- 作成日 : 2025年3月21日
土地家屋調査士の事業計画書の書き方は?テンプレートや記入例も紹介
土地家屋調査士は、土地や建物の境界を確定し登記を行う専門家です。独立開業をめざす際には、事業計画書を作成して資金調達や経営計画を明確にしておく必要があります。
本記事では、土地家屋調査士の事業計画書の書き方や記入例を紹介します。
目次
土地家屋調査士の独立開業時に作る事業計画書とは
土地家屋調査士は、不動産の境界や面積を測量し、登記申請手続きを行う専門家です。独立開業をめざす際には、経営の方向性を示すための事業計画書が重要になります。事業計画書は、融資を受ける際の必須書類であり、事業の実現可能性と返済能力を示す根拠にもなります。
特に、開業時の測量機器購入や事務所開設費用など多額の初期投資が必要となる土地家屋調査士の場合、綿密な計画を立てたうえで金融機関へ提出することで、資金調達を円滑に進められる可能性が高まるでしょう。自らの業務分野を再確認し、リスクと将来の展望を整理するという意味でも、事業計画書は欠かせない書類といえます。
土地家屋調査士の事業計画書の書き方・記入例
土地家屋調査士として独立開業を考える場合、事業計画書には測量や表示登記などの専門性を前面に押し出した内容が求められます。以下に、記入時のポイントを項目ごとに解説します。
創業動機・目的
創業動機は、これまでの実務経験や不動産登記分野への思いなどを明確に書き出しましょう。独立の必然性を裏付ける根拠となります。また、土地家屋調査士としての将来展望としては、「地域のインフラ整備や開発プロジェクトに貢献し、地元住民の財産を守る」など、どのような社会的役割を果たしたいかを示すことも大切です。
職歴・事業実績
土地家屋調査士の独立開業時、融資担当者や取引先が特に注目するのが、これまでの実務経験や取り扱った案件数です。補助者として働いた期間や担当した業務の種類・件数を具体的に記載しましょう。例を挙げると、「〇〇年にわたり補助者として勤務し、宅地の境界確認、農地転用に伴う測量、マンション表示登記など、多岐にわたる案件に携わった」という内容です。
さらに、特殊な地形における測量や、境界トラブルの調整に成功した事例など、難易度の高い案件をこなした経験も積極的にアピールしましょう。実績は、独立後における業務遂行能力の証明になります。
取扱商品・サービス
土地家屋調査士が扱う業務内容としては、土地の測量、建物の表示登記、境界確定、分筆や合筆など、多様なサービスがあります。ここでは、自分が特に得意とする測量技術や、迅速な登記申請手続きに関するノウハウなどを明確に示すことが大切です。
たとえば、GNSS測量機の扱いやCADソフトでの図面作成が得意、あるいは都市計画区域内での測量に長けているなど、専門的なスキルを盛り込むことで、依頼者から見た魅力を高められます。
取引先・取引関係
土地家屋調査士が取引を行う相手としては、不動産会社や建設会社、ハウスメーカー、行政書士や司法書士などの他士業、さらには一般の個人顧客も含まれます。
事業計画書には、想定される主要取引先の種類や取引割合を記載するとともに、協力体制についても言及しましょう。「司法書士とのネットワークを活用し、登記関連のワンストップサービスを提供する」「建設会社との提携を強化し、開発現場での境界確定や測量を円滑に進める」など、業務拡張の方法を具体的に記しておくと信頼度が上がります。
従業員
開業直後は個人事業または少人数でスタートするケースが多いですが、将来的に規模を拡大しようと考えているなら、従業員の採用・育成計画も欠かせません。補助者を新たに雇用する場合は、その求人条件や仕事の範囲、研修計画などを明示するとよいでしょう。
「開業から1年後には補助者を1名雇用し、測量および役所への書類提出を補佐してもらう」というように、タイミングや役割を具体的に記載すると、将来像がよりはっきりします。
借入の状況
事業計画書では、既存の借入金やクレジットカードのローン状況などを正直に示す必要があります。金融機関は、今後新たに融資を行う際に返済能力を総合的に判断するため、現在の借入金額や月々の返済額、返済期間を正確に記載してください。誠実な情報開示が、後々の信用にもつながります。
必要な資金と調達方法
