- 作成日 : 2025年5月30日
北海道で受けられる創業支援は?補助金や融資、相談窓口などを解説
北海道で起業をする場合、特定創業支援等事業や補助金・助成金など様々な支援制度を利用することができます。この記事では、北海道で起業を考えている方が利用できる様々な支援制度について、その内容や活用方法を詳しく解説します。
目次
北海道の特定創業支援等事業
北海道内の各自治体は、産業競争力強化法に基づき、創業を促進するための「特定創業支援等事業」を策定しています。
特定創業支援等事業を修了した創業者には、様々な優遇措置が提供されます。その中でも特に注目されるのは、会社設立時の登録免許税の軽減です。
例えば、札幌市では、株式会社または合同会社を設立する際の登録免許税が、資本金の0.7%から0.35%に軽減されます。最低税額の場合、株式会社設立は15万円から7.5万円、合同会社設立は6万円から3万円に減免されます。ただし、この優遇措置は原則として当該自治体内で創業する場合に限られる点には注意が必要です。
さらに、特定創業支援等事業を修了した創業者は、信用保証枠の拡充というメリットも享受できます。例えば、白老町では、創業開始6ヶ月前から創業後5年未満の方を対象に、信用保証枠が1,000万円から1,500万円に拡大されます。
創業関連保証の申込期間についても特例措置があります。通常、創業関連保証は事業開始の2ヶ月前から申し込むことが可能ですが、特定創業支援等事業を修了した場合は、6ヶ月前から利用できるようになります。
北海道内では、様々な自治体が独自の特定創業支援等事業を展開しています。
特定創業支援等事業の修了証明書を受け取るまでのプロセスは、各自治体によって若干異なりますが、一般的には、指定された支援プログラム(相談支援やセミナーなど)を一定期間以上(通常1ヶ月以上)かつ複数回(4回以上)受講し、「経営」「財務」「人材育成」「販路開拓」に関する知識を習得する必要があります。その後、所定の申請手続きを行うことで、自治体から修了証明書が発行されます。札幌市や苫小牧市のように、申請書様式や必要書類が公開されている場合もあります。この証明書の取得が、前述した様々な優遇措置を受けるための前提条件となるため、創業を検討する際には、まず地域の特定創業支援等事業の内容と修了要件を確認することが重要です。
参照:札幌市創業支援等事業計画、特定創 業支援等事業について|北海道苫小牧市
北海道での起業で使える補助金・助成金
北海道で起業する際に活用できる補助金や助成金は、国、北海道庁、そして各市町村から様々なものが提供されています。
北海道全体を対象とした補助金・助成金
北海道庁レベルでは、「地域課題解決型起業支援事業」と「創業促進支援事業」が全道で利用可能な支援策として挙げられます。地域課題解決型起業支援事業は、デジタル技術を活用して地域社会の課題解決を目指す社会的な事業を対象としており、設備購入費やオフィス賃料、人件費などの一部が補助されます。補助率は2分の1以内、補助金の上限額は200万円です。
一方、創業促進支援事業は、公益財団法人北海道中小企業総合支援センターが運営しており、道内で新たに事業所を設けてビジネスを開始する個人や中小企業者に対して、最大100万円が支給されます。対象となる経費は、原材料費、外注加工費、試験依頼費、出展料、展示工事費、職員旅費、輸送費、広告宣伝費など多岐にわたります。
北海道中小企業総合支援センターは、「北海道中小企業新応援ファンド事業」も運営しており、これは創業促進支援事業を含む、より広範な支援プログラムです。また、
参考:地域課題解決型起業支援事業 | 公益財団法人 北海道中小企業総合支援センター、創業促進支援事業 | 公益財団法人 北海道中小企業総合支援センター、「北海道中小企業新応援ファンド事業」募集のご案内 | 公益財団法人 北海道中小企業総合支援センター
市区町村ごとの補助金・助成金
市町村レベルでも、独自の補助金や助成金制度が設けられています。札幌市では、「さっぽろ新規創業促進補助金」があり、これは札幌市の特定創業支援等事業を修了し、会社設立登記を行った方を対象に、登録免許税の軽減額の残りの半額と定款認証手数料相当額を補助するものです。補助額は、株式会社設立の場合一律7.5万円、合同会社設立の場合一律3万円となっています
函館市では、「創業バックアップ助成金」が提供されており、優れた事業計画を持つ創業者に対して、一般枠で最大500万円、35歳未満の若者枠で最大100万円という高額な助成金が交付されます。
その他にも、小樽市、美唄市、滝川市、深川市、恵庭市、大樹町、大空町、妹背牛町、新ひだか町、京極町、月形町、天塩町、蘭越町、留寿都村など、多くの市町村が独自の創業支援補助金を設けています。これらの補助金の金額や対象要件はそれぞれ異なるため、創業を検討する地域に合わせて詳細を確認することが重要です。
補助金・助成金名 | 運営組織 | 最大補助金額 | 主な対象要件 |
---|---|---|---|
創業促進支援事業 | 公益財団法人 北海道中小企業総合支援センター | 100万円 | 道内で新たに事業所を設けて創業する個人・中小企業者 |
地域課題解決型起業支援事業 | 公益財団法人 北海道中小企業総合支援センター | 200万円 | デジタル技術を活用して地域課題を解決する創業者 |
さっぽろ新規創業促進補助金 | 札幌市 | 株式会社: 7.5万円、合同会社: 3万円 | 札幌市の特定創業支援等事業修了、市内での会社設立 |
創業バックアップ助成金 | 函館市 | 一般枠: 500万円、若者枠: 100万円 | 函館地域での創業、優れた事業計画 |
北海道で融資を受けるには?
