります。逆にシニア層は豊富な経験や人脈が強みになりますが、健康面や完済時の年齢が考慮される場合もあるでしょう。
- 未成年者の場合
未成年者が融資を申し込む場合、事業計画の実現性に加え、親権者の強力なサポート体制があるかが審査のポイントになるでしょう。 親権者は、同意書はもちろん、連帯保証人になることを求められるケースがほとんどです。事業経験が乏しい点をふまえ、計画の具体性や熱意をしっかりと伝える必要があります。 - 35歳未満の若者への優遇
一部の融資制度では、35歳未満といった年齢に応じて、金利の引き下げなどの優遇措置を設けています。 これは、新たなビジネスの創出を後押しし、経済の活性化をはかる目的があるためと考えられます。 - 55歳以上のシニアへの優遇
豊富な経験や専門知識を持つシニア層の起業を支援するため、55歳以上を対象とした優遇制度も存在します。長年のキャリアで培ったスキルを活かす事業は、成功可能性が高いと評価されやすい一方、返済期間の設定や健康面が考慮されることがあります。 - 女性は年齢を問わず対象になるケースが多い
女性の活躍推進を目的として、年齢を問わずに女性起業家を対象とする融資制度があります。 自己資金の要件が緩和されたり、特別な金利が適用されたりすることがあります。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は終了
これまで多くの方に利用されてきた日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、2024年3月31日をもって取り扱いを終了しました。 現在は、この制度の要件を引き継ぐ形で、「新規開業・スタートアップ支援資金」などの制度に統合されています。これらの制度では、要件を満たす場合に限り無担保・無保証での利用が可能ですが、審査結果によっては担保や保証を求められることもあります。
日本政策金融公庫が提供する創業融資の年齢条件
日本政策金融公庫が提供する創業融資には、「女性、若者/シニア起業家支援資金」のように特定の年代を優遇する制度もあります。 ここでは、現在利用できる主要な制度の年齢条件を解説します。
新規開業・スタートアップ支援資金
新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方が対象の、年齢制限のない代表的な融資制度です。一定の要件を満たすことで無担保・無保証人での利用が可能です。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
資金の使いみち | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
特徴 | 女性の方、35歳未満または55歳以上の方など、特定の要件を満たすと特別利率が適用される |
女性、若者/シニア起業家支援資金
新規開業・スタートアップ支援資金のうち、女性、35歳未満の若者、55歳以上のシニアの方の新たな挑戦をサポートするための制度で、金利面で優遇されています。事業計画をしっかりと立てれば、力強い支援となるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 女性、35歳未満の方、55歳以上の方で、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 |
資金の使いみち | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
特徴 | 新規開業資金の基準利率よりも低い特別利率が適用される |
中小企業経営力強化資金
新規開業・スタートアップ支援資金のうち、中小企業等経営強化法の認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて自ら事業計画書を策定する方などが対象です。専門家と共に計画を磨けるため、審査上もプラスに働く可能性があります。ここでは一例を紹介します。
項目 | 内容(一例) |
---|---|
対象者 | 次のすべてに当てはまる方
|
資金の使いみち | 事業計画の実施のために必要とする設備資金および長期運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
特徴 | 自己資金要件が問われない、低金利、無担保・無保証人で利用しやすい |
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
一度事業に失敗した経験があっても、その経験を活かして再度起業を目指す方を支援する制度です。 過去の失敗要因を分析し、改善策を事業計画に盛り込んでいくことが求められます。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 廃業歴等がある個人または法人の代表者で、新たに事業を始めるまたは事業開始後おおむね7年以内の方で所定の要件を満たす方 |
資金の使いみち | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 直接貸付 7億2千万円 |
特徴 | 過去の経験をふまえた、説得力のある事業計画が審査のポイントになる |
出典:再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)|日本政策金融公庫
自治体が提供する創業融資(制度融資)の年齢条件
各自治体が提供する創業融資(制度融資)も、多くは年齢を問いませんが、東京都のように若者やシニアを対象とした制度もあります。 ここでは、代表的な都市の制度と、それぞれの年齢条件を紹介します。制度の詳細は自治体・保証協会・金融機関の三者協調で運用され、年度ごとに見直しが行われる点に留意してください。
制度融資とは?金融機関・信用保証協会の役割