土地家屋調査士の場合、GNSS測量機・トータルステーションなど高額な測量機器を一括購入することも少なくありません。そのため、多額の初期投資を見据えた資金計画が不可欠です。
事業計画書には、「自己資金として〇〇万円、借入金として〇〇万円を確保する予定」「リースや分割払いを検討し、キャッシュ・フローを安定させる」など、具体的な調達方法を明示しましょう。あわせて、借入金の返済計画や金利負担もシミュレーションしておくことで、金融機関の信頼を得やすくなります。
事業の見通し
事業の見通しを立てるには、月間の想定案件数と売上高をできるだけ具体的な数値で示すことが重要です。「月に5件の境界確定依頼と2件の登記申請が見込まれる場合、月間売上高は〇〇万円程度になる」などの現実的な予測を立てましょう。
その際、地域の不動産取引や再開発計画、さらには公共事業の発注状況なども考慮に入れると、より説得力ある事業計画書になります。また、費用面では測量機器の減価償却費や、地図・登記情報の取得にかかる経費、外注費なども忘れずに計上しましょう。開業後の数ヶ月間は売上が不安定になりがちなため、運転資金を厚めに見積もっておくことも賢明です。
土地家屋調査士の事業計画書に使える無料テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、土地家屋調査士向けの事業計画書のひな形・テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードしてご活用ください。
土地家屋調査士の事業計画書を作成するポイント
土地家屋調査士の事業計画書を作成する際には、測量業務や登記申請の特徴を踏まえた具体的なアピールが重要です。特に、設備投資やスキル証明の部分は金融機関も注視します。以下、事業計画書作成で押さえておきたいポイントを解説します。
土地家屋調査士補助者としての経験をアピールする
補助者としての経験は、すでに実務の流れやクライアントとのコミュニケーション方法を身につけている証拠でもあります。事業計画書では、その経験期間や担当業務の種類、どのような形で責任を負ったかを詳しく記載してアピールしましょう。
経験を積む過程で学んだことを踏まえて、「具体的にどんな課題を解決してきたのか」「トラブルをどう処理したのか」を示すと、独立後の業務能力を相手に強く印象付けられます。
未経験の場合は測量やCADなどのスキルを記載する
仮に土地家屋調査士としての補助者経験がない場合でも、測量に必要な技術的スキルを身につけているのであれば、それを積極的にアピールすることが重要です。民間の測量講座やCADソフトの操作研修を受講している、あるいは関連資格を取得している場合は、具体的な学習内容や習熟度、資格取得年月などを細かく記載しましょう。
独立直後は信用が得にくい側面もありますが、自分自身が事業を運営するうえで必須のスキルをしっかり身につけていることを示せば、融資担当者やクライアントの不安を軽減できる可能性があります。
測量機器などの資金調達方法を検討する
土地家屋調査士の業務では、測量機器や専門ソフトウェアの導入が大きな投資となります。購入費用をどのように工面し、どの程度の期間で回収していくのかは事業計画書の大きなポイントです。一括購入が難しい場合は、リースや中古機器の活用も選択肢になります。
また、販売会社が提供する分割払いプランなどを検討し、資金繰りのリスクを軽減する方法を明確に提示しましょう。その際、金利コストや機器のリプレイス時期なども見据えた長期的な計画を示すと、金融機関や取引先からの信頼を得やすくなります。
独立開業にあたって事業計画書作成の重要度は高い
土地家屋調査士として独立開業を成功させるには、測量機器などの資金計画だけでなく、過去の実務経験や将来のビジョンを丁寧に整理し、事業計画書で的確に示すことが不可欠です。
独立後のリスクや収益性をしっかり見つめ、計画書を作成することで、融資審査や顧客からの信頼獲得にも大きく寄与するでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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