• 作成日 : 2022年9月22日

一般社団法人とは?設立するメリットや手続きの流れ、費用について解説!

一般社団法人とは?設立するメリットや手続きの流れ、費用について解説!

「法人」の中には株式会社等のほかにも、一般社団法人や一般財団法人、公益法人、NPO法人などがありますが、これらの特徴や違いについてご存じでしょうか。

今回は、法人の中でも「一般社団法人」にスポットを当て、設立の方法や定款の作成、そして気になる方も多いと思われる基金についてご紹介します。設立後の役員報酬や給与、法人税についても解説しますので、一般社団法人の設立を考えている方はぜひ参考にしてください。

一般社団法人とは?

まずは、一般社団法人とはどのような法人なのか、理解を深めておきましょう。特に一般財団法人や公益社団法人、NPO法人との違いについては把握しておいてください。

一般社団法人は営利を目的としない非営利法人

一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)」に基づき設立される社団法人です。共通の目的を持った人達が集まり、法に基づいて団体を作っています。

一般社団法人が株式会社等と違うのは、営利を目的としていないところです。そのため、「非営利法人」と呼ばれています。ただし、一般社団法人が収益の出る活動を行い、その収益を団体の運営に使うことは禁じられていません。

一般社団法人のその他の特徴については以下の通りです。

  • 設立時の人数:社員2名以上
  • 基金について:0円から設立可能

一般財団法人との違いは?

一般社団法人と混同されがちな団体に「一般財団法人」があります。一般財団法人の特徴も確認しておきましょう。

一般財団法人も一般社団法人と同様、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)」に基づき設立されます。収益が出ると団体の運営資金に充てられる点、非営利法人である点も同じです。

しかし、組織や団体に法人格が与えられる一般社団法人とは違い、一般財団法人では財産に法人格が与えられます。

その他、以下のような違いもありますので覚えておきましょう。

  • 設立時の人数:最低7名(設立者1名以上、評議員3名以上、理事3名以上)
  • 設立時に必要な拠出金:300万円以上

一般社団法人では拠出する金額は0円でも構いませんが、一般財団法人になると最低でも300万円の拠出が必要です。ちなみに、法人の純資産額が300万円未満となった場合には、当該翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散となります。一方、一般社団法人では純資産額については問われません。

公益社団法人との違いは?

社団法人には一般社団法人だけでなく、公益社団法人もあります。一般社団法人の活動については適法であれば制限がないのに対し、公益社団法人の主な目的は公益(公共の利益)活動です。公益目的事業を費用で計る場合、50%以上の比率である必要があります。

また、次のような違いもあります。

一般社団法人
公益社団法人
関係する法律
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
監督
業務や運営に関する一律的な監督はなし行政庁による報告徴収ありまた、立ち入り検査や勧告・命令、認定取り消しもあり
税金
一部の一般社団法人については収益事業のみに課税ありすべての公益社団法人が特定公益増進法人であり、公益法人認定法上の公益目的事業は法人税法上の収益事業から除外されるため、非課税となる
遵守事項
一般社団法人の規律一般社団法人の規律に加え、以下の遵守事項あり
・収支相償(※)
・公益目的事業比率50%以上
・遊休財産規制
・一定の財産の公益目的事業への使用・処分
・理事等の報酬等の支給基準の公表
・財産目録等の備置き・閲覧・行政庁への提出など

※収支相償:公益目的事業において、当該公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものであること(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条6号)

NPO法人との違いは?

一般社団法人とNPO法人の違いも見てみましょう。

NPO法人とは法人団体の1つで、正式には「特定非営利活動法人」と言います。利益の追求を目的としていない点は一般社団法人と同様です。

一般社団法人とNPO法人の大きな違いは設立方法にあります。一般社団法人は登記のみで設立できますが、NPO法人の場合、所轄庁から設立の認証を受ける必要があります。NPO法人の方が設立に時間がかかる点に注意してください。

また、一般社団法人の事業は適法であれば目的は自由です。しかし、NPO法人の事業は以下の20種類の分野に該当するものに限られています。

  • 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  • 社会教育の推進を図る活動
  • まちづくりの推進を図る活動
  • 観光の振興を図る活動
  • 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  • 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  • 環境の保全を図る活動
  • 災害救援活動
  • 地域安全活動
  • 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  • 国際協力の活動
  • 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  • 子どもの健全育成を図る活動
  • 情報化社会の発展を図る活動
  • 科学技術の振興を図る活動
  • 経済活動の活性化を図る活動
  • 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  • 消費者の保護を図る活動
  • 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  • 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

また、目的も「不特定かつ多数のものの利益に寄与するもの」とされています。

一般社団法人の基金制度とは?

一般社団法人には資本金という制度はありません。代わりに基金制度があります。基金とは、一般社団法人に拠出された金銭やその他の財産のことです。

社員からだけでなく、多くの人から基金を集めることができますが、基金に金銭等を拠出した人全員が社員となるわけではありません。また、社員は必ずしも基金に金銭等を拠出する必要はありません。

ちなみに、一般社団法人を設立する場合、基金の額は不問となっています。そのため、0円でも一般社団法人の設立は可能です。

基金制度を作る際の手続きについて

一般社団法人に基金制度を作るかどうかは自由です。不要であれば基金制度を作る必要はありません。ただし、基金制度を作りたいという場合は、法人設立時に作成する定款に規定してください。

定款では以下のような点を定めておきましょう。

  • 拠出者に関すること
  • 基金の返還について

一般社団法人の給与・役員報酬は?