北海道で起業する際に融資を受けるための主な選択肢としては、日本政策金融公庫(JFC)、北海道中小企業総合振興資金、そして民間の金融機関が挙げられます。
融資を受けるための一般的なプロセスとしては、まずしっかりとした事業計画を作成し、資金調達の必要性を明確にする必要があります。その後、各機関の窓口に相談し、必要書類を準備して申請を行います。JFCの場合は面接が行われることが一般的です。信用保証が必要な場合は、北海道信用保証協会への別途申請も必要となります。融資の審査には時間がかかる場合もあるため、早めの準備と申請が重要です。
それぞれの制度・機関について、詳しく見ていきましょう。
日本政策金融公庫の融資制度を利用する
日本政策金融公庫(JFC)は、政府系の金融機関であり、創業者向けの融資制度が充実しています。新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方を対象としており、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
また、新創業融資制度は、一定の要件を満たすことで無担保・無保証での融資が可能です。
JFCは、女性、若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)の創業者向けの支援や、特定創業支援等事業を修了した創業者に対する金利優遇措置も提供しています。
北海道中小企業総合振興資金を利用する
北海道中小企業総合振興資金は、北海道庁が設けている融資制度で、創業貸付も用意されています。融資限度額は3,500万円以内、融資期間は1年超10年以内(うち据置2年以内)で、固定金利が適用されます。この融資を受けるには、原則として北海道信用保証協会の保証が必要となりますが、なお、創業貸付など一部の資金メニューでは無担保での利用が可能ですが、特定創業支援等事業の修了有無にかかわらず、担保や保証の要否は資金区分や金融機関の審査によって異なります。
民間の金融機関の融資制度を利用する
民間の金融機関、例えば北洋銀行や北海道銀行などの地方銀行も、創業融資を取り扱っています。これらの銀行は、JFCや北海道信用保証協会と連携して融資を行うことも多く、独自の創業支援プログラムを提供している場合もあります。
また、北海道内には多くの信用金庫があり、地域に密着した金融機関として、それぞれの営業エリア内で創業を支援しています。北海道信用金庫、室蘭信用金庫、稚内信用金庫などがその例です。これらの信用金庫は、融資だけでなく、創業に関する相談や事業計画策定のサポートなども行っています。
北海道の起業について相談できる窓口
北海道で起業に関する相談ができる窓口は多岐にわたります。
北海道庁経済部地域経済局中小企業課には、「北海道創業サポート相談室」が設置されており、中小企業やNPO法人等の創業に関する融資制度、助成制度、そして創業全般に関する相談に対応しています。札幌の本庁舎をはじめ、道内各地の総合振興局・振興局にも相談窓口が設けられており、地域に根差したサポートを提供しています。
札幌市内には、「さっぽろ創業支援プラザ」が、札幌中小企業支援センターと札幌商工会議所内に設置されています。ここでは、創業予定の方や創業間もない方を対象に、専門の創業アドバイザーが無料で相談に応じています。事業計画の作成、融資や補助金の申請支援、セミナーやオフィスの紹介など、創業のアイデア段階から事業化、販路開拓までを総合的にサポートしています。
「北海道よろず支援拠点」は、国が設置する中小企業・小規模事業者向けの無料経営相談窓口で、北海道にも拠点があります。札幌に本部があり、道内各地にサテライトオフィスを展開し、創業に関する様々な悩みや課題に対して、本質的な解決策を提案しています。
札幌商工会議所も、創業支援に力を入れており、開業資金などの融資相談や制度紹介、日本政策金融公庫の融資申請に必要な創業計画書の作成指導などを無料で行っています。市内5ヶ所に中小企業相談所を開設し、地域に密着した相談体制を整えています。
一般財団法人さっぽろ産業振興財団 札幌中小企業支援センターは、金融や経営に関する相談窓口として、創業に必要な資金調達や事業計画作成を支援しています。専門家派遣サービスも提供しており、女性起業家向けの相談窓口やテレワーク導入に関する相談など、多様なニーズに対応しています。
