• 作成日 : 2025年12月11日

遺品整理業は儲かる?将来性やきついと言われる実態、開業に必要な資格などを解説

遺品整理ビジネスへの関心が、その高い将来性と共に高まっています。「遺品整理は儲かる」という声を耳にすることも増えましたが、同時に「きつい」「仕事がない」といった厳しい声が聞かれるのも事実です。

この記事では、遺品整理業のリアルなビジネスモデルや収益構造、開業に必要な準備や初期費用、フランチャイズ(FC)と独立の違い、遺品整理士などの資格の必要性、そして活用できる可能性のある助成金について、業界の実態を踏まえながら解説します。

遺品整理業は儲かる?

遺品整理業は、適切なビジネスモデルを構築し、戦略的に運営すれば、儲かる可能性が非常に高い事業です。ただし、誰でも簡単に稼げるわけではなく、事業の進め方によって収益は大きく変動します。

儲かる主な根拠は、以下の3点です。

  1. 市場の将来性:高齢化社会により需要の増加が確実視されています。
  2. 高収益なビジネスモデル:買取により利益率を高められます。
  3. 高単価なサービス:専門性が求められるためサービス単価を高く設定しやすい特徴があります。

一方で、コスト管理の失敗や他社との競争激化により、儲からないケースも多く存在するのが現実です。

遺品整理業が儲かる・稼げると言われる理由は?

遺品整理業が「儲かる」「稼げる」とされる背景には、以下の要因があります。

1. 高い需要と市場の将来性

遺品整理市場は、日本の高齢化に伴い今後も拡大し続けると確実視されています。これが、遺品整理業の将来性が高いとされる最大の理由です。

日本の死亡者数は2040年頃まで増加傾向が続くと予測されています。また、核家族化により、遠方の実家の片付けをご遺族だけで行うことが困難になり、専門業者への依頼が一般化しているため、需要は非常に安定しています。

2. 高収益なビジネスモデル

遺品の中から価値ある品を買い取ることで、作業費とは別に買取による収益を確立できる点が、このビジネスモデルの最大の強みです。

多くの業者が「古物商許可」を取得し、買取を積極的に行っています。依頼者にとっては整理費用が安くなるメリットがあり、業者にとっては利益の上乗せになります。この買取販売益が、利益率を大きく左右するポイントとなります。

3. 付加価値サービスによる高単価設定

遺品整理は、単純な片付けだけでなく、専門知識が必要な関連サービスをまとめて提供できるため、一件あたりの単価を上げやすい特徴があります。

基本の作業費に加え、以下のようなオプション・付加価値サービスを提供することで、顧客のニーズにワンストップで応えつつ、利益率を高めることが可能です。

  • 特殊清掃:孤独死などの現場における除菌、消臭、害虫駆除
  • ハウスクリーニング:エアコン、水回りなどの専門清掃
  • 遺品の供養・お焚き上げ:仏壇、神棚、人形など
  • 各種手続き代行:行政手続き、車両の廃車手続きなど

遺品整理業が儲からない・きついと言われる実態は?

「儲かる」という側面とは裏腹に、「きつい」「仕事がない」といった厳しい現実(デメリット)も存在します。

1. 精神的・肉体的な過酷さ

遺品整理は精神的・肉体的にきつい仕事であり、誰もが続けられるわけではありません。

  • 精神面:ご遺族の深い悲しみに寄り添う必要があり 、時には孤独死などの凄惨な現場(特殊清掃)に直面します。
  • 肉体面:タンスや冷蔵庫などの重量物を繰り返し運搬するため 、数日間にわたる長時間の肉体労働になることもあります。
  • 衛生面:長年のホコリやカビ、ゴミ屋敷状態の現場、害虫や臭気との戦いになるケースも少なくありません。

2. 競争激化

市場の将来性に注目した新規参入業者が急増しており、競争が非常に激化しています。その結果、価格競争に陥ったり、集客ができず仕事がない状態になったりする業者も少なくありません。

効果的な集客方法を確立しなければ、顧客から選ばれることが難しくなっているため、安易に儲かるわけではないのです。

3. 単純作業だけでは儲からないコスト構造

遺品整理業の経費は人件費と廃棄費用が大部分を占めます。単純な片付け作業だけでは、これらのコストで利益のほとんどが消えてしまうことがあります。

例えば、売上が30万円あっても、人件費と廃棄物処理費で20万円以上かかれば、粗利益はわずかです。買取や付加価値サービスがなければ、利益を出すのは困難です。

遺品整理業の年収・収益モデルは?

遺品整理業の年収は、運営形態や規模によって大きく異なります。儲かると言っても、個人事業主か法人か、買取や特殊清掃をどれだけ行うかで収益構造は全く別物になります。

収益構造の基本

(作業費 + 付加価値サービス費 + 買取販売益)-(人件費 + 廃棄費用 + その他経費) = 利益

個人事業主の場合

一人または家族経営で、主に作業と小規模な買取を行う場合、経費を抑えやすいのが特徴です。ただし、一件あたりの物量が多い現場は対応が難しくなります。年収の目安は300万〜600万円程度ですが、買取の目利きスキルが高ければそれ以上も可能です。

法人の場合

スタッフを雇用し、複数の現場を同時に回す形態です。人件費や事務所維持費などの固定費は増えますが、特殊清掃機材の導入や、不動産業者・士業との連携も可能になり、大規模な案件も受注できます。安定して集客できれば、経営者の年収として1,000万円以上を目指すことも可能です。

遺品整理業で開業する方法は?

