• 作成日 : 2025年11月6日

フードロス対策の面白いアイデアとは?国内外のユニークな企業の取り組み事例から飲食店で実践できることまで解説

飲食店の経営や事業活動において、フードロスは避けて通れない課題ではないでしょうか。しかし、この課題へのアプローチは、コスト削減や環境配慮といった側面だけではありません。近年、消費者を惹きつける「面白い」アイデアや、創造性あふれるフードロス対策が国内外で注目を集めています。

この記事では、思わず応援したくなるようなユニークな企業の取り組み事例から、明日からあなたの飲食店で実践できるヒントまで、多角的に解説していきます。

フードロス(食品ロス)の現状はどうなっているか?

フードロスとは、本来食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品のことです。日本では、年間約523万トン(令和3年度推計値)ものフードロスが発生しており、これは国民一人ひとりが毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てている量に相当します。

出典: 食品ロス量の推移 | e-Stat 政府統計の総合窓口

この問題は、単に「もったいない」というだけでなく、廃棄物の処理にかかるコストの増大や、焼却によるCO2排出といった環境問題にも直結しています。特に、食品の製造・流通過程や外食産業から発生する「事業系フードロス」は全体の約半数を占めており、企業による対策が急務とされています。このような背景から、各企業は社会的責任を果たすべく、知恵を絞った食品ロスへの取り組みを進めているのです。

国内外の企業による面白いフードロス対策の取り組み例は?

国内外の企業は、テクノロジーの活用、アップサイクル、消費者参加型のイベントなど、実に多様で面白いアプローチでフードロス問題に取り組んでいます。ここでは、特にユニークな企業の取り組み事例をいくつかご紹介します。

テクノロジーで需要を予測する:くら寿司

大手回転寿司チェーンのくら寿司は、ITとビッグデータを駆使した画期的なシステムでフードロス削減に成功しています。各お皿に取り付けたICタグで、レーン上の寿司がどれくらいの時間流れているかを管理。一定時間を超えたものは廃棄のタイミングを知らせ、鮮度を保ちます。

さらに、過去の販売実績や顧客の来店状況などのデータをAI(人工知能)が分析し、次に流すべき寿司ネタと量を予測する独自のシステムを導入しています。これにより、廃棄率を大幅に下げることに成功しました。

参照:DX・省力化で顧客と従業員の更なる満足度向上へ 「くら寿司 テクノロジー開発部」の新たな挑戦|くら寿司株式会社

見た目が悪いだけで捨てられる野菜を救う:Oisix ra daichi

オイシックス・ラ・大地株式会社が運営する「Oisix」では、形が不揃いだったり、傷がついていたりするだけで市場に出回らない「規格外野菜」を積極的に販売しています。これらの野菜の背景にあるストーリーとともに消費者に届けることで、新たな価値を生み出しています。

消費者にとっては、安全で美味しい野菜を通常より安く手に入れられるメリットがあり、生産者にとっては収入の安定につながる、三方よしの優れたビジネスモデルといえるでしょう。

参照:フードロス削減アクション|オイシックス・ラ・大地株式会社

パンの耳がビールに生まれ変わる:アサヒユウアス

アサヒグループの1つであるアサヒユウアス株式会社は、サンドイッチなどを製造する過程で大量に発生するパンの耳を原料にした発泡酒「蔵前WHITE」を開発しました。これは、パンの耳を麦芽の一部として使用する「アップサイクル」の取り組みの一例です。

本来であれば廃棄されるものに、新たなアイデアと技術を加えることで付加価値の高い商品へと転換させています。このようなユニークな商品は話題性も高く、消費者がフードロス問題について考えるきっかけ作りにも貢献しています。

参照:パン耳をクラフトビールにアップサイクル!?|アサヒグループジャパン株式会社

コーヒー豆かすを資源に変える:スターバックス

スターバックス コーヒー ジャパンは、店舗から日々排出されるコーヒー豆かすの再利用に積極的に取り組んでいます。豆かすを牛の飼料や野菜を育てるたい肥としてリサイクルする取り組みは、2014年から継続されています。このたい肥で育てられたニンジンやホウレンソウは、実際に店舗で販売されるサンドイッチの具材として使用され、資源の循環を生み出しています。

