• 作成日 : 2025年5月30日

青森県で受けられる創業支援は?補助金や融資、相談窓口などを解説

青森県で起業をする場合、特定創業支援等事業や補助金・助成金など様々な支援制度を利用することができます。この記事では、青森県で利用できる様々な創業支援制度を解説します。

青森県の特定創業支援等事業

青森県では、地域における創業を促進するために、「特定創業支援等事業」という取り組みを推進しています。

これは、2014年1月20日に施行された「産業競争力強化法」に基づき創設され、その後、2018年7月9日の改正により制度が拡充された「改正産業競争力強化法」に基づき、従来の創業支援事業を拡充し、創業に関する普及啓発を行う事業(創業機運醸成事業)を含めた「創業支援等事業」として位置づけられたものです。

参考:創業支援等事業計画│青森市

特定創業支援等事業を利用するメリット

この「特定創業支援等事業」を受け、市町村から証明書の交付を受けた創業者には、様々な優遇措置が提供されます。

具体的には、株式会社または合同会社を設立する際の登録免許税が軽減されます。

例えば、むつ市、青森市、五所川原市、八戸市などでは、資本金の0.7%だった登録免許税が0.35%に減額され、株式会社の最低税額は15万円から7.5万円に、合同会社の最低税額は6万円から3万円になります。この制度は、創業前または創業後5年未満の個人が対象となる場合が多いです。

さらに、通常は創業2ヶ月前から利用可能となる無担保、第三者保証人なしの創業関連保証が、事業開始の6ヶ月前から利用できるようになる特例措置もあります。

加えて、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の貸付利率が引き下げられる対象となる可能性や、小規模事業者持続化補助金の上限額が50万円から200万円に引き上げられる優遇措置も用意されています。

後者の補助金は、過去3年以内に特定創業支援等事業を受け、かつ過去3年以内に創業した事業者が対象です。

各市町村の特定創業支援等事業

青森県内では、各市町村が特色ある特定創業支援等事業を展開しています。

むつ市

「訪問型個別相談支援事業(創業相談ルーム、よろず出張相談事業)」と「創業塾」が特定創業支援等事業に該当します。特に「下北創業塾」では、「経営(創業スタートアップ、ビジネスプラン作成)」、「財務(資金計画)」、「販路開拓(マーケティング)」、「人材育成(創業に必要な手続き)」の5つのテーマで、全5回の講座が開催されます。

興味のある回のみの参加や、都合がつかない場合の別日対応も可能であり、全5回を受講した方は、所定の手続きにより法人設立時の登録免許税軽減などの優遇措置を受けることができます。

参考:創業支援等事業計画|事業者向け情報|むつ市

青森市

「青森市創業支援等事業計画」および近隣4町村と共同で実施する「東青地域広域創業支援等事業計画」があり、令和11年3月31日までの計画期間で、年間254件の創業実現を目指しています。

青森市の特定創業支援等事業は、1ヶ月以上にわたり、相談窓口でのアドバイスやセミナーを通じて、経営、財務、人材育成、販路開拓の知識を習得することを目的としています。

参考:創業支援等事業計画|青森市

五所川原圏域

五所川原市、つがる市、鯵ヶ沢町、深浦町、鶴田町、中泊町では、「五所川原圏域創業支援等事業計画」に基づき、窓口相談や創業セミナーなどの支援が実施されています。

参考:五所川原圏域2市4町による創業支援等事業計画|五所川原市

八戸市

八戸商工会議所、八戸学院大学などが「特定創業支援等事業」を実施しています。

具体的には、「はちのへ創業・事業承継サポートセンター」、「青森県よろず支援拠点」、「株式会社青森銀行」が行う1時間程度の相談を1ヶ月以上にわたり4回以上受けることや、八戸学院大学の学生を対象とした「アントレプレナーシップ講座」の受講、八戸商工会議所が実施する「はちのへ創業スクール」の受講などが該当します。