遺品整理業で開業し、成功するためには、適切な準備と戦略が必要です。

1. 資金調達

遺品整理業の開業に必要な初期費用は、事業規模によりますが、一般的に数百万円程度が必要とされます。

主な初期費用
  • 車両費:軽トラック、2tトラックなどの購入費・リース費
  • 事務所・倉庫費:遺品の一時保管場所や事務作業スペースの賃料
  • 広告宣伝費:Webサイト制作費、チラシ作成費、Web広告費
  • 許可取得費:古物商許可の申請費用など
  • 備品費:清掃道具、梱包資材、防護服など
  • 運転資金:人件費、廃棄費用などの当面の経費

これらの開業資金は、自己資金のほか、日本政策金融公庫の創業融資や、助成金・補助金を活用して調達する方法があります。

参考:融資制度を探す|日本政策金融公庫

2. 独立開業とフランチャイズ(FC)加盟の比較

開業方法には、ゼロから立ち上げる独立開業と、本部のノウハウを活用するフランチャイズ(FC)加盟があります。

FC加盟は、未経験者でも成功ノウハウを活用してリスクを抑えて開業できる点がメリットです。ただし、加盟金やロイヤリティ(売上の一部を本部に支払う費用)が発生します。

3. 助成金・補助金の活用

遺品整理業の開業や運営には、国や自治体が提供する助成金・補助金を活用できる可能性があります。これらは遺品整理業に特化したものではありませんが、経費負担を軽減し、利益を確保する有効な手段です。

申請には事業計画書が必要なため、商工会議所や専門家への相談が推奨されます。

遺品整理で開業するために必要な許可や資格は?

遺品整理業の開業自体は誰でも可能ですが、儲かる事業にするためには、法的な許可と民間資格が不可欠です。

1. 必須の許可(古物商・一般廃棄物収集運搬業)

遺品整理のビジネスモデルにおいて、以下の許可は収益を上げるために必須です。

  • 古物商許可:遺品を買い取るビジネスを行うために絶対に必要です。管轄の警察署に申請し取得します。
  • 一般廃棄物収集運搬業許可:家庭から出るゴミ(一般廃棄物)を運搬するための許可です。この許可は新規取得が極めて困難なため、多くは許可を持つ地域の業者と提携する方法を取ります。

参考:古物商許可申請|警視庁

2. 信頼獲得に繋がる民間資格(遺品整理士など)

遺品整理士は、遺品整理業において代表的な民間資格です。遺品整理に関わる法規制や、ご遺族への対応(グリーフケア)を学んだ証明となり、顧客の信頼獲得に直結します。

参考:遺品整理士

他にも、事件現場特殊清掃士や生前整理アドバイザーなど、他社との差別化に繋がる資格もあります。

遺品整理業で安定して儲けるためのポイントは?

激化する競争の中で安定して利益を上げ、「儲かる」事業にするためには、価格競争に陥らないための戦略が不可欠です。

1. 買取・査定スキルの強化

利益率を大きく左右する買取を強化することが最も重要です。骨董品や美術品、ブランド品など、特定のジャンルの査定スキルを磨き 、他社より高く買い取れる体制を整えることが収益に直結します。

2. 特殊清掃など高単価サービスの導入

単純な片付け作業だけでは利益が出にくいため、「特殊清掃」や「デジタル遺品整理」など、専門性が高く高単価なサービスを導入し、差別化を図る必要があります。

3. Web集客の確立

仕事がない状態を避けるため、安定した集客方法の確立が生命線です。自社WebサイトのSEO対策(検索エンジン最適化)、MEO(Googleビジネスプロフィール)、Web広告など、効果的なWebマーケティングへの投資が必須です。

4. 徹底したコスト管理

利益を最大化するには、最大のコストである「人件費」と「廃棄費用」をいかに抑えるかが重要です。見積もり時に物量を正確に把握し 、廃棄物を徹底的に分別してリサイクルに回すことで、廃棄費用を圧縮する努力が求められます。

5. 他社との明確な差別化

顧客から選ばれるためには、自社ならではの「強み」による差別化が成功の鍵です。

  • 士業との連携:司法書士や不動産業者と連携し、相続手続きや不動産売却までサポートする。
  • 顧客対応の質:遺品整理士資格の取得を徹底し、女性スタッフ対応を可能にするなど、ご遺族の安心感を高める。

遺品整理ビジネスで成功するために

遺品整理業は、高い将来性から魅力的な市場ですが、きつい労働環境や競争の激化により、単純な作業だけでは儲かりにくいのも事実です。

このビジネスで儲けるためには、買取や特殊清掃といった付加価値の高いサービスを組み合わせ、一件あたりの収益性を高めることが重要です。その上で、人件費と廃棄費用を徹底的に管理し 、効率的な運営とWeb集客の工夫を続けることが、成功へのポイントとなります。


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