一般社団法人の給与や役員報酬についても押さえておきましょう。

役員報酬について

一般社団法人では、理事や監事が役員に当たります。理事などの役員に支払う報酬については以下の方法で定めましょう。

  • 定款で定める
  • 社員総会の決議にて定める

社員への給与について

一般社団法人の社員は、株式会社でいえば株主に当たります。株主と同様、社員は一般社団法人に労働力を提供する立場ではありません。
※労働力の提供が禁じられているわけではありません。

また、一般社団法人では社員には利益の分配がないため、給与の受け取りはありません。なお、定款にもよりますが、社員が役員になった場合には報酬が発生する可能性があります。

従業員への給与について

一般社団法人の従業員として働く=労働力を提供する場合には、株式会社などの従業員と同様に給与が発生します。

一般社団法人の法人税の取り扱いは?

一般社団法人は「非営利型法人」「非営利型法人以外の法人」に分けられます。法人税法上の法人区分では非営利型法人は「公益法人等」、非営利型法人以外の法人は「普通法人」の扱いとなります。

それぞれ課税対象部分が異なりますので、下の表で確認してください。

非営利型法人収益事業から生じた所得が課税対象となる
非営利型法人以外の法人すべての所得が課税対象となる

一般社団法人を設立するメリット・デメリットは?

一般社団法人を設立するメリットとデメリットは次の通りです。

他の法人より設立が簡単であるなどのメリット

一般社団法人の設立手続きは、ほぼ法務局での登記のみです。公益財団法人のような認定は不要で、時間をかけずに設立が可能となるのがメリットといえます。

また、一般財団法人の「拠出金が300万円以上」のように、設立時の拠出金が定められているわけでもありません。0円から設立できるため、費用負担が少なく済む点もメリットといえます。

その他、適法であれば事業目的が自由という点もメリットとして挙げられるでしょう。

社員総会の開催義務があるなどのデメリットも

一般社団法人では、意思決定の際に社員総会を開催する必要があります。社員総会では、重大事項の決定を行い、議事録の作成や保管という手間が発生します。

また、従業員がいる場合には社会保険加入義務が生じます。社会保険に関する手続きをしなければならず、負担も発生するので、その点をデメリットと考える方もいるかもしれません。

一般社団法人の出資・設立の流れは?

一般社団法人の出資・設立の流れをご紹介します。

理事・社員の選定

理事・社員の選定を行います。理事は最低1名、社員は2名以上必要です。理事は法人でない社員が兼任することも可能です。社員は法人でも構いません。

定款の作成と認証

定款を作成し、法人を設立する予定の所在地を管轄する公証役場で公証人に認証してもらいます。定款には以下の内容を必ず記載しましょう。

  • 目的
  • 名称
  • 主たる事務所の所在地
  • 設立時社員の氏名(名称)・住所
  • 社員の資格喪失に関する規定
  • 公告方法
  • 事業年度

設立登記の申請

定款の認証が終わったら、法務局で設立登記を申請します。申請は法人の設立者が自ら行うこともできますが、司法書士に代行してもらうことも可能です。費用については後述します。

一般社団法人の設立にかかる費用は?

一般社団法人の設立には次のような費用がかかります。

費用支払先・手続き場所金額
登録免許税法務局約6万円
定款認証費用公証役場5万円台
法人実印作成費用印鑑店など3万円台
印鑑証明取得費用役所約300円
手続き代行依頼費用司法書士約5万円~10万円

手続きは一般社団法人の設立者本人でも行えますが、時間をかけたくない、手間がかかるのが困る、という場合には司法書士に依頼するとよいでしょう。ただし、依頼する場合には報酬の支払いが必要です。

一般社団法人の特徴を理解したうえで設立を検討しましょう

一般社団法人は法人の一種ですが、利益を追求しないという点は株式会社等と異なります。また、設立時の基金は0円でも構いません。この点は、拠出金が300万円以上とされている一般財団法人と異なっています。

設立が比較的容易で、活動が自由にできるというメリットがある一般社団法人ですが、税金の優遇が公益財団法人よりも少ない、社員に利益を還元できないなどのデメリットもあります。特徴およびメリット・デメリットをよく確認したうえで、設立を検討してください。

よくある質問

一般社団法人と一般財団法人の違いとは?

一般社団法人は組織や団体に法人格が与えられていますが、一般財団法人では財産に法人格が与えられています。詳しくはこちらをご覧ください。

一般社団法人と公益社団法人の違いとは?

一般社団法人の活動は適法であれば自由ですが、公益社団法人の活動の目的は公益(公共の利益)です。詳しくはこちらをご覧ください。

一般社団法人に法人税はかかる?

非営利型法人以外の法人ではすべての所得が課税対象となります。非営利型の一般社団法人の場合、収益事業から生じた所得のみが課税対象です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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