参考:八戸市創業支援等事業計画について | 八戸市

青森県で利用できる補助金・助成金

青森県で起業する際に活用できるのは、特定創業支援等事業だけではありません。資金面でのサポートとして、様々な補助金や助成金制度が用意されています。

各地域での補助金・助成金

例えば、五所川原圏域では、「創業等支援家賃補助事業」が提供されています。これは、創業時の店舗や事務所の賃料の一部を補助するもので、初期費用を抑えたい創業者にとって非常に魅力的な支援策と言えるでしょう。

十和田市では、「十和田市創業支援・空き店舗等活用事業補助金」という制度があります。これは、市内の空き店舗や空き事務所を活用して新たに事業を開始する個人または法人を対象に、改修工事などに要する費用の一部を補助するものです。

特に、令和5年10月1日以降に十和田市に転入した個人や、本店を移転した法人で、営業に係る床面積が200平方メートル以上の場合は、上限300万円の補助金が交付される可能性があります。

また、市外に住んでいる個人や本店がある法人でも、実績報告書の提出期限までに十和田市に転入または本店を移転する予定で、営業に係る床面積が200平方メートル未満の場合は、上限150万円の補助を受けることができます。この補助金は、2年以上継続して事業を行うことや、一定の営業時間を満たすことなどが条件となっています。

参考:令和7年度十和田市創業支援・空き店舗等活用事業補助金|青森県十和田市

青森県全体での補助金・助成金

青森県全体として、「青森県『青森新時代』への架け橋資金特別保証融資制度」があり、これを利用した創業者に対して、五所川原市など一部の自治体では信用保証料の補助を行っています。

この制度は、長期かつ低金利(固定)での資金調達を可能にするもので、創業時の資金繰りを安定させる上で重要な役割を果たします。

参考:「青森新時代」への架け橋資金のご案内|青森県庁

県の補助金を利用した市の政策

弘前市では、市独自の補助金制度はありませんが、「青森県『選ばれる青森』への挑戦資金」を活用した支援が行われています。この資金を利用すると、信用保証料の全額が弘前市から補助され、長期的に低金利(固定)で青森県から融資を受けることができます。また、この融資を受けて市内の空き店舗で開業する場合には、さらに補助金が交付される制度もあります。

このように、青森県内には様々な補助金や助成金制度が存在しますが、それぞれの制度には対象者や条件が細かく定められています。最新の情報は各自治体のウェブサイトなどで確認することが重要です。

青森県で融資を受けるには?

青森県では、創業者向けの様々な融資制度が用意されており、事業計画や資金状況に応じて適切なものを選択することができます。

青森県で融資を受けるためには、まず自身の事業計画をしっかりと練り上げ、どの程度の資金が必要なのかを明確にする必要があります。その上で、様々な融資制度の中から、自身の状況に最も適したものを検討し、各機関に相談してみることをお勧めします。

それぞれの制度・機関について、詳しく見ていきましょう。

日本政策金融公庫の融資制度を利用する

日本政策金融公庫は、政府系の金融機関として、新規開業やスタートアップを支援するための融資制度を幅広く提供しています。「新規開業・スタートアップ支援資金」などの融資プログラムがあり、これらの利用にあたっては、前述の「特定創業支援等事業」の修了が有利に働く場合があります。

特定創業支援等事業の証明書を提出することで、融資の際の金利が優遇されたり、自己資金要件が緩和されたりする可能性があります 。融資の詳細な条件や申請手続きについては、日本政策金融公庫青森支店に直接問い合わせることをお勧めします。

地元金融機関の融資制度を利用する

青森銀行、みちのく銀行、青い森信用金庫、東奥信用金庫といった地元の金融機関も、創業者向けの融資や相談サービスを提供しています。これらの金融機関は、地域経済の活性化を重視しており、創業支援にも積極的に取り組んでいます。

特に青森銀行は、「認定創業支援等事業者」としても連携しており、地域における創業支援に貢献しています。

県と市町村が連携した融資制度を利用する

さらに、青森県と市町村が連携した融資制度も存在します。例えば、「青森県・むつ市連携融資制度」では、創業融資に対する保証料の補給が行われています。

なお、青森県が実施する「青森新時代」への架け橋資金制度については、弘前市や五所川原市などの自治体が、信用保証料の一部または全額を独自に補助する形で県と連携しています。こうした地域ごとの取り組みにより、創業者の資金負担をさらに軽減することが可能です。

