• 作成日 : 2025年9月25日

飲食店の多言語メニュー作成ガイド|無料ツールと翻訳アプリ活用術

インバウンド需要が本格的に回復する中、多言語メニューは飲食店にとって機会損失を防ぎ、売上を伸ばすための不可欠なツールです。しかし、ただ翻訳するだけでは料理の魅力が伝わらなかったり、思わぬトラブルを招いたりすることもあります。

この記事では、無料ツールを使った簡単な作成方法から、失敗しないための翻訳のコツ、デザインのポイントまで、飲食店の多言語メニュー作成に関する全てをわかりやすく解説します。

なぜ今、飲食店に多言語メニューが必要なのか

海外からのお客様が増える今、多言語メニューの有無は、入店のきっかけや顧客満足度に大きく影響します。言葉がわからないという理由で敬遠される「機会損失」を防ぎ、全てのお客様に安心して食事を楽しんでもらうための第一歩が多言語メニューの整備です。

インバウンド需要の回復と売上機会の創出

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、訪日外客数は堅調に回復しています。メニューが日本語のみの場合、外国人観光客はどのような料理があるか理解できず、入店を諦めてしまうかもしれません。多言語メニューを用意することは、こうした機会損失を防ぎ、新たな顧客層を獲得して売上を伸ばすための直接的な投資と言えるでしょう。

出典:訪日外客数(2024年6月推計値)|日本政府観光局(JNTO)

顧客満足度の向上とトラブルの防止

料理の内容が正確に伝わることで、お客様は安心して注文できます。アレルギー情報や宗教上の食の禁忌(ハラル、ベジタリアンなど)を併記すれば、食の多様性に対応でき、お店への信頼感も高まります。また、注文の聞き間違いといったコミュニケーションエラーを防ぎ、スムーズな店舗運営にもつながります。

多言語メニューの主な作成方法と選び方

多言語メニューを作成する方法は、大きく分けて「無料ツール」「翻訳アプリ」「プロへの依頼」の3つがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、お店の状況や予算に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。

方法1:無料ツール(自治体サイトなど)

自治体などが提供する多言語メニュー作成支援サイトを活用する方法です。

  • メリット: なんといっても費用がかからず、手軽に始められる点が魅力です。
  • デメリット: 機械翻訳がベースのため翻訳の精度が完璧ではない場合があり、また、デザインの自由度も限られます。
  • こんなお店におすすめ: まずはコストをかけずに多言語対応を始めたいお店や、対応する言語が少ない場合に適しています。

参考:多言語メニュー作成支援ウェブサイト EAT TOKYO|東京都産業労働局

方法2:翻訳アプリ

スマートフォンアプリなどを使い、その場で翻訳する方法です。

  • メリット: お客様との会話の中で、メニューにない質問に答えるなど、リアルタイムのコミュニケーションを素早く補助できます。
  • デメリット: 誤訳のリスクが高く、料理のニュアンスが伝わりにくいことがあります。メニューブックそのものを作成するのには向いていません。
  • こんなお店におすすめ: あくまで一時的なコミュニケーションの補助として割り切って使う場合に有効です。

方法3:プロへの依頼(翻訳会社・デザイナー)

翻訳の専門家やデザイン会社に作成を依頼する方法です。

  • メリット: 料理の魅力が伝わる自然で正確な翻訳が期待できます。お店のブランドイメージに合わせたデザイン性の高いメニューブックを作成できるのも大きな利点です。
  • デメリット: 費用と時間がかかります。
  • こんなお店におすすめ: 客単価が高く、お店のブランドイメージを大切にしたい場合や、インバウンド客の比率が高いお店には、プロへの依頼が最も効果的です。

多言語メニュー作成で失敗しないための重要ポイント

ただ日本語を外国語に置き換えるだけでは、本当に魅力的な多言語メニューは作れません。外国人観光客の視点に立ち、料理の魅力が伝わる工夫や、食文化への配慮が求められます。

料理の魅力が伝わる説明文を加える

料理名だけでは、どんな料理か想像できないことがよくあります。「親子丼(Oyakodon)」という表記に、「Chicken and egg rice bowl (Simmered chicken and egg over rice)」のように、どのような食材が使われ、どんな調理法かを説明する一文を加えましょう。これにより、お客様は安心して注文できます。

写真やイラストを効果的に活用する

言葉の壁を越えて魅力を伝える最も効果的な方法は、料理の写真を載せることです。美味しそうな写真があれば、お客様は直感的に料理を選べます。メニュー数が多く、全ての写真を載せるのが難しい場合は、お店の看板メニューやおすすめメニューに絞って掲載するだけでも効果的です。

アレルギーや宗教上の食文化へ配慮する

食物アレルギーを持つお客様や、宗教上の理由で特定の食材を食べられないお客様は、海外には日本以上に多くいらっしゃいます。

  • アレルギー表示: 特定原材料8品目(えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生)や、推奨される20品目について、ピクトグラムなどを使って分かりやすく表示します。
  • 食文化への対応: 豚肉やアルコールを使用していないハラル対応メニューや、肉・魚を使わないベジタリアン・ヴィーガンメニューがある場合は、その旨を明確に記載しましょう。

メニューだけじゃない!飲食店の多言語おもてなし術

多言語メニューの整備は第一歩です。さらに一歩進んだ対応をすることで、他店との差別化を図り、より多くのお客様に選ばれるお店になることができます。

QRコードを活用した多言語メニュー

紙のメニューブックとは別に、QRコードをテーブルに設置し、お客様自身のスマートフォンで多言語メニューを閲覧してもらう方法も普及しています。

この方法には、多くの言語に簡単に対応できる、メニューの変更や更新が容易、より詳細な情報を掲載できる、といった利点があります。さらにセルフオーダーシステムと連携すれば、注文業務も効率化できるでしょう。

指差しで伝わるコミュニケーションツール

メニュー以外にも、簡単なコミュニケーションを助けるツールを用意しておくと親切です。 Wi-Fiの有無、クレジットカード利用の可否、コンセントの場所などをピクトグラムで示したり、「お会計をお願いします」「おすすめは何ですか?」といった簡単なフレーズを多言語で記載した指差し会話シートを用意したりしておくと、スタッフもお客様も安心です。

魅力が伝わる多言語メニューで世界中のお客様を迎える

多言語メニューは、単なる翻訳物ではなく、お店の「おもてなし」の心を伝え、文化の壁を越えて料理の魅力を届けるためのコミュニケーションツールです。

無料の支援サイトやツールを賢く活用しつつ、写真や分かりやすい説明文を加えるなど、お客様の視点に立った工夫を凝らすことが大切です。適切に整備された多言語メニューは、インバウンドのお客様に安心感と満足感を提供し、お店の評判を高め、ひいては売上向上に貢献する強力な武器となるのではないでしょうか。


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