- 作成日 : 2025年9月25日
飲食店の設計で成功する全知識|デザイン会社選びから費用まで解説
飲食店の設計は、単におしゃれな空間を作ることではありません。お客様の居心地、スタッフの働きやすさ、そして売上を左右する、経営そのものと言える活動です。適切な設計は、お店のコンセプトを具現化し、他店との差別化を図る強力な武器となります。
この記事では、飲食店の設計を成功させるための業者選びから費用相場、失敗しないための重要ポイントまで、経営者が知っておくべき全てを網羅的に解説します。
目次
飲食店の設計が経営成功を左右する理由
飲食店の設計は、お店のコンセプトを表現し、お客様に快適な時間を提供するための土台です。見た目のデザイン性はもちろん、お客様と従業員の動きやすさ(動線)や、提供するサービスとの一貫性が、お店の評価や売上に大きく影響します。
「世界観」を伝えリピーターを育む内装デザイン
お店のコンセプトや世界観を空間全体で表現することで、お客様は食事だけでなく、その場所で過ごす時間そのものを楽しむことができます。記憶に残る体験は、再来店を促し、お店のファンを育てることにつながります。「また来たい」と思わせる魅力的な空間は、内装デザインから生まれるのです。
売上に影響する「動線計画」
お客様がスムーズに入店し、快適に席まで移動できるか。従業員が効率的に料理を提供し、片付けができるか。こうした「動線」の設計は、お客様の満足度と従業員の作業効率、ひいては客席の回転率に影響を与えます。考え抜かれた動線計画は、目に見えない部分でお店の収益性を支えています。
飲食店の設計は誰に頼む?デザイン会社・設計事務所・工務店の違い
飲食店の設計を依頼する先は、主に「設計事務所(デザイン会社)」と「工務店(内装会社)」に分かれます。それぞれに特徴があり、お店の規模やこだわりたい点によって最適なパートナーは異なります。
設計事務所・デザイン会社
デザインや設計を専門におこなう会社です。お店のコンセプトを深く理解し、それを独創的なデザインに落とし込むことを得意とします。設計と施工は分離しており、設計事務所が作成した設計図をもとに、複数の工務店から見積もりを取って施工業者を決めるのが一般的です。
- メリット:デザイン性が高く、専門的な視点からの提案が期待できる。施工業者を競争させられるため、工事費の透明性が高まりやすい。
- デメリット:設計料が別途必要になる。設計から施工までの期間が長くなる傾向がある。
工務店・内装会社
設計から施工までを一貫して請け負う会社(設計施工)です。デザイン力のあるプランナーが在籍している会社も多く、デザイン提案から実際の工事までをワンストップで依頼できます。
- メリット:設計から施工までの窓口が一本化されるため、コミュニケーションがスムーズで、工期も短縮しやすい。設計料が工事費に含まれることが多く、総額が分かりやすい。
- デメリット:設計と施工が一体なため、工事費の見積もりが適正かどうかの判断が難しい場合がある。会社の得意なデザインテイストに偏る可能性がある。
信頼できる内装業者の選び方
良いパートナーを選ぶことは、飲食店設計の成功に欠かせません。業者を選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 飲食店の設計・施工実績が豊富か:飲食店の設計には、厨房設備や保健所の検査など、特有の専門知識が求められます。過去の実績、とくに自分のお店と近い業態の実績を確認しましょう。
- コミュニケーションは円滑か:お店のコンセプトや想いを正確に汲み取り、形にしてくれるかが重要です。担当者との相性や、こちらの要望に対するレスポンスの速さ・的確さを見極めます。
- 見積もりの内容は明確か:見積書に「一式」などの曖昧な表現が多くないか、項目ごとに詳細な記載があるかを確認します。不明な点は遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求めましょう。
失敗しない飲食店設計の進め方と重要ポイント
飲食店の設計は、コンセプトの決定から引き渡しまで、いくつかの段階を経て進みます。各ステップで何をするべきか、そして何を注意すべきかを理解しておくことで、手戻りを防ぎ、スムーズに計画を進めることができます。
設計から開店までの基本的な流れ
- コンセプト・事業計画の策定:どんなお店にしたいのか、ターゲット顧客、メニュー、価格帯、資金計画などを固めます。これが設計の全ての土台となります。
- 業者選定・契約:実績や相性を比較検討し、設計・施工を依頼するパートナーを決定します。
- 基本設計:コンセプトに基づき、店舗のレイアウト、ゾーニング、デザインの方向性などを決定します。
- 実施設計:基本設計をもとに、内外装の仕上げ材、照明、家具、厨房機器など、工事に必要な詳細な図面を作成します。
- 施工業者の選定・工事契約:実施設計図面をもとに、施工業者が見積もりを作成。業者を決定し、工事契約を結びます。
- 内装工事・施工監理:工事が設計図通りに進んでいるか、設計者が現場をチェック(施工監理)します。
- 引き渡し・開店準備:工事が完了し、店舗の引き渡しを受けます。その後、備品の搬入やスタッフ研修などを経て、開店となります。
厨房の動線計画
厨房は、お店の心臓部です。従業員が最小限の動きで効率的に作業できるレイアウト(ワークトライアングルなど)を考えることが、料理の提供スピードと品質を保つ上で不可欠です。保健所の施設基準を満たすことも忘れてはいけません。
客席のゾーニング
お店全体をいくつかのゾーンに分け、それぞれに役割を持たせることをゾーニングと呼びます。例えば、「窓際のカップル席」「奥まった場所のグループ席」「一人でも過ごしやすいカウンター席」など、客層や利用シーンを想定して客席を配置することで、顧客満足度を高めることができます。小さい店舗ほど、このゾーニングが空間を有効に使う鍵となります。
飲食店の設計・内装にかかる費用相場と内訳
飲食店の設計・内装にかかる費用は、物件の状態(スケルトンか居抜きか)や規模、デザインのこだわりによって大きく変動します。ここでは、費用の内訳と一般的な相場について解説します。
設計料の目安
設計事務所やデザイン会社に依頼する場合、設計監理料が発生します。一般的には、総工事費の10%~15%程度が相場とされています。ただし、最低料金が設定されている場合もあります。
内装工事費用の坪単価
内装工事費は、坪単価で示されることが多いです。
- 居抜き物件の場合:既存の内装や設備を活かせるため、坪単価15万円~50万円程度。
- スケルトン物件の場合:何もない状態から作り上げるため、坪単価30万円~100万円以上かかることもあります。カフェなどの軽飲食店に比べ、レストランや居酒屋などの重飲食店は、厨房設備にコストがかかるため坪単価が高くなる傾向にあります。
費用を抑えるための工夫
開業資金には限りがあるため、費用を抑える工夫も大切です。
- 居抜き物件を選ぶ:最も効果的なコスト削減方法です。
- 素材や設備のグレードを見直す:こだわりたい部分と、コストを抑える部分にメリハリをつけます。お客様の目に触れない部分の素材のグレードを下げるなどの工夫が考えられます。
- 相見積もりを取る:複数の業者から見積もりを取ることで、適正価格を把握し、価格交渉の材料にできます。
【経営者必見】飲食店の設計でよくある失敗例とその対策
理想を追求するあまり、現実的な運営を見失ってしまうと、開業後に「こんなはずでは…」という事態に陥ることがあります。ここでは、設計段階で注意したいよくある失敗例を紹介します。
デザイン優先で動線が悪い
おしゃれなデザインを優先するあまり、従業員やお客様の動きがスムーズでなくなるケースです。例えば、レジから厨房までが遠い、客席の通路が狭すぎて配膳しにくい、といった問題が挙げられます。設計段階で、実際のオペレーションを何度もシミュレーションすることが対策となります。
収納スペースが足りない
食材のストック、食器、清掃用具、スタッフの私物など、飲食店には多くの物が必要です。十分な収納スペースを確保しておかないと、店内が煩雑になり、衛生的にも見た目にもよくありません。バックヤードや壁面収納など、デッドスペースを有効活用する計画を立てましょう。
メンテナンスしにくい素材を選んでしまう
見た目はおしゃれでも、汚れやすく掃除しにくい素材を選んでしまうと、日々の清掃負担が増え、きれいな状態を保つのが難しくなります。とくに床や壁、テーブルの天板などは、デザイン性だけでなく、耐久性や清掃のしやすさといったメンテナンス性も考慮して選ぶことが大切です。
理想の飲食店はコンセプトを反映した設計から生まれる
飲食店の設計は、オーナーの想いやお店のコンセプトを形にし、お客様に伝えるためのコミュニケーション手段です。見た目の美しさだけでなく、そこで過ごすお客様の快適性や、働く従業員の効率性までを考慮した、細部にわたる計画が求められます。信頼できるパートナーを見つけ、お店の魅力を最大限に引き出す設計を実現することで、多くの人に愛され、長く繁盛するお店づくりの土台が築かれるのではないでしょうか。
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