青森県信用保証協会を利用する

青森県信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が金融機関から融資を受ける際に、その保証人となる公的な機関です。信用保証協会の保証を得ることで、実績の少ない創業者でも融資を受けやすくなります。

「創業サポート融資保証サクセス」や女性向けの「サクセスエフ for woman」といった商品があり、創業に関する相談窓口も設けられています。さらに、「スタートアップ創出促進保証制度」では、一定の条件を満たす法人に対して経営者保証を不要とする場合もあります。

女性やUIJターンによる創業の場合には、金利の優遇措置が適用される可能性もあります。

参考:創業相談・支援 | 青森県信用保証協会

青森県での起業について相談できる窓口

青森県で起業を志す皆様にとって、心強い存在となるのが、様々な相談窓口です。経験豊富な専門家たちが、事業のアイデア段階から具体的な計画、そして創業後の運営まで、あらゆる段階で親身に相談に乗ってくれます。

県内には、広域的なサポートを行う拠点から、地域に根差した相談窓口まで、多様な支援体制が整っています。

21あおもり産業総合支援センター

21あおもり産業総合支援センターは、県内全域を対象に、創業に関する幅広い支援を提供している中心的な機関の一つです。ここでは、「インキュベーション・マネジャー(IM)」と呼ばれる創業支援の専門家が、事業計画の作成から資金調達、販路開拓など、様々な相談に無料で応じてくれます。

県内各地で定期的に創業相談会を開催しており(五所川原市、三沢市、むつ市、黒石市、十和田市など)、県外から青森県に移住して起業を考えている方に向けては、「あおもりUIJターン創業相談会」も実施しています。また、様々な地域の特定創業支援等事業にも深く関わっており、青森県における創業支援の中核的な役割を担っています。

参考:公益財団法人21あおもり産業総合支援センター

青森県よろず支援拠点

青森県よろず支援拠点も、中小企業や小規模事業者、そして創業を考えている方に対して、無料の経営相談を行っています。窓口での相談だけでなく、「よろず出張相談」として県内各地を巡回しており、創業に関する相談にも対応しています。様々な分野の専門家が連携し、多角的な視点からアドバイスを提供してくれるのが特徴です。

参考:青森県よろず支援拠点 | 公益財団法人21あおもり産業総合支援センター

AOMORI STARTUP CENTER(あおもりスタートアップセンター)/青森市

青森市には、創業に特化した施設としてAOMORI STARTUP CENTER(あおもりスタートアップセンター)があります。ここでは、専門家による相談窓口が開設されているほか、創業セミナーの開催や起業家同士の交流を促進する場としても活用されています。

参考:AOMORI STARTUP CENTER

ひろさきビジネス支援センター/弘前市

弘前市には、青森県中小企業団体中央会が運営するひろさきビジネス支援センターがあり、創業や経営に関する相談や情報提供を行っています。インキュベーション・マネジャーによる相談は特定の曜日に行われています。地域に根差した支援を提供しており、弘前市周辺で起業を考えている方にとって頼りになる存在です。

参考:ひろさきビジネス支援センター | 青森県中小企業団体中央会

はちのへ創業・事業承継サポートセンター(8サポ)/八戸市

八戸市には、はちのへ創業・事業承継サポートセンター(8サポ)があります。ここでは、創業に関する相談はもちろん、事業承継に関するサポートも行っており、地域経済の活性化に貢献しています。「はちのへ創業スクール」など、実践的な知識を習得できるプログラムも提供しています。

参考:はちのへ創業・事業承継サポートセンター(8サポ)|青森県八戸市

創業相談ルーム/黒石市、五所川原市、十和田市、三沢市、むつ市

さらに、黒石市、五所川原市、十和田市、三沢市、むつ市など、県内各地の自治体にも創業相談ルームが開設されています。これらの相談ルームでは、インキュベーション・マネジャーなどの専門家が、無料で相談に応じてくれます。地域に密着したサポートを受けられるため、地元での起業を考えている方にとっては非常に便利です。