制度融資は、地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して、中小企業者や創業者の資金調達を支援する仕組みです。創業者は自治体や商工会議所で相談・紹介を受け、金融機関が審査・実行、信用保証協会が保証を付すことで、融資を受けやすくなります。自治体は、資金預託や利子・保証料の補助等で間接支援を行います。
【東京都】女性・若者・シニア創業サポート事業(2.0)
東京都が実施している、女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)を対象とした低金利の融資制度です。 地域に根差した事業を始める際に、大きな助けとなるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 |
|
資金の使いみち | 創業に必要な設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 1,500万円以内(女性は2,000万円以内) |
特徴 | 固定金利1%以内、無担保、返済期間10年以内、据置3年以内。個人事業主は保証人不要(法人は必要となる場合あり) |
出典:女性・若者・シニア 創業サポート事業|TOKYO創業ステーション
【大阪府】開業・スタートアップ応援資金
大阪府内でこれから事業を始める、または事業を始めて間もない方を対象とした制度です。 年齢の上限はありませんが、女性・若者・シニア・UIJターン等の優遇が設定されています。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 具体的な創業計画を有し、
|
資金の使いみち | 創業に必要な運転資金・設備資金 |
融資限度額 | 3,500万円 |
特徴 | 女性、若者、シニア、UIJターン該当者は、融資利率が0.2%割引になる金利優遇を受けられ、さらに低利での資金調達が可能 |
出典:開業・スタートアップ応援資金(開業資金)|大阪商工会議所
【札幌市】創業・雇用創出支援資金
札幌市内で新たに事業を始める方、創業後5年未満の方、または雇用創出を図る方等を対象とする制度です。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 次のいずれかに該当する者
|
資金の使いみち | 運転資金 設備資金(市内の設備投資に限る) |
融資限度額 | 5,000万円。ただし、創業する者(創業から3ヶ月以内を含む)は、必要額の9割以内とする。(上記融資対象の3のみ3,500万円) |
特徴 | 中小企業者等が信用保証協会に対して支払わなければならない信用保証料の4分の1以内を補給する |
経営者保証が不要になる創業融資の年齢条件
信用保証協会が後方支援する創業融資制度の中で、金融機関からの借入を円滑にするものがあります。特に、2023年3月に創設された「スタートアップ創出促進保証制度」は、一定の要件を満たすことで経営者本人の個人保証を不要とする制度です。年齢を理由に利用を制限される規定は現時点では設けられていません。
スタートアップ創出促進保証制度
この制度は、創業者の負担軽減と事業展開の支援を意図した制度で、次のような特徴があります。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 |
|
資金の使いみち | 事業に必要な運転資金および設備資金 |
保証限度額 | 3,500万円 |
特徴 |
|
スタートアップ創出促進保証制度は、創業者、金融機関、信用保証協会の三者が連携して運営されます。創業者は金融機関に事業計画を提出し、金融機関の審査後、保証協会へ保証申込みを行い、保証が認められれば、金融機関と創業者間で融資契約が締結され、資金が実行されます。
年齢に関係なく創業融資の審査を通過するコツとは?
年齢に関わらず創業融資の審査を通過するためには、事業計画の完成度を高め、自己資金を適切に準備し、事業への熱意と計画性を具体的に示すことが重要です。年齢はあくまで審査項目の一つに過ぎず、実際には事業の実現可能性・収益性・返済計画の妥当性が重視されます。
事業計画書の完成度を上げる
誰が読んでも事業内容や収益構造が明確に理解できるよう、根拠データに基づいた具体的な事業計画書を作成しましょう。事業計画書は、融資担当者が事業の将来性を判断するための最も重要な資料です。「なぜこの事業を始めるのか」「どのような商品・サービスを提供するのか」「どうやって利益を上げるのか」を、数字とストーリーの両面から示すことが信頼につながります。
自己資金の割合や資金繰り表を明確にする
自己資金は、全体の1〜3割程度を準備していると評価されやすい傾向があります。通帳の履歴などで、計画的に蓄えた資金であることを示すと信頼性が高まります。
また、1年分程度の資金繰り表を作成し、売上入金や支出のタイミングを明確にしましょう。特に固定費に対しては、3〜6か月分の運転資金を確保する余裕を持たせることで、返済リスクを低減できます。
必要な許認可を事前に取得する
行政の許認可が必要な業種(飲食業・建設業・不動産業など)の場合、申請前に取得しておくことが理想です。ただし、審査段階で取得予定であることが明確に示されていれば、申請中でも審査対象になる場合もあります。早期に準備を進めていること自体が「計画性」としてプラス評価になります。
年齢を問わず創業融資は事業計画をしっかり立てよう
創業融資には原則として年齢制限はありません。
ただし、未成年者(18歳未満)は民法上、単独で契約できないため親権者の同意や連帯保証が必要です。一方、女性や35歳未満の若者、55歳以上のシニアは、各種公的制度で金利優遇や保証料補助などを受けられる場合があります。
審査では年齢よりも事業計画の具体性・資金計画の妥当性・本人の実行力が重視されるため、熱意と準備をしっかり示せば、どの年代でも融資を受けられるチャンスがあります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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