コーヒーを提供するだけでなく、その先にある資源の活用まで見据えた、企業の責任ある姿勢がうかがえる事例です。

参照:コーヒー豆かすのリサイクル、6月末から計約800店舗へ拡大|スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社

法律で食品廃棄を禁止する:フランス

海外に目を向けると、国を挙げてフードロス対策に取り組む例もあります。フランスでは、2016年に世界で初めて、大手スーパーマーケットが売れ残り食品を廃棄することを禁止する法律を施行しました。

この法律により、スーパーは売れ残った食品を慈善団体へ寄付するか、家畜の飼料や肥料として利用することが義務付けられました。罰則も設けられており、国全体で食品ロスをなくそうという強い意志が示されています。このような法整備は、ヨーロッパの他の国々の取り組みにも大きな影響を与えました。

参照:フランス・イタリアの食品ロス削減法|参議院

余剰食品を救うアプリ:Too Good To Go(デンマーク発)

ヨーロッパを中心に世界中で利用されているのが、デンマーク発のアプリ「Too Good To Go」です。このアプリは、飲食店やスーパーで売れ残りそうな食品を「福袋」のような形式で、割引価格で販売します。

ユーザーはアプリを通じて近くの店舗の余剰食品を購入でき、店舗は廃棄コストを削減しながら新たな収益を得ることができます。消費者、店舗、そして環境のすべてにメリットがあるこの仕組みは、日本でも同様のサービスが広がりを見せています。

参照:売れ残った食品を安く提供、食品ロスを減らす仕組みを確立したデンマーク企業「Too Good To Go」の取り組み|株式会社 小学館

飲食店で実践できる面白いフードロス対策とは?

企業の大きな取り組みだけでなく、個々の飲食店でもすぐに始められるユニークで面白いフードロス対策は数多く存在します。ここでは、お客様を巻き込みながら楽しく実践できるアイデアをいくつか提案します。

「まかない」をメニュー化してみる

従業員の食事である「まかない」には、その日に余った食材や、メニューには使えない端材などが活用されることがよくあります。この「まかない」を、「本日の裏メニュー」や「シェフの気まぐれ一品」としてお客様に提供してみてはいかがでしょうか。

数量限定で提供することで希少価値が生まれ、お客様にとっても普段味わえない特別なメニューとして喜ばれる可能性があります。食材を無駄なく使い切れるだけでなく、お店のファン作りにもつながるかもしれません。

お客様参加型のメニュー開発イベントを開催する

規格外野菜や余りがちな食材をテーマに、新しいメニューをお客様と一緒に考えるイベントを開催するのも面白い取り組みです。例えば、「この不揃いトマトを最高に美味しくするレシピ選手権」といった企画が考えられます。

お客様はメニュー開発に参加する楽しさを味わえ、お店側は新たな人気メニューが生まれるきっかけを得られます。SNSなどでイベントの様子を発信すれば、フードロス削減に積極的に取り組む店としてのアピールにもなります。

テイクアウト・デリバリーでロス削減セットを提供する

どうしても出てしまう余剰食材や、賞味期限が近い商品を詰め合わせた「もったいないセット」や「レスキューセット」を、通常よりお得な価格でテイクアウトやデリバリー限定で販売する方法です。フードシェアリングアプリと連携するのも効果的でしょう。

廃棄を減らせるだけでなく、お店の味を気軽に試してもらうきっかけにもなり、新規顧客の獲得につながる可能性も秘めています。

創造力でフードロスの課題を乗り越える

この記事では、国内外の企業が実践するユニークで面白いフードロス対策の事例と、飲食店で応用できる具体的なアイデアをご紹介しました。フードロス問題は深刻な課題ですが、捉え方を変えれば、新しいビジネスチャンスや顧客との新しい関係性を築くきっかけにもなりえます。

単なるコスト削減や義務としてではなく、お客様や従業員を巻き込んだ「面白い」取り組みとしてフードロス対策を考えてみることが、持続可能な店舗経営への第一歩となるでしょう。


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