参考:青森県の創業支援施設|青森県庁

各相談窓口一覧

主な起業相談窓口所在地主なサービス内容連絡先
21あおもり産業総合支援センター青森市新町創業相談、UIJターン相談、セミナーなど017-777-4066
青森県よろず支援拠点青森市新町(21あおもり産業総合支援センター内)創業・経営相談、出張相談017-721-3787
AOMORI STARTUP CENTER青森市新町(青森商工会議所会館1階)創業相談、セミナー、アクセラレータープログラム017-763-0037
ひろさきビジネス支援センター弘前市土手町創業・経営相談、情報提供0172-32-0770
はちのへ創業・事業承継サポートセンター(8サポ)八戸市堀端町創業・事業承継相談、創業スクール0178-51-9593
むつ市創業相談ルームむつ市来さまい館創業相談0175-22-1111(内線2654)

その他の青森県の支援制度

青森県では、資金調達や相談窓口の他にも、起業家を支援するための様々な制度が用意されています。

メンター制度

起業を考えている方や創業間もない方を対象としたメンター制度があります。これは、経験豊富な経営者や先輩起業家がメンターとなり、自身の経験に基づいて、経営や起業家精神に関する実践的なアドバイスを無料で提供してくれる制度です。

「あおもりスタートアップセンター」でも創業支援メンター制度があり、多様な業種や経験を持つメンターが登録されています。メンターからのアドバイスは、教科書には載っていない貴重な学びを得る機会となるでしょう。利用を希望する場合は、青森商工会議所のウェブサイトから申し込むことができます。

ネットワークイベントやコミュニティ

また、起業家同士の交流を促進するためのネットワークイベントやコミュニティも活発です。「あおもりスタートアップコミュニティ」は、起業を目指す方や起業家、そして起業を支援したい方が繋がるためのプラットフォームです。

青森スタートアップセンターも、「あおスタピッチ交流会」といったイベントを通じて、起業家間の連携を支援しています。

インキュベーション施設やシェアオフィス

事業を行う上で拠点となるインキュベーション施設やシェアオフィスも県内にいくつか存在します。すでに紹介した施設以外にも、三沢市の「三沢シェアオフィスBlue」では、法人登記も可能なレンタルオフィスや会議室、Wi-Fiなどが整備されており、創業初期の拠点として活用されています。

また、青森市や八戸市には全国展開のレンタルオフィス「リージャス」も展開しており、柔軟な利用形態が可能です。

さらに、十和田市地域交流センター「とわふる」では、創業に関するセミナーや交流イベントが開催されることがあり、地域密着型の創業支援拠点として機能しています。

このような施設は、インキュベーション的な役割を担いながらも、柔軟なスタイルで創業者を支える存在となっています。

創業スクールやセミナー

さらに、起業に必要な知識やスキルを習得するための創業スクールやセミナーも多数開催されています。

八戸商工会議所による「はちのへ創業スクール」は、事業計画の作成や開業に必要な知識の習得を目的としており、4回程度の講座が開催されます。八戸学院大学の「アントレプレナーシップ講座」は、主に学生向けですが、起業家精神を養うための様々なセミナーが開催されています。五所川原圏域や十和田市でも創業セミナーが開催されており、むつ市の「下北創業塾」も再度ご紹介したように、体系的な知識習得の場を提供しています。

県内各地で様々なテーマの創業・起業セミナーが開催されており、自身のニーズに合わせて参加することができます。

参考:創業・起業関連セミナー・講座 – 青森県庁

青森県の創業支援制度を積極的に活用しよう

青森県は、起業を目指す皆様にとって、手厚い支援体制が整った魅力的な地域です。

特定創業支援等事業による登録免許税の軽減や創業関連保証の特例、日本政策金融公庫の融資利率引き下げといった経済的なメリットに加え、県内各地に設けられた相談窓口では、経験豊富な専門家による親身なサポートを受けることができます。

青森県で起業を考えている皆様は、ぜひこの記事でご紹介した情報を参考に、ご自身の事業計画に合った支援制度を積極的に活用してください。


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