その他にも、INPIT北海道知財総合支援窓口、道内各地の商工会議所や北海道商工会連合会、中小企業基盤整備機構北海道本部など、様々な団体が創業に関する相談窓口を設けています。STARTUP HOKKAIDOも、オンラインやオフラインでスタートアップの相談に対応しています。
相談窓口名 | 所在地/管轄 | 連絡先 | 主な相談内容 |
---|---|---|---|
北海道創業サポート相談室 | 札幌市および道内各地 | 011-206-0494 (本庁) 他 | 融資制度、助成制度、創業全般 |
さっぽろ創業支援プラザ | 札幌市内 | 011-231-1768 (札幌商工会議所) 他 | 事業計画作成、融資相談、補助金申請支援など |
北海道よろず支援拠点 | 札幌市および道内各地 | 011-232-2407 (本部) 他 | 経営全般、課題解決、販路拡大など |
札幌商工会議所 中小企業相談所 | 札幌市内5ヶ所 | 各支所による | 融資相談、創業計画書作成指導など |
札幌中小企業支援センター | 札幌市 | 011-200-5511 | 資金調達、事業計画作成支援、専門家派遣など |
INPIT北海道知財総合支援窓口 | 札幌市 | 011-747-8256 | 知的財産に関する相談 |
北海道商工会連合会 | 札幌市 | 011-251-0102 | 経営全般に関する相談 |
中小企業基盤整備機構北海道本部 | 札幌市 | 011-210-7471 | 経営相談、生産性向上支援など |
STARTUP HOKKAIDO | オンライン・札幌市 | ウェブサイト参照 | 事業相談、補助金関連、専門家相談 |
その他の支援制度
北海道では、上記以外にも様々な創業支援制度が用意されています。
外国人起業家を支援する「北海道スタートアップビザ制度(外国人起業活動促進事業)」は、一定の条件を満たす外国人に最長2年間の在留資格を付与し、日本国内での起業準備を可能にするものです。この制度は、海外からの起業家を積極的に誘致する北海道の姿勢を示すものです。
創業初期の企業にとって重要な拠点となるインキュベーション施設も存在します。札幌市には「SAPPORO BUSINESS VILLAGE」があり、全国のインキュベーション施設の情報は中小機構のウェブサイトで確認できます。これらの施設は、オフィススペースの提供だけでなく、他の創業者との交流やメンターからの指導など、成長を促進するための環境を提供します。
知識習得の機会としては、「北海道web創業塾」があります。これは、行政書士や税理士などの専門家による創業研修動画をYouTubeで無料で受講できるオンラインプラットフォームです。事業計画や資金計画の立て方、マーケティングの基礎知識などを学ぶことができ、場所や時間にとらわれずに学習できるメリットがあります。
資金調達の面では、「エンジェル税制」があります。これは、ベンチャー企業への投資を促進するために、個人投資家に対して税制上の優遇措置を与える国の制度です。北海道庁に申請書を提出することで利用できます。
特定のターゲット層に向けた支援もあります。札幌市では、女性起業家向けの相談窓口や交流会を設けており、女性ならではの悩みや課題に対応したサポートを提供しています。恵庭市では、独自の「起業メンター制度」を提供しており、先輩起業家から無料でアドバイスを受けられる機会を提供しています。釧路市には、「釧路市ビジネスサポートセンター」があり、地域に特化した創業支援を行っています。
北海道の創業支援制度を積極的に活用しよう
北海道における創業支援は、国、道庁、各市町村、そして様々な支援機関が連携し、多岐にわたるプログラムやサービスを提供することで、創業を志す人々を力強く後押ししています。特定創業支援等事業による会社設立時の登録免許税軽減や信用保証枠の拡充、日本政策金融公庫の融資制度の利用など、経済的なメリットも豊富です。また、創業に関する相談窓口も全道各地に設けられており、事業計画の策定から資金調達、販路開拓まで、様々な段階で専門家からのアドバイスやサポートを受けることができます。
これらの支援制度を積極的に活用することで、北海道での起業はより現実的で成功の可能性の高いものとなるでしょう。創業を検討されている方は、まず自身の事業計画や状況に合わせて、利用可能な支援制度を詳しく調べ、それぞれの窓口に相談してみることをお